256:クラン『剣星』。全員生存での初勝利
倒したら宴会。相場で決まっている
「いやはや、まさか僕らが全滅したあとでクリアされるなんてね。アールくんがいたとは言え、誰ひとりかけることなくクリアされちゃ僕らは何も言い返せないね」
「でも私が攻略手段を確立できたのはアナタ達のおかげだからね。わかる範囲でなんでも答えるよ」
場所を移してテリオンのギルドにて、ボス撃破の打ち上げとして俺たちは飲んでいた。流石にノンアルだけど。だってこの前飲みすぎてルークに泣かれたし。
そんな訳でクリアした時の様子や、攻略の糸口となり得る話、クリア後にもらえた『腕装備:慧眼ノ眼装』の話などなど、ネタに関しては尽きることがない。
「・・・ぐずっ」
「よしよし。大丈夫だってルーク」
「だってぇ・・・僕だって僕なりに頑張ったじゃん・・・!!」
残念なことにルークだけが『慧眼ノ眼装』本人から装備拒否をされてしまったため、実質ご褒美なしということになってしまったのだ。
装備拒否であって、装備できないのではない。あくまでも拒否だ。ここ大事。拒否理由は『力不足の奴に力を貸してやるほど俺様は優しくない(ヴェノ&イドル翻訳)』らしい。
なので装備じたいは出来るのだが、装備した時の能力やステータス値の加算は一切無いのだ。多分レベルあげたり、実力高い相手との戦闘を繰り返していればその内使えるようになるとは思う。
装備の潜在意識は既に深く眠りについているらしく、語りかけても無意味だそうだ。条件を聞き出せないのは辛いところだが、『力不足』というワードが一つ出ているので、あとはもうレベルを上げる以外に手段はないだろう。
でもやっぱり悔しいルークは不貞腐れて俺の膝の上に頭をおいて寝転んでいる。顔を見せたくないようでうつ伏せで。さっきまで半泣きでいたので膝の上が少し濡れている。
「大丈夫。これからお前だって強くなるだろ? その内ちゃんと認めてくれるようになるよ」
「・・・でもぉさぁ・・・」
『泣き、べそ、泣き。べそ』
「『ヴェノ』ちょっと静かにな?」
「むぅぅ・・・!!」
意外にも二個目獲得もとい、強化の後、ヴェノがかなり流暢な言葉を発することができるようになった。結構カタコトっぽいので少し変な感じはあるけど、理解出来るだけでも充分ありがたい。
その『ヴェノ』に泣きべそって言われて手の甲にいるヴェノを強く握り締めるルーク。でも残念なことに、ヴェノの意識は両手についている『慧眼ノ眼装』どちらか一方に自由に移動できる。そのためルークが握る方から既に意識をジョッキ(オレンジジュース)を持つ左手に移動している。
『キキキキキィ』
「むぅぅぅうううう・・・!!」
僕不機嫌ですオーラマシマシのルーク。気持ちは分からないでもないけど、意識ある者から拒否をされてしまっては俺からはどうしようもない。
今できるのはこうして頭を撫ぜてやることくらいである。周囲の奴らも巻き込まれまいとある一定の距離を開けているのがまたなんとも。
「師匠も馬鹿すぎるんだよ!!」
「うお? いきなり大声出してどうした?」
急に顔を上げた上に大声だったので俺だけじゃなくて、ギルドにいた全員からの視線をもらってしまった。
「どうしたじゃないよ! 自爆特攻みたいな事しないでよバカぁ!!」
「「「それは同感 (だよ)」」」
「ぅぉ!?」
ズズイっと空いていた空間に収まるようにリークたちが収まった。そして顔を歪ませてルーク同様『怒ってます』オーラをまとわせていた。
「でも結果助かったし勝ったから良しとしよう? な?」
「駄目に決まってんだろボケ。ただの自爆特攻ならまだしも、その後影響がデカイ自爆特攻とか二度とすんじゃねぇ」
「アタシは別に負けるのはいい。でもアールを犠牲にするのは絶対にイヤ」
「アールを殺せたのは気持ちよかったけど、私が殺せない状況になるのは嫌だからやめて」
