祝300部記念投稿 284前日談:無情組手
300話おめでとうございますって言われて嬉しくなって書き上げました。
反省も後悔もしていない。本当は番外編に書こうと思ったんですが、いつも見てくれる皆さんに見て欲しかった私の自己満足です。
もし怒られても後悔しません。だってこっちに書きたくなったんですから。という訳でガチ戦闘シーン回です。
ここは特別に作られた戦闘エリアだ。
イベント『星の記憶』にて俺は運営の協力者、と言うか主要人物役として参加したんだが、色々あってその報酬をかけたバトルロワイヤルに参加することになった。
まぁ俺がやらかしたからっていうのが一番早いんだけどさ。ちょっと楽しみすぎたと言うか、役に入りすぎた。
という訳で報酬は無くても仕方ないと諦めていたんだが、運営の皆さんはそんなことせず普通にくれると言ってくれた。けどやっぱりあるじゃん。罪悪感とかさ。
だからこうして欲しいものは勝ち取れ奪い取れの精神で無情無慈悲組手という題目でバトルロワイヤルに参加しているのである。
『アールくん調子はどうかな?』
「全く問題なしですよAさん」
『ならよかった。装備とアイテムの確認をしてくれるかな? こっちでもモニターしてるけど本人確認してもらうほうが安心だからさ』
確かに。ヤラセとかを疑うわけじゃないけど、こういう時は自分でしっかりと持ち物確認はした方がいいよな。
という訳でステータス確認の為にウィンドウ操作っと。
――――◇――――
名前:アール
メインジョブ:[星読み人:星彩]
サブジョブ:魔闘士
称号:剣聖
◇装備一覧◇
武器1:双子星の剣
武器2:真刀:戯
武器3(EX):天籟刀:ズイカク
武器4(EX):投刀:抛
武器5(EX):艶姫刀:クヴァレイドル
武器6(EX):恨血木の破斧
武器7(EX):双子星の籠手&慧眼ノ眼装
頭:双子星のイヤリング
胴:双子星のローブ
腕:双子星の篭手&慧眼ノ眼装
腰:双子星の腰帯
足:双子星の足具
アクセサリー1:星の錬金術師の髪飾り
アクセサリー2:星聖者の指輪
アクセサリー3(EX):約束のムーンブレスレット
――――◇――――
相変わらずの双子星シリーズである。武器も最新の状態ではあるけど、一つ訂正箇所発見だ。
「Aさん。『真刀:戯』なんですけど、壊れてるんで使えないはずですよ?」
大変残念なことに、俺がこのゲームで始めて愛刀とした『真刀:戯』は現在使用できない。侍ゴブリン『オーグ』との戦いで砕け散ったからな。それだけなら修理すればいいんだが、生憎あの作中には、もうこの剣を直せる人がいないのだ。
やっぱりクズリン許さねぇ。それもあって、俺はこの『真刀:戯』を鍛え直す為に日夜『星の錬金術師』のスキル練習と、改修素材集めに精を出しているのだ。
と言うか素材に関してはわからないので一つずつ試している最中なんだけどさ。と言うか武器の改造・強化・修理なんでも使える『再誕の剣』ってアイテムがあるんだけど、これを使っても直せないとか、ガンテツさん一体何を使ったんだよ。
『あぁそれね! その剣に関しては今回だけの特別サービス! 使えるようにしておいたからじゃんじゃん使っちゃってよ!! あとポーチにも追加でいくつか入れといたから確認してよ!』
「え? いいんです? さっき俺のステータスを反映するって言ってましたけど?」
『ちょっとごめんね。藤宮くん私よ。Xよ。最初はそうするつもりだったんだけど、やっぱり君の全力が見たくなったから少しだけ仕様変更させてもらったわ。挑発する言い方だと、これで言い逃れは出来ないわよねってことかしら?』
「なるほど、言い逃れするつもりはなかったですけど、つまりそこまでの相手を出すと?」
『『『YES!!』』』
なんだろう。めちゃくちゃ不安になってきたかも。いや落ち着け。お膳立てといっても、もしかしたら汎用武器を追加して手数を増やしてくれただけだろう。ウン。よし確認してみよう。
――――◇――――
武器:双剣『嵐双剣:ユウダチシグレ』
武器:片手剣『痛撃剣:ジンツウ』
武器:太刀&小太刀『師舞刀:チトセ』『師舞刀:チヨダ』
武器:刀『鳳戦刀:コンゴウ』
――――◇――――
「ちょまっ!!? これ全部俺の『アフター』武器しかもお気に入りばっかりじゃないですか!?」
『そうだよ?』
「いやいやアカンでしょ!!?」
アフター武器っていうのはそのまんまだ。俺が『アフターストーリー』で選び抜き、最後まで使い続けた真化武器。その中でもお気に入りだったのが『天籟刀:ズイカク』含めたこの五本。
『天籟刀:ズイカク』は俺の時間感覚を極限まで引き上げてくれるなんちゃって時間加速。
『嵐双剣:ユウダチシグレ』は風の刃を形成し攻撃範囲を大幅に広げてくれる手数の多い双剣。
『痛撃剣:ジンツウ』は傷つけた相手に激痛を引き起こし、動きを封じる使い勝手のいい片手剣。
『師舞刀:チトセ』『師舞刀:チヨダ』は同時に使用することで相手の数秒先の動きを目視できるようになる未来予知能力が使える二刀一対の太刀。
『鳳戦刀:コンゴウ』は相手を斬る毎に俺のスタミナを強化してくれるバフ内蔵の刀。
どの武器も入手がクソ大変だった上に、真化させるために相当な苦労をしたけど、その努力に見合った頼もしい能力を持つ武器ばかりだ。
特に未来予知が出来る『チトチヨ』は本当にやばい。かなりの集中力と体力を持っていかれるが、確定回避と必中反撃が擬似的に可能になるわけだから、それはもうやばい。
切れ味こそそこまでではないが、十分すぎる能力だろ? そんなもんいきなり渡されたら俺だってビビるわ。
『大丈夫よ。流石にまんま実装する訳にはいかないから修正してあるわ。確認してくれるかしら?』
「あ、なるほど。安心しました」
よかった。うんそりゃそうだよね。あのまんま実装したらぶっ壊れ装備間違いないし。うん。流石に綾地さんたちもそこらへんは自重してるよね。
――――◇――――
双剣:嵐双剣ユウダチシグレ
攻撃力+Ω 真化武器 能力『風刃』
・すべてを切り裂く風の刃を持つ双剣。過去の英雄が好み愛用していた武器の一つ。
――――◇――――
特殊能力『風刃』
・風の刃を纏い、攻撃範囲を広げる。発動時間が一定以上経過すると暴走する。
・キーワード『嵐裁』
――――◇――――
――――◇――――
片手剣:痛撃剣ジンツウ
攻撃力+Ω 真化武器 能力『貫痛』
・その美しさとは裏腹に、刃に触れた者はこの世のものとは思えない激痛に襲われるという恐ろしい武器。過去の英雄が好み愛用していた武器の一つ。
――――◇――――
特殊能力『貫痛』
・刃の触れた相手に激痛を引き起こす。激痛にダメージはない。希に暴発し、自身を蝕むことがある。
・キーワード『痛痕』
――――◇――――
――――◇――――
武器:太刀『師舞刀:チトセ』
攻撃力+Ω 真化武器 能力『来世』
・このひと振りでは特に変わりのない普通の太刀。しかし『師舞刀:チヨダ』と共に振るうことでその真価を発揮する。過去の英雄が好み愛用していた武器の一つ。
――――◇――――
武器:小太刀『師舞刀:チヨダ』
攻撃力+Ω 真化武器 能力『来世』
このひと振りでは特に変わりのない普通の太刀。しかし『師舞刀:チトセ』と共に振るうことでその真価を発揮する。過去の英雄が好み愛用していた武器の一つ。
――――◇――――
特殊能力『来世』
・数秒先の相手の動きを完全に予測出来る。ただし体力の消耗が激しい為、長時間の使用は困難を極める。
・キーワード『悠久』
――――◇――――
――――◇――――
武器:刀『鳳戦刀:コンゴウ』
攻撃力+Ω 真化武器 能力『帰回』
・持ち主の命を守るためならば、敵の全てを奪い尽くす力を持つ刀。過去の英雄が好み愛用していた武器の一つ
――――◇――――
特殊能力『帰回』
・持ち主以外の他者が触れると相手の体力を奪い、刀が内包した力を持ち主に与える。ただし過剰に力を得ると身体が破裂する。
・キーワード『重愛』
※所持者の意志とは関係なく能力が常時発動する危険あり
――――◇――――
「ダメだよコレはさぁっ!!?」
これはダメだって!! ほとんど変わってない!! と言うかまんまじゃん!!
