290:帝都へ向けて
帝都に向けて準備を始めたアールさんでしたが・・・
帝都への招集を受けたのだが、いきなり出発とはいかない。店のこともあるし、行ったことない場所だ。それなりに用意する必要もある。
と、思っていたんだが・・・
「おぉ!! アール君!! こっちだ!!」
「久しぶりニコニーコ。今日はよろしく頼むよ」
「任せたまえ!! このニコニーコ!! 君と共に旅が出来ること嬉しく思うぞ!!」
翌日にはすべて準備・・・というか用意が終わっていた。店に関してはリーク達がそのまま営業し続けてくれるみたいだし、稽古に関しては事情を知った皆が『マジでっ!!? 稽古休憩日!!? ヤッター!!!』と狂喜乱舞よろしく踊っていたので休息日になった。
ギンに関しては久しぶりに自己鍛錬に励むと言って同行せず、コヨミもゆっくり釣りの気分らしく、出かけて行った。ギルファーは『めんどくさい』の一言で同行拒否。付いてくる従者はディアのみだ。
改めて確認するけど俺の従者自由すぎない? いや良いんだけどさ。
アイテムの補充もマリアーデが『持っていけ』と必要品一式を用意してくれていた。なので一旦ログアウトして時間確認。やることを全部済ませて明日の予定も確認。何もないことを確認して再度ログインして今に至る。
道案内に関しては、その時稽古に来ていたニコニーコが手を挙げてくれたのでありがたく好意に甘えることにした。グルドールさんはマリアーデが転移タグのような何かを渡すとあっと言う間に帝都へと帰っていった。
そうしてやってきたのはガストレードだ。ここから帝都へ向かうのが一番早いらしい。直接行った事があるなら良かったんだがあいにく行ったこと無いんだよなぁ俺。
ちなみにルークはお留守番。というか現実で用事があるそうなのでログインしていない。本人は一緒に行きたがっていたけど。
「ここから帝都までは問題なければ二時間ほどだ!! モンスターのレベルも80台が多いが君なら問題ないだろう!! 何かあっても私が君を助けるとも!!」
「心強い。それじゃぁ道案内頼むよ」
「では行こう!!」
――――◇――――
「といっても帝都までの道は舗装されている! 旅人のための木屋も設置されているし行商人も通る! 雇われた用心棒もいるからこの街道から逸れなければ基本的には安全な旅になるだろう!」
「ニコニーコ? それフラグにならない?」
「ワッハッハ!! なる可能性はあるだろうな!! 何せ君をご指名のサブイベントのような物なのだ!」
「うっわぁ・・・」
ニコニーコの言葉通り、ガストレードから帝都、国の名前にもなっているエリュザクトへの道は整地されており、馬車や行商人姿のNPC、街を目指すプレイヤーに至るまで様々な人がこの道を通っている。
道を逸れてどこかへ向かっていくプレイヤーもチラホラと居るし、この辺はかなり人通りが多いみたいだ。
そして目に付くのはやはり身につけている装備。皆オーダーメイド、あるいは市販品の中でも最高クラスの装備を当たり前のように装備している。
強そうなのから、おしゃれ重視の装備まで実に様々だ。こういう所で個性を出して楽しんでるんだろうな。エーテリアに基本的に来る人とは比べ物にならない装備だ。
「もしかして皆の装備が気になるのかい?」
「そりゃな。俺だって今は生産ジョブ持ってるし、そうじゃなくても一プレイヤーとして装備性能は気になるよ」
「確かにその通りだな! 装備をしっかりしている方がやはり生存率は上がる! 私も毎日装備の点検に確認! 研究に時間は惜しまんとも!!」
「ニコニーコは見た目重視のイメージが強いな」
「うむ! もちろん見た目重視ではある! しかし! 見た目にこだわり過ぎて私自身の目的を蔑ろには出来ないからな!」
ちなみに、現在のニコニーコの装備は格闘重視の全身軽装備。所々から拡張する筋肉が見えている。
全身各部には防御にも攻撃にも使えそうなプレートが動きを阻害しない程度に施されており、インファイトを主体とするニコニーコらしい装備だった。
