335:黒の巨塔とその始まり Ⅱ
黒の巨塔。その真実です。
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その魂が出現したのは世界を救った『剣聖』達が表舞台から姿を消してからのことだった。ある平穏な一日の始まり。いつもの朝のはずだった。それが現れるまでは。
それは黒い怨念だった。世界の悪意をドロドロに溶かしたような何かだった。怨念はやがて形を成し、龍の姿へと至った。すぐに怨念の龍は近くの街を飲み込んだ。街にいた命は、自分以外の命を喰らう化物になった。
世界はその悪意に名前をつけた。過去に『剣聖』に倒された悪しき龍からその名を取り『闇龍』と名づけた。世界は闇龍を討伐すべく豪傑たちを、勇気ある戦士たちを集めた。当然、存命だった『剣聖』も探した。
しかし、当時の『剣聖』は大切な人を失った悲しみからまだ立ち直っておらず、戦える状態ではなかった。故に世界は彼女たち抜きで『闇龍』と、その眷属と化した”いきもの”と対峙した。
三日三晩、激しい戦いは続いた。そしてある一人の勇敢な戦士が闇龍の体を砕いた。それと同時に闇龍の眷属となった”いきもの”は泥のように崩れていった。
しかし、砕け散った闇龍の体から本体と思われる怨念が飛び出し、トドメを刺した勇敢なる戦士に取り付いた。人々は戦慄した。まだ悪夢は終わらないのかと。
だが、勇敢なる戦士は心も強靭だった。なんと、闇龍の怨念に囚われながらも、その中で戦い続けたのだ。そしてあろう事か、闇龍の怨念を一時的とは言え無力化したのだ。
人々は歓喜した。新しい英雄が生まれたと。しかし、戦士は言った。『俺ではこの怨念を一時的にしか封印できない。だから今のうちに、この闇龍の怨念を封印する為の行動をしなけれないけない』と。
世界が怨念を封印するために様々な英知を集結させた。そして、闇龍の魂を永続的に封印するための巨大な塔を作り出した。それは皮肉にも、英雄の命を使うことで怨念を封印するという、過去に邪神を封印した方法と全く同じだった。
生贄とされる新しい英雄はそれに関して、文句も、泣き言も、恨むような言葉も言わなかった。ただ『僕は英雄に憧れていた。世界を二度も救ってくれた僕の英雄。僕は彼にはなれないけど、彼のように、誰かの為に戦って、悔いが残らない死に方をしたい』と。
そうして英雄はその命をもって怨念を封印した。しかしその魂は人々の願いに呼応するように塔に残った。世界は毎日のように、英雄の魂に感謝と、祈りを捧げるために訪れた。
時間が経つと、塔の封印が弱ると同時に、無力化した怨念が眷属と共に目を覚ます。だがその時になると、世界は再び剣を取り、塔に宿り続けていた英雄と共に怨念と戦い、勝利し続けた。
長い戦いが続いていく、そんな時、英雄はこの塔の存在を別の形にしようと提案した。世界は英雄の頼みならばとその提案を受け入れ、形を変えて塔の存在を人々に残し続けた。『英雄になりたいのならば、強いものならば、この塔で戦うべし。この戦いは英雄を生むだろう』と語り継がれてことになる。
いつしか塔には強者が集い、強者が強者を呼び、永遠に続く長い戦いの記憶として後世に語り継がれていくことになった。
この文章を読んでくれている君へ、私からお願いする。どうかこの話を、世界に残し続けてくれ。きっと英雄は今も戦い続けている。だから彼のために、彼と共に戦って欲しい。
それだけが、あの時代を生きた私たちの願いなのだ。英雄を、『クリムゾンGX』を、どうか忘れないで欲しい。
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「・・・という話です」
「あのクソトカゲ・・・いや、クソトカゲの怨念か」
それがまだ残っていたなんて、思いもしなかった。けどそれ以上に。
「なぁ師匠。もしかして今の話の失った人って・・・」
「お前だよ愛弟子。いつか来るとわかっていた別れでも、余とアアリーにとっては半身を失うほどの悲しみだったのだ。それこそ世界などもうどうでも良いと思うほどにな。許せ」
そう言われては何も言えなかった。俺が、”藤宮励久”がゲームをクリアした後も、”アール”という人間は世界で生きていた。大切な友人たちと共に生きていた。
その別れで心が冷静ではなかったと言われては俺からは何も言い返せない。それにキツイ言い方ではあるが、生きる気力がない者が戦いにいても、邪魔になり、最悪敵と負傷者を増やす要因にしかならない。
当時生きていた人たちの判断は間違いじゃなかったと信じたい。その中で生まれた英雄だっていたのだから。それも、話の内容から、俺に憧れてくれた人らしい。嬉しくないわけがなかった。
「そのクリムゾンGXさん。私たちはいつもGXさんと呼んでいるんですが、彼から2日前に連絡が来たのです。『いつもより怨念が活性化している。何かあった時のために備えて欲しい』と。私たちも何もなかれば明日向かおうと思っていたところなんです」
「素材集めはそのついでという訳さ。けどアール君達が言ってくれるなら、私たちは他に行動ができる。やれることはいくらでもあるからね」
「なるほど。わかった。この依頼受けるよ。それにクソトカゲの怨念の後始末は俺の仕事ってことにもなるからな」
「余も行こう。アアリーには悪いが状況を話してもう少しマスター代行を頼むとしよう。犬、鳥、お前たちも愛弟子と共に来るであろう?」
『仕方ないだろう。我も無関係ではない』