『平気よ。能力を自由に使えるまでにはかなり痛くて苦しくて辛い思いをするんだから、これくらいの能力はないと価値が無くなるわ』
そうですけど!! その通りなんですけどもぉっ?! それを今俺に渡しちゃあかんって!!
これ普通にラストバトルで使った装備なんだけど!!? エクスゼウスの皆さん俺に一体何をぶつけてくる気だよ!? それこそマリアーデクラスの相手じゃないと瞬殺できるぞこの装備。
と言うか武器の使い分けするだけで永久機関出来る。『鳳戦刀:コンゴウ』で戦えば実質無尽蔵の体力を得られる。得た体力は『天籟刀:ズイカク』で直ぐに消耗してしまえば永続使用可能。
と言うか『鳳戦刀:コンゴウ』と俺の戦闘スタイルの相性が良すぎて辛い。めちゃくちゃ体力を使う戦い方が俺の基本スタンスの為、無尽蔵に回復できる『帰回』の能力が頼もしいのだ。
無限に回復し続けるなら無限に『天籟刀:ズイカク』使い続ければいい。過剰気味に回復したのなら『師舞刀チトチヨ』に持ち替えて一気に使い切る。
衝撃が切れたら、『痛撃剣ジンツウ』の擬似スタン能力と『嵐双剣ユウダチシグレ』の攻撃範囲に物を言わせて強引に押し込めていけば自ずと衝撃の回収はできる。
この装備にも関わらず、苦戦してなんとか倒せたアフターラスボス『怨念邪神ドゥルゲート:ヴィガンサ』の恐ろしさを、理解してもらえると思う。まぁ一発でクリアしたけどさ。戦闘時間20時間超えたけど。
『確認も済んだみたいだし始めましょうか。用意はいい?』
「スンマセンあと三十秒ください! と言うか寄越せ!」
『ッッよ・・・ひょくってひょ!!』
『しゅひん! コィエひっくりぃかえってぃましゅよ?!』
『アバババババ』
状況整理。
これから始まるのは曰く、無情無慈悲なバトルロイヤル。
アフター武器性能はアフターとほぼ同等。デメリット効果の表記が以前よりも優しいから恐らく緩和されている。
回復アイテムは無し、スキル、装備の能力は発動しない。
ディア、クレイ・イドル・ヴェノは参戦しない。
リトライ可能回数は三回。
よし、気持ちの切り替え完了。つまり全員斬ればいいわけだ。QED。
「ふぅっ。綾地さん。それに皆さんすみません。覚悟出来ました」
『主任一同皆がバグってるのでアイちゃんが代わりに案内します。興奮は分離させて他のブロックで狂乱させていますので安心してください』
それのどこに安心を覚えろと? AIだからってなんでもアリとかずるくない?
『では少し空間がピカっとしますので視覚保護をお願いします』
「了解」
といっても目を瞑り、腕で顔を隠すくらいしか出来ないけど。そうやって視覚を塞ぐと、一気に気配が増えた。隠す気もない明らかな殺意と戦意。それも9つ。
『もう大丈夫ですよ藤宮さん。ご覧下さい。今回のラインナップです』
「・・・・・・うわぁ」
目を開けたその先にいたのは見覚えのあるモンスターから見知らぬモンスター、それだけでなく絶対強者感のある謎の剣士までいる。そんな奴らが俺を囲むように周囲に立ちはだかる。
『ご紹介しましょう。まず正面。鋼牙ノ獣。理性は失っていますので言葉を解しません。ちなみに弱点もありませんので頑張ってくださいな』
つまりギルファーと同個体でありながら理性がなく本能のままに暴れる鋼牙狼ってことか。普通に厄介じゃね?
『その隣、ご存知カースサイスリッチです。しかし弱点であるコアを失い、精神力のみ残っています。倒す手段はご自分で見つけてください』
弱点攻撃以外を基本無効にしていた奴から弱点を無くしたっておかしくない?
『その隣にいるゴブリンですが、油断しないでください。たった一匹で国を相手に武力で戦える実力を秘めています』
オーグの最終進化系的なポジションってことね。了解。
『そしてファンタジーの定番、ドラゴンを用意しました。名づけて『レクエイムドラゴン』。放つ死の雄叫びを聞いてしまえば最後、心を食い殺されて死にます』
ドラゴンが精神攻撃してるくってやばくない? どうせドラゴンらしくその強さは健在なんだろ? エグイ。
『ドラゴンの隣にいる騎士はNPC『マリアーデ』とNPC『アアリー』を足して二乗した実力を持つ最強の姫騎士です。くっ殺できますね』
究極姫騎士相手にそんなことできる余裕ねぇよ。寧ろあの二人足して二乗したとか悪夢以外の何者でもないよ。
『エントリーナンバー6。暴走アイちゃん時代に生み出してしまった負の遺産。名づけて『ダークアイちゃん』です。前作ラスボス『邪神ドゥルゲート』の能力そのまんまです。主任さんたちに見つからなければゴブリンイベントの真ラスボスにしてました。反省してますm(_ _)m』
あれかな? アイちゃんはプラクロをクソゲーにするつもりだったのかな? ドゥルゲートの能力って確か、幻想郷よろしく『相手よりも強くなる程度の能力』的な感じじゃなかった? しかも数が増えたらかけ算してから+10程度するんじゃかったっけ?
『ちょっと面白くなってきました♡ エントリーナンバー7。ただの人間と思うなかれ。死んでも殺しても過去から蘇る無限の命『オーバーロード』。ここにいる肉体は本体ではなく分身。本体はここではない何処かで分身とリンクして操っています。つまり倒すためには本体を引きずり出してください』
あぁ、ほかと比べると優しい。精神が死ぬまで殺し続ければ可能性あるし。けど見た目は平々凡々な戦士といった感じ。身につけている装備も特別性には見えないが、目の光が強く輝いている。
『あと二人です。エントリーナンバー8 『ダークアイちゃん』と対をなす対局の存在。『ホーリーアイちゃん』です。敵味方関係なく超絶回復してくれます。戦闘能力は雑魚低いですが永続的に回復するので強いです。死者でも蘇ります』
うん頭おかしい。速攻倒すべきは『ホーリーアイちゃん』だ。確定した。
『いよいよラスト。ファイナルエントリー。どこかの世界線から引っ張ってきた魔王。名前が存在する全てのヒーローの力を使える究極魔王。著作権が危険だったので『時空魔王』と名づけ、既存戦闘能力のみ反映しています』
うん。ほかと比べるとまだまし。ダメージ通るかは別としても。そもそもスペックがやばい。確かパンチ力キック力何十、何百tだよね? 一撃で死ぬ奴だよ。超自然発火的な能力まで持ってたりしないよね?
