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20 雪中決戦

 試合開始三〇分前。


 高空連のトーイングトラクターによって双方が使用する戦闘機が滑走路に並べられる。


 トラビ側四四機のうち一六機はこの試合が初陣となる切り札。Ta152H-1だ。


 後は試合開始を待つばかりだが、雪が降り始めたため、トラビ空戦部員は格納庫の中で待機している。


 天気予報は何年かに一度の大雪になるかもしれないと告げていた。


「これドライアイス撒く必要無かったんじゃないか?」

「結果論ですが、そうですね。試合中止の懸念があります」

「逆にこれ以上降らない事を祈るべきか」

「不要でしょう。悪天候を祈った結果がこれなんですから」

「そうだな」

「全員機体に搭乗。鹿島先輩は十時になったら離陸指示を出してください」

「わかった。今更躊躇は無しだ」


 衛徒の答えを聞いたレイアはコックピットに入り、無線で実況解説の声を聞く。


 やはり天候を心配していた。


 地上ですら視界が悪くなってきた。


 普通に考えて、このまま十時を過ぎれば試合中止になるだろう。


 だが、錨桜に勝てる日があるとすれば今日しかない。


 今日で、トラビ空戦部の命運を決めるのだ。


 トラビ空戦部員は機体に乗り込んでその時を待った。


 午前十時。ロート隊を先頭にトラビ空戦部は離陸を開始する。


「おっと!? トラビ高校、離陸を開始しました! しかし、離陸許可は出てきません! ランプも赤いまま! 今審判団が止めに――なんと!? 錨桜高校も離陸を開始しました! これはどうなるんでしょうか……今、審判団が試合開始を宣言! 追認しました! 高校空戦冬の大会決勝戦、試合開始です!」


 冬の大会決勝。


 トラビマイスター高校VS錨桜高校。


「トラビ高校はペナルティ覚悟のギャンブルスタートですね。荒天の方が有利と考え、賭けに出たという事でしょう。対する錨桜は、受けて立つ、という事でしょうか。確かに、この大雪という不確定要素を乗り越えて三冠を達成すれば、史上最強の名は確たるものになるでしょう」

「雪の降りしきる若狭沖バトルフィールド。試合は開始直後から異例の展開となって参りました!」


 レイアは無線を自チームに切り替えて、酸素マスクを着ける。


 今、レイアは高校空戦を心底面白いと思っていた。


 そして、決勝の相手が錨桜である事に喜びを感じていた。


 そもそも、錨桜が強過ぎるからこそ、ライヒスリッター学園はトラビ空戦部存続の可能性が残る発言をしてしまったのだ。


 この対戦相手に感謝すべき。


 そしてこの大雪の中で空戦をしようという戦いへの渇望は、錨桜以外には持ち得まい。


 嬉しい! 空戦に全てを賭けているのは、私達だけではなかったのだ!


