289:皇帝からの手紙
タイトルからにじみ出る中身ネタバレ感は無視してください。
「オオォォオオオラァッ!!」
「ハハッ!! 前よりいい動きじゃねぇか!! なぁ! 蒼牙ァ!」
本日はのんびり錬金術師の練度を上げつつ、海岸で数人と1on1での対決。もちろん決闘システムを用いたものだ。
基本的には一日三人。ギン、もしくはコヨミからの推薦があることを条件に受け付けることにしている。一時期休みなく五時間ぶっ続けで対戦挑まれ続けたから、その反省である。
まぁ、それでも最近は数が激減して多くとも二人とかの日が多いけど。最低一人は絶対いるのがまぁ不思議なものだ。
ちなみに現在戦闘中なのは、ちょっと前に吹っ切れてスタイルチェンジを果たした主人公ポジの蒼牙くん。奇策メインだった戦闘スタイルが真っ向勝負を主軸とした戦闘に変わり、ちょっとずつ強くなってきている。
メイン武器も剣と拳に固定したみたいで最近はよく海岸の稽古にも顔を出すようになってきた。曰く『相手の弱点を知るためには相手を知ることが大事だと教わった』とのこと。
俺を超える気マンマンで稽古にも顔を出しているのである。付き添いはその時によって変わるけど、一人で来ることはなくなった。
ミラファも前に『最近蒼くんがオープンなんですよ〜! 社交的になったというか、他人と関わりを持とうとしてるとかそんな感じです!!』って言いながら、半分は惚気けていった。
シアも同じように惚気けているのだが、お互い『どっちが心を鷲掴みにするか勝負中』とのこと。蒼牙モテるねぇ。まぁなんだ。なんか困ったことがあったら相談くらいは乗ってやるよ。
「考え事とは余裕だなアールゥッ!!」
「心を読むんじゃねぇよ!! 『鏡雀』!!」
「滅天流『無天』!!」
金属音が響く。なんとまぁ思い切ったことをしたもんだ。どうやら蒼牙。よけられないなら避けなければいいという結論になったっぽい。
「どういう仕組みだそりゃ?」
間違いなく腕を切ったんだが、落ちていない。断面は確かに見えるけども、地面に落ちていない。
「好敵手に手札を明かすと思うかよ!! 懐入ったぞっ!!」
斬った腕はそのまま動き出し、俺の胸ぐらへと伸びてくる。何処の道化師だよ。けど何かしらのAS、もしくはUtSを組み合わせた蒼牙の武術というわけか。これは確かに面白い。
「ま、以前なら懐に入れなかったし、成長はしてるな。けどまだまだだぜ?」
「オォオオッ!? ッ!!?」
後一歩というところで、蒼牙の胴体に無数の傷が刻まれていく。傷は外傷だけでなく、内臓にまで届き相手をズタズタに切り裂いていく。傷は更に降下していき、体を支える足を砕くように切り裂いた。
「超越月光流十二宮奥義『重葬剣戟』。空間に何かを置くことくらい俺にも出来るんだぜ?」
「くっ・・・勝負を焦りすぎた・・・か。俺の負けだ」
――――◇――――
・決着、勝者『アール』
・敗者『蒼牙』から賞金10000D受け取りました。
――――◇――――
「ありがとうございました。なかなか面白い戦いをさせてもらったよ」
「まだ全力を出していないくせによく言う。まぁいい。いずれ本気を出させてやるから待っていろ」
「当然。停滞をやめたお前なら間違いなく俺のところまで来られるさ」
「・・・今回使った技。使うときのコツとかあるのか?」
「あぁ、あれはな・・・」
蒼牙との対決を終えて、以前ならしなかった意見交換や、技に関するアドバイスなどもするようになった。これも吹っ切れた蒼牙の特徴なのか、相手を超えるために、その相手の教えを請うこともするようになった。
人によっては教えてくれないらしいが、俺は聞かれたら教えるタイプの人間だ。だって熱いだろ? 自分を越える相手を自分で育てるってシュチュエーション。
将棋とかでもあるだろ師弟対決のこと恩返しとかそういう感じのやつ。ああいうの好きなんだよな。とかいう俺がまだマリアーデに勝ててないけど。
「お? 蒼牙氏終わったっぽい?」
「あぁ、昼行灯。すまん待たせたか」
「気にしないでイイってことよ。 ちょちょーいっと蒼牙氏で稼がせてもらったからwww」
「二割くれ。あと買い物に付き合ってくれ。俺にはセンスがないからな」
「へいへーい。んじゃアールさんまた〜」
「またなー」
付き添い・・・というか何かトトカルチョ的な賭けをしていた昼行灯と共に蒼牙は街へと消えていった。人付き合いをしっかり始めたのはうん。なんか感慨深いなぁ。