『そしてラスト、挑戦者藤宮さんこと、五代目剣聖アール(完全装備)です。勝てそうですかね?』
「普通に考えたら無理だと思うのが常人だと思う」
『ではあなたは?』
「勝つに決まってんだろ。有名な赤い人はいったんだぜ? 当たらなければどうという事はないってな」
防御不能な相手がいるからとりあえず回避優先。カウンターは確実に当てられるときのみ狙って、それ以外は不意打ち上等真正面から殴り合いも上等の精神で行くのが良さそう。
『一応言っておきますがバトルロイヤルです。ここの10の命が最後の一人になるまで戦い続けます。戦い方によってヘイトはそれぞれ変わりますのでご注意を。共闘するもよし、孤軍奮戦するもよし、何でもアリです』
「わかった。いつでも始めてくれ」
『じゃぁスタートです』
「っ!!」
アイちゃんのスタート宣言と共に『姫騎士』が一気に迫り、首を落としに来た。やっぱり速い。の所で防御が間に合ったが、その衝撃はかなりデカイ。一撃防いでみせたけど、衝撃がデカ過ぎて貯めきれるものじゃない。
『OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
「アッギィッ!!?」
いきなりクソデカイ咆哮が聞こえたと同時に感じた圧倒的恐怖。そして感じる、心が死んでいく冷たさ。さっき言っていたレクイエムドラゴンの咆哮かっ。
「オ オ オ オオ オ オ オ !!!!!」
こんなところで死んでいられるか!! まだ始まったばかりだろうが!!!
「痛痕を刻め!!! 『ジンツウ』ッ!!」
同じく咆哮にやられ、一瞬怯んでいた姫騎士を蹴り飛ばし、『痛撃剣:ジンツウ』を抜く。能力発動となるキーワードと共に『ジンツウ』が美しく輝きを放つ。
「『天雷重腕照月』!!」
全力でジンツウをドラゴンの首目掛けて投げつける。同じくドラゴンに迫る影があった。が、それを気にしてる余裕はない。真っ先に潰さないとゲームにならないクソ仕様の奴がいる。
「テメェだ白アイ!!!」
「『エンシェントヒーリング』〜」
身体にあった疲労感倦怠感、恐怖と言ったあやゆる負の感情、そしてダメージが瞬く間に消え去る。これだけ聞けば味方なんだがこれを敵味方識別なしで永遠とやってくるなら話は別。
しかもこの感じ、俺が受け止めた衝撃まで全部持って行きやがった。相性最悪じゃねぇか!
こいつから始末しないと全部の行為が無意味にされる。不抜けてしまうかのような可愛らしい声とは裏腹に、めちゃくちゃな奴だ。
「我が宿敵ホーリーアイちゃんを殺すのはこの私ダークアイちゃん以外許さん!! だからお前は死ね!!」
「ダークアイちゃん!! うん!! 一緒に頑張ろうね! 『エンシェントヒーリング』〜」
「ウルサイ我が宿敵!! お前を倒すのは私というだけだ!」
立ちはだかるダークアイちゃん。そして驚愕のホーリーアイちゃん回復魔法にリキャスト時間無し。糞仕様過ぎんだろうがっ!! と言うか仲良しじゃねぇかふざけんな!!
「チィッ!!!」
「逃がさんぞ人間め!!」
「みんな仲良く『エンシェントヒーリング』〜」
一撃一撃が重すぎる。が、皮肉なことに『ホーリーアイちゃん(白アイ)』の回復によって全部なかったことにされるためイタチごっこだ。
『WYAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』
「ッブネェッ!!!」
鋼牙ノ獣が背後からその牙を突き立ててきた。体を反らし回避はしたが変な動きをしてしまい腰から聞こえてはいけない音がした。
「重愛を施せ『コンゴウ』!!」
武器を持ち替えて能力解放。『帰回』が発動し痛みが消え、身体がより常に快調していく。が、想像以上に回復速度が速い。それはやはり白アイの回復魔法の効果もあるからだ。
「目覚めろ『ズイカク』!!」
過剰仕様上等だ。感覚が加速し、動きが遅く感じる。だがそれでも速い連中は多い。黒アイもそうだが姫騎士、ゴブリン、時空魔王は普通に動いてるように見えるし、ドラゴンは今も咆哮を続けている。
投げつけた『ジンツウ』は弾かれたのか地面に落ちている。ドラゴンに向かって戦いを挑んでいるのは先程名を挙げた三人。
Wアイは俺、鋼牙ノ獣が乱戦になる形で戦闘中。
オーバーロードとカースサイスリッチはお互いの肉体を引き裂きえぐり、周囲に血を撒き散らす。リッチは一応肉体はある設定なのか。
「よそ見とは舐めているな人間!!」
『WYOOO!!!』
黒アイと鋼牙ノ獣がオレに向かってくる。だけどこれなら対処は可能だ。黒アイはともかくまずは一匹殺す!
「みんな元気に『エンシェントヒーリング』〜」
「んなっ!!? っっ!!?」
白アイのアレ、俺の発動させていた『ズイカク』能力まで消しやがった!? マズイ回復容量が越える。ちぃ!仕方ねぇ!!
「ガァァッ!!!!!!」
黒アイの拳をモロに受け、鋼牙ノ獣の爪による一撃を腕にうけ大きく吹き飛ぶ。クソいてぇけど、即座に『帰回』の能力で傷が塞がっていく。
『GYAAAAAA!!!!』
「まっ!!? クソガッ!!」
吹き飛んだ先にいたドラゴンが俺を押しつぶさんと腕を振り下ろしてくる。他の連中の攻撃なんて目も止めず、俺だけを狙ってきやがった。最初の一撃でヘイト稼ぎすぎたみたいだよクソが!
「『白月』『水無月写鏡』!!」
振り下ろされた腕の衝撃を反らし軌道を変える。同時に吹き飛んでいた衝撃も使い、自分の体を吹き飛ばすように『水無月写鏡』を放つ。
回避は出来たが、立て直すまでいけない。地面に叩きつけられながら体勢を戻していく。よし転がるポイント調整完璧っ!!
地面に落ちていた『ジンツウ』を回収し、迫る気配に意識を向ける。数は二。
「これも戦い。恨むな人よ」
「さっきの恨み!!」
「『ゾディア』!!」
大きく腕を広げるように両手の『ズイカク』『コンゴウ』で姫騎士とゴブリンを迎え撃つ。激しい火花が広がり散っていく。
「んなっ!?」
「奇妙なり」
「テメェらは後回し!! 決着つけてやるから邪魔すんな!!」
『ゾディア』を正面から受けて体勢崩さなかったのは悔しいけどこの場を切り抜けるには十分だった。力の向きが変わった一瞬を逃さず駆け出す。
『GYAAAAAA!!!!!!』
「キャッ!? もぅ!! 怖いのもダメだよ!!『エンシェントヒーリング』〜」
心が凍る瞬間。消えていく恐怖。こんなもん連続で繰り返されたらいくらなんでも心が折れる。そうなる前にさっさと・・・いやまて!! これ使えるぞ!!?
俺の精神がどれだけ持つかによるけど上手くいけば少なくともふたりは落とせる。それなら!
「おい黒いの白いの!! 共闘する気あるか!!?」
「なんだお前!! さっき仕掛けてきたくせに都合良すぎだ!!」
「ダメだよダークアイちゃん!! みんな仲良くだよ!『エンシェントヒーリング』〜」
「敵の敵は味方ってやつだ!! あのクソトカゲ潰さねぇと黒いのだってきついだろうが!!」
「ちっ!! その前にこっちのクソ犬からだ!! それが条件だ!!」
「乗ったァァ!!!」
協力者確保ォォ!! 物理で倒せないなら精神で殺す作戦決行! 精神力勝負だけどこれが今出せる最・適・解・!
って訳で。
「死ねやクソ犬がぁぁ!! 『朧月光』『夢傷月』『月光花』!! 痛痕を刻め『ジンツウ』!! 嵐裁の刃『ユウタチシグレ』ェェ!! 『天翔サジット』ッ!」
『ギャインッ!!!?』
『ジンツウ』での三連奥義で刃と共に衝撃を突き刺し切り裂き、叩き込む。そうして再発動させた『ジンツウ』の能力で動きを殺し、即座に『ユウダチシグレ』へ持ち替えて首を掻っ斬る。
鉱物で出来た刃は通さなくても、風の刃なら通るんだったはずなんだよギルファーならなぁ!!
