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336:黒の巨塔 Ⅰ

用意完了。いざ黒の巨塔へ



「・・・汝ら力を持つか?」



「あーはいはいそうですよー」



長期戦の準備を済ませ、レイレイに案内されるようにやってきたのはエーテリアの町外れ。巨塔というからもっとでかい建造物を想像してたんだが、やってきたのは町外れの小さな小屋。



小屋に着くとレイレイは家主の挨拶することなく扉を開けた。中にいたのはローブの男性その第一声がこれだった。


「黒の巨塔に行きたいの。ここにいる全員なんだけど」



「力を示せ」



「プレイヤー五人分でいい? それとも従者同行者含めて全員?」



「汝らの力を示せ」



「はいはい。どーぞ」



え? 金払うの? レイレイが男に金を渡す。すると男の手元から金が光の粒子となって消えていった。これ俺の借金に加算されるのかな? 一応確認しとこう・・・あ、はいばっちり加算されてますね。畜生。11万Dって割とデカイ金額だよトホホ・・・



「力は示された。行くがいい。世界を滅ぼし、世界を救う者たちよ。その先にあるものを己が目で見定めよ」



力って・・・金かよ。いいのかそれで。いや力を示すとなればこれほどわかりやすい示し方はないけども。いいのかそれで。



そう思っていると、男の右に光の門が出現した。男の視線は門の先を見続け、そのまま動かなくなった。つまりはよ行けってことか。





――――◇――――




門を潜るとそこは異世界だった。なんてな? 一面に広がる広大な草原と、そこに存在感を力強く示す巨大な塔があった。これが黒の巨塔か。デカイな。



「うわぁ・・・でっか・・・ねぇ師匠? これ絶対スカイツリーより大きいよね? 先が見えないし」



「だなぁ・・・マジでデカイ」



空の向こう側、宇宙にまで届くんじゃないかってほど高くそびえ立つその塔は、強者のみを求めるといた感じるほどにデカイ。こんなデカイ建造物よく造れたよな。



「なぁレイレイ、この塔ってどれくら・・・あれ? どこいった?」



「えっ!? いない!? と言うか僕ら以外誰もいないじゃん!!?」



「余はいるぞ?」



『ヨヨヨ!(特別翻訳:僕もいるよー!)』



それは知ってる。けどこの三人と一匹以外誰もいないんだ。三人はいいとしてもギン達が心配になりウィンドウでステータスを確認する。よかった。特にHPに異常はないみたいだが・・・初めて見る状態ではある。『待機』?



「ルーク、状態『待機』って何か知ってるか?」



「待機? 待機待機・・・・・・あっ! 確かバカ姉が言ってた! 従者が眠っている状態・・・だったと思う」



眠っている? この状況で急に寝たっていうのか? それこそおかしい。一応ヘルプで探してみるが、特に求めている項目はない。あぁクソ、こんなことならもう少し黒の巨塔のこと聞いとけばよかった。



「愛弟子、それに小僧。考えても仕方がない。出来ることから始めようではないか」



「だな。ここで考えてても埒があかねぇ」



「相変わらず切り替え早っ。けど賛成。どうせ僕も師匠についてくくらいしか出来ることないし」



とりあえず訳がわからない状況ではあるが、やることは決まった。というよりこれしかない。ここに来ることでこんな状況になったんなら、ここに来た目的から果たしてしまおう。



俺たち三人は黒の巨塔へと足を踏み入れた。





――――◇――――





「うわーうみだー」



「ウミダナー」



「海であるな」



さざ波の音が優しく響く浜辺だった。おっかしいなぁ? 俺たちは塔の中に入ったはずなんだけど? うん。切り替えよう。ここはそう言う所なんだろう。環境にも対応してみせろってことか。



「む? 愛弟子、小僧。どうやら入口が消えたようだ」



振り返るときたはずの場所には何もなかった。先に続く浜辺があるだけで、それ以外の何もなくなっていた。不自然に残った足跡の存在が、俺たちが来た場所だけを示していた。



「一応視とくか・・・我が天眼『天籟虚真刀:ズイカク』」



《《ちょっと!! アタシのこと便利ツールみたいに使うんじゃないわよ!! 壊すわよ!!?》》



スマンスマン。でもこういう時に頼りになるのが今のズイカクなんだ。頼らせて欲しい。



・・・黙ったな。やっぱり怒ってたし許されてない? それとも照れた?