 トラビ空戦部戦闘機隊は雪雲を抜け蒼天の下に出る。


 そして全機が進路を変更。


 機首を錨桜戦闘機隊に向ける。


 D-9とTa152がなおも上昇を続ける中、F-8は徐々に機体を水平にして増速を開始した。


 フォッケシリーズは普通に飛行していると高度六千メートルまでの上昇力で紫電改に劣る。


 機体が重いのにエンジンの定格出力で劣っているのだから当然だ。


 しかし、そんなフォッケより更に上昇力で劣る敵機がいる。


 零戦五三丙型だ。


 エンジン出力の不足。上昇力も加速力も平凡以下。


 空戦は乗り手次第なので零戦だから弱いとまでは言い切れないが、紫電改より遥かに戦いやすい相手である事は間違いない。


 高校空戦はスポーツだ。


 この冬の大会にも競技性を高めるためのルールがいくつも存在する。


 うち一つが勝利条件。


 先に敵機の半分を堕としたチームの勝利となる。


 これは機体の損失を減らし、予算の少ない空戦部でも活動しやすくするためでもある。


 次に制限時間。


 制限時間を過ぎた時点で撃墜数の多いチームの勝利となる。


 これはテレビ放送枠の確保や集客の面で有利にして興行性を高めるという意味合いが強い。


 この二つのルールを見た時、誰もが一つの作戦を思いつく。


 弱い敵を堕として形勢有利とし、時間切れを待つ。


 これは卑怯ではなく定石だ。


 撃墜困難な相手を狙う意味は無い。


 零戦隊の中でも比較的技量の低い者を狙って堕とし、数的有利を作る。


 F-8隊は零戦に向かって突進し、先制攻撃。D-9はその上から援護。


 その間にTa152隊はMW50出力増強装置を使って更に上昇。


 紫電改や零戦五三丙型にも同様の出力増強装置が付いているので、MW50があるから有利、とはならないが、使い所が勝負を分けるのは間違いない。


 技量で負けているのに高度でも負けていては話にならないし、出力増強装置の使用可能時間が長いのはTa152の強みであるため、開幕から使っていき、強引に優位高度を奪う。


 上昇中のレイアは見た。


 一機のF-8が零戦を撃墜。その後の離脱中に一機が撃墜された。


 F-8は機体の頑丈さを活かし積極的にヘッドオンを仕掛ける作戦だ。


 錨桜側が応じるわけないが、MG151は低伸性が良いし、集団戦ならまぐれ当たりもあり得る。


 敵機に反撃機動のタイミングを見誤らせる効果も期待できる。


 一旦降下に転じたものの雪雲が邪魔で引き起こした零戦のうち、二機をD-9が撃墜。


 D-9隊は雪雲の中に消えて行ったが、その直前で二機が紫電改の攻撃を受け墜落。


 序盤の戦闘は上々。


 この試合に出ているトラビ空戦部員四四名のうち、錨桜の選手に対抗可能な選手は贔屓目に見て一五名程度。


 それら全員がTa152に乗っている。


 つまりF-8隊やD-9隊が錨桜相手に痛み分けの戦いをしているのは、極めて割の良い交換なのだ。


 そしてTa152隊は高度七千に到達した。


 取った! 高度優位!


 高度六千メートル以上には五分までしか留まれないルールだが、現時点での空戦エネルギー優位はこちらにある。


 対する紫電隊には、空戦エネルギー不利を承知でTa152との戦闘に応じるか、無視してD-9やF-8を狙うという二つの選択肢がある。


 ただし、後者はジリ貧に陥りかねないうえ、編隊を崩さずに雪雲から抜け出してきたD-9隊とF-8隊を錨桜戦闘機隊も見たはずだ。


 高度四千メートルより下に広がる雪雲はトラビ戦闘機隊にとって安全圏。


 トラビ戦闘機隊を低空には押し込めない。よって取り得る選択肢は一つ。


 レイア達の予想通り、紫電隊は空戦エネルギー不利を承知で勝負を挑んできた。


「全機攻撃開始」


 Ta152隊の隊長であるブルーノの指示により、一六機のTa152が一斉に降下していく。


 対する紫電改は緩降下、その後九機が斜めの上昇旋回に入った。


 ヘッドオンはあり得ない。


 狙いは斜めの燕返しだろう。


 わかっていれば対処できる。


 一機の紫電改が旋回に入った瞬間レイアは左に横転、機首を上げ、照準器に入った紫電改の正面に銃弾を叩き込むと、更に横転して下側へ離脱、急降下に入る。


 それに追従するように、緩降下していた紫電改も急降下に入った。


 左を見ると、すぐ側に紫電改。


 このパイロットの目には見覚えがある。


 錨桜空戦部部長、藤金選手!


 こちらを見て右手で敬礼してきたのでレイアも左手で敬礼し、フットペダルを踏んで機体をそちらに横滑りさせた。


 紫電改は咄嗟に横転し、レイアの右下に回避する。


 ぶつけようと思ったわけではない。


 絶対に躱してくるという確信を持っての行動。


 この人に後ろを取られたら絶対に死ぬ。


 紫電改がバレルロールを開始した瞬間、レイアも右側に旋回。


 オーバーシュートした瞬間にやられる!


