239:アールの弱点と対策
久しぶりの日常です。
感想への返信をしていたら、いつの間にか力尽きて寝ていたという事実・・・
早いようで短かった日々だった。
どうやらシナリオボスクリア後は皆、懐やら気持ちやらが緩むようでほぼ毎日宴会のような催しものが続いたり、クリアしていなかったダンジョンの開拓だったり、クリア特典でもらった過去のボスであるジェクス戦リベンジだったりと濃い日々だった。
こう言っては怒られるかもしれないが俺も、現在のジェクスと再戦というか、手合わせした訳だが、まぁ結果は言わなくてもわかるだろう。
脳筋と言われるかもしれないが、ジェクス攻略に関してはたった一言で済む。『共鳴でダメージを押し付けられる前に一撃で仕留める』これに尽きる。
共鳴に関してだが、実は穴があり、自身が受けてから相手に同じものを押し付けるので、押し付ける元気がなければ押し付けることもできないのだ。
ギルファー共々言うが、クロニクルモンスターは対策と弱点さえわかればなんとかなるのだ。聞けばレイレイはソロで撃破したと言っていたしその通りなのだろう。
しかしこの話をすると当たり前のように『そんなの出来るのお前だけだ』とみんなに言われる。レイレイも正直偶然が重なったと吐露していたし。
「ふむふむ、余がいない所でそのそうな事があったとはのぉ」
「いろいろ大変だったんですけどね。なんとかなりましたよ」
現在、日常に戻りこうしてエーテリアの工房でマリアーデと話しながらいつものなまくら修理の依頼の真っ最中である。
「しかし・・・お前に気づかれずに背後とった輩が気になるな。そのガキを開放した奴との関わりも気になるところだ」
「知り合いに調査を頼んでいますけど情報は一切なしです」
レイレイ始めとする情報屋、ゼアリードに渡ったプレイヤー、掲示板などなどにて隠密に特化したスキルやNPCを洗い出しているが情報はない。
こちらも隠密系のスキルへの対策はしているのだが、あの正体がわからない限り効果的なのか実証ができない。初期化できないので大事が起きてからではどうしようもないのだから。
「ところでアール、その話に関わるが、やはり毒にお前は弱すぎるな。鍛えなければいかんな」
「無茶言わんでください師匠・・・」
俺はどこぞのグルメな四天王じゃないんだぜ、体内で抗体を簡単に生み出せるような細胞は持ってない。スキルという意味なら解らないでもないが、マリアーデの事だ。スキルに頼らない毒対策をしてくるに決まっている。
「むっふっふ〜。そう言うと思ってな。用意しておいたぞ」
懐から取り出したのは”いかにも”なガラス瓶に詰められた怪しい液体。なにこれ? マリアーデの奴めちゃくちゃいい笑顔だし怖いんだけど。
「余がお前のために用意した特注品だ。飲め」
「・・・せめて今の作業終わらせてからでもいい?」
これから形の構築作業なので手が抜けないのだ。会話するくらいならまぁいけるけど、他に気を配ってやるのは流石に危ない。
「なんじゃアール。同時作業同時集中程度も出来んのか?」
「煽られてもやらねーよ。流石に不慣れなことはしたくねぇ」
「飲めんのか・・・そうか・・・まぁしかないの。まだまだ未熟者だからなぁ」
心を強く持つべし。ここで煽りに乗って痛い目に見たことが何度もあるだろ俺。ここは平常心、心頭滅却である。静かなること河のごとし。
「そうか・・・愛弟子でもやはり余のことは信じられんか・・・」
「・・・」
「まぁ仕方ないのぅ。できないことを無理強いするのは師匠として失格じゃな・・・」
「・・・」
「すまんなアール・・・やはり余は出来損ないだったようじゃ」
「上等だぜおい!! こちとらマリアーデ唯一の弟子やってんだ!! このくらいやってやろうじゃねぇか!!!」
舐めんなよマリアーデ!! お前の弟子に不可能はないってこと教えてやろうじゃんぇか!!!