《《呆れたのよ主! 好きにしなさいよバカ!》》



《《気にしなくていいですよ〜私たちは主さんの武器なんですから〜》》



ありがとう。ボソッと『仕方ないんだから』と聞こえたけど、聞こえなかったことにするよ。





――――◇――――

 ばっちりきこえてるじゃないのよ ば か ぁ!

『天籟虚真刀:ズイカク』の特殊能力『虚真』発動。

――――◇――――





変なルビが混じっていた気がするけど無事に発動。俺の視界に別の次元での捉え方が視える。が、残念ながらもうその場には何もなく、本当に海岸だけだった。



けど、ここから少し先に何か力のような存在を感じ視ることができた。あっちに行けば何かあるだろう。



「うわ師匠どうした!? なんか眼が青いよ!!?」



「青というより藍色だな」



「そうなのか? 自分じゃよくわからんが・・・」



《《私達は『アイちゃん』なので能力発動中は目が藍色になるようになりました〜綺麗ですから見てると癒されませんか〜?》》



《《バカね戯ちゃん! 本人が鏡もなく自分の目の色なんて見えるわけ無いでしょ?》》



その通り、俺は見えないからわからないです。



《《はわわ〜そうでした〜。でも見てる人はきっと綺麗だって言ってくれますよ〜?》》



「え? 師匠大丈夫?」



「心配ない。『ズイカク』の新しい能力発動のエフェクトだよ。どう見える?」



「うーん・・・なんか見慣れないから不思議な感じだけど、まぁゲームだしこういうこともあるよね?」



残念綺麗って言葉は出てこなかったみたいだよ『戯ちゃん』。けどこの呼び方ありだな。黒は今後『ズイカク』で、『戯』は『戯ちゃん』で行こう。なんかしっくりきた。



その後俺が見えたものを二人に話、とりあえず存在を感じた方向へと向かって歩くことにした。



時間にして数分後、塔にきて初めての戦闘が発生することになった。が。出てきた相手がまさかのモンスターだった。



「ブレイドキャンサー?」



そいつは忘れもしないギンが俺のことを師匠と呼び始めるキッカケとなった運命の相手。イワガニことガンドロックキャンサーの突然変異個体『ブレイドキャンサー』。素早い動きと凄まじい切れ味を持つ両腕の鋸のような鋏が武器の超絶硬いモンスター。



「えっ!? ちょ何!? 何あのカニ!? 怖っ!!?」



そう言えばルークは見たことなかったっけブレイドキャンサー。それならビックリするか。見た目は怖いし。人食い蟹って言われたら信じるくらいには。



『ギギギィ!!』



あ、こっちに気づいた。そんで大ジャンプしたなうん。



「ルーク合せてやるからタイミング寄越せ」



「ちょっ!!? えと・・はい!! 行けるよ師匠!!」



「余もやろう。アレを使うのであろう?」



にやりと笑みを浮かべて返答すると、マリアーデも鞘から刀を抜いた。俺も既に抜刀状態。ルークを中心に、俺とマリアーデが左右に陣取る。



上に跳んだブレイドキャンサーはその両腕の鋏を俺たちに向けながら急降下。まさに敵機直上急降下ってやつだ。



「「「超越天匠流剣術『神斬雲雀』!!」」」



俺たちの間合いに入った瞬間。俺とマリアーデは左右の鋏を、ルークは眼と眼の間を叩き切るように剣を振るう。撃鉄音が鳴り響き、最初の戦いは幕を開けることになった。



「『都燕』応用!!」



『ズイカク』の向きを滑らせるように上下を入れ替え、そのまま腕をへし折るように力を込めて振り切った。ゴキュリと嫌な音を響かせながら、せん断したブレイドキャンサーの腕が宙を舞う。



