277:散っていった命へ
キンクリキンクリ
怒らないでください。書いてて同じ展開だったので端折りました。ごめんなさい。でもイメージは特異個体(人型)との連戦です。そりゃ無傷なわけがない。
塔へやってきた者たちとの戦いから既に一週間ほどが経過した。初日にはABCの三人が戦死し、翌日にはDEが、その翌日にはFGHが、また翌日には・・・といった感じで、共に蘇った者たちが死んでいった。
そして皆最後は満足気な顔をして死んでいったという。本当に酔狂な連中だ。ここから逃げ出して第二の生として生きる選択肢もあったというのに。
「・・・残っているのは?」
「こちらは5人、彼らは恐らく30人程度でしょう。散っていった彼らが最後まで貴方の為に戦った十分な結果と私は思います」
5人。最初にいた時よりも遥かに少ない。あれだけ多かった者が、この塔の中で戦い、そして死んでいった。それもこの結末を知った上で、自分たちで望んで戦ったのだ。
「本当に・・・馬鹿な奴らだ」
「えぇ、全くです。ですがこの選択に後悔がない事も事実です」
「言わずともわかっている」
”本来なら”この場所にいるはずだったのは”俺ただ一人”だったはずだ。にも関わらず、酔狂な奴らが共に蘇り、俺のためにもう一度命を使うと言ってきた。それが彼らの選択ならば、俺は何も言わない。
「我々の望みは不変です。貴方と相対するものが、貴方に相応しい者であるために、我らが望む世界に君臨する貴方のために、私たちは至高の道をつくる礎になりましょう」
「余計なことを・・・と、言ってやれないのは俺の甘さ・・・いや、あいつに諭されて変わった俺の可能性というものなんだろうな」
最後の瞬間。俺らしくもなく『アール』に夢を託した。だが託されたと頷いてくれたあいつの顔を見て、『アール』なら必ずやってくれると安心したことに関して、悪い気はしなかった。
「そんなことはありません。貴方が誰よりも優しく、誰よりも理想のために戦える人間だと知っているから、私たちは貴方の為にこの命を使えるんです」
「・・・夢のために世界を壊そうとした男についてくる馬鹿な連中は、世界中探してもお前たちくらいだろうな」
「それは自慢になります。そして今生もまた、貴方の望む事のために戦えるのです」
「・・・お前達が選んだのなら俺は何も言わん」
余栄なお世話だと、払いのけるのは簡単だが、俺自身、俺のために戦ってきた身勝手な男だ。彼らが自分で選び、貫く命を貶すことなど俺はしたくない。だが・・・
「アルトス様、どちらへ?」
「いい加減待ちきれない。俺の方から出迎えても文句はないだろう?」
「っっ!!? では!!?」
「残っている奴らを集めろ。今日で”終わりにする”」
最後に俺だけが残るのも味気ない。どうせなら俺の死を、俺という存在を彼らに魅せるのも悪くはないだろう。
――――◇――――
攻略は私たちが思っていた以上のものだった。フロアごとに出てくる相手は基本的には一人。もしくは一体のモンスターのみ。
モンスターに関してはさほど問題にはならなかった。もちろん、被害が無いまま倒せたわけではなかったけど、それでも数人が犠牲になっただけでフロアの攻略が成功したのは良かった。
でも問題は、モンスターではなく、人のほうだった。登場するフロアマスターとでもいうのだろうか。私たちの前に立ちはだかる彼らの強さは私たちの遥か先に位置する人ばかりで、正直倒せたのは奇跡的なのではないかと思う戦いが相次いだ。
特に恐らくフロア階層的にも終盤に当たる現在まで戦ってきた相手は励久の全力ほどではないかもしれないが、皆とんでもない反射神経と判断力を兼ね備えた相手ばかりだった。
一人落とされたと思ったら、既に二人三人と彼らにやられていなくなった。『攻略させる気がないんじゃないか?』と思ったのは何度もあるけど、それでも前に進まないと、状況の打破ができないのも事実。
現在残っている33人の仲間たちも残り4フロアに待つ相手が人でないことを祈っているのは、口にせずとも察している。
そんな私たちを裏切って怪物を配置して来るのがエクスゼウスのいやらしい所だとは思うけど。ともかく攻略する以外に私たちができることはない。
私もここまで率いていた責任もあるし、残り4フロア攻略の為にできることは何でもするつもりではいる。励久に仮想現実とはいえ二人っきりでいられた時間もあったわけだし。
「おい」
「ん? 何?」
「向こうのヤツらがアンタにもってけってさ」
「そう。ありがとう」
どうやら今日の調理係はゴリラらしい。串に肉を刺して焼いたもの。何肉なのかは言及しないでもいいや。とりあえず、いただきます。
