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最強は私じゃなくて障害持ちの息子です  作者: Beo9
十七章 全ての元凶
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キャンピング浮揚馬車

先週また空いてしまったので今週も二話投下します

 リョウジが依頼を受けて、三日後の昼過ぎだった。

 コォン、コォン、コォンと、町中に浮揚馬車接近の警告の鐘が響いた。ちょうど食事を終えたところだったリョウジは、ようやく来たかと町の広場へ向かう。

 果たして、広場には普段見るものより随分と大きな客車を備えた浮揚馬車が止まっており、その前に見覚えのある人物が立っているのが見えた。

「ギルドマスター、お久しぶりです。まさか直接来るとは思いませんでしたよ」

 リョウジが声をかけると、トリアの町のギルドマスター、ディランは手を挙げて答える。

「何しろ、緊急事態だからな。お前の補佐の役割もあるし、ほれ、もう一人いるぞ」

 すると、浮揚馬車の中から一人のドワーフが顔を出した。

「おう、久しぶりだな!装備も乳母車も、まだ壊れちゃいないようだな!?」

「グルーガさん!?ええっと、武器は一回壊れましたが、他はまあ……いや、その前にどうしてここに?」

 リョウジが尋ねると、グルーガはニカッと笑った。

「そりゃおめえ、この浮揚馬車の手入れのためさ!何しろ、こいつにはお前達も乗るんだからな!」

 グルーガの言葉に、リョウジは驚いて聞き返す。

「浮揚馬車に、私がですか!?」

「おうよ!安心しろ、お前のスキルのことは知ってる!お前の持った武器が、相手の持った武器に触れても効果が発動するが、それ以上だと発動しねえんだろ!?だから、浮揚機構は五重に覆ってスキルが届かねえようにしてある!おまけに、しばらく乗ったっきりになるからな!三日程度なら生活できるようにしてあるぞ!」

 どうやら、この浮揚馬車はグルーガの手によって、空飛ぶキャンピングカーと化しているらしい。雰囲気から感じ取ったのか、コウタも『これ乗るの!?これ乗れるの!?』という顔で浮揚馬車とリョウジの顔を交互に見ている。

「ま、仮に効果が発動しちまっても、俺がいりゃあすぐに直せる!だから、遠慮せず乗りな!」

 実際のところ、リョウジとしても浮揚馬車には乗ってみたいと思っていたが、スキルの都合上諦めていた。だが、グルーガが乗れるというからには、恐らく大丈夫だろう。

 さらに言うと、キャンピングカーには一度乗ってみたいと思っていた。いつかレンタカーを借りてみようと思っていたが、コウタが生まれたこともあり、機会がないまま今に至っている。なので、この浮揚キャンピング馬車に関しては、表情にこそ一切出していないものの、リョウジとしては是が非でも乗りたいと思っていた。

 が、そこで引っかかる一言を思い出し、リョウジは口を開く。

「……ところで、三日ぐらい乗りっぱなしになるんですか?」

「おう!安心しろ、かなり快適だったぞ!ガッハッハッハ!」

「いや、そこはいいんですが……息子がどうかな、と……」

「あ~……グルーガ、御者は基本俺がやる。お前はその子が飽きねえように、色々と玩具作ってやってくれ。マジで」

「おう、構わねえぞ!じゃあ、とにかく乗ってみてくれ!まずは使えなきゃ話にならないんでな!」

 グルーガに言われ、リョウジは恐る恐るタラップに足を乗せ、体重をかける。

 客車は落ちることなく、その場に浮かんでいた。それを見ると、リョウジは力強く踏み込み、コウタを抱えて客車へと乗り込んだ。

「うえいえいえいえ!あい、いえっあ!」

「これは……何とも、豪勢ですね」

 内部は、完全にキャンピングカーだった。テーブルと椅子、ベッドが備え付けられ、どうやらトイレもついているらしい。さらに、御者用の前部と乗客用の後部は扉付きの仕切りで分けられており、前部には御者用の簡易寝台が設けられている。

「いぃーっはいぁ!」

「壊さないでね」

 早速ベッドに飛び込んでいったコウタを放し、リョウジはひとまず椅子に腰かける。今回は完全にリョウジ親子のための客車だからか、一緒に乗り込んだグルーガは椅子に座らず立っている。

「よし、機能に問題はねえな!そしたら、ディランの奴から今回の件について話してもらうからよ!俺はしばらく御者やってるぜ!」

「わかりました、ありがとうございます」

 グルーガが前部に移って程なくして、町中に再び浮揚馬車の警告の鐘が響き渡った。同時に、客車が滑るように動き出し、やがて窓の外の景色が飛ぶように流れだす。

 当然のことながら、振動は非常に少ない。しかし、どうやら地表から一定の高さを保つような魔法がかかっているようで、思ったよりは地面の凹凸を拾っており、電車程度の振動は発生している。