同時に邪神同等の力を持つ黒アイも俺と同じ動作で攻撃を叩き込んでいた。マジで邪神と同じ能力じゃねぇか。最悪。このあとこいつとも戦うとかマジで嫌だ。
別のやつと戦って死んでくれないかな。
「やるじゃないか人間」
「お褒めいただき光栄だよ黒いの」
けど今のでちょっと好感度上がったっぽい。少なくとも絶対的な敵意はない。警戒心はあるけどそれで十分だ。
「あぁ!! ワンちゃん!! 今助けるね! 『エンシェントヒーリング』〜」
「「おいバカ!!助けるな!!」」
こんのアホンダラァ!!! せっかく致命傷入れたのに回復すんじゃねぇ!! あぁ、せっかく倒せそうだったのに元気に完全回復しやがった。
「ダークアイちゃんもそっちの男の人もダメだよ!! みんな仲良く元気にするのが一番!!」
「「そういう場所じゃねぇよ!!」」
でも精神攻撃に切り替えたんだからこうなることも覚悟しないといけないか。クソ。マジで持つか俺の集中力。
『オオオオオオオオオオッ!!!』
『OOOOOOOOO!!!』
『GYAAAAA!!!!』
クソうるせぇ!!! 怨念と雄叫びと呪いの咆哮でうるさくて心が殺されて戦いどころじゃねぇよクソが!!! とりあえずオーバーロードとカースサイスリッチはこっちくんな邪魔だァ!!!
――――◇――――
「はわわわわわっはわわわっ!!??!?!」
「録画録画!!録画してるよねしてるよねジョニー!!」
「してるよアーサー!! しないなんてわけないでしょうが!!」
モニターに映し出される死闘で激闘で混戦で泥仕合でイタチごっこの戦い。私たちの心はもう爆破寸前よっ。
「あの子すげぇな・・・速攻精神殺す戦法に変えるとかエグすぎる」
「でも剣聖って呼ばれてるんだから真正面から勝ってほしいよなぁ」
新人くんがなんかほざいてる。まぁそう思うのがきっと強い人に向ける一般的な感性よね。否定はしないわ。私はね!!
「なんだお前ら?」
「私たちの剣聖にケチつけようってか?」
「「ゲゲッ!? WさんZさん!!?」
「そんな新人にはあの地獄の体感チケットをプレゼントォォォ!!!」
「異議ナァァァァっシ!! モーション班!! 突っ込んじまえ!!」
「「「ハッピーワールドへようこそカモーン」」」
「「えっ?!! ちょまx」」
馬鹿な奴。思ったことを口に出すのはいいけど、それを体験する覚悟がないのなら黙っているのが一番よ。まぁアイちゃんがいるから隠してても心音とかでバレるけどね。
「W、あの中の誰に繋げるのかしら?」
「当然姫騎士っすよ。くっころ体験してもらいましょう?」
すごく笑顔ね。まぁあの中で比較的精神力が弱いのはあの姫騎士だし。実力はずば抜けていても精神力までは同じじゃないわ。
まぁ陵辱調教地獄を受けても変わらない程度には強い精神があるはずだけど。あの感覚はそれとは別次元よ。
「S、あの場にいる中で一番精神が強いのは誰?」
「アールくん含めます?」
「当然」
「間違いなくアールくんですよ。次点はオーバーロード。三番目が黒アイちゃんです」
「そ、なら最終戦はそこの戦いになるわね」
「そうなんですか? 他の子もみんな強いからそうなるとは限らないんじゃ?」
「ZD。いいことを教えてあげます。物理だけならアールくんは下から数えたほうが早いです。一撃で死にます。けどケタ外れの戦闘経験と第六感。柔軟に戦い方を変えて適応する抜群の戦闘センス。約十年の歳月の中磨き上げられたそれは設定された強さを超えるんです」
「は・・・はぁ」
「常に戦いの中進化し成長する。それこそ私たちが望む剣聖のすがt・・・あぁ!!見ましたか皆さん!! 今のアールくんの動き!! ここに来て『風瓶エリシオン』が更に速くなりましたよ!!! ウヒョォォォォォ!!!!!!!」
「数値もヤベェィ!! +0.07値上昇!! うっわこれは宴じゃァァ!!!!」
「キャァァァ!!! 素敵ぃ!! 抱かれても良いぃっ!!!」
「わ・・・私希望部署間違えたかな・・・」
新人のZDが丁寧に教えてくれたOとその横で狂乱してるR、Jを見て顔を引きつらせているわね。そんなZDにぽんと肩を叩く同じく新人ZA。
ZDは同期が優しい笑顔を浮かべているのを見て何か安心していた。
「大丈夫だよZDさん」
「ZAくん・・・」
「君も直ぐに馴染めるさ!! なれたら楽しいよ!」
「・・・」
目から生気が消えてるわZD。確かZAってかなり常識人だったはずよね。Aってば何を研修したのかしら。
にしてもここに来て更に強くなるとか限界突破も素晴らしいわ藤宮くん!
「アイちゃん。藤宮くんのバイタルは平気?」
『アドレナリンMAXドパドパですがそれ以外は何も問題ないです。超マンモス健康体です。ついでに言えばダークアイちゃんと共闘を選んでくれたので、分離させた私の興奮感情が擦り切れて泣いてます』
「良かったわね」
『はい!!』
「主任! ゴブリンが落ちます!!」
――――◇――――
「あ・・・あああああ・・・・・ああぁ・・・・・」
『GYAAAAAA!!!!!』
「ダメだって言ってるでしょ!!『エンシェントヒーリング』〜」
やっと一人目! 心を食われ強制的に癒され、また食われる。そこに戦闘での精神的疲労と肉体的疲労が襲っては消え襲っては消えを繰り返せば廃人になる奴がいても不思議じゃない。
リッチとオーバーロードのどっちかが先に終わると思ったんだがまさかのゴブリンが落ちた。戦国無双的な強さがあるやつなんだしもっと強いと思ったんだがダメか。
「くぅぅっ!!」
「オラオラどうした女ぁぁ!! 動きが鈍くなってんぞぉ!!!」
黒アイちゃんは未だ元気いっぱい。姫騎士が徐々に弱っていく中確実に追い込んでいく。人型NPCはやっぱり精神的に脆いのか。
『ムンッ』
『Woooooooo!!』
『Ooooooo!!!』
「洒落せぇ!!!『恋爪レオ』『葬双ジェミニ』『非情アリエル』!!!」
時空魔王のキックは爪で軌道を逸らし、クソイヌには首の肉を裂く一閃をプレゼント。オーバーロードは自殺上等でくるので心臓を破裂させて肉片に変える。
「痛刻を刻め『ジンツウ』!!」
『GYAWOOOOOOOO!!!!!』
「嵐裁の刃『ユウダチシグレ』!! 『血眼雀』!!!」
「グオッ!!?」
クソイヌを斬った『ジンツウ』の能力開放でスタン。すぐさま『ユウダチシグレ』に持ち替え『風刃』を発動させて時空魔王の顔面を抉る。
どれくらい経過したかはしらんけど、大分視えてきたし慣れてきたしわかってきた。どのくらいで踏み込めば間合いに入れるか、どのくらいで斬れば斬れるのか。
何度も危ない場面はあったけど『エンシェントヒーリング〜』の緩い言葉で意識を取り戻し、戦い続けている。もしこれがなかったら俺多分20回は間違いなく絶望的状況だったし、五回は死んでる。
なかったらなかったで戦い方を変えていると思うからどうなるかは知らんけどな!
再び武器を持ち替えて『チトセ』『チヨダ』を両手に持つ。二度目の臨死体験、味あわせてやるよ魔王!
