285:リベンジ戦(ソロ)
ガチ戦闘シーン再び。
唐突だが、俺は最近、自分に対しておろそかになりすぎていると思う。そりゃまぁプレイヤー全体の技能レベル上げに運営との協力、クランとしての戦闘。『真刀:戯』修復素材の探索に新しく知り合ったプラクロでの友人たちとの共闘。
やってきたことはたくさんあるから、他人から見れば十二分にやっているとは思う。だがしかし、個人的には全然足りないのである。具体的に言えばぬるま湯に浸かりすぎている。大勢を敵に回すような発言をするが、対峙する相手が弱すぎて、全力を出す機会が極端に減っている。
それはそれで手加減の訓練や、縛りプレイとしての楽しみ方はあるんだが、それで納得できるわけがない。もっとこう・・・死闘や激戦みたいな極限戦闘がやっぱり好みだったみたいだ。
先日の無情非情バトルロイヤルはそんな俺の欲を満たす意味ではありがたかった訳ではあるが、ある一つの事を思い出すことにもなった。
実は俺、プラクロを始めてから唯一、常設ボスでソロ撃破をしていない奴がいる。ディアと一緒だったり、リークたちと戦ったりして勝利はしているが、ソロ撃破ではない。
ソロに拘るつもりはないんだが、やっぱりソロで倒せなかったのは悔しいのだ。
「だから死に晒せぇ!!!」
『Oooooooォォォォ!!!!』
だから完全ソロ(もちろんディアも不在)でやってきたのは封印の神殿。その最深部。カースサイスリッチの出現率が最も高い場所。ついでに怨念が集まりやすい場所だ。
ということはつまり、カースサイスリッチ(アヴァ憑依)の出現率が高いわけである。別に死にゲーやるつもりはないぞ? ただやっぱり一ゲーマーとしては単純に実力差を見せ付けられるの腹立つんでねじ伏せたい。
ぶっちゃけ、いい加減コイツにソロで負け越してるのが気に入らねぇからいい加減に勝ち越したいんだよ。
『コロスコロスコロスゥゥ!!!』
「テメェが死ねやァ!!」
激しく舞い散る火花と共に、交差する俺たち。相変わらずこっちの動きを数回で見極めてくるこの強さはバケモンだよなこいつ。バトルロイヤルの時にコイツいなくてよかったと思った自分がここにいたりする。
心臓めがけて穿つ刃を払い除けたと思えば、その勢いを利用して蹴り飛ばしてくるし。寸前で剣から拳に切り替えて一撃叩き込んだのにしっかりと受身取れてるし。
「殺す以外に言葉を知らねぇのかオラァ!!」
『コロシテヤルゾォォォ!!!!』
あと関係ないけど最近少し流暢に言葉を話し始めた。倒されすぎて現世に戻ってき始めたとかいうのかこいつ。マジ悪夢じゃん。
でも流石に戦闘経験は受け継いでいないのか、初見殺しは何度も通じるし、一度殺せば同じ戦法ももう一度通じる。それができなかったらやばいんだけどさ。
「『天風朧雀』!!」
『ケンギ:ゲキリュウ』
居合い切り状態での突進に合わせて放たれるクロスした斬撃。飛ぶ斬撃の最大の利点は目には見えないことだろう。見えない物はよけられないし、射程も不明。
けど、”斬撃は飛ぶもの”と認識していればある程度は予測できるし、何度も戦っていれば対処方法は理解できる。
「『天風朧雀:改』!!」
全く同じ射線に同じように斬撃をおけば相殺出来る。さらに言えばこちらのほうが強ければ押し返し利用することも出来る。
アヴァロアの『激龍』を撃ち殺し、その際に発生した風に体を載せてさらに加速、刃に相殺時発生した衝撃を載せてさらに速度を上げる。
『ケンギ:ゲキリュウウ!!』
「舐めるなぁ!!」
正式に言えば『剣技:激龍雨』。簡単に言えば連続して『激龍』を放つ奥義だ。初見殺しこの上ない奥義ではあるが、視慣れてしまえば回避は出来る。
だがそれじゃぁ”アヴァロア”に勝ったことにはならない。コイツに勝つには、こいつの心をへし折った上で『負けた』と思わせないと勝ちじゃない。
「シィィッ!!!」
一撃目、相殺。二撃目、被弾。三撃目、ギリギリ相殺。本当にバケモノだなコイツ。
けど、四度目の攻撃は来なかった。ならやっぱり『激龍雨』の連続回数は3回。そして体の動き、剣の太刀筋、ようやく視えたぜアヴァロア!!
そう思った矢先、奴は既に次の行動に移っていた。地面を燃やしながら滑るように迫ってくる。『焼土』かっ!
