341:闇龍の眷属 Ⅰ
クラン戦開始
「なるほど。簡単に言えば闇龍の怨念をぶっ殺せばいいわけだ」
「その通りだ。だが、簡単なことではない。待ち受ける相手はどいつも強敵だ。そして現状闇龍は滅ぼすことができず、封印を施すしか方法がない。それでも共に戦ってくれるだろうか?」
悔しそうにしているのが分かる。倒したはずの相手が実体のない怨念で、しかも蘇ったのに、自分だけでは再度封印もできない。英雄として情けないときっと思ってるんだろう。
「任せてくれ。そのために俺たちはここに来た。クリムゾンGX、俺たちと共に戦おう!」
「ありがとうアール! 俺たちで闇龍の怨念を今度こそ倒すんだ!」
「応っ!!」
「なんか、私達空気に着いてけてないね」
「アール昔から特撮好きだしテンション上がってるんだよ」
「見た目完全にブラックだしな」
「特撮かぁ・・・僕も今度見てみようかな?」
――――◇――――
本来の『黒の巨塔』は百階層まであり、訪れた戦士たちが強さを示すことで次の階層へと案内される仕様だそうだ。しかし闇龍の怨念は活性化した影響で、それが曖昧になり、合計五階層になってしまったのだという。
しかもGX以外の仲間だというモンスター達は活性化した怨念に囚われ、先程まで操り人形だったらしい。なんでも俺がその呪縛から解き放ったらしく、今は怨念を封印するために頑張ってくれているそうだ。
ミノタウロスと女体スライムとでっかいゴーレム、あと影みたいなやつらしいんだけど、倒した覚えがないんだよな。そう言うとマリアーデとルークが『全部倒してた』と教えてくれた。
あの時余裕なかったし覚えてなくても仕方ないといえば仕方ないか。まぁ倒してたのならそれでいいや。
「この先に闇龍が、そしてその眷属がいる場所だ。覚悟はいいか?」
「出来てるよ」
俺に呼応するようにみんながそれぞれ返事を返す。そしてGXが先陣を切り、後を追うように俺たちは光の扉の先へと向かった。
視界が光に包まれ、やがてゆっくりと収まっていく。扉の先は限りなく闇に近い空間。よく見れば地形は見えるけど、そうしないと前後左右に何があるかわからない。そんな空間だった。
「すご。なにこれ」
隣にいたルークが驚き声を上げていた。それを見て俺も驚いた。近いは見えないが、ルークはじめとするみんなの姿ははっきりと見えている。装備のシワまでしっかりと見える。当然自分の格好もはっきりと見えるし、この暗い空間にも関わらず、藍色のローブまでちゃんと見えている。
「むっ!! この感覚!! ソウルハート!! 戦っているのか!!」
声を上げるのはクリムゾンGX。仲間が闇龍と戦っているらしい。
「なに!? だが君たちを犠牲にしたくはない!! 何とかする!! もう少し頑張るんだ!! ソウルハート!!」
状況はかなり悪いみたいだ。仲間の危機、助けに行かないヒーローはいない。
「こっちは任せてくれGX。アンタは仲間を助けに行くんだ」
「ありがとう皆!! 闇龍はこの先にいる! 俺も仲間たちを助けてすぐに合流する!! 頼んだぞ!! トァ!!」
凄いジャンプで仲間がいるらしき空間に飛んでいった。すげぇよらいdじゃなくてクリムゾンGX。
「俺たちも行こう。闇龍討伐だ」
「その前に陣形だけどアールは今回後ろで支援、レイレイマー坊犬鳥が前衛、ルークとマリアーデさんは私とアールの直衛を、ギンとコヨミは状況に応じて動いて」
「異議なしだ。アールも今回は後ろで支援頼むぜ? できないとは言わんよな?」
「言わねぇよ。全力で支援してやるから安心して戦いな。ギルファーも頼むぜ?」
『心得た』
俺が倒れた時、なんかギルファーが珍しく焦っていたらしい。落ち着かないようにそわそわと。だからだろう。こんなふうに素直に言うことを聞いてくれるのだ。
「我が天がn「ストップだ愛弟子」マリアーデ?」
ともかく周囲の確認と敵までの距離を確認しようと能力を発動しようとしたらマリアーデに止められた。
「支援といっただろう。無用な体力を使うでない」
「でも確認するのが支援だろ?」
「ごめんなさいマリアーデ。アタシでもこの空間はよくわからないからアールにお願いしたいんだけど」
「私もお手上げ。本当はGXに案内してもらいたかったけど、アールが行かせてあげちゃったし」
レイレイでも厳しいならやっぱり俺がやるのが一番だろ。案内人送り出したの俺なんだし。
「だから余がやると言っているのだ。汲み取らんか愛弟子」
「マリアーデがやるってどうやt・・・あ」
忘れてた。そうだマリアーデには『結刀:ショウカク』があったんだ。
「導きの縁を示せ『結刀:ショウカク』」
キーワードと共に、マリアーデが持つ刀『結刀:ショウカク』から一本の光が何も見えない空間の先へと伸びていった。
リーク達が皆一体何が起きているかわからず、静まり返ってい中、口を開いたのはマリアーデだった。
「余の愛刀『結刀:ショウカク』は余が探し求める者へ導く力がある。闇龍とは過去に一度愛弟子と共に殺りあっている。迷子にはならぬさ」
失いかけた友情を取り戻すために、戦い歩み続けたマリアーデの願いが力に変わった武器が『結刀:ショウカク』。その能力をあっさりとバラしたのはリークたちへの信頼の証だろう。
ズイカクの『虚真』は俺の視覚でしか見えないのに対し、ショウカクは見えていなくても、所持者が相手のことさえ知っていれば、誰でもどこにいるか目で分かるようになる能力。
逆に言えばマリアーデの戦闘能力は能力なし素の状態でこれなのだ。能力発動なしでこれほどの強さを持つとかやばいだろ? この人俺の師匠なんだぜ?