「悠久の絆! 『師舞刀チトセ』『チヨダ』!!」
思考が切り離されたかのように、これから先の魔王が取る行動が分かる。えぐられて失った顔を再生するためにその場から1,2m斜め右と見せかけて上に飛び、顔の時を戻すことでキズを無かったことにする。
その後、怪力に任せて拳を突き出し俺を吹き飛ばす。そのまま追撃のため駆け出して必殺の魔王キック(仮)でフィニッシュの流れ。
切り離された思考が体に戻る。同時に『天籟刀:ズイカク』と『鳳戦刀:コンゴウ』に持ち替え抜刀の構え。
「目覚めろ『天籟刀:ズイカク』、重愛を施せ『鳳戦刀:コンゴウ』。十二宮奥義『天雷風瓶エリシオン』」
「ばかn「十二宮抜刀術奥義『風瓶十二閃:天津激翔』」ガハァ・・・!!?」
『天籟刀』の能力発動下で『天津雀』に『天雷風瓶エリシオン』を掛け合わせた十二撃の居合い切り。極星十二宮並みの負荷が体を襲うが直ぐに『帰回』の効果で負荷が消えていく。
「みんな怪我してる!! 待っていて!! 治すから!! 『エンシェントヒーリング』〜」
白アイに合わせて『鳳戦剣:コンゴウ』から手を離し、『ユウダチシグレ』の柄を突き合わせ連結。
「黒いの白いの!! 怪我したくなかったら二秒でジャンプ!! 1、2!! 目覚めろ『天籟刀ズイカク』!! 嵐裁の刃『嵐双剣:ユウダチシグレ』!!」
「っぶねぇ!! もっと時間よこせや!!」
「きゃぁぁ!!?」
感覚を再び加速させつつ、風の刃を生み出し、宙返りと共にフィールド全域の足元を切り裂くように刃を回転させる。
カッコイイジャンプを決めた黒アイと、ぴょいんと効果音が聞こえてきそうなジャンプの白アイ。そのふたり以外の全員に風の刃が襲いかかる。
プロペラのように『ユウダチシグレ』回転させ、何度も何度も足元を切り裂く。手の角度と腕の高さを微妙に動かしながら、全員の身体のどこかしらを切り裂くように調整を施し何度も何度も切り裂き続ける。そうして黒白アイが着地するのに合わせて回転を止め、俺も地面に足をつける。それに合わせて『風瓶エリシオン』でリッチとの距離を一気に詰める。
『Ooooo!!!』
「死ねっ!『呪診カプリコーン』!」
顔面に両手を当て、衝撃を叩き込む。実体はあるがダメージはごくわずかしか感じないこの特別仕様カースサイスリッチ。故に自分の感覚を狂わせる『呪診カプリコーン』が効く。
あくまでも相手の三半規管を麻痺させて動きを封じる奥義だが、リッチ相手もに十分通用した。リッチなのに三半規管あるのかよとか野暮なことは無しだ。代わる何かがあるんだろうさ。
「あぁ!! またみんな怪我してる!! 任せて!! 『エンシェントヒーリング』〜」
「あああああああぁぁぁっ!! もうやめてくれぇぇぇ!!!!」
『OOOOO!!!!!』
姫騎士が発狂し、カースサイスリッチが光る涙を顔から流す。これで三人落ちた。いや、正確に言えば三人と一匹か。
『 』
「けっ、クソ犬が泡吹いて倒れやがった」
黒アイの足元に倒れている鋼牙ノ獣。こいつも参ったようだ。あと五人。ドラゴンと何度も蘇るオーバーロード。黒と白のアイに魔王。
次に落ちるとすればドラゴンか魔王だ。どちらも呼吸が荒く、苦しいという感情が表に出始めている。オーバーロードと黒アイはまだケロっとしてるから長期戦になるだろう。
「GYAAAAAA!!!!!」
「なんか慣れてきたなこの感覚」
身体の底から冷たくなる感覚。けど慣れてしまえばその程度。気力も失っていくがそこはまぁどうでもいい。ほかの全てを殺してでも勝てばいいのだから。
「ぐっ」
「嵐裁の刃『ユウダチシグレ』」
魔王が膝をついた。だから首を撥ねた。ついでにドラゴンのあご下に刃を突き立てた。噴水のように血が吹き出る。どうでもいい。どうせ死なないのだから。
「みんな元気になぁれ!! 『エンシェントヒーリング』〜」
「っとと、あぶねぇ」
心が冷たくなっていたからか淡々と作業をしていた気がする。うん。俺も結構疲れてきたっぽい。少なくともドラゴンはさっさと潰したほうが安全かも知れない。けど黒アイちゃんはいいとしてオーバーロードに邪魔されるのキツいんだよな。
こいつ我が身を顧みずって感じでずっと玉砕覚悟の攻撃してくるから対処がキツイ。数手遅れれば普通に俺死ぬし。という訳でだ。
「へいオーバーロードのお兄さん! クソトカゲ倒すまで停戦する気はあるかい?」
『俺は俺の前に立ちはだかる奴を殺すだけだ』
「つまりどゆことか教えてくれや」
このお兄さん? 声が二重に聞こえる上に厨二病よろしく言ってることあんまりよくわからないんだよ。
『お前の言葉を聞く理由はない』
「やっぱりダメか・・・黒アイちゃん!! オーバーロードの相手頼むぜ!!」
「命令すんじゃねぇ!!」
『来るなら殺す』
「喧嘩しないでよぉ!! 『エンシェントヒーリング』〜」
Wアイちゃんがオーバーロードに集中してくれた。ありがたい。これでこっちは物理系の相手に集中できる。完全に信用はしないけど。
「・・・おいドラゴン。死ぬ覚悟は出来たか?」
『!!? GYAAA!!!!!!!』
意識を周囲に向けつつ、呼吸を整え殺意を表に。心が疲労しているドラゴンは簡単に俺の挑発に乗り、咆哮ではなくその鋭い爪を振り下ろす。
「桜華乱滅流焉武『強者ナド世界ニハ存在ゼズ、弱者ノミデアル』」
爪の一撃を回避し、腕を駆け上がり首筋に一閃、そのまま駆け抜けて片方の眼球を抉る。瞼が閉じられたので離脱しながら鼻頭に深く深く『ジンツウ』による傷を付ける。
皮膚だけを開くように刃を突き立てて地面まで降りていく。ドラゴンが悲鳴を上げる前に距離を取り終焉を告げる。
―――終焉の世界に強者はいない。すべてが弱者、すべてが敗北者。
―――すべてが愚かな悲しき存在。それを理解し受け入れよ。
―――受け入れたものにのみ。唯一の救いが訪れる。優しき終わりはやってくる。
「・・・・痛痕を刻め『痛撃剣:ジンツウ』」
『 !!!!?!??!!?!?』
能力が発動しドラゴンが地面に崩れ落ち、顔と首を掻き毟る。相手の呼吸に合わせ攻撃することで、最低限の痛みのみを感じさせる焉武。そしてその全てを一気に解放する『痛撃剣:ジンツウ』との相性は言うまでもないだろう?
「あぁ!! ドラゴンさん!! 待っていて!! 今治してあげる!!『エンシェントヒーリング』〜」
「おまけだ受け取れや七ノ型『初月』っ! 痛痕を刻め『痛撃剣:ジンツウ』っ!!」
『 ??!?!?!?!?』
回復と同時に全く同じ首筋に一閃を叩き込む。癒えた瞬間同じ痛みに襲われる。辛いよな。安心した途端にまた同じ痛みが来るんだから。うん。やってることエグすぎるな俺。
だけど、今回の一撃がついにドラゴンの心をへし折った。
『GYAAAAA!?!??!?!!!!』
最初の強者感は何処へやら、地面を這うように俺たちから離れていくと、体を丸め震え始めた。あと四人。
「ムォォォ!!!」
「視えてるよ魔王!! 目覚めろ『天籟刀:ズイカク』!」
ものすごい速度で駆けてくる魔王。ある距離で跳び上がり前方宙返りをしてから必殺のキックの体勢に入った。上等だ。回避するのが安定なんだがここは男らしく正面から迎え撃つ!
ちょっとエグい戦法取りすぎてる自覚あったし、ここらで一旦気分転換させてもらう!!
「デェェェェラァァ!!!!!」
キックの体勢が出来たと同時に後ろに謎の龍が浮かび上がった。そして火球を放つと、その火球と一つになった魔王が飛んでくる。ミラーワールドのドラゴンナイトかよ。好きだけどもさ!
