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301:武器に宿るモノ

アルトス戦闘継続中



将軍さんと俺の激しい攻防は続く。だが相手はひとりじゃない。



「よそ見してるなら殺す」



「敵は将軍だけではありません」



「視えてるよ」



姉弟が先ほどのように、いや、先程よりもさらに速く俺の両サイドから攻めてくる弟はシールドバッシュでも狙っているのだろう。対する姉は腹と背を串刺しにするように逆手持ちで剣を持つ。



前と左右には逃げられない。上と後ろなのだが、後ろにはグルドールさん含めた騎士団が先程以上の気迫で構えており、上空にも『飛び上がった瞬間殺る』感覚がある。全方位固められた。



「奥義『十六夜天雷』接続『滅真剣ゾディア』!!」



「ムッ!!」



だったら力任せに前進あるのみ。『十六夜天雷』で衝撃を全身に回し、将軍にあえて防御させるように、抜いた『投刀:抛』での一撃を叩き込む。状況的に、俺はその場から別方向へ距離をとるのが筋かもしれないが、そんな常識俺は知らん。



叩き込んだ一撃を防御した将軍だが、『滅真剣ゾディア』は衝撃を下に落とす技。防御に使用した剣ごと地面へ向けて体勢を僅かに崩す。そのわずかな隙に将軍の頭を鷲掴みにして曲芸のように前に飛び、後ろをとった。



「「『魔法竜剣:焔』!!」」



「『魔法竜剣:雷』!」



そして現れたのは他と異なる雰囲気を放つ戦士達。一人は角があり、瞳には何らかの紋章が浮かんでいる。一人は俺の腕ほどの背丈で羽の生えている種族。そして一人は逆関節の脚が特徴的な種族。



魔族、妖精族、獣人族と言った所だろう。流石は他種族国家。見る人がみれば興奮が止まらないだろう。



そんな彼らが、背後を取られた将軍を救うべく動き出す。好都合だ。



「いかん! そいつの狙いはお前達だ!!」



「逝っちまいな!! 『星波ピスケス』!」



振るわれる剣に自らの飛び込み、剣を蹴り飛ばすように放った一撃。掠ったのではなく直撃した一撃は彼らが持つ武器を粉砕するに足る一撃だった。



余波による一撃のため相手体内から爆発する衝撃ではない。ターゲットは持っていた剣だったし。しかし剣が風船のように破裂したことで、その破片が彼らに当たり、そして上から下へ放ったことで、彼らは地面へと叩きつけられ負傷した。



「次ィィッ!!!」



少々離れた場所から向けられた弓矢の一撃。裏拳を叩きつけて矢尻を粉砕すると共に衝撃を吸収。ついでに遠距離相手はさっさと潰す。



連発して放とうとする弓兵までの距離を一気に駆け抜ける。当然それを阻もうと騎士たちが道を塞ぐ。



「音速の抜刀を味わいな! 超越天匠流抜刀術『血涙雀』!!」



流石に相手を切り刻むわけには行かない。なので自分の血で放つ一撃。納刀したように見せかけて、手に持つ鞘ではなく、鞘を持つ手首の動脈に近いあたりから、腕に『天籟刀:ズイカク』を差し入れ、血液により摩擦を減らして一気に抜刀。道を阻む者たちの武器を峰打ちで破壊し、蹴り飛ばして道を進む。



傷口はいつもながら勝手に融合を済ませているディアが担当。先程、後で使用するために避けておいた物以外のポーションを用いて即座に回復。長丁場になりそうだし負傷は少ないほうがいい。



なのになぜ血を出したかというとだ。簡単に言えばあちらさんに本気を出させるため。傍から見れば俺が相手を切って、その傷口から血を吹き出したように見えるだろう。



仲間が殺られたと思ったほうが、気も引き締まるだろう。生き残る意志があるならばより強くなれるはずだ。後でマリアーデには『血涙雀』使ったこの事に関して怒られるだろうけど仕方なし。