豚バラ肉に近い食感と味だ。オークか何かを倒してきたのかな? 一口食べると、どうやら食欲が促されたみたいで二口、三口と口に進む。うん。結構美味しい。
「その・・・あれだ。無理すんなよ」
「何よ。私が無理してるように見えてるの?」
「・・・まぁ・・・な。俺含めて皆を引っ張ってきたのはアンタだ。上に立つ時の苦悩は知ってるつもりだ」
そういう彼、『剣部 零司』という名前の彼は空を見上げながら呟くように言った。他にもリアルネームなのか、はたまたどこか捻りを入れたのかはわからないけど、日本人の名前で参加している人が最初は30人ほどいた。
「別に辛くはないわよ。”慣れてる”し。それよりもアンタらよ。一人やられた時はかなり動揺してたじゃない?」
「そりゃそうだ。いくらこの空間では死なないと言っても、痛いものは痛いし、目の前で知人が死んだら取り乱すさ」
「貴方はそうでもなかったみたいだけどね」
「・・・覚悟はしてたからな。それに・・・こういう事は慣れている」
「あっそ」
今では剣部含めてわずか7人まで減ってはいるけど。本人たちから直接聞いたわけではないけど、転移系RPでの参加者らしく、かなり凝っている。まぁ珍しいといえば珍しいけど、RP自体はそこまで珍しくない。
最近は行っていなかったけど、帝都でも騎士団ロールで遊んでいるプレイヤーもいたし。名前が『なめこダイナマイト』とかいう変な名前だったのは覚えてる。
そんな訳で、皆特に突っ込むこともせず、『凝ってるなぁ』程度の認識で彼らと接している。こういう時でも役に徹して楽しめるのはイイ事だし。実は役者さんで演技練習も兼ねているとかかしら?
まぁどちらにしても帰ったら全員”調べておこう”。今回のイベントでは”結構な情報収集”も出来たし、もし仮に励久に害を成す相手なら処分しないとだし。
励久にバレたら怒られる・・・よね? でも調べるだけだしいいよね。うん。だって励久のタメになることだもん。
「明日はどうするんだ?」
「もう後がない。30人でも1フロア攻略がギリギリになるんだから、明日で”勝負を決める”。勝っても負けても恨みっこ無しよ」
正直ここまで来ると作戦も何もない。残る全員で行けるところまで一気に攻める。本心は、誰か一人・・・いや、”一人だけ”残ってしまった場合、おじけづいて攻略をしない可能性もある。
だったら勝利か全滅かの二択にしてしまった方がいい。私は負けるつもりでは戦わないし、死ぬつもりなんて毛頭ない。同時に攻略を止めるつもりも微塵にない。
けど、全員が全員同じとは限らないし、逃げれば逃げた分だけ、そいつだけが強くなる可能性もある。そういうのは許さない。まぁそうなったらエクスゼウスの方で処分するとは思うけど。
「俺も賛成だ。もしも不満があるやつが出た時は俺も手伝う」
「安心なさい。不満なんて言う奴が居ようものなら、戦う以外のことを考えられなくしてやるから」
「・・・アンタ、かなり危険人物扱いされるんじゃないか?」
「そんなの今更よ。寧ろ”私たち”が普通だと思っている奴らの方が少ないわよ」
実際掲示板では『敵に回すと社会的に消されるのでは?』とか『生命剥奪権を常に握っているヤバイ組織の一員』とか言われてるし。あながち間違いではないからいいのだけど。
励久に関しても『ナノマシンを脳に持つ新時代の人間』とか『歴史的偉人の生まれ変わり』とか言った噂も流れていた時期もあった。どっちも創作物の見すぎ読みすぎ・・・とは言い切れないのが現状なのだけど。
実際エクスゼウスは裏ではナノマシン開発に成功していて、身体にナノマシンを持つ新しい人類への進化に成功しているとかっていう噂も一時期あったし。
励久が『剣聖物語』に夢中になったとき、害がないかを確認するために調べては見たけどそんな危険なモノはなかったのでとりあえず放置。投資はしておいたけど。だって励久のあんなに楽しそうな顔を見せてくれたんだし。
「なんというか、現実離れしてるな」
「寧ろ現実離れする方が楽しむコツよ。辛い苦しいと思うより、楽しい面白いって感情の方が心にはいいでしょ?」
「・・・・・・・・・」
「何よ?」
「いや、俺の友人に似ていると思ったんだ。アイツも前向きな奴だったから」
「やられた奴にそんなのいたかしら?」
「いいや、”ここにはいない”ヤツだよ」
「そう」
剣部はどこか悲しげに、でも懐かしむように空を見上げ、手を伸ばしていた。もしかして、故人の話だったのかしら?
ヒロインと主人公(?)の他愛のない会話。




