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最強は私じゃなくて障害持ちの息子です  作者: Beo9
十六章 砦村防衛戦
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意外な再会

 西門に向かったリョウジは、門の前でゴブリンの大群を見つめていた。

 先頭にジェネラル三体、その後ろはすべてメイジという、実に思い切った編成だった。これでウォーリアなどが混じっていれば、危険度は相当に跳ね上がっただろう。

 とはいえ、危険なことには変わりない。愛用のフレイルとバックラーを構え、さてどうしたものかと考えている時だった。

「ソノ武器、ソノ格好……オ、オイ!」

 不意に、ジェネラルの一体がリョウジに声をかけてきた。

「アンタ、前ニ会ッタコトガナイカ!?」

「そう言われましても、ゴブリンの顔は見分けがつかないもので……」

「ダッタラ、前ニごぶりんノ子供ヲ助ケタコトハナイカ!?一年近ク前だ!」

 そう言われると、リョウジの脳裏にかつての光景が蘇ってきた。

 確かに、冒険者講習を終えて初めての依頼を受けたときに、川に流されたゴブリンの子供を助けたことがあった。それを知っているとなると、あの時の群れのゴブリンなのだろう。

「ああ!川に流されたゴブリンの子の話ですか!?」

「ソウダ!ヤッパリ、アンタダッタノカ!」

「まさか、こんなところで知った顔に会うとは思いませんでした。あ、あの子は元気ですか?」

「アア、母親モ元気ニヤッテル。アンタノオカゲダ」

 突然、親しげに話しだした二人を見て、他のゴブリンは驚いているようだった。

「あなたは、あの時のボスで合ってます?」

「イヤ、ソノ時にぼすノ命乞イシテタ方ダ。アイツハ、アノ後マトモニ戦エナクナッタカラ、移動ノ時ニ置イテキタ」

「そ、それは……謝りはしませんが、少し、悪いことをしたような気もしますね」

「オイ、オ前!何ヲ人間ト仲良クオ喋リシテヤガル!?」

 その時、別のジェネラルがリョウジと話すジェネラルを怒鳴りつけた。すると、リョウジを知るジェネラルは相手をまっすぐに見つめた。

「コノ男ハ、俺達ノ群レノ子供ヲ助ケテクレタ。俺達ガ諦メタ子供ヲ、ダ。誇リ高キごぶりんトシテ、俺ハコノ人トハ戦エナイ」

 彼の言葉に、群れ全体がざわめき始めた。どうやら、群れの子供を救うという行為は、ゴブリンにとって非常に大きな出来事だったらしく、既に半分以上が武器を下ろそうとしている。

「人間ニ脅カサレナイ、俺達ダケノ町ヲ作ルト言ッテイタノハ、ドコノドイツダ!?マシテ、アノ野郎ハオ前達ヲ追イ出シタ人間ナンダロウ!?」

「拾ッテモラッタ恩ハ覚エテイル。シカシ、群レノ子供ヲ救ッタアノ人ニ、刃ヲ向ケルワケニハイカナイ。アノ人トノ戦イハ、協力デキナイ」

 そこで一度言葉を切ると、ジェネラルは大声で叫んだ。

「俺達ノ群レニ告ゲル!俺達ノ子供ヲ救ッタ人ニ、刃ヲ向ケルコトハ許サナイ!コノ戦イ、俺達ハタダ見守レ!」

 その言葉で、半分のゴブリンが武器を下ろした。すると、これまで口を開かなかった三人目のジェネラルが口を開いた。

「……人間ハ嫌イダ。シカシ、他ノ群レデアロウトモ、群レノ子供ヲ救ッタ人間トアレバ、手ヲ出スワケニハイカナイ。ヨッテ俺達モ、見守ラセテモラウ」

 そして、さらに半分のゴブリンが武器を下ろした。残りはジェネラル一体にメイジ数十体程度であり、リョウジは内心ホッと息をついていた。

「ケッ!気マグレデ助ケタダケダロウガ!散々追イ散ラサレテ、仕返シスル気概モ無クナッタカヨ!?マアイイ、腰抜ケ共ガイナクタッテ、俺達ダケデ殺シテヤルヨ!」

 完全に回避はできなかったようで、残りのゴブリン達は一斉に戦闘態勢に入った。それを見て、リョウジも腰を落として戦闘に備える。

「一ツ、忠告ダ。アノ男ハ、俺達ノ前ノぼすヲ、素手デ殴リ倒シタゾ」

「ダカラ何ダッテンダ?門ト一緒ニ燃ヤシチマエ!」

 その言葉に応えるように、メイジが一斉に詠唱を開始した。リョウジは慌てず、門に手を添えてバックラーで顔を守る。

 直後、大量の火球が一斉に襲い掛かってきた。それはリョウジとその後ろの門に次々に着弾するが、当たった端からすべて消失してしまう。

「ナ、何ダアリャ!?」

「燃やしたいなら、私を倒してからじゃないと無理ですよ。守り方なんて、いくらでもやりようはありますから」

「人間メ……!ダッタラ、オ望ミ通リブッ殺シテヤル!メイジ共、援護シロ!」

 ジェネラルは剣を抜き、リョウジに向かって走る。リョウジも合わせて走ると見せかけ、懐から毒瓶を取り出した。

「これでもどうぞ!」

 足を振り抜き、ジェネラルに瓶を蹴り込む。しかしジェネラルは剣を使って軌道を逸らし、それをかわした。

「ソンナ物、当タルカ!」

「逸らすのはすごいな。思ったより強いのかも……」

 咄嗟に、リョウジは防御重視の戦いに切り替えた。ジェネラルの剣を下がってかわし、続く連撃をバックラーで受け流す。相手の嫌そうな箇所にフレイルを振ると、ジェネラルは最小限の動きでそれをかわす。

