353:時代人と転生者(転移者)Ⅱ
話は少し遡ります。
「悪いルシオン。待たせたか?」
「いいやちょうどいい時間だとも」
俺とレイレイは、取り敢えず一応クリア扱いになったと思われるサブシナリオを終えて、その足で城に戻ってきた。少し前にルシオンから呼び出しがあり、ちょうど空いたのですぐに合流した訳だ。
にしてもあのサブシナリオ、マジでクリア時に何も起こらんかったな。まぁそこは後で運営に問い合わせよう。
それはさておき、呼び出しの内容は以前流れてしまった転生者との面会だ。しかも今回それを強く願ったのはなんでも転生者の一人だという。あの剣災を通してアルベルト皇帝に申し出があり、それをルシオンが承諾したということだ。
しかも俺を名指しで会いたいと言って来たそうだ。だから俺がここにいるわけなんだけど。
「しかしアール君は自由だよね。こんな一大イベントの最中でもサブシナリオの消化してたんだろ?」
「最初はやる気無かったんだけど期間限定っぽかったからつい。おかげでスゲェ事あったぜ?」
「頭の上の子龍がシナリオの関係者だよね。チーザーさんが見たら食いつきそうだ」
笑うルシオンに同意するように俺も思わず笑みがこぼれた。チーザーってかなりのドラゴン好きなんだよな。だからチーザー自身も四体の龍を従えている。ネーミングセンスは息をしてないけど本人は全力で楽しそうだ。
「それよりモヤシ。アール名指しした転生者ってどいつ?」
「モヤシって・・・ひどいなぁレイレイさん。あの子だよ。イッセイ・スギナミって名乗った男の子がいただろう?」
「・・・あぁ、あの子か。言っちゃ悪いけど強そうには見えなかった子だよね」
「そうその子だよ。なんかアール君にすごく興味があるみたいなんだよ」
あぁ、なんか身に覚えがあることしかないな。城内でマー坊とガチバトルやってたしその時に大技何発も使ったし興味津々になった感じか。
「ま、そういう訳だからアール君。頼むよ」
「あいよ。所でルシオン、レイレイ。お前らから見て転生者ってどんな奴らんだ?」
実はあまり知らないんだよな。ニコニーコ達に任せっきりで転生者云々に関しては他のプレイヤーと大した変わらない情報しか知らないのだ。
「それなんだけどね。おっと、着いたよ。話は彼を交えて話そうか」
ルシオンの視線の先にはふたりの兵士が守る扉がある。兵士たちはこちらに気づくと会釈してくれたので会釈で返す。
「時代人ルシオン。同じく時代人のレイレイさんと、五代目剣聖アールさんを連れてきました。中で待つ転生者と合わせてもらえますか?」
そう言ってルシオンが提示したのはオネストカード。見たことのない色だったけど、おそらくこの為にルシオンが偉い人からもらった特別なオネストカードなんだろう。
「確認した。では後ろの二人も念の為に身分証明ができるものを提示してもらえるますか?」
「じゃぁはい。アタシのオネストカード」
「俺は・・・これでいいか?」
背負っていた『天籟虚真刀:ズイカク』を兵士に渡す。暴れないでくれよ『ズイカク』『戯』?