――――◇――――
歩き始めて10分ほど、ここまで来ると、肌で存在を感じ取れた。増大する悪意の塊、ねっとりとした気持ち悪い感覚。間違いなく敵の近くまで来た。
「近いね」
「だな」
レイレイとマー坊にもわかったようだ。いつきかけてきても対処できるように臨戦態勢だ。
「愛弟子、気づいているか?」
「あぁ、闇龍とは別に何かいる」
俺の言葉と共に全員が武器を抜き構えた。お互い背中合わせで全方位に意識を向けていく。するとどうだろう。先程までは聞こえなかった巨大な何かが蠢く音が聞こえるようになった。
グチョり、ビチャり。粘着性の何かが動く、しかも軟体系、つまり尻尾とかそういう長いもの系が動く、そんな音だ。
「・・・アールごめん。私これダメなやつぅぅ・・・」
「チッ、女狐本当に使えないっ!」
苦手なものは蛇。あと長い生き物。リークがその気配を察してか、先程とは一転し、俺に顔を埋めてきた。見ない聞かない聞きたくないのスタンスである。
『KYOOOOOOOOOO!!』
「イヤァァァ!!!?!?!!?タコォォォ!?!?!?!?!」
そこにいたモンスターの鳴き声と共に、俺たちの視界が開けた。暗闇だった空間は隠れる場所一つ無い巨大な広場に変わり、そこにいたのは・・・
――――◇――――
闇龍の眷属『オクタアムスデキム』出現
――――◇――――
それは、タコと言うには余りにもおぞましい姿だった。推定30本はある極太の足。足には吸盤があり、吸盤一つ一つの中央には絶対にヤバイ色に輝く針。頭を八つ無理やり接合したかのような見るに堪えない気色悪さがあるにも関わらず、さらに八つの頭それぞれの頂点にはギョロリと動く目玉がついていた。
はっきり言おう。出るゲームを間違えてるぞコイツ。クトゥルフ系に出てきそうなおぞましさが凄い。動く足は粘着性のヌメヌメした液体が付着しており、動きからしてヌメヌメしている。
「アールごめんやっぱり前に出て私嫌だあれは嫌だ絶対嫌だ無理無理無理嫌だ無理無理ッッ!!!」
「戦えるけどアレは生理的に無理!!!!」
「・・・ふぇぇ」
「・・・」
リークレイレイギンコヨミの順で俺の後ろに隠れた女性陣である。女性からすれば”コレ”は嫌だよな。
「俺も正直触れたくねぇ・・!!!」
「臭ァァ!!?!!!」
「おいこら男子! お前らまで何泣き言言ってやがる!!」
「絶対あれだろコイツ!! 薄い本みたいな展開になるか、触れた瞬間溶けるやつだろ!?」
「ぅえぇっ・・・臭いきつい・・・オゲェェ・・・」
確かに臭いはきついけど磯臭さを五十倍くらいした感じだ。ヘドロの臭いよりはマシだろ。かなり独特ではあるけど。
「おいギルファー。まさかお前まで戦えないとか言わないよな?」
『馬鹿を言うな。焼けば食えそうだとしか考えてない』
『俺ッチも平気ッスよ』
『ヨヨヨ!』
「当然余も動けるぞ愛弟子」
「四人動ければ問題ないか。じゃぁリークたちはとりあえず下がってな」
戦闘前にリタイア寸前の俺を除くプレイヤー組と従者コンビにそう指示を出し、俺とマリアーデは前に出る。ギルファーとジェクスも本来の姿に戻り、ディアも俺と融合、さらに分身を生み出し全員の身体へと付着させた。
「え? いやアール? 女狐はこうなってるけどアタシたちは動けるよ? 生理的には嫌だけど」
「なら戦力温存ってことで」
ぶっちゃけ相手の事がわからない状態なら、総力叩き込む前に、先駆で情報炙りだしたい。
『KYOOOO!!!!』
さぁ、開戦だ。
しかし初手SAN値チェック失敗。
四人での戦闘になりました。この四人でも過剰戦力なんだよなぁ・・・




