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ティモシーと会話

お立ち寄りいただきありがとうございます。


「では私は次のお仕事に行ってきますね。ごゆっくり。」

レベッカは次の木に、とりかかった。


 そうして何本か剪定してるうちにお昼の時間になった。

「おーい、レベッカー、昼飯にしようぜ。」

「はーい、今行きます。」

レベッカはデニスのところに行って一緒にお昼ごはんにした。

いつものようにサンドイッチ。

「きょうはお店だと思っていたので、これしか持ってきてないんです。あしたはクッキーかなにか持ってきますね。」

「気を使わないでいいよと言えば良いんだが、レベッカの作る菓子はうまいからな。期待してるぜ。」

「ふふふ、デニスさんのお好きなチョコレート味のものを作らなくっちゃね。」


 そんな話をしていたら、邸の執事のノーマンが来て

「お昼休み中に失礼いたしますが、ティモシー様がレベッカ様にぜひお話したいと仰ってまして、お昼休みが終わりましたら、邸のほうまでお越しいただけますか?」

デニスが驚いて

「レベッカ、お前なんかしたのか?」

「え、ええと・・・」

ノーマンが焦って

「いえいえ、悪いことではございません。お礼がてらお話したいと仰っていますので、どうかご心配なく。」

「そうで・・・やんすか?」

デニスはなんだかよくわからないような顔をしている。


 ノーマンが去ってからデニスは

「おい、レベッカ、なんで急にティモシー様が話したいなんて仰るんだ?なにした?」

とレベッカに訊いてきた。

レベッカは

「実は、さっき木の剪定をしてたんですけど、その中の1本がティモシー様のお部屋の前にあって、それですこしおしゃべりしたんです。」

「へー、大丈夫だったか?」

「別にこれといって何も。お顔の半分を髪の毛で隠してらっしゃいましたけど、それ以外は普通の方でしたわ。お部屋の前の木がお好きで、ティモシー様がまだお小さい頃、初めて字がかけるようになった時に、その木にお名前を彫ったそうで、それが今も残っていました。」

「へえー、さすがレベッカだねえ。ティモシー様は誰とも話されないって有名な話だぜ。ここだけの話したけどよ、公爵家のご嫡男だろ、結婚したら公爵家の財産が入るからって嫁に来たい娘がいっぱいいたんだそうだぜ。でも、見合いしてもすごく冷たくて、しかも傷跡がすごくってみんなだめになるんだそうだ。」

「デニスさん、ティモシー様って2人いらっしゃるんですか?」

「なんだ?ふたりって。」

「だって、私がお話させていただいたティモシー様はとっても人当たりが柔らかくて、感じの良い方でしたもの。なんだか別人みたい。」

「そうか・・・ほかに誰かいるのかなあ。その人をティモシー様だと思ってたとかかもしれねーな。」

「そうですねえ。まあ、あともうちょっとして伺ったらわかることですけどね。すみません、できるだけ早く切り上げて作業に戻りますから。」

「それは気にすんな。雇い主から言われたことだから、あっちは文句も言えねえだろうよ。」

「あはは、デニスさんったらー。」


 お昼休みが終わって、レベッカはお邸の玄関口に行ってみた。

ノーマンが待っていて、ティモシー様の部屋に案内してくれた。

ノーマンがドアをノックして

「ティモシー様、レベッカ様をお連れしました。」

と言うと、ドアが開いて、ティモシーが立って迎えてくれた。

侍女がすぐにお茶とお菓子を持ってきてくれた。

「わざわざありがとう。ビッグとはずいぶん話ができてお互いとても幸せだったよ。これからまた話そうということになった。楽しみが増えたよ。ありがとう。」

「それはよかったこと。ビッグさんがね、ティモシー様が大きなお怪我をなさって辛い思いをされている時に、心配だったけれど声のひとつもかけられなかったって、すごく悲しそうに仰ってたんです。お話できて良かったわ。」