 二つの機体は敵味方でありながらシザーズを繰り返し、互いに背後を取らせないまま降下。


 途中ハンナの牽制射撃が入ったが、他の紫電改が背後についたため、レイアは回避に専念するよう指示。


 遅れてダイブしていたエレンと樹里の射撃は当たりこそしなかったが、背後からの攻撃を受けて三機の紫電改は離脱。


 ゲルプ隊四機はそのまま雪雲への退避に成功した。


「ゲルプアインより各機へ。藤金選手を発見。尾翼に紅い龍のエンブレムと赤三本。交戦厳禁です!」


 藤金選手は既にプロ二チームがドラフト一位指名を明言している逸材だ。


 被撃墜記録が無く、高校生が堕とすのは不可能と言われている。


 関わってはならない。


「了解。流石視力三・◯」

「各機。仰角二◯度を維持」


 雪雲を出たらMW50も使って上昇し、ダイブ&ズームを繰り返す。


「Ta152隊は零戦を狙う。D-9とF-8はできるだけ高度を取れ」


 斜めの旋回を終えたTa152隊は同位高度にいる紫電隊を無視し、下方の零戦に襲いかかる。


 Ta152はフォッケシリーズの最終形態であるが、機体は新規設計に近く、その性能は最早別物と言ってもいいほど変化している。


 長大な主翼はフォッケシリーズの長所であった横転性を平凡な域まで低下させた代わりに旋回性を向上させており、特に斜め方向の旋回を得意としている。


 またMW50でエンジン出力を上げ強引に空戦エネルギーを回復する事も可能ではあるため、フラップ開閉を駆使した格闘戦も選択肢には入る。


 しかしそれはあくまで相手が同格以下の場合。


 格闘戦とは最もパイロットの技量が問われる戦闘機動であり、最高峰の練度を誇る錨桜の選手が操る紫電改や零戦に格闘戦を挑むのは自殺行為。


 上昇した旋回性能と使用時間の長いMW50は、好きなタイミングでダイブ&ズームを行いやすくするためのものとだけ心得ておく。


 狙っていた零戦三機が同時に左斜めの旋回に入る。


 こちらと反航する回避行動。私が攻撃するのは無理だ。


「私とハンナは背後を抜ける。エレンと樹里は攻撃」


 そう言ってレイアは進路を調整。


 後方から射撃音が聞こえてきた。


「零戦撃墜」


 二機の零戦を堕としたTa152隊は雪雲の中に退避。それに続いて零戦が三機雪雲に突っ込んだ。


「ブルーノ! 零戦が三機雲に入ったぞ!」

「雲の中で戦闘などできん」

「前も後ろも見えねぇよ」


 高度を上げたTa152隊は雪雲の上に出る。


 そこに、四機の零戦が突っ込んできた。


 レイアが振り返ると火を噴いて堕ちていくTa152が二機。


 それらを堕とした片方は……。


「姉です! 六原アルマは私達の出てくる場所を読んでいました!」

「どうやって……そうか! 石本ならできる!」

「あの、教導隊長か!」

「どういう事だ!?」

「雪雲の中で俺達をつけて、雲の上の味方を誘導したんだ!」

「んな事できんのか!?」

「それしかないだろ!」


 レイアも雑誌で読んだ。


 三年生でありながら公式戦の殆どで零戦に乗っている選手。


 零戦に乗る下級生に中隊戦術を教える役目を担っているからで、付いた渾名が教導隊長。


 零戦という凡庸な戦闘機に乗っていながら自身および二、三番機の被撃墜記録が無いという化け物であり、ドラフト一位指名が確定している。


 戦ってはならない敵だ。


「という事はあの七機の零戦のうち四機は二年と一年か」

「つまり六原姉と悠紀羽三姉妹って事だろ! やれんのか!?」

「特定の敵に固執しない。臨機応変にいく」

「了解」


 高度を取ったTa152隊は下方の紫電隊を狙う。


 F-8数機を狙っていた紫電隊は攻撃機動を止め、緩上昇からの旋回に移動。


「右から敵機!」

「全機縦旋回! MW50を使え」


 レイアの警告にブルーノが即座に対応を指示。


 ループの頂点でレイアは下方を確認。