『俺ッチも異議なしッス! ってわけで姉さん! オレッチ少しお暇を頂くっす!』
ギルファー達も来ることが決まった。正直助かる。クソトカゲ相手なら油断も慢心もできない。本気で全部を出して戦わないと死ぬからな。装備の最終確認とかやることはいろいろある。
「何言ってるのよジェクス。アタシも行くに決まってるでしょ?」
「勿論私も行くからねアール」
「僕も行く!! 足手纏いかもだけどいいよね! 答えは聞かない!」
「当然俺も参加な? 怨念とはいえ龍だ。俺だって戦ってみたいぜ」
「師匠の因縁ある相手ならば妾の敵でもあるのじゃ。当然いくのじゃよ」
「私はアールくんの従者ですから。戦いに行くならついていきますよ」
皆も一緒に来てくれるようだ。とても嬉しい。それとルーク。足手纏いになると言ったが、それは違う。一緒に戦ってくれるだけでも心強いものなんだ。それに、守るものがある奴は強いんだぜ。
「という訳だ。プレシア、プラレア。その依頼俺たち『剣星』が責任を持って完遂する」
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サブシナリオ発動:『占い姉妹からのお願い。プレシア編』
クリア条件:『黒の巨塔』の調査完遂
シナリオ進行者:アール
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二つのサブシナリオが同時に開始されることになった。リークたちにも同じウィンドウが浮かび上がったんだろう。手元に浮かぶ画面を操作したのか、『進行者』の名前にみんなの名前が追加されていく。
「それではお願いします。私たちは万が一のために他の時代人にも『黒の巨塔』へ向かってもらうように動きます」
「ならばエーテリアには限るがギルドの依頼としても発行しておこう。こういう時のためのギルドマスターの席なのだから」
競争率は上がるけど、相手が相手だし望むところだ。最終的に誰かが闇龍を倒してしまえばそれでいい。この際借金の話は一旦忘れることにする。
「そうと決まれば早速準備だ。用意出来たらすぐに行くから皆頼むぞ!」
「「「「「「「『『おうっ!』』」」」」」」」
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「あれ?」
「どうしたのZD」
「この設定ってこんなんだっけ?」
「どこ?」
「ほらここよ。黒の巨塔の設定。一気に難易度変わりすぎじゃない?」
「ん〜? そうかな? 寧ろ先輩方なら普通にこれくらいしそうだけど? 聞いてみたら?」
「いやでもうーん・・・この前のオバロもこれくらい頭おかしかったしクリアさせる気ないならこれくらいは当たり前だったりするかもだし」
「迷ったら確認しときなよ。ここじゃ俺もZDも新人なんだしさ」
「そうなんだけどね〜・・・でも環境設定がおかしいこと以外は普通なのよね。それに最高難易度だし」
「変更履歴とかは?」
「えっとね・・・一時間前になってるわ」
「じゃぁZVさんかな? 俺もう少ししたら手が空くからその時確認してみるよ」
「いいや平気よ。後で私が確認してみる。今はちょっと手が離せない修正してるから無理なのよ」
「ふーん。どこの設定?」
「S先輩が設定した『メフィラガゼル』特異個体の最終調整よ。見てこれ」
「どれどれ? うっわえっぐ・・・遠距離攻撃完全無効で風の鎧纏う上に高火力って・・・どうやって倒すの?」
「一応レベルカンストでタンクが29人いれば戦える設定にはなってるわ。攻撃回復はまた別の人が必要にはなるけど。他には真化ジョブ持ち二人でも取ったジョブ次第では攻略可能ですって」
「まさに超難易度って感じだね。実装はいつの予定?」
「半日後よ。だからモンスターAIの最終調整で忙しくて」
「それなのになんで別のダンジョンの設定見てたのさ?」
「休憩よ休憩。たまには息抜きもしないと」
「ちょっとZAにZD?休憩もいいけど二人共そろそろ作業に戻ってくれないかしら?」
「あ、はーい!」
「すみません主任!」
「別に後で社長からのお小言言われていならいいけどね私は」
「「それは嫌なので即効で終わらせます」」
「よろしい。じゃぁ頼むわね。後それから二人なんだけどこの調子で動けるなら今度新規モンスターのプログラムを任せようと思ってるからそのつもりでね?」
「マジですか主任!! やったー!! ついにオーバーロード公式リリース出来る!?」
「流石に俺が調整するからね? あれはアール君だったから勝てたんだし、普通は無理!」
「わかってるわよZA、少しは自重するってば」
「はいはいわかったから。それも二人がこのまま順調だったらだからね?」
「「はい!」」
『主任、狸の妨害行為発見です。モンスターの捕食欲が一回り大きくされました』
「ボス系かしら?」
『はい。ガンドロックキャンサーです』
「そ、ならちょっとプレイヤーに依頼出しておいて。凶暴な蟹が出たから緊急討伐って感じで。他に異常は?」
『了解しました。異常は確認できませんが、一応フルスキャンは一時間後に予定しています』
「頼むわね。にしてもこの二三日頻度増えたわね。一応報告しておきましょうか」
アフターから続く因縁の戦いがまた幕を開けるのです!
後半エクスゼウスの様子。お仕事中です。
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