「ありがとう、君のおかげだよ。」

「ふふふ、ブランのおかげです。」

「君はブラン君とはずっと友達なのかい?」

「はい、私が生まれた時からずっと仲良しです。他にも何人かお友達がいるんですよ。」

「すごいな、それで園芸の仕事をしているのか?」

「それでというか・・・私、昔から木や花が大好きで、それで園芸のお仕事をするようになりましたの。うちは両親が理解があって私はとっても幸せです。」

「そうか、よかったな。」

「はい。」レベッカはにっこり笑って頷いた。


 ティモシーはレベッカのその笑顔に目を瞠ってしまった。

「・・・ゴホン、ところで、君は私の顔のことを知ってるか?」

「お顔のことと言いますと、魔物狩りで大怪我をなさって傷が残っているというお話でしょうか。そのことでしたら今朝伺いました。失礼な態度はとるなと言われました。」

「そうか・・・私が怖いか?」

「怖い、ですか?いいえ。どうしてですか?ティモシー様は怖い方なんですか?」

「ははは、怖い方なんですかと面と向かって訊かれたのは初めてだ。」

「あら、ごめんなさい。私は、ティモシー様が怖いとは思わないので、どうしてそんなこと訊かれるのかなってわからなかったものですから。」

「そうか・・・では・・・これが私の顔なのだが。」

ティモシーはそう言って髪を持ち上げて顔の傷を見せた。

「まあ、本当に大きな傷ですわね。これだけの傷が残ったということは、さぞかし大きなおけがだったのでしょう。すごく痛くて苦しかったでしょう。お気の毒に。でも、もう治ってらっしゃるんですよね?まだ痛みますか?」

「いや、もう傷痕だけだ。痛みはもうない。」

「よかったー!」

レベッカはとても嬉しそうに笑った。


 「もう一度訊かせてくれ。私が怖いか?」

「いいえ。」

「こんな顔でもか?」

「こんな顔って、大きな傷があるだけで、ほかはとてもきれいなお顔だと思いますけど。」

「そ、そうか・・・」

「あの、視力は大丈夫ですか?何か不自由なことはおありですか?」

「いや、醜くなったが’機能的にはなにも変わらない。」

「よかったですねー。」

「そ、そうだな。」

「ふむむむ、もしかしてティモシー様はこのお怪我をなさる前はそのきれいなお顔でモテモテだったのでしょうか?それで傷ができてショックだとか?」

「ははは、いや、もともと性格が気がきかないのでモテたことはない。」

「あら、そうですか。でも、ティモシー様はお話すると楽しい方ですわ。それにブランが心のきれいな方だと言ってましたけど、私もそう感じます。」

「そ、そうか・・・ありがとう。」

「どういたしまして。本当のことを言っただけです。」

レベッカはそう言ってにっこり笑った。


 「ティモシー様」

「なんだ?」

「さっきティモシー様はご自分のお顔が醜いっておっしゃいましたけど、私は醜いとは思いませんわ。顔は心を表すといいますけど、ティモシー様は良い方ですからお顔にも良い方だって書いてあります。ですから、醜いってことはないと思います。」

「・・・ッ そうか・・・それは、どうもありがとう。」

「本当のことを申し上げただけです。」

「良いなあ。君のように考える人が貴族にもいればもっと楽しく暮らせそうだ。」

「たしかに、貴族の社会は虚栄と猜疑と欺瞞と嫉妬が渦巻いてますものね。楽しくない社会ですわ。」

「・・・ッ 君は貴族の令嬢なのか?」

「貴族のはしくれです。好きじゃないので社交の場に出ません。それよりこうやって働いている方がたのし・・・!」

「どうした?」


 「ごめんなさい、私、すっかり長居をしてしまいました。やることたくさんあるのに私ったら。すみません。仕事に戻らないと。」

「ああ、引き止めてすまなかった。君と話しているのはとても楽しいのだ。あとで私の仕事に一段落ついたら君のそばに行って話してもよいか?」

「まあ、そんなこと、申し訳ないです。・・・でも、もしティモシー様さえそれでも良いと仰ってくださるなら、私のほうは大歓迎ですわ。」

「そうか、それではまたあとで。」

「はい、お邪魔致しました。お茶とお菓子も、ありがとうございました。失礼致します。」

レベッカはそう言うと、大急ぎで剪定の木のところに駆け戻った。


お読みいただきありがとうございます。

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