286:三代目と五代目の約束
アヴァロア戦。
『『ケンギ:ショウド』ォォ!!!!』
俺が距離を取った瞬間、アヴァロアの『双極剣』が地面を走り、炎を纏わせて突っ込んでくる。
『焼土』唯一の欠点は下から上に放つ攻撃であること。そのため太刀筋が読めてしまう。けどそれを持ち前の天武の才で補い、手出しさせないのがアヴァロアだ。
同じことは俺にはできない。ならばその”唯一の欠点を無くせばいい”。下から上にしか打てないならば、どこからでも放つことが可能なようにしてしまえばいい。
そう。例えば地面以外の別の何かで刃を研ぐように。
「『剣技:冥焼土』!!」
例えばそう。剣で鞘を研ぐようにしてみるとかな!!
『キサママタオレノワザヲォォ!!』
右手に刃を、左手に鞘を持ち、峰に鞘を激しく走らせることで『焼土』のように、刃へ熱を持たせる。だが普通の刀ではその熱に耐えられない。しかし、『天籟刀:ズイカク』そしてその鞘ならば話は変わる。
衝突する同じ方向性の奥義。しかし片方は停滞し、片方が常に先を目指していた。どちらが勝つかなんて言うまでもないさ。
下から来たふた振りを、真横から打ち払うように放った一撃が粉砕した。粉砕されて体がヨロけた所へ、動かしていなかった鞘での一撃を叩き込む。
リッチが熱を感じるかどうかは知らんが、鞘による一撃は確かにリッチの核へと届いた。
『aaaaaアアアアアアアアAAAAAAAAッッ!!!!!『テンライ』ィィィ!!!』
弾き飛ばされた勢いを、身体を捻り、自分のものに変えて再突撃してきたアヴァロア。
「今だから言うがな!! その技マリアーデのパクリで劣化なんだよテメェ!!『天津雀:激翔』!!!」
逆手持ちでの突進攻撃『テンライ』。相手とすれ違う瞬間にハサミのように相手を切り裂く一撃だ。だがその技。マリアーデがよく使う『激翔』という技にそっくりだ。いや完全にパクリだ。
激翔とは、刃と鞘で同時に左右から攻撃する打撃と斬撃の混成技。以前俺が十字架の刑にされた時、俺を助けてくれた『天津雀:激翔』を見て確信した。
もしかしたら逆かもしれないけど俺の師匠が元祖だと思う事にするっ!
そして劣化であるというように、たった二方向からの同時攻撃と違い、『天津雀』の名を持つこの奥義は一撃じゃ終わらないっ!!
『キィィサァァマァァァ!!!!』
「オ オ オ オ オ オ ォ ォ !!」
トンファーでも振るうように何度も何度も叩きつけるように刃と鞘を振るう。一撃で相殺できないなら何度でも繰り返せばいい。相殺したなら今度は押し込めればいい。
要はゴリ押ししてやれば万事解決するんだよ!! 脳筋で悪かったな!!
『オォォォアァァァアアア!!!!!』
ついに自ら距離をとり、俺から離れたアヴァロア。その表情は怒りであり、同時に初めてであろう感情に取り憑かれた人間の顔そのものだった。リッチの癖に随分じゃねぇか。
「おいアヴァロア!! 魂に刻めたか!! その感情! それこそ恐怖!! それこそ恐れ!! 貴様が人々に与えてきた感情だ!! その身を持って味わって今度こそあの世に逝け!!」
「フ・・・・フザケルナァァアァaaaaaaaaaa!!!!!!」
言い訳も言い逃れもせずに、悲鳴のような雄叫びとともに『激龍雨』を繰り出していく。いや、もはや『激龍雨』とも言えない粗末な斬撃だ。余りにも雑すぎる。余りにも余裕が無さ過ぎる。
この感情を、もしも生前アヴァロアが知っていたら、話はきっと変わっていたんだろうがな。だけど、だからといってこいつの暴挙が許されるわけじゃねぇ。
「五代目剣聖アールが名の元に! 三代目剣聖アヴァロアよ! 貴公を断罪する!! 目覚めろ『天籟刀:ズイカク』!!」
天籟刀:ズイカクを鞘に収め、衝撃を足元に集中し加速する。目を凝らして空を斬る斬撃を目視する。空気の動き、僅かに歪む空間を即座に判断。
一閃、放たれた斬撃を切り裂き一歩前へ。二歩目、斬撃を叩き落とし更に前へ。一歩ずつ確実に距離を詰め、暴れ泣くかのようなアヴァロアへと向かっていく。
『ッッ!!! ッッ!!? クルナァァァ!!!!!!』
焦ったんだろう。怖くなったんだろう。アヴァロアにとって『剣技』は、自分の強さの象徴。絶対の存在だった。その技術がアヴァロアの全てを作っていた。
それが崩され、崩壊した。故にもうアヴァロアは『天災』ではなく、ただの『天才』へと落ちた。