リークさん。言ってることがめちゃくちゃなんですが? 完全に『お前を殺していいのは私だけだ』的な発言なんですが? あ、今真面目な話? ごめんなさい。
「ギンとコヨミがいたら監禁するレベルで泣いてるんだよ? いいの? 私たちそれに乗っかってアールのこと監禁するよ? いいの? 私はしていいなら喜んでするけど?」
「・・・悪かったよ。今後は控えるから許してくれ」
「「「「・・・はぁー・・・」」」」
「な・・・なんだよ?」
謝罪の言葉を口にすると、四人が打ち合わせでもしたかの様に同じタイミングでため息をついた。
「どうせアールのことだからまたやりそうだなって。そう思ったの」
「バカは死んでも治らないってよく言うし、アールも変わらないんだろ」
「よくあるRPGなら『ここは任せて先に行け! なに、俺は絶対に死なないさ』とか言ってムービーあるシーンで殺されるサブ主人公ポジションだな。間違いない」
細かいよ。設定が聞くだけで場面がすぐにわかるくらいには細かいよ。某アビスのア○シュかなって思うくらいにはわかりやすいよ。みんなのトラウマシーンがあるあのゲームだよ。
崩落のチャプターは本当に胸が痛い上に苦しくなるから本当にトラウマだよ。リークごめん。だから二の腕抓らないでくれ痛いから。
「前にマリアーデさんが言ってたんだよ。師匠は勝つためなら自分の命すら投げ捨てるレベルで無茶をする癖があるってさ。しかも絶対に治らないって言ってたからね。師匠相当だよ?」
「マリアーデの野郎・・・あ、まってリークレイレイ、脇腹抓るのやめて痛い」
「「女性なんだからせめて女郎にして」」
「いやそこかよ。まぁ無茶するのは昔からお前は変わらんから俺は正直半分諦めてる」
「ゴリラお前・・・」
「まぁやったら毎回キレる。確実にな。って訳でここの会計頼んだ」
「あ、いやそれはいいけど・・・あれ? リークもレイレイもルークまでどっか行くのか・・・?」
マー坊に合わせて立ち上がったリークたち。それだけじゃなくて、ルシオンたちもいつの間にか立ち上がっていた。
もしかして会計全員分やれってこと? 手持ちが足りるなら全然構いはしないけど。
「リベンジマッチしてくる」
「え?」
「お前抜きで今度は全員で、最初から作戦も連携も計略も全部込で練って俺らだけで『ヴェノミードラゴキュラ』まで倒してくるって言ってんだよ」
「そゆこと。僕らもチーザーさんたちみたいに殺られっぱなしなのはごめんだからね。攻略手段は見えた。あとは僕らの力がどこまでの物なのか、改めて試してみたいのさ」
「それじゃ行ってくるね。アールも今日は無難な時間に切り上げなよ? ”明日”あるんだからね」
そう言って全員揃ってギルドから出て行った。クロニクルモンスターにしても、特異個体にしても、やっぱり自分の力で攻略したいと思う気持ちは強く出るようだ。ゲーマーの鏡だねぇ。
それにリークには明日の予定もいつも通り知られているみたいだし、今日はこの辺で上がるとしようか。
「すみません。お会計なんですが・・・」
「あぁ、すみません。俺が全員分払います」
「そうですか、良かった。ではお会計合わせて427600Dになります」
「・・・・・・・・・はい」
店の維持費を除く、俺の全財産が吹っ飛んだ。自爆特攻は少し控えようと心の底から思ったのは今日が初めてかも知れない。
今度インしたときは少し金策の為にカースサイスリッチの無期限周回でもしようか。それくらいしないと今日の出費分をそう簡単には取り戻せないと思う。
まぁ次にインできるのは少し先になるとは思うけど。
アール『後日リークとレイレイがそれぞれ五倍くらいの額をくれた時はマジで泣きそうでした・・・』
マー坊『乙』
アール『お前に関してはもう桁が違って笑い以外出なかったけどな!!』