「マジであの人師匠の懐に入り込んだね」
「うむ。人の成長は速いものだが、まさかここまでのものとは」
入れ替わるようにルークとギンがやってきた。二人も手合わせをしていたので、今終わった所なんだろう。少し呼吸が上がりつつも、既に落ち着き始めている。
「初見相手には効果的だし、虚を突けるのは間違いない。けどまだ腕だけしかあの芸当は出来ないみたいだ」
「師匠胴体も下半身もズタズタにしてたもんね。あれ何?」
「『重葬剣戟』っていう奥義でな? 簡単に言えば斬撃トラップだ。接触部位から下を全部ぶった斬るやつ」
「置く斬撃かのぅ・・・峰打ちも置けるじゃろうか・・・やってみようかのう」
「師弟はよく似るって言うけど、師匠もギンも常識はずれだよね本当に」
「「・・・」」
「なにさ? 僕はまだ普通だし常識の範疇にいるじゃん?」
とか言っているルークだが、その並外れた精神力。そして曰く、マゾも逃げ出すと言われている俺の稽古にも幼いながら食らいついてくることから、掲示板や稽古参加者からは『次世代剣聖 (ガチ)』だの『英才教育されている鬼人』だの『剣聖の弟子()』だのと結構言われている。
ステータスこそまだ低いが、上がれば間違いなくトップになれると大勢のプレイヤーからも太鼓判を押されている。あと、最近対人戦闘能力が上がっている。これは俺が仕込んでることもあるんだけどさ。
まだ直感ではあるんだけど、今後対人戦主体のイベントとかありそうだし。
「それはともかく、まだ時間あるしもう少し稽古しようか。ちょうどいいしルーク。久しぶりに相手してやるよ」
「うげっ」
「悪いが、愛弟子。その稽古は中断してもらうぞ」
始めようとした所を止めたのはマリアーデだった。珍しくギルド職員も一緒にいる上に、隣には見知らぬ騎士姿の人物が立っている。
「マリアーデ殿、こちらの方が?」
「うむ。そこの刀持ちの男が我が愛弟子のアールだ。愛弟子。此奴は帝都からお主への使者だそうだ」
「初めましてアール様。帝国騎士団団長グルドールと申します」
「初めましてグルドール様、私が今ご紹介に預かりましたアールと申します」
立ち振る舞いと言葉の質から、多分貴族的な関係者がいるんだろうと判断。まぁ騎士団とか大層なポジションで、副団長までやってるなら誰でも言葉使いはこうなるか。
こういう時に前作で磨いた王族に対する礼儀スキルが役に立つ。まぁなくても普通に一般的な礼儀作法があれば失礼はないと思うけど。
こういう失礼があるとイベントとか、シナリオに悪影響を及ぼすこともあるんだから、気をつけるべき時は気をつけるほうがお得だ。
「相変わらず似合わんなぁ愛弟子。お主はそういうのが似合わん」
「おいコラマリアーデ。こういう時は思ってても言うんじゃねぇ」
「事実だ。諦めろ」
「この野郎いつか覚えてろよ?」
「いつになるか楽しみではあるなぁ?」
「・・・師匠化けの皮脱げるの早すぎない? 演技なら僕教えてあげようか? 自信あるし」
ルークちょっと黙ってなさい。頭をぐしぐしと撫ぜてとりあえず静かにさせる。
「・・・グルドール様、大変失礼しました」
「気にしないでいただきたい。それに私としても先ほどのマリアーデ様のように接していただけると気が楽ですので」
マリアーデがニヤニヤしてるのが気に入らないが、本人からそう言われては仕方ない。多少は崩そう。
「では失礼して。それで俺に用とは一体?」
「皇帝陛下よりアール様へ伝聞がございます。ご確認ください」
そう言われて渡されたいかにも高そうな一通の伝聞。受け取り、内容を確認する・・・マジでか。
「グルドール様。伝聞の内容はご存知で?」
「はい。それで返答の確認を頂けますでしょうか?」
――――◇――――
拝啓、五代目剣聖アール殿
エリュザクト帝国の多くの民、そして我が血族を救ってくれた貴殿を是非帝都に招待したい。エリュザクト帝国が誇る最大限の持て成しで貴殿を歓迎したいと思っている。
そして貴殿にも知っていただきたい。現在世界を取り巻く多くの問題を。
エリュザクト帝国皇帝 アルベルト=グロードール=エールヴァル
――――◇――――
「グルドール様、この招集、お受けいたします」
「ありがとうございますアール様」
こうして、ついにこの国のトップからの招集が俺にかかったのであった。
蒼牙くんは覚醒状態です。詳しくは番外編をご覧下さい。
そして次回以降、ついにアールが選んだ限定イベント開始。