 その合間にも、次々にメイジの魔法が襲い掛かる。炎は効かないと見たのか、氷の矢や石礫など、様々な魔法が襲い掛かるが、リョウジはそれらの大半をバックラーで受けて見せる。

「確カニ、多少ハヤルヨウダナ!」

「こんな攻撃もありますよ!」

 ジェネラルが剣を振り上げた瞬間、そこにフレイルの鎖が絡みつく。しかし、ジェネラルは不敵に笑った。

「コンナ程度……ハ?」

 逆に相手の武器を奪ってやろうと思った瞬間、ジェネラルの体から力が抜けた。

 そして、危険を感じ、武器から手を離した瞬間だった。

 リョウジの動きは、防御だけなら一流に近いものがあった。そして、長い異世界生活で、攻撃も少しは見られるものになった。

 だからこそ、まさか有利になった相手まで武器を捨てるとは想像もしておらず、延ばされた手が自分の体を掴むことも全くの想定外だった。

「ふんっ!」

「グボァ!?」

 全体重を乗せた膝蹴りが、ジェネラルのみぞおちに叩き込まれた。普段と違って腹筋に全く力が入らず、ジェネラルはほぼ無防備でそれを食らってしまった。

 胃の内容物を撒き散らしながら地面に蹲ると、その頭を上げさせるように蹴りが入り、のけぞってむき出しになった腹に再び蹴りが叩きこまれた。

「ゴボォ!?グエッ……オエエェェェ!」

「オ、オイ!ボスヲ助ケルゾ!」

 ジェネラルの危機に慌てたメイジ達が、一斉に魔法を詠唱する。それを見て、リョウジは勝利を確信した。

「魔法が全く効かない、なんて言ってませんからね……そうなりますよねえ」

 魔法がこちらに飛ぶ瞬間、リョウジはジェネラルを抱え上げる。そして着弾の瞬間、そこにジェネラルを放り投げた。

「ギャアアアアァァァ!!!」

「ぼすうううぅぅぅ!?」

 吹き飛ばされたジェネラルを受け止めてやると、炎や体に食い込んでいた氷などは一斉に消失する。それでも、十分な致命傷を負ったジェネラルを地面に捨て、リョウジはフレイルを拾い上げ、メイジ達に突き付けた。

「さて、あなた達のボスは今にも死にそうですが、どうします?まだ戦いますか?それとも、降参しますか?」

 笑みすら浮かべてそう尋ねるリョウジに、メイジ達は震え上がった。

「ちなみに降参するなら、命が助かる程度のポーションは差し上げますが?」

「コ、降参シマス!ダカラ、ぼすヲ助ケテクダサイ!!」

 それを聞くと、リョウジはジェネラルにポーションをぶっかけ、傷が消えたのを見るとそれをゴブリン達の方へ放り投げる。

「では、二度とこの村に近づかないでくださいね。次はありませんよ」

 次に、リョウジは顔見知りのジェネラルの方へ顔を向けた。

「すみません、他の門を襲ってる仲間も止めてもらっていいですか?特に東門は、下手すると全滅もあり得ますので」

「ワカッタ……シカシ、ヤッパリアンタハ強イナ。二度モ素手デ仕留メルナンテ」

「結構ギリギリでしたけどね。あ、ところでこの村を襲おうとしてた理由っていうのは、やっぱり静かに暮らしたいからなんですか?」

 リョウジの質問に、ジェネラルは頷いた。

「ドコニ行ッテモ、人間ニ襲ワレルカラナ……ダカラ、コノ砦ミタイナ村ナラ、人間ニ襲ワレテモ防ゲルカト思ッタンダ」

「そうですか……」

 考えてみれば、魔物とは言われているが、知性も社会性もある生き物である。異世界人であるリョウジは、ドラゴンやレイスなどと同じく、ゴブリンに対して忌避感などは持ち合わせていなかった。

「皆さん、何かできることはありますか?畑仕事とか鍛冶仕事とか」

「ソレハ、マア、デキルガ?」

 そしてリョウジは、相変わらずこの世界の常識も持ち合わせてはいなかった。

「であれば、あなた達と会った場所……その近くにトリアの町っていう町があるんですが、そこで人間と一緒に暮らしてみませんか?」

「ハア!?」

「職人であれば、食いっぱぐれもなさそうですしね。そもそも、こうして話もできるんですから、話せば一緒に生活することだって、できないってことはないと思いますよ。もし、やってみるつもりであれば、紹介状とか書きますが」

「チョ、チョット待ッテクレ……他ノ奴トモ相談スル……」

「わかりました。では、ひとまず戦いの終了を。その上で、今後のことを話し合いましょう」

 こうして、東門の戦いも終わりを告げ、同時にジェネラルが撃退されたことにより、ゴブリンの敗北が決まった。

 ここに、砦村史上最大の戦いは人間側の勝利によって幕を下ろすのだった。

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