そして、停止を選んだ天才はいつか必ず超えられる。再び動くことを選べなかったのならば尚更だ。自分の死因すら忘れ、ただ理不尽な怨念のみとなった男の末路。俺が終わらせる。
「我が刃、いずれ極限を断つ刃なり。我が刃、堕ちた魂を、堕ちた誇りを斬る刃なり。我が刃、在りし日の約束を果たす刃なりっ!」
思考を切り替える。余計な感情を切り落とし、斬るべきモノを斬るために。
「剣聖流派極星抜刀術『天瓶十二閃:激龍翔来』」
――――◇――――
『ふんっ! 凡人にしてはやるではないか! 一万年同じことを繰り返せばこの俺様にも届くかもな!! 無理だろうがな!! ぜっぇえったいに!! 無理だろうがなぁ!!』
『こんのやろう・・・だったら一つ賭けでもしましょうや』
『あ゛ぁ゛? ・・・まぁいい、聞いてやるだけ聞いてやろう。だが忘れるな? お前だからこそ聞いてやるんだ。俺に認められたこと感涙し誇りに思えよ?』
『へいへい・・・俺がアンタと一対一で勝負して勝ったら、貴方の『双極剣』俺によこしてくれやがりください』
『・・・・・・・・・聞かなかったことにしてやってもいいぞ? 俺は今剣を持っていないからな』
『引き下がるものかよ。それともアンタが認めたって男はここで引き下がるような弱者なのかよ?』
『命をかけて戯言をいうか凡人』
『悪いかよ?』
『いいだろう!! どうせ叶わない約束だ!! 凡人であるお前が俺を慕い挑む強者への道を進むならその約束してやろうではないか!! 無理だろうがな!!! 無理だろうがな!! 絶対に無理だろうがな!!!!』
『うっわ腹立つ・・・けど言質取ったからな? 履き違えるなよ?』
『いいだろう! 他でもないお前との約束だ! どうせ無理だろうがしてやろうではないか!!!』
――――◇――――
風瓶エリシオンの極星奥義『天瓶エリシオン』と『鏡雀』を掛け合わせた超光速すれ違いざまの居合い切り。
斬撃すら”置いていく”速度での加速は俺の身体を顧みずに、破壊するモノだが、前回のイベントで手に入れた『UtS:極星』のおかげで24時間に一度だけ耐えることが出来る。それが故に成せる現状俺ができる最大奥義、それが『極星十二宮奥義』
もちろんそれだけで満足できなかったので色々試している最中である。まぁ掛け合わせ『天匠流』が今の全力だ。
目の前にあったモノを計12回斬り裂き、俺が止まったアヴァロアの背後。僅かに光る刃を鞘に収め、その場からゆっくりと離れる。一歩進むたびに空間が悲鳴を上げるかのごとく振動し、二歩、三歩進むたびにその大きさは増していく。
『ォ・・・・・・ッ・・・・ォ・・・・・・』
「誇るがいい。我が刃に絶たれ死せる運命を」
十歩目、アヴァロアの核がピシリと砕ける音がした。気が付けば、憎たらしい男が何時も勝ったときに言っていた言葉を口ずさんでいた。
「悔いるがいい。俺の刀の錆になれたこと」
十一歩目、再び砕ける音がした。
「感涙せよ。我が刃の道になれたことを」
十二歩目。最後の一撃が、アヴァロアの・・・『カースサイスリッチ』の核を砕く。
「・・・正真正銘俺の勝ちだぜアヴァロアさん」
『・・・・・・ボンジンガ・・・ヤルヨウニ・・・ナッタ・・・・』
最後の瞬間。正気を取り戻したのかと思える台詞を残し、カースサイスリッチに憑依したアヴァロアは光となって消えていった。
――――◇――――
・『カースサイスリッチ(アヴァロア憑依)』を撃破しました。
・生存者『アール』
・レベルアップ! アールは『レベル70』になりました。
・武器:双剣『双極剣』を獲得。
・150000D獲得
――――◇――――
・レベル70到達を確認しました。以下のボーナスよりいずれか一つを選択し獲得することができます。
1:SP1000
2:スキルスロットの増加(+10)
3:アクセサリー装備可能数増加(+2)
4:特殊サブシナリオ『伝説の武具』開始
5:ASスキル獲得(Lv最大)
6:???(この選択はエクストラモードでレベル50以上上げた場合のみ可能です)
――――◇――――
劇中でかなり馬鹿にされる&理不尽の塊なアヴァロアですが、アールとだけは他よりもいい関係でした。それだけの根性と意地を見せたからこそです。
そしてふたりの約束はようやく果たされました。
ムカつく奴だけど。