「そう言えばアール君の装備は前から変わらんな!! お気に入りなのか?」
「お気に入りでもあるし、俺の場合下手な防具は簡単にぶっ壊れるし、重くて邪魔になるからな」
エクストラモードだと、装備の重量がそのまま全身にかかるので、重くて動きにくくなるアーマーなどは論外だし、だからといってレザー装備ではないのと変わらない。
それにステータス値で身体能力に補正が掛かるわけではないので、下手をすると枷にしかならない。
その点、今の『双子星』装備はコスプレのような感じであるものの、スキルがかなり便利だ。
「そんな訳で俺の装備はこれが一番いいんだよ」
「なるほどな!! 装備にかける重量分の筋肉量を武器に当てる方が確かに効率がいい!! やはりエクストラモードとそれ以外ではかなり装備に関する要点も変わるのだな!!」
「正直用途によるよ。盾役になるなら武器より防具だし、アタッカーやるにしても、どんな戦闘スタイルかによる。俺は武器の強さよりも切れ味と耐久力、あと機動性かな」
「おぉ! そこは私と同じなのだな!! 同じ魔闘士としては嬉しいよ!!」
ニコニーコと俺は同じ数少ない魔闘士仲間でもある。魔闘士歴はニコニーコの方が長いから、魔闘士としての戦いならニコニーコの方が上手である。
俺は魔闘士のスキル以外にも、『星読み人:星彩』による自己バフと三流派を組み合わせた戦闘スタイルだ。受けて返す。回避して叩き込む。みたいな感じだ。
戦闘スタイルは近いようでぜんぜん違うけど、同じジョブ持ちからそう言われるのはやっぱり安心するというか、嬉しく思うよな。
「ちなみにアール君。君は学生との話を聞いたが学校とかは大丈夫なのかい?」
「随分急だな」
「すまない。こういう話は基本タブーなのだが、かなりの頻度でログインしているから大人としては少し心配でな。気分を害したならば謝罪しよう」
「そんな、いいよ。単位は去年一昨年でほぼ取れたし、出ないといけない講義にはちゃんと出てるよ。バイトもそれなりにしてるから問題なし」
それにこの前エクスゼウスでのバイトも、また頼むことがあると思うと言われたので、しばらくはのんびりしていても問題ない。来年になると色々動くことになるとは思うけど。
「気を抜くときは抜いて、入れるときは入れる。まぁ俺が言っていいようなセリフじゃないかもだけど」
「そんなことはないさ。しっかりと自分のことをした上で遊べる人間ならば誰でも言えるセリフだとも! 胸を張るといい!」
「ありがとうニコニーコ。いや、こういう時はやっぱりニコニーコさん?」
「ワッハッハッ!! さん付けは不要だよアール君!! 向こうならいざ知らずここはもう一つの世界だ! 年に差があろうと皆対等さ!」
「そういってくれるとありがt『地竜だぁ!!?』・・・なぁこれって・・・回収達成?」
「随分と早いフラグ回収だったな!!!」
道の先、少しそれた場所から地面を這うように迫ってくる巨体が見える。銀の鱗に身を包んでいるその巨体。聞こえた限り竜らしい。土竜と書いてモグラだけど、その仲間か?
「ではアールくん!! 回収する責任を果たしに行こうか!!」
「だな。フラグ立てた責任は取らせていただきましょうかねぇ!!」
ニコニーコは拳を突き合わせ、俺もスタートダッシュの構え。お互い視線を合わせる、同じタイミングで頷くと同時に突撃する。
「「我らが”誓い”をここに!! ”祈り”はこの手に!!」」
魔闘士スキル『魔闘士の祈り』『魔闘士の誓い』を発動し戦闘態勢へと移行した。
リ『出来る女は夫の予定も把握してるのよ!!』
レ『じゃぁとりあえず私は愛人枠で我慢してあげるわ。そう言えば依頼来てたわよ』
リ『ありがと、じゃぁさっさと終わらすわ』
マ『あいつらアールが絡むと抜群に仲良くなるんだよな。いつも買うなら平和なのに(でも慣れてる)』
ル『いつものことじゃん(もう慣れた)』