「超越月光流十二宮奥義『天星脚アクエリアエリシオス』!!!」
全身に残る全衝撃を乗せて大上段から迫る魔王目掛けて回し蹴りを叩き込む。龍と甲虫のキックどっちが強いかやってやろうじゃねぇか!!
キックから聞こえてるとは思えない激しい衝突音が周囲に鳴り響く。力に関して言えば間違いなく俺が負けてるだろうさ。だが知ってるか魔王!!
「天の道を行く男の一撃は砕けねぇ!! そして!! 月光流は俺の誇り!! 二人の男の魂の篭った必殺技!!砕けるもんなら砕いてみろやぁぁ!!!!!」
「おおおおおおおおっ!?!?!??!」
相殺、いや! 魔王の必殺技粉砕!!
必殺キックが魔王のキックを超え、魔王は空中で無防備を晒す。俺は回し蹴りの勢いを乗せてそのまま一回転。握った拳にもう一度すべてを込めて一気に叩き込む。狙いは一点! 顔面だぁぁ!!!
「超越月光流十二宮奥義『月翔恋サジタリオ』!!」
「ゴォォッ!???!」
衝撃の爪と共に、その顔面をぶち破りぶっ飛ばした。遅れて響く、何かが弾けた音と共に、周囲に赤い雨を降らせる。決まった。
偽物・・・と言うか力(物理)だけをコピーしてたから戦えたけど能力全部持ってたら無理ゲーだった。あと主人公たちの強い心まで持たれたら無理。
「あぁ!? 今助けます!! 『エンシェントヒーリn「いい加減やめろ」ぐ・・・・・ぇぇっ・・・?」
「ほ・・・ホーリーアイちゃん!!」
黒アイちゃんの悲痛な叫びと共に、ぐったりとしていく白アイちゃん。その腹部にはいつの間にか距離を詰めていたオーバーロードの腕が突き刺さっていた。
「これ以上お前の偽善を見せるんじゃねぇよ」
「ぁ・・・ぃま・・・・な・・・し・・・・か・・・・・・『エンシェントヒー」
「死んでおけ」
「やめろぉぉぉぉ!!!!!!」
黒アイちゃんが駆け出すがオーバーロードのほうが早かった。死んでも蘇ると言っていた白アイちゃんが死んでいく。肉体も精神も。まるで消えていくように。
「やるよ」
「っっ!!」
黒アイちゃん目掛けてオーバーロードがその亡骸を投げ渡した。咄嗟に受け止める黒アイちゃんだが、その顔を見れば白アイちゃんがどうなっているか、理解できた。
にしてもほぼ不死身の白アイちゃんを瞬殺とかオーバーロードやべぇ。そんなことを頭の片隅で考えていると。黒アイちゃんが細々と何かを口ずさむ。
やがてその亡骸を地面に置くと先程までの顔付きから一転。昔見た邪神と同じ顔に変わっていた。
《《おい暫定協力者。死にたくなかったら手出しすんじゃねぇぞ》》
「っ・・・わかった」
その声を聞くだけで震え上がりそうだった。それだけの怒気と憎しみがこもった声だった。アイちゃんが言っていた邪神のコピーというのはやっぱり伊達じゃない。
そしてそれを聞いても平然としているオーバーロード。このふたりのどちらかと俺は戦う事になるのか。勝てるのかこれ。
いや、弱気になるな。それじゃぁ勝てる戦いも勝てなくなる。
「そっちの男は腰抜けか。この状況で動けない奴は・・・死んでおけ」
「っ!! てめぇっ!!?」
野郎俺をターゲットにしやがった。一瞬で距離を詰められ真っ赤に染まった腕が突き出される。なんとか弾き飛ばしたものの一体どういう芸当でこの距離詰めやがった? 一体何を使いやがったんだ?
「なんだ。戦えるじゃないか」
「ったりめぇだ。なめんな」
《《この私を無視か。なら死ね》》
「っ!!」
全身の筋肉を総動員してその場から転がるように逃げた。直後、オーバーロードの男が蒸発した。黒アイちゃんの手から伸びる白い光。目視できる『風刃』とでも言うべきそれは高熱を帯びている。離れているのにその熱を感じた肌が焼け焦げるように感じているから。
「つよいな」
「マジかよ」
オーバーロードの男は空間を裂いて別の肉体で現れた。傷一つない綺麗な姿。こっちもこっちで化物すぎるだろ。
《《何度でも殺してやる!!》》
「その前にお前を殺そう」
化物二人の戦いを、俺はとりあえず観戦することにした。
――――◇――――
「「「「「うっわぁ・・・・・」」」」」
「ちょっと、誰よオーバーロードの設定考えたの」
「あ、私です。少し前にプレイした美少女ゲームに感銘を受けたので!」
「ZDっ!!?」
この子新人ながら素質があるわ。プレイヤーを恐怖のどん底に落とす発想を今後も出してくれるでしょうね。
『まさかダークアイちゃんを覚醒させてしまうなんて・・・これは私の勝利ですね!』
「いえいえアイちゃん! 私のオーバーロードは無敗なんだからね!! ジ・オー〇ーがないなら負けませんので!!」」
『その前に心をへし折りますとも!!』
「折り返すんだから!!」
生みの親同士が我が子自慢に入ったわね。でもこれ実際ヤバイでしょ。あの黒いアイちゃんの手の光は触れれば即アウト。ほかの能力は生き残ってる人の能力をコピーだけど、それにしたって危険すぎる。
あのオーバーロードもZD曰く専用能力無いと攻略不可能って・・・・・・・・・面白すぎるじゃない。藤宮くんがどう出るか楽しみすぎて仕方ないわ!
――――◇――――
《《死ね!! 死ね!! 死ねぇぇ!!!!!》》
「何度やっても同じだ」
イタチごっことは少し違うかも知れない。殺されてるのは一方的にオーバーロードだ。にも関わらず黒アイちゃんは追い詰められている。
攻撃能力では圧倒的に黒アイちゃんが有利だ。防衛能力も優れている。にも関わらず追い詰められている。
それはたった一つ。心に余裕があるかないか。精神力の強さに他ならない。オーバーロードの男の精神力が異常すぎる。
何度死んでも前に進み続ける異常な精神。淡々と勝つためだけに繰り返す作業には狂気を感じる。
邪神のスペックをコピーしても、精神はコピーしていなかったのか、いや、これ邪神も泣くわ普通に。実際黒アイちゃんの目には涙が浮かんでいる。
白アイちゃんが殺された悲しみと、多分目の前にいる怪物への恐怖。じわじわと心を殺しているんだろうな。
《《死ねよ!! 死ねってば!! お願いだから死ねぇぇ!!!!》》
「無駄だ」
死んでもどこからともなく現れる新しいオーバーロード。そしてついにアイちゃんの心に罅が入った。
《《あれ・・・なんで使えない!!?》》
光が収束し、消えたのだ。そしてペタンと座り込んでしまった黒アイちゃん。自分でも何が起きたのか分かっていないみたいだ。
「さっきの奴と同じように殺してやる。死ね」
《《っっ!!!》》
――――◇――――
『ダークアイちゃん!!?』
「よっしゃぁ私のオーバーロードの勝利!! 勝利のブイ!! このままアールくんからも勝利をもぎ取っちゃますからね皆さん!!」
やれやれ、全く新人のZDったら調子に乗っちゃって。みんなも同じ気持ちなのか隠さずに『┐(´д`)┌ヤレヤレ』って反応をZDにしているわ。
「ちょっ!!? なんですかその反応!! この勝負もらったも同然です!!」
「昔の俺たちを見てるようだぜルーキー」
「そうそう。私たちだって『流石にこれは無理だな』『まぁそう設定したし』って考えてたことがあったなぁ」
困惑するZD。まぁ確かに自分が思いついた最強キャラがここまで強ければ有頂天になっても仕方ないわね。でもね?