「多少硬いがその程度だな。ふん!!」



マリアーデはそのまま刃を押し込み、腕を両断した。受け止めてからそのまま切り落としたか。それもアリだったか。



「おも・・・っ!!」



「「『星波ピスケス』」」



吹き飛ばせなかったのは本体を狙ったルークのみ。その重さで俺たち諸共押しつぶそうとしていたので、左右から同時に『星波ピスケス』による蹴りを叩き込んだ。



硬いはずの殻にくっきりと二つの足跡を残し、ブレイドキャンサーは元いた場所まで吹き飛んでいく。



「なんだ愛弟子。小僧にはまだ『月光流』は教えていないのか?」



「まぁな。それにルークは月光流教えるよりも『天匠流』極めさせたほうがいいと思ったんだ」



「そうか。愛弟子が決めたのならば余は何も言わぬ。しかし小僧。余の愛弟子の弟子を名乗るなら一撃で殻に傷くらい着けてみせよ」



「ぅぅぅ・・・努力します・・・」



「努力するのは当然だ。余は着けよと言ったのだ。出来ぬのなら、愛弟子が目をつけた小僧はその程度だったと余は見限るぞ?」



「・・・師匠、あいつ僕が倒すから見てて」



「・・・はいよ。危なくなったら手出しするからな?」



「しないくていいよバカ師匠。あいつ倒せないなら僕はこの先ついていっても邪魔みたいだし」



ムスっとしながらマリアーデに視線を送るルーク。対するマリアーデは特に気にする様子もなく、さも当然とルークを見返す。





――――◇――――





うん。今のはムカついた! バカ師匠の師匠だけどムカついた!! 僕のことだけじゃなくてバカ師匠のことも馬鹿にしたんだあの人!!



師匠は多分気にしないけど僕は嫌だ! 足手纏いなのも、弱いのも自覚してる! 師匠たちは僕よりずっと強いのもわかってる!!



でも、一緒に行くって決めたんだ! やっと僕のことを家族以外でありのまま見てくれる人なんだ!! 僕の・・・もうひとりの家族みたいな人なんだ!!



だから絶対今の発言取り消させてやる!! 師匠のことを悪く言ったのを絶対に!!



『ギギギィィ!!』



「うっさい蟹!! 僕は今ムカついてるんだ!! 絶対にお前のこと倒して焼き蟹にして食ってやる!!!」





――――◇――――





「全く・・・相変わらず挑発が好きねぇ師匠?」



「はて? 何のことやら? 余は思ったことを言ったまでだぞ?」



とかいいつつ、顔がにやけてんだよ。ああ言えばルークが怒るって予想して言葉を選んだな?



「あの小僧は自分のことを過小評価しすぎなのだ。このままそれが続くのならば邪魔にしかなるまい?」



「まぁその通りだよ。近々矯正しようとは思ってたけど、まさか師匠がそこに手をかけてくるとは思わんかったよ」



俺たちの視線の先では、両腕を失いながらも、硬い身体と素早い体当たりで戦うブレイドキャンサー、そしてギリギリではあるが必死に回避しながら一撃一撃確実に叩き込んでいくルークがいた。



動きだけでも、以前戦ったブレイドキャンサーとは比較にならないほど強化されている。前ならジャンプ攻撃で開幕早々終わらせようとはしなかったし、ひとつの動きだけ見ても全体的に早い。



それに失った腕の止血のようなことも済ませている。いや、ある意味再生というべきだろうか?断面が塞がり、腕だけならちょこちょこ動くだけの可愛らしい蟹だ。が、動きと凶暴性は可愛いとは真逆だけどな。



このブレイドキャンサーがあの時出現していたら、当時の俺ならきっと苦戦していただろう。今? 苦戦どころか戦いにすらならねぇよ。ぶった切って切り落として削ぎ落として終わりだ。



そんな相手に対して、ルークはかなり善戦している。腕がないとは言ってもブレイドキャンサーだ。弱い相手じゃない。



あと今更気づいたがこの塔、不思議ダンジョン形式らしく、全ステータスがレベル1に戻されてる。当然アイテムやレベルアップで入手した『AS』『UtS』は無効化されている。



機能してるのは戦闘ではない別の経験で入手したスキルとジョブスキル、装備によるスキルだ。俺としてはそれだけあれば十分なんだが、エキスパートモードのルークにとっては全ステータスリセットは相当なハンデだろう。