「邪魔するぞ。しっかし、こんなの王族でも使わねえんじゃねえか」

「S級特権ですね」

「ワールドマスター特権と治外法権特権だがな……」

 ベッドでのたくっているコウタを一瞥し、ディランは遠慮なく椅子に腰かけた。

「さて……依頼について、詳しく説明させてもらうぞ」

 ディランの言葉に、リョウジの顔も冒険者のそれに戻る。

「経緯に関しては、既に説明したとおりだ。一年間、昏睡状態になっていた子供が目覚め、驚くべき力を振るってゼーストの町を占領した。そいつの討伐に向かったシラッドが返り討ちに遭い、お前へ依頼するように言った。それで、今この状況なわけだ」

「……シラッドさんの容体は?」

「一時は危なかった。が、同行してたジェイルとウェーバーが早めに処置してたこともあって、一命はとりとめた。今頃はリハビリの真っ最中じゃねえかな」

「そうですか……」

 それを聞き、リョウジはホッと息をつく。が、そこでディランがふと思い出したように言葉を続ける。

「そういや、あいつからの伝言だ。『一生恨んでやる』だそうだ」

「なぜそこで私が!?」

「いや、な……ポーションぶっかけて、飲ませて、命を繋いでトリアに戻ったのはいいんだが、あまりにもひどい怪我で、回復しきれなかったんだ。で、半分意識失ったような状態になって、ポーションが飲めなくなって、でも内臓がやられてて……となれば、何使ったかわかるよな?」

 そこで、リョウジはかつて自分の助言で作られた、座薬型のポーションを思い出した。

「あれをだな、若い女医にだな……」

「……その恨み、甘んじて受ける……としか言えませんね」

 ともかくも、命を落とさなかったというのは朗報だった。半分ほど謂れのない恨みを受けることにはなったものの、リョウジとしては同じ心の傷を持つ者として一方的な親近感さえ覚えていた。

「話が逸れたが、わかっていることは対象が魔法とは違う、言うだけで事象を発動させる力があること。異常なステータスを持っていること。時間停止が効かないこと、だな。さらに言えば、ジェイルの『サプライズワープ』で逃げたらしいが、それに対する追撃はなかったそうだ。単に追撃する気がなかったのか、それとも追撃できなかったのかはわからねえがな」

「後者であると信じたいですが……しかし、その力がスキルによるものだとして、どう作用してるかは気になりますね……」

「お前のスキルは、『ほぼ』無敵とはいえ、あくまで『ほぼ』だもんなぁ……」

 リョウジのスキルに関しては、講習期間中に二人で色々と実験したことがあった。その結果わかったこととして、直接的なものに関しては無敵でも、間接的には影響を及ぼすことができると判明していた。

 たとえば、炎の魔法をぶつけられても火傷することはないが、炎の魔法で熱した石をぶつけられれば火傷をしてしまう。また、魔法で作った岩石を落とされても触れた瞬間消滅するが、魔法で水樽を浮かせて持ってこられると、触れた瞬間にそれが頭の上に降ってくる。魔力で包んだ石をぶつけられても、当たった瞬間に速度がゼロになって怪我はしないが、魔法で弾き飛ばした石に当たれば怪我を負う。

 そのため、スキルや魔力による直接的な攻撃であれば問題ないのだが、それによって引き起こされた事象が結果として攻撃になる、というようなものだった場合は、いくらリョウジといえども無敵とは言えないのだ。

「まあ、その辺は出たとこ勝負でやるしかないんでしょうけれど……何ですかあれ?」

 ふと窓の外を見ると、馬に乗った商人のような者が馬車に並走していた。リョウジは思わず構えかけるが、ディランはそれをやんわりと制止する。

「ああ、この馬車は今回特別急行なんでな。馬の交換さ」

「馬の交換……?え、走ったまま交換するんですか!?」

「そうだ。ま、見てな。あれはあれで、なかなかの職人技だぞ」

 ディランに言われ、リョウジは再び腰を下ろし、窓からその光景を見つめる。

 商人は馬車に近づくと、まず客車と馬とを繋ぐ金具を外し、馬を放した。それでも動き続けているのは、浮揚馬車ならではの利点だろう。

 巧みに声をかけてその馬を並走させつつ、今度は自身が乗ってきた馬に金具を取り付け、それが終わると今まで馬車を引いていた馬に乗り換え、手を挙げて離れていく。驚くべきは、どちらの馬にも鞍はついておらず、ほぼ裸馬の状態でそれらを終えていたことだった。

「な、すげえだろ?俺もさすがに、裸馬は乗れねえぞ」

「私は鞍がついていたところで乗れませんけどね」

「んーまんま。おーま」

「うま、だよ。ところで……もしかして、ああやって馬を取り換えながら、ずっと走り続ける感じですか?」

「ああ、そうだ。昼夜問わず、このまま走り抜ける。その子が退屈しねえことを祈りながらな」

「……私も、飽きないよう全力で努力はしてみます」

 こうして、キャンピング浮揚馬車特別急行便は、ゼーストの町を目指して走り続けることとなった。下手な宿屋よりも居心地のいい馬車であり、またグルーガが持ち込んだ端材を使って色々と玩具を作り、リョウジが全力で相手をしたことも功を奏し、コウタも奇跡的にそこまで退屈することなく、予定通り三日後にはゼーストの町にたどり着くのだった。


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