「覚えておきなさいZD。私たちの剣聖様は常識も確証も全部ひっくり返すのよ」
「え?」
「見なさいモニターに映る光景を」
さぁ、本番よ。ZD。一つ教えてあげる。
「貴女の子供はアールくんに手の内を見せすぎたのよ」
――――◇――――
《《・・・・ふぇ?》》
ボトリと腰から胴体がずり落ち肉片に変わる。こんなもんか。防御力は全くない。何度も蘇る性質を生かした自爆特攻のみ。あと注意すべきはあの瞬間移動か。けど大体わかった。
「無事だな黒アイちゃん」
《《な・・・なんで? 助けてくれたの?》》
「おいおい黒アイちゃん。暫定協力者って言ったのは君だぜ? 協力者を助けるのは当然だろ?」
後ついでにオーバーロードの態度が気に入らない。命を粗末にして戦う戦い方がやっぱり気に入らない。
「ちょっと失礼」
《《なにするのだぁ!!?》》
黒アイちゃんを俵のように担ぎ上げてそそくさとその場から避難。同時にそこから出てきたのはオーバーロード。やっぱり死んだ場所からしか出てこれない可能性が高そうだ。
「死にたくなったのか?」
「いいや、殺したくなったんだ。お前を」
「つまらない男だったのか。もう少しまともな返答を期待したんだが・・・」
後ろだな。
直後姿が消えた。同時に俺は後ろへ『天籟刀:ズイカク』を振るう。肉に刃がくい込む感覚、そのまま刃を進め切り落とす。
《《へっ?》》
確認せずまた移動。今度は先程オーバーロードが出てきた場所。そうして振り返れば、今死んだ場所から別のオーバーロードが姿を現した。
その表情は変わらない。だが多少興味を示したようだ。無言のままだがまた飛ぶな。今度は右。
姿が消えたと同時に『天籟刀:ズイカク』を右につきつける。そうして刃が脳天を貫き身体が硬直する。振り払い死体を確認し、またさっきの場所に戻る。予想通りまた今死んだ場所に戻ってきた。
《《何が起きてるのだ!!? 私にも説明しろ!!》》
「後で教えてやるから待っててな?」
以降はこの繰り返しだ。飛ぶ。殺す。移動する。出てくる。飛ぶ。出てくる。殺す。移動する。淡々とこれの繰り返し。オーバーロードも俺もこれを繰り返し続ける。
持つ武器こそ『鳳戦刀:コンゴウ』と『天籟刀:ズイカク』を交互に使用しているがそれだけだ。
何度も何度も殺し続ける。作業のようにずっと永遠に。
――――◇――――
「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・」
ようやくオーバーロードが息を上げ始めた。何回殺したか分からないが既に足元は真っ赤に染まりきっている。邪魔な死体を蹴散らし、、まだ生きていた参戦者もついでに殺し、残るは担いでいる黒アイちゃんと俺、そしてオーバーロードだけだ。
そしてもう数えていない何度目かの攻撃。上。扇状に刃を振るえば、現れたオーバーロードが真っ二つになり血の滝を俺たちに降らせた。
そしてまた移動。そうして再度出現したオーバーロードは相変わらず死んだ場所から出てきた。
「黒アイちゃんもうわかったろ? あいつは死んだ場所から多少動けるが、その範囲でしか新しい体を出せないんだ」
《《そ・・・それはわかったがお前!! 怖くないのか!!? あいつもう13987回も出てきてるのに!!》》
黒アイちゃん意外と豆だな。数えてたのか。10000回超えてたのか。思ってたより多いかも。
「大丈夫だ。体力も全然持つしタネが解かれば怖がる必要はないよ。あいつは何度も分身をこの空間に送り自分で操作してる。分身も人間よりもかなり強い身体能力と瞬間移動が使えるみたいだけど、逆に言えば”それだけ”だ」
《《そ・・・それだけってお前!!? 言ってることがわかってるのか!!? つまり勝てないんだぞ!!?》》
「そうだよ? だけど負けることもない。実力差は明らかだ。それとも黒アイちゃんは俺が負けるとでもっと」
《《あっ》》
話の最中に飛んだからちょっと後ろに下がり足元に刃を突き立てる。生えるように出てきた頭から足までを串刺しにして死体を放り投げる。これで確かえっと・・13988回目だっけ?
「俺な? 作業プレイとか普通にできる人間なのよ。集中力だけは誰にも負ける気がしないし」
《《だ・・・だがもう5時間以上この繰り返しだぞ!!? これ以上はお前だって!!》》
「心配しなくていいよ? 20時間くらいならこれ以上激しい戦いを繰り返してたんだ。この程度なら70時間は戦えるぜ俺」
測ったことないからしらんけど。このペースなら問題なし。エクスゼウスから『鳳戦刀:コンゴウ』っていう回復チート武器も借りてるし。
「・・・ば・・・化物が・・・」
「お前が言うな」
《《お前もだ協力者!! 寧ろお前が一番化物だ!!!》》
ひでぇや。
「でも黒アイちゃん今俺もこと信用してくれてるだろ? それだけでここまでの時間の価値あるぜ?」
《《何言ってる馬鹿!! お前が殺されたら次は私だから手出ししてないだけだ!!》》
「それでもいいよ。ほいお疲れさん」
クルリと身を翻し、背後に出てきた所を斬り裂く。今度は趣向を変えて達磨にしてみた。
「っっ!!・・・・・っ・・・・・・・・・・・・」
出血多量で死亡。その後また出てきた分身。だが直ぐに消えた。復活直後の攻撃に出たか。
「甘い」
黒アイちゃんを担いでいる死角にはいる所から登場したので首を半分だけ斬り、少し移動。そのままベチャベチャと足音を立てて移動し、新しいのが出てくるのを待つ。
《《わ・・・私はお前が怖いぞ!!》》
「知ってる。ちょっと震えてるし。でも大丈夫! 黒アイちゃんには攻撃しないよ。今は」
《《今は!!? じゃぁ後々攻撃するの!!?》》
「するかもね〜」
《《やだー!! 怖い!! お前怖いからヤダー!!!》》
「いい子にしてたら攻撃しないから静かにしててくれよ〜? んでもってご苦労さん」
登場と同時に飛んできたのでまた斬る。肩から腰にかけて斬られた身体はズルリと滑り落ち死体に変わる。と言うかオーバーロードへの勝利条件なんだろう?
このペースだと死亡とか精神崩壊じゃなさそうだし。もしかして倒した数か?それならありえるかも。とりあえず20000目指してみるか。
とか思っていたのに、次に現れた分身は力なくズルリと滑り落ち、地面に横たわった。え? これ罠?