 よし、これは敵のミスだ! 速度を失った紫電改が数機いる。


 降下に転じたレイアは紫電隊に機首を向ける。


「シュバルムシザーズ!」


 バレルロールで回避しようとする紫電改を二方向からの射撃が襲う。


 下方に撃っているため狙いもつけやすい。


 レイアとハンナで一機撃墜。エレンと樹里で更に一機撃墜。


 ロート隊、グリューン隊からも撃墜報告が入った。


 これでスコアに六機ほどの差が付いた。


 勝てる! 雪雲を利用したダイブ&ズームは単純であるが故に対応が難しい。


 錨桜が対策を見つける前に押し切れる!


「紫電改が雲に入った!」

「何機だ!?」

「わからん!」

「味方を誘導されるぞ」

「全機仰角五◯度! 雲を出る!」


 短時間で雲から出て敵が集まってくる前に上昇する。


 それは正しい判断に思えた。


 レイアは雲から出る寸前、真横に機影を見た。


「ライトブレイク!」


 咄嗟に叫んだレイアは右に横転し、旋回してから雲を出た。


 やはり、あの機影は敵機だった。


 離脱できたのはゲルプ隊のみ。


 真っ直ぐ上昇して雲を出た八機のTa152。そのど真ん中に六機の紫電改がいた。


 おそらく、雲の中に入ってTa152隊の上を飛んでいたのだ。


 そして一瞬早く雲を出て、上昇してきたTa152隊に割って入る。


 レイアは曲芸を見た。


 六機の紫電改によるヴァーティカルシザース。


 交差しながら飛ぶ紫電改が次々とTa152に火線を浴びせ、撃墜していく。


 慌ててレイアは左に旋回し、紫電改の後ろを取る。


「仕留めるぞ!」


 言いつつレイアは旋回で離脱しようとした紫電改を撃墜。


 更にもう一機。未だに上昇を止めない紫電改がいる。


 あれは失速する。そうなればただの制止目標だ。錨桜の三年生ともあろう選手が、血迷ったのか?


 そう思いつつレイアは機首を紫電改に向ける。


 その時、紫電改のラダーが動いた。そして右のエルロンが上がり、左のエルロンが下がる。機首が急速に左へ傾く。


 紫電改は一瞬で急降下に転じた。


 馬鹿な、ハンマーヘッドターン!?


 高校空戦最後の試合で、チームの三冠がかかった大切な試合で、一瞬でも機体をアンコントロール状態にする。


 その心臓の強さが、レイアの想像を超えた動きを可能にした。


 機首を真下に向けた紫電改は機銃を撃ちながら直下降。


「ぎゃっ」

「どうした!?」


 エレンの悲鳴を聞いたレイアは問う。


「キャノピーに穴が空いた。私は、無事だ」


 紫電改のパイロットは、レイアとすれ違う瞬間、ピースしながら手を振っていた。


 機首に稲妻マーク。あれは、明松選手!


 破天荒な性格ながら既にドラフト一位指名が確定している傑物。


 トラビと錨桜のスコアの差が、急速に縮まりつつあった。


「なんか上に零戦おるんやけど!」

「落ち着け。振り切れる」

「そしたら零戦が背後に来てまうやろ! 雲の中安全ちゃうやん!」

「旋回するか?」

「零戦と旋回戦できるか! 零戦はあかん! こうなったら上昇反転や! いくで!」

「おい待てそんな練習してないだろ!」


 バラけたF-8隊が零戦に狩られるのが見えた。


「鹿島先輩、野崎先輩、藤巻先輩はフリーデル先輩の列機へ」

「了解」

「錨桜の奴らも、雪雲の中を飛んでいる」

「残った三年は四人だけ。なんて様だ」

「ブルーノ先輩、目標選定を、早く!」

「わかった」


 雪雲の中での編隊飛行は互いの位置を目視で確認できないため、直線的な動きしかできない。


 また、雪雲の中は空戦エネルギーの消費が大きいため、長く留まるとかえって不利になる。


 故に雪雲の中では極めて限定的な動きしかできない。


 これは戦術上の欠点ではある。しかし弱点として逆手に取るなど机上の空論だと思っていた。


 錨桜の戦闘機隊が雪雲の中を編隊飛行するのを見るまでは!