受け取った兵士は鞘から刃を抜き紋様などをマジマジと見る。すると隣でレイレイのカードを確認し終えたもうひとりが首を突っ込むようにして、同じく『ズイカク』を観察する。
完全に展覧会で業物見に来たお客様感出てる。見ること数十秒。満足したのか兵士は『スイカク』を返してくれた。
「ご協力ありがとうございます。ではどうぞ。中でイッセイ・スギナミさんと剣災ジルヴァさんがお待ちです」
「アールやっぱり特別待遇じゃん・・・武器見せるだけでいいとかかっこよすぎるぅ・・・」
「あはは・・・アール君やっぱりすごいね」
「伊達に五代目剣聖名乗ってないからな」
目立つしな『天籟虚真刀:ズイカク』。これの偽物作るのは簡単なことじゃないだろうさ。しかも初日に『天桜』の演武も見せたし印象は強いと思う。
《《見世物になる気持ちがわかったわ》》
《《私は嫌じゃなかったですよ〜?》》
――――◇――――
部屋はテーブルと椅子がちょうど人数分あった。中に入ると待っていた二人が椅子から立ち上がりイッセイはお辞儀、ジルヴァは軽く頭を下げてくれた。
「やぁイッセイ君。それとジルヴァさん」
「こ・・・こんにちはルシオンさん! 本日はお日柄もよく・・・」
「大丈夫ですよイッセイ。すみません。彼、緊張してるみたいです」
「気にしないでくださいジルヴァさん。確かにアール君をこうして目の前にしたら緊張するよね?」
「おいモヤシ。どういう意味だこら」
「そのままの意味だよ? 前回君色々あったじゃないか」
「確かに。アール、分が悪いよ? ゴリラ相手とは言えすごいの見せちゃってたし。マリアーデさんはそこのジルヴァさんに殺意ぶつけてたし」
くっ、俺に味方がいねぇ。そう言われたら俺とマリアーデがいろいろやったから流れたわけだし何も言えねぇ。
「・・・」
「えっと・・・なんだ。イッセイって言ったよな? 怯えないでいいぞ?」
ぼーっとしているイッセイに出来るだけ怖くないように話しかける。前科あるから気を付けなければ。
「え、いえそういうのじゃなくて! なんかこう・・・思ってたよりも良い人みたいだなぁって思って」
「え? そう? それは良かった」
なんかわかんないけど第一印象が良かったみたいだ。けどなんで? 普通悪いと思うんだけどな。今の話の流れ的に。
「それじゃぁ簡単なお茶会を始めようか。僕が用意したミルフィーユしかないけどいいかい?」
「じゃぁアタシ紅茶出すよ」
こうして、俺たち五人の簡単な交流会が始まったのだ。
――――◇――――
とは言っても難しい話じゃない。今日まで王都で何をしていたかの些細な話だ。
彼ら転生者は前世の記憶を思い出したとき、今生の記憶をかわりに失ったらしい。それがきっかけで王国は彼らのことを知り、保護と言う名目で集めたそうだ。
保護されてからは特別ひどい扱いは受けたりしてないそうだが、戦うか、国のために働くことになったそうだ。剣災ジルヴァとはその時に出会ったそうで、彼女は出会ったばかりの彼ら転生者を守ると約束してくれたらしい。
「それからジルヴァさんに僕も他の皆も良くしてもらったんです。だからジルヴァさんは僕らにとっては恩人なんです」
「そんなに持ち上げないでくださいイッセイ。私は自分がしたいことをしただけです。自己満足ですよ」
「でもそれをするのって結構勇気いるんじゃないの? アタシは国相手にやり取りしたことあんまりないけど、自分の意見通すのって相当大変よ?」
「サラッと経験済なこと言うんだねレイレイさん」
「こういう時に肩書きが便利なんですよ。五代目様にとっては侮辱以外の何者でもないでしょうけど、使えるのならば使うのが一番ですので」
「別に気にしてないから気にしないでくれ。と言うかそこまでえっと『七剣聖』だっけ? 無下にしなくてもいいんだぞ?」
「五代目様にとってはそうでも四代目様にとっては完全に侮辱でしょうし、私自身があまりこの『七剣聖』と言う名称が好きではないので」
「え? そうなんですか?」
おっと、どうやらイッセイも知らなかったようだ。そりゃそうだ。王国にとってはすごい肩書きである『七剣聖』。そう呼ばれている本人が『七剣聖』が好きじゃないっていう訳無いと思うだろうし。
「使えるものは使うので素直に受け取っていますが、使えなかったら『剣災』の名など捨てて捨てますよ」
「「「えぇ・・・」」」
あ、ジルヴァになんとなく感じていた既視感がわかった。これあの男だ。使えないなら切り捨てる。使える、あるいは自分にとって使える、利用できるのならば骨の髄まで喰らい尽くす感じのこの対応。
「なぁジルヴァ。ひとついいだろうか?」
「・・・え? 今、私の名を呼んで頂けたんですか?」
「ん? そうだが・・・何か発音が可笑しかっただろうか?」
地方訛り的な感じがあるんだろうか? 普通に呼んだつもりだったんだが。
「い・・・いえそうではないのです。だた・・・もう一度、もう一度呼んでいただけますか?」
「ジルヴァ?」
「・・・はい」
「???」
なんだ? この感じ。場の空気が可笑しいんだが? レイレイ背中抓らないで。俺も何が起きてるのかわからないんだから。
「すみません。質問でしたね。なんでしょうか?」
変な感じになったけど、取り敢えず聞きたいことを聞くとしよう。
「ジルヴァ、君にはアヴァロアの血が流れていたりしないか?」
衝撃事実の予感。
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