「ッ!? 速すぎるっ!?」



「口より体動かせよゴミクズがっ!!」



弓兵のエルフの頭を鷲掴みにして地面にキッスをプレゼント。二度ほどキスをプレゼントしてそのまま迫り来る兵士へと投げ飛ばす。



仲間を見捨てる薄情集団ではないらしく、投げ飛ばされたエルフをキャッチする兵士。が、その投げた影に隠れて俺も距離を詰めた。目の前に現れた俺に動揺した隙を見逃さず、腹へ衝撃を乗せた掌底を叩き込む。



衝撃は鎧を破壊し、周囲の兵士を巻き込みながら後ろへと吹き飛んでいく。



「調子に乗るなよ賊」



「殺します」



姉弟が再び迫ってくる。姉は遠距離から『ユウダチシグレ』を振り、弟はその合間を縫うように肉厚してくる。『ユウダチシグレ』はともかく『ジンツウ』の一撃はこれ以上受けたくない。



何気にまださっきの痛みがグチュグチュ音を立てて傷を抉るように残ってるんだからな?



「桜華戦蘭流演武『空ノ泣ク夜』」



故に回避極振りだ。振るわれる一撃一撃を回避し、弟の攻めるペースを崩す。姉の攻撃の間を埋めるように攻めてくる弟。一見すればそう見えるが、実は逆で、姉が弟の間を埋めるように武器を振るっている。



意識を集中し、舞を踊るかのように回避しているからこそ見えてきたこの姉弟の連携。起点は姉ではなく弟が多い。いや、正確に言えば弟がより多く手柄を立てられる戦い方だ。



それが分かれば戦い方はいくらでもある。が、忘れてはいけない。これは一対多。他に大勢いるのだ。



「魔術部隊。放て」



信頼しているからなのか、はたまたそういう方針なのかは分からないが、先程詠唱を妨害した騎士の魔術師たちが一斉に魔術攻撃を放った。それは降り注ぐ雨のように。この盤面でそれを選んだことは間違いだぜ。



この演武は元々、範囲攻撃を回避することに向いてる演武なんだからよ。





――――空の涙が雨なのだ。誰かが言ったその言葉。

――――僕はそれを信じている。雨の日は空が泣く日なのだと

――――だから僕は空に向かって話しかける

――――悲しい時には泣けばいい。

――――世界中の誰もが雨を嫌っても、僕はあなたの涙を受け止める

――――だってあなたはいつも、僕たちを笑顔で見てくれるから。

――――あなたの笑顔が僕たちに綺麗な青空をくれるから

――――だから今度は僕があなたを見守るの

――――またあなたが笑顔になれるその時まで、僕はあなたの涙を受け止める。

――――そして一緒に笑いましょう。あなたがくれたあの青空のように。





「「ッッ!!?」」



「この距離は俺の距離だ。逃しはしない」



降り注ぐ風の刃と魔術攻撃の雨を掻い潜り、姉弟が背中合わせになるように誘導した。姉は直ぐに反応し、即座に剣を振るうがこの間合いに入った時点で両方獲物だ。



「剣聖流派十二宮抜刀術『天津雀:激翔』ッ!!」



「「ッッ!!?」」



始めて表情を変えた姉弟。持っていた武器を弾き飛ばされたこと、そしてマリアーデと同じ技を使われたことで動揺したんだろうか? 



宙を舞う『嵐双剣:ユウダチシグレ』『痛撃剣:ジンツウ』。それを追うように跳び上がり空中でキャッチ。そして現持ち主が彼ら故に、襲いかかってくる真化武器 (封印状態)特有の洗礼。




――――◇――――

真の痛みを知れぬ愚か者。心も体も蝕まれ、死んでゆくものを知らぬ者。

知らぬが故に他者を傷つけ呪われろ。

――――◇――――

触れることが出来ぬこの悲しみ。触れればすべてを傷つける。この孤独を知らぬ者。

故に孤独となりて絶望せよ

――――◇――――

ゼツボウセヨゼツボウセヨゼツボウセヨキズツケキズツケ

ソシテソノイタミヲコドクヲタシャヘトブツケノロワレヨ

――――◇――――



妖刀ほどの呪いはなくとも、武器が認めた者以外には牙をむく真化武器。擬似真化武器は誰にでも扱えるためこういう事はないが、本物が故にあるこの呪い。と言うか生前の刀鍛冶が持っていた怨念的なものが未だに残る。