しかもこれがここでの初戦闘。レベルは当然1。最弱の状態だ。その状態で今現在こうしてルークは一人でブレイドキャンサーを相手に立ち回れている。



わかりやすく言えばマスタークラスの超クソモンス『ナ〇・テ〇カ〇リ』に武器は片手剣、全身は初期装備で挑み、戦闘開始から一度も倒れていない状況だ。ナ〇は言い過ぎか? でも危険度70は超えていると思うからあんまり変わらんだろう。



これを聞いて『弱い』と言えるプレイヤーは少ないだろう。いるとしたらプロハンの皆様くらいだと思う。しらんけど。



「ふふ、自身ではなく、自らの師を馬鹿にされて怒りを示す弟子か・・・とても見覚えが有るぞ愛弟子」



「そうかよ師匠、そりゃきっと類は友を呼ぶって事の実証になるな」



「死ねぇクズ蟹ィィ!! 死んで師匠を馬鹿にしたあの女に謝らせてやるんだァァ!!!」



「カカッ、口の悪さも似ているな。うむ! 良い小僧を見つけたな愛弟子」



「俺あそこまで言ってたか?」



「『俺の師匠の腕を切った代金はその命で払ってもらう』とは言っていたぞ? 確かあれは」



「いやいい、覚えてるよ。師匠の腕ぶった切られて馬鹿にされた時のことだったろ?」



忘れるかよ。あの時ほどもっと強ければと思ったことはなかったし。だからその後の修行はより厳しく、より深く踏み込んだんだし。



一発クリア出来たらかっこよかったけど、あいにくその前に何度か死んだんだよな。その上であの腕が切られる運命(ルート)は変えられなかったのは本当に辛すぎた。



「と言うか師匠。今更だけどあの時俺が多少傷を負うのを見逃してたら腕斬られなかっただろ」



「阿呆めが。愛弟子が目の前で傷を負うならば守るのが師である余がしたかったことだ。それに今こうして再生したのだ。良いではないか」



「まぁ済んだこと蒸し返しても変わらんけども・・・お?」



「ほぅ? やはり愛弟子の弟子だな」



空に一直線に吹き出た光の噴水。海に落ちたその光は、水を濁しながら消えていく。そしてその巨体はズシンと音を響かせて地面に横たわり、光に変わっていく。



「シャァ!! 見たかバカ師匠の大バカ師匠!! どうだ!!」



多少息は乱れてるけど、それでも、まだ余力有りといった感じで、力強くマリアーデを指さし吠えるルーク。そして今回はちゃんと倒しきったのを確認してからのこの行動。成長したなぁ。



「カッカッカ!! 見事だ小僧! どうやら余が見誤ったようだ。先ほどの言葉は取り消そう!」



「当然だばーか!! 師匠も見てたよね!! 僕勝った!!」



「ちゃんと見てたよ。さすが俺の弟子だ」



少し乱暴気味に頭を撫ぜてやると、最初こそ嫌そうな反応をしたけど、どんどんと年相応の反応に変わっていく。その表情はとても嬉しそうな、綺麗な笑顔だった。



「えへへへ〜」



「ふふ、良い弟子を見つけたな愛弟子。それも純粋だ」



そうだろ? でもコイツ実は一度俺のこと殺したことあるんだぜ? それがどんな因果かこうして師弟になってるんだから、ゲームに限らず、世界って不思議だよな。



愛弟子の弟子ならば、妥協は絶対に許さないマリアーデ。自分の泊がとかではなく、アール第一主義。別の形での愛故の行動。


W師弟コンビのそんなお話


感想くれるとモチベーション高まるのでお願いします ○┓ペコリ

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ?ルークって前ブレイドキャンサー単独討伐してたような... 確か海岸の洞窟で鍛えてたあたりだったはずです 更新停止してる作品だから修正してくれるかはわからないが一応言っておきます
[一言] 誰もいないのか.......じゃあやろ ハァ...ハァ...敗北者?ボォボボ ボォボボ取り消せよ…今の言葉!
[一言] マリアーデにとってルークくんって 愛弟子を殺した(かなり苦しめて)ことのある罪人ですよねぇ? 怖いなぁ怖いなぁ・・・。 これ、間に緩衝材としてアールくん居ないとルークくん殺されちゃうんじゃな…
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