 しかも雪雲内外の味方と連携することで中隊での戦闘機動も維持している。


 なんという対応力。恐るべき応用力。これが、史上最強!


「よっしゃ、一機堕としたで」

「右の奴もいけるよ!」


 下方では僚機を失った錨桜の戦闘機達が空中集合し新たに編隊を組み直そうとしていた。


 錨桜の出撃機数は四五機。二三機撃墜すればトラビの勝利となる。


 味方の撃墜報告からあと一機か二機のはずだ。


 だが味方の機影も見た限り半数近くまで減っている。


 錨桜は再編成を完了次第、中隊での攻撃機動を仕掛けてくるだろう。


 そうなればもう、勝ち目は無い。


「戦術的優位は失われました。堕として勝つしかありません!」

「敵が空中集合している今がチャンスだ。行くぞ!」


 ブルーノの指示に従い、Ta152隊は降下を開始した。


「俺達が紫電をやる。ゲルプ隊は零戦をやれ!」


 ブルーノ先輩の判断に間違いは無い。


 錨桜の残存戦力二十数機のうち、空中集合が僅かに遅れた機体が二、三機いた。


 それを狙うのが唯一の勝ち筋だ!


 こちらの攻撃に気付いた零戦七機が降下に入るが、速度で勝るゲルプ隊は一気に距離を詰め攻撃機動に入った。


「紫電一機撃墜。あと、一機のはずだ」

「了解!」


 絶対に堕とす!


 空中集合から遅れた零戦は姉だ。


 僚機を二機とも失っているから僅かに合流が遅れ、今も味方からやや離れてしまっている。


 先頭をいく三機の零戦が宙返りを開始。


 だがそれに構ってはならない。


「最大出力、突っ込め!」


 高速旋回してきた零戦の射撃をシザーズで躱し、ゲルプ隊は四機の零戦を狙う。


 焦りとは裏腹にゲルプ隊の射撃はバレルロールで回避される。


 オーバーシュートすれば終わりだが、速度を落とせば後ろの零戦に追いつかれて負ける。


 敵機に挟まれた状態だが、急降下で逃げる選択肢は無い。


 一刻も早く撃墜しなければ、スコアで逆転され負けてしまう!


 姉を堕とすのだ。勝利のために。チームのために。


 姉さんは言った。私に勝ちたいと明確に言った。


 ならば必ず私を堕としにくる。


 遂にレイアの機体がアルマの零戦に追いついた。


 アルマが操縦桿を倒すのを、レイアは背面飛行で見ていた。


 下に潜り込む気だ。


 レイアは機体を傾けたままフットペダルを踏み、逆の方向に操縦桿を倒す。


 機体は横に滑り出し、更に揚力が小さくなった事で沈み込む。


 そこに、機首を持ち上げたアルマの零戦が突っ込んだ。


 Ta152の胴体下部と零戦の右翼が衝突し、更に二機のコックピットが衝突。


 互いのキャノピーが割れ、ガラスが太陽光を反射しながら弾け飛ぶ。


 右翼が折れた零戦は、スピンしながら雪雲の中へと消えていった。


 レイアのTa152はエンジンが黒煙を噴いていたが、止まってはいない。飛行も可能。


 この頑丈さが、姉さんの撃墜を可能にしてくれた。


 緩降下するレイアの耳に、審判の声が聞こえてきた。


「試合終了! 錨桜高校は機体の半数を損失。トラビ高校の勝利! 六原レイア選手と六原アルマ選手の機体接触は、六原レイア選手が飛行を継続しているため、マニューバキルと判定します!」


 勝った!


 雪雲を抜けたレイアは酸素マスクを取る。


 そこにハンナが追いついてきた。


「レイア! やったよ! 本当に勝った!」

「ええ。やっぱりフォッケウルフは最高だわ!」

次回、レイア、親友が福引で冷凍本マグロを当て気合いでハンドキャリー

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