封印されててもそれは変わらないのね。『コンゴウ』だけが特別なわけじゃなかった。ちょっと安心したようなしないような・・・



一度認められれば大人しく、それ以降顔を出すことはないんだけど。やっぱり続編といえど過去の出来事。俺のことは覚えてないのか。着地した俺を見て姉弟も、そして騎士団も将軍も動きを止めた。



「くっ・・・しかし奪おうとしたのが運のつき。『ユウダチシグレ』は認めない相手の心を殺す」



「僕の『ジンツウ』だけ、あるいは姉上『ユウダチシグレ』のどちらかだけなら手離せたかもしれませんが、あなたはもう終わりです。剣聖武器は弱きものを殺します」



その通り。所有者が許可する。あるいは武器に所有者がいない場合を除き、この真化武器を所持すると基本廃人ルートである。まぁアフターストーリー作中の設定ではあるけど。



知らないと完全にホラーだからリセット一択となる。俺はしなかったけど、呪われていると頭の中でずっと呪いのように言葉が続く。それも延々と。



これが嫌でリセットすることをエクスゼウスも考えてたんだろう。実際めちゃくちゃ怖いし。怨念怖すぎる。そして今現在もさっきの言葉が延々と繰り返され続けている。



多分人間の深層感情? とかそんな感じのものを揺さぶってくるため慣れるとかそういうのがまず無理だと思う。じゃぁ俺はどうしたかって? 前にも言ったけど、怨念を強い意志で消し飛ばし屈服させるのみ。



あ、これって新しい武器って扱いにならないよね? イドルもクレイも怒らない? 一応昔の愛用品だしセーフだろう。そうしよう。



《『昔ノ武器(モノ)ナンダロウ? 許シテヤルカラ支配下ニ置イテシマエ』》



《『LAa~』》



ありがとよ。なら遠慮なくやらせてもらうぞ。さて『ユウダチシグレ』『ジンツウ』。俺を誰だと思っていやがる。孤独が怖いなら俺がそばにいる。傷つけるならその傷を俺は受け入れる。テメェらの物全部背負うことが俺に出来ないと思ってるなら改めろ。



周囲の動きに警戒しながらも剣に宿る怨念と対話・・・もとい語りかける。俺の覚悟を刻み込むように。前回も多分似たようなこと言ってたと思う。覚えてないけど。





――――◇――――

ノロワレヨ。ココロヨワキモノ。コドクハコエラレヌ

ノロワレヨ。イタミニオビエルモノ。イタミハエイエンナリ

――――◇――――





上等だ。こちとらお前らみたいなのとは切っても切れない深い繋がりがあるんだよ。それに俺自身も執念と忍耐強さには自信あるんだよ。と言うかいい加減に思い出させてやるから全部食い尽くすつもりで来いや。



そして剣の怨念がついに本気で俺を壊しに来た。うっわスゲェもやもやするし頭の中ぐちゃぐちゃになりそう。気持ち悪っ。



「うがぁぁ・・・・ぁがぁ・・・・!!」



「・・・そんな馬鹿な・・・まだ死んでない・・・?」



「やっぱり・・・じゃぁこの人は」



おうそうだよ耐えてるよコナクソ。他人所持だから前より絶望感半端ないけどな! 前は覚醒させるための儀式だったからまだ良かったけど、今回は前よりエグい。マジで吐きそうなくらい怨念と思いが重い。ギャグじゃねぇからな?

武器強奪。本来の持ち主だし、マリアーデからそういう許可は出てる。つまり合法。弟は気づいた模様。


感想くれると嬉しいですm(_ _)m

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[気になる点] 手に頚動脈はないよ 頚=首の動脈 鞘を持つ首に近い位置から腕に差した? 気になったのでコメントしました。
[気になる点] この前の感想で飛び上がったらどうなっていたか?の部分で、どこの話なのか教えて欲しいとのことだったのですが私の説明力が足りずに申し訳なかったです(--;) ほぼ冒頭の竜人将軍と姉弟に挟…
[気になる点] > 「くっ・・・しかし奪おうとしたのが運のつき。『ユウダチシグレ』は認めない相手の心を殺す」 > 「『ジンツウ』も同様です。片方ならば手離せたかもしれません。しかし2つ同時となれば話は…
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