『ケンギ:ショウド!』
以前の俺ならその炎に触れただけで焼き殺されていた。でも今の俺はあの時よりも強い。
「『天雷星脚ピスケス』!!」
下からカチ上げるように放たれた一撃を全力で迎え撃つため、剣に向けて震脚を放つ。衝撃を纏った震脚は風を纏うように下へと向かい、剣が纏う炎をかき消して、相殺した。
当然、普通なら剣がへし折れる威力なんだが、折れていない、アヴァロアが持つ『双極剣』は健在だ。天才様は流石だよクソったれ。
『キサマァァ!!!』
「前と同じと思うんじゃねぇょっぉぁっつあぁぁ!!!!?」
まとっていた炎を消し飛ばせても刃の熱は消えていなかった。足を這うように高熱が身を焼いていく。その痛みをかき消すように叫びをあげてただ力任せに『天籟刀:ズイカク』を振るった。
もちろんアヴァロアは対応してみせる。もうひと振りの刀でそれを受け止めたアヴァロア。脚で押さえつけた刃にも力が徐々に加わり、押し返される。
「『風瓶エリシオン』っ!」
足を焼く痛みに耐えて、俺を押しつぶし、押し切らんとしていた力をそのまま利用して悪手とも言える空中へと身を投げる。振り回されるように回転する身体を制しつつポーションで火傷を癒す。
アヴァロアへと視線を向ければ、再び『激龍雨』の構えを取っている。その表情は怒りもあったが、それ以上に勝利を確信した憎たらしい笑顔だった。
『ケンギ:ゲキリュウウ』
再び放たれた合計六つの飛ぶ斬撃。正直言えば『エリシオン』での回避は可能。だが何度も言うけど回避して勝つのはいい加減認めたくないんだよ! それにっ!! その技を何度俺に見せたかお前は覚えてるかよっ!
数で圧倒して倒しても、誰かと共闘して倒しても、それでお前に勝ったとしても、俺にとっては敗北なんだよ。何が何でも俺だけの力でお前から一本とってやる。そんでもってあの約束果たしてもらうぞバカロアこの野郎っ!!
「『剣技:業激龍』!!!」
『ッッ!!?』
初めてお前の表情が別の形で歪んだなアヴァロア。お前が数回見ただけで相手の技術を使えるようになるのと同じで、俺だって数百回以上も見せられて味わい続けたら対抗するために覚えるに決まってんだろ。
ただしお前のと違って俺のは数ではなく質の一撃だけどな。アヴァロアから放たれた六つの斬撃を迎え撃つように放った一文字切り。それは空を裂く、目視できるほど巨大な斬撃となって正面へと飛んでいく。
『キサマァァァ!!!!!』
生者へ向ける怒りではなく、己の技を盗んだことに対する怒りを向けてきたアヴァロア。もしくは迎撃ではなく、回避という方法を選ばざる得なかったという屈辱への怒りか。
回避する必要もなく、静かに落ち着いて地面に足をつけ、俺はアヴァロアへ『天籟刀:ズイカク』を突きつける。
「お前と何度戦って殺されたと思ってる? 何度その技を見てきたと思ってる? どれだけの時間、お前と戦ってきたと思ってんだよアヴァロア」
前作含めてコイツに割いた時間はもう覚えていない。ただ1つ。コイツを正面からねじ伏せるためだけに戦ってきた俺を誰だと思ってる。
「死んで怨念しかなくなったテメェは覚えてねぇかもしれねぇけどな! 俺はお前が唯一認めた男だぞ! この程度出来ない訳ねぇだろう! 前に進んでねぇわけがねぇだろうがっ!」
この『天籟刀:ズイカク』を渡されたとき、いつか必ずコイツを正面から下して『参りました』と言わせてやると誓ってたんだ。前作ではそれが叶わなかったけど、今回こそ必ずやってやると誓ってたんだよ俺はね。
そしてようやく、全部視た。全部のピースが繋がった。もうお前が見せてきた技は全部覚えた!
「今日こそ勝ってやるからテメェの剣よこせやぁ!!!」
『キサマァァァ!!!!』
再度衝突する俺たち。ただ雄叫びとともに持てる全てを叩きつけていく。『剣技:焼土』『剣技:激龍』そして『激龍雨』、『剣技:天来』。
たったこれだけの技。されどその技、天上天下唯我独尊、何者も習得できず、その刃は天上すら切り裂くだろう。なんて昔誰かが言ってた。天才であり天災であるコイツにとってはさぞ心地よかっただろうさ。
”この程度で皆が頭を垂れて許しを請い、助けを懇願するのだから”とな。故に剣聖の名を貰い、国からチヤホヤされた時はさぞ喜んだだろうさ。
けど、それも今日で全部終わりだよボケ。お前と同じ技を使える男がここに生まれたんだからよ。つまりテメェは世界でたった一人の技使いじゃ無くなったって訳だ。
どれだけ強かろうが、それを越える男がいればその価値は激減するって事よ。
「覚悟しろアヴァロアの怨念! 今日こそテメェを俺の前に跪かせてやんよ!!」
という訳で完全ソロでのアヴァロア戦
アールさん何げに悔しがっていました。ソロ撃破したいよね。だって強敵だもの!
そう言えばみなさんから『黒アイちゃんは今後出てきますか!?』って質問(?)が多数あって驚いております。皆さんツンデレさん大好きですね。私も大好きです。
けど出すとしてもなかなか難しいんですよね。キャラになりきることは出来ると思いますけど、それだとあのツンデレ具合を生かしにくいし。そういう訳なのでいい案が思いつくまで首を長くしてお待ち頂けると嬉しいです。