「オペレーター黒アイちゃん! オーバーロードの様子が変であります!」
《《オペレーターとは何だ!!? でも多分絶対違うからそう呼ぶな! あと見えないから見えるように向き変えて!!》》
「へーい」
《《頼んでおいてその反応はおかしい!!!》》
オペ黒アイちゃんにその様子が見えるようにすると、アイちゃんはオーバーロードの様子を凝視したあと口を開いた。
《《感じない。あれからは魂を感じない。感覚だけど多分逃げたな》》
えぇー。逃げるとかアリかよ。追いかけるのは無理だぞ俺。そういうファンタジー能力は持ってきてないの。まぁスキル持ってこれても、そんなの持ってないから・・・あ。
「オペ子ちゃん。魂の大まかな場所分かる?」
《《オペ子いうな!! あと今だから言うけど私はダークアイちゃんだ!! まぁわかるけど》》
「教えて」
担いでいた黒アイちゃんを降ろして腰に剣を持ってくる。衝撃は十分ある。いけるな。
《《あの辺だ。けど私も干渉できないからな? 流石に無理だ》》
「場所さえわかれば大丈夫だ。ちょい後ろに下がっててな?」
《《う・・・うん》》
精神統一。魂を感じるとかそういうのはないけど、黒アイちゃんの言葉を信じ、そこにあるすべての空間を意識する。呼吸を整え身体に同調させる。構える『天籟刀:ズイカク』と狙う空間に全神経を集中させる。
「月光真流究極奥義!!『天月海放』っ!!!」
持てる全てを刃に乗せて放つ一撃。文字通り全てを切り裂く破壊の刃は前方の空間を切り裂く。
「ふぃ・・・どう?」
《《ふぇ・・・ふぇぇ・・・魂がきえたぁ・・・・》》
どうやら成功したみたいだ。やったぜ。前にコヨミ助けるときに使ったこの究極奥義。確か空間もぶった切った記憶あったから、もしかしてと思ったんだけど上手くいったみたいだ。
これで残るは二人。俺と黒アイちゃんだけだ。だけなんだけど・・・・・・
「うーん・・・困った」
《《な・・・何がだ? もう倒したんだよ? これで残ってるのは・・・・あ》》
気づいたようだ。これは最後の一人を決める戦い。となれば黒アイちゃんと俺が戦うわけなんだが、これはダメだ。一緒に仲良くしてたから情がでた。
気づいた黒アイちゃんはプルプル震えてるし俺の心情的に敵意のない、戦意のない相手、しかも悪いことしてた訳でもない相手は斬れん。となればだ。
「ダークアイちゃん」
《《ひぃっ!!?》》
「俺を殺していいぜ」
《《嫌だ死にたく・・・・はへ?》》
黒アイちゃんが目を見開いて驚いていた。
《《な・・・何言ってるんだ!! どう考えてもお前の勝ちだろ!!?》》
実際そうなんだろうけど。うん、むり。情が出たんだ。無理に決まってる。少なくとも今の黒アイちゃんを俺は斬れん。
それに戦い方はわかった。あと二回はリトライ出来るし何とかなるだろう。とりあえずドラゴンとオーバーロードから集中的に殺していけばなんとかなる。ちょっと休憩くらいはさせてくれるだろう。
「いやぁうん。おれこれいじょうたたかえないわー。まけたわー」
《《うそつくな!! お前さっきまだ戦えるっていってた!! 覚えてるんだからな!!!》》
意外と覚えてるのな。忘れてくれればよかったのに。
「でも実際一人になるまで終わらない。それに勝てば黒アイちゃんの願いが叶う可能性だってあるんだぜ? こんなやばい戦いだったし」
《《そ・・・それは・・・そうだけど・・・》》
「心配すんなって! 俺はあと二回チャンスある・・・ってこれメタ発言だな。ともかく気にするな。な?」
《《・・・・・・》》
あらら黙っちゃった。
《《おい創造主ども!! 聞こえてるだろ!! 私は負けだ!! 勝ったのはこいつだからな!! 私の願いが叶うならこの戦いの勝利者をこいつにしろよ!!! わかったか!!》》
「アイちゃんなにを゛っ・・・・」
《《ばか・・・死んで頭を冷やせよバカ》》
なんだよアイちゃん。泣いてるのか。気にすんなって言っただろ? 俺はただの挑戦者。珍しくリトライ可能だしなんとかなる。けど多分『鳳戦刀:コンゴウ』は没収されるだろうな。
これ禁止だろう絶対。とか考えながら俺は最後にアイちゃんの頬を撫ぜながら意識を手放した。
――――◇――――
《《・・・おい聞いてたろ創造主!! あと私の分身!! 私の願い叶えろよ!!!》》
モニターの向こうでダークアイちゃんが涙を流しながら、アールくんの死体を抱き抱えて叫んでる。
「じゅ・・・じゅじん〜〜!!!!!!」
「わばっでるばよぉ〜!!!」
こんなの泣くに決まってるでしょう!! また挑戦できるとは言えこの長時間戦闘の結果を、対戦相手の女の子(AI)に譲ったのよ! 勝利確定だったのにぃ〜!!!
『主任。私の新しい感情。悲しみが悲鳴をあげました! アールさんのクリアにしていいですか?』
「きょかするわぁぁぁあああ!!!!」
「「「「「「「「「「いぎなじぃぃぃ!!!!!!」」」」」」」」」」」」」
とりあえず泣き止むまでは藤宮くんの精神の眠らせておいてあげないと。こんな顔見せたくないもの!
――――◇――――
意識が戻る。戻ってきたみたいだ。周囲にはエクスゼウスの皆さんがコンソールを弄っている。お仕事してるみたいだ。そう言えばまだプレイヤー全員の意識が眠った状態だったっけ。戻す作業も大変そうだ。
「おかえりアールくん。お疲れ様。どうだった?」
笑顔で出迎えてくれた主任Xさん。どうやら楽しい戦いを見せることはできたようだ。よかったよかった。
「スゲェ楽しかったですよ。きつかったけどあれくらいの戦いってなかなか出来ないですからね」
クソゲー感あったけど。でもまぁ総合評価は大満足。相手は強いし理不尽だし。でも攻略法はちゃんとあるし。程よい感じが俺はした。
「そう。それじゃぁクリア報酬を贈呈と行きましょうか」
「「「「「「「「「「「「「「「イェッサー!!!!」」」」」」」」」」」」」」
びっくりしたっ!!? 急に全員立ち上がってこっちを振り向いたんだからそりゃ驚くよ。と言うかビビる。
「え? でも負けましたよ俺」
《《私の言ったこと忘れたのバカ協力者!!》》
「いてっ・・・黒アイちゃん?」
いつの間にか俺の隣にやってきた黒アイちゃん。その隣には白アイちゃんがのほほーんとこんな顔『( ̄ω ̄)』で立っていた。
『これはこの場にいる全員で多数決を取った結果です! つまりあれはクリアしたとみなしていますので』
普通のアイちゃんがチョコンと出てきた。その手には報酬と言われていたスキル習得の書らしき物がある。
すると黒アイちゃん。ズカズカと歩いてアイちゃんに近づくと、それを奪うように取ると、ズカズカとまた歩いて俺の前に来た。
《《受け取りなさい協力者!! 受け取らないなら無理やり押し付けるわよ!!》》
『わぁ〜ダークアイちゃんがツンデレさんだぁ。デレデレさんだねぇ〜』
《《うっさい白いの!! ほら早く受け取りなさ・・・あんたたち何ニヤニヤしてるのよ!! 消すわよ!!!》》
皆さん超暖かい視線を黒アイちゃんに向けている。黒アイちゃんは猫が威嚇するかのごとく『シャー!!』と聞こえてきそうに威嚇してる。猫耳つけたら完璧だな。
「ありがとう黒アイちゃん。受け取らせてもらうよ」
《《当然よ!! 勝ったのはあなたなのだから》》
――――◇――――
・『UtS:極星』を習得しました
――――◇――――
『UtS:極星』
・月光滅流極星十二宮奥義を習得したものに与えられる特別な力。24時間に一度だけ、極星十二宮奥義による反動を無効化する。そして、一人の少女の強い思いが奇跡を起こした。この力は技に磨きが掛かれば掛かるほど、強化されていく。
――――◇――――
すっげぇ。マジで使っていいのか極星十二宮奥義。しかもまだ強化されるという超絶ボーナスまでついてる。と言うかこの少女ってもしかしなくても・・・
《《感謝しなさい協力者!! そうよ!毎日私にお礼をするくらい感謝しなさい!!》》
『わが娘(仮)ながら恐ろしいですね。アールさんに毎日会いたいとは』
《《んなっ!!? ちがっ!!? わたしゅは!!?》》
なんか変なフラグ回収したみたい。このことは絶対リークたちには黙っとこう。ともかく、色々あったイベントはこれでようやくクリアとなった。
それと、今後やることも出来た。極星十二宮も極めるために毎日使っていこう。目指せ24時間に三回! 数字に特に意味はないけど。
《《うがぁぁ!!!!! その顔やめないとみんな消すわよ!!!》》
『ダークアイちゃん。消しちゃったらアールさんに会えなくなっちゃうよ〜?』
《《あぐっぅ・・・じゃ・・・じゃぁぶつわよ》》
「「「「「ご褒美ですありがとうございます!!!」」」」」」
《《ひぃ!!》》
黒アイちゃんもこれから大変そうだなぁ・・・
驚異の20000文字超。
今回は正直めちゃくちゃ感想欲しいので宜しければお願いします。