少し怪しい液体だろうが猛毒だろうが飲んでやろうじゃねぇか!!!!
――――◇――――
「余が言うのもおかしいのだが、アール。お前チョロすぎではないか?」
「う・・・うるせぇ・・・」
「だが冗談とは言え、余の名誉のために飲んだ勇気は感謝するぞ?」
いつものパターンだよこんちくしょう!!! 俺チョロすぎんだろうが。マリアーデの自己嫌悪(演技)に乗せられて謎の液体一気飲みしてぶっ倒れたよ。
水飲みすぎたような気持ち悪い感覚に絶賛犯されてるよ。黙っていたら体の中で気泡の音が聞こえるような気がする。
「ま・・・マリアーデ・・・あの中身なんだよ・・・」
「余が配合した薬だ。その配分は間違いなく身体を壊すものじゃがな」
「おっまっ!!?」
薬も飲みすぎれば毒とは言うがそれをやりやがったのかよこの師匠!!? 鬼か・・・いや、鍛えることに関しては鬼だったな。
「安心せい。半日あればすぐに良くなる。余とお前の嫁、他にもお前を慕う者たちの身体で実証済みじゃ」
「・・・師匠も含めて皆後遺症とか、その後体調は平気なのかよ?」
「ふむ、自分よりも先に余の心配か。すこぶる快調である。故にお前も安心して寝込むが良い」
嘘を言っていないのはわかったし、マリアーデだけじゃなくてリーク達まで身体張ってくれたならこれ以上いうのはや野暮だな。苦しいし気持ち悪いし具合悪いけど、少し頑張ろう。
「まぁこれからしばらく二時間に一本飲んで貰うつもりだ。頑張れよ愛弟子?」
「お・・・男に二言はねぇ・・・やってやろうじゃねぇか・・・・」
それからこっちの時間で一週間ほど、俺は体調が優れずに、リークにほとんど店のことを任せ、フィールドに出ることもなく、薬との戦いに身を置いたのだった。
――――◇――――
「・・・信じられねぇ」
「フンス! 私たちとマリアーデの身体で試したからね!! 結果は折り紙付きだよアール!!」
「うむ!! 師匠に妾たちからの恩返しなのじゃ!!」
ゲーム内で寝込み続けてはや一週間。身体は薬という名の毒に対する耐性がバッチリ付いたのである。ちなみに薬の材料に使われたのは結構レア素材だったらしく、ギルドメンバー総出で集めてくれたらしい。
本来の使用量を守ればエリクサー並みの回復アイテムらしいのだが、それを大幅に超えて毒となった、仮称『劇薬エリクサー』。飲み続けた結果まさかのスキル獲得である。
――――◇――――
『UtS:天刻Lv1』
・効果Ⅰ
体質やスキルの有無にかかわらず、全ての状態異常に掛かるが、『瀕死』になることはなく、一定時間経過で抗体を生み出しステータスを全回復する。また、抗体が出来た異常状態は一定期間無力化され続ける。レベルによって抗体が生成される時間と、無力化し続ける期間は変化する。
・効果Ⅱ
自らの血を他者に飲ませることであらゆる異常状態を回復する。
・あらゆる毒素に対して瞬時に抗体を生み出す体質。その体質はどの様な毒に対しても瞬時に抗体を生み出し、自らを強化してしまう。この体質を持つ者はどの様な病であろうとも瞬間的に回復する神薬にも劣らないであろう。
習得条件:『アイテム:エリクサー』を約9倍の濃度で調合した『天死薬』を一定期間飲み続ける。
――――◇――――
『アイテム:天死薬』
・効果
体内に侵入すると、『状態異常:天死』となり、『瀕死』以外の状態異常全てに犯され続ける。『アイテム:林檎』を使用するか、半日経過で回復する。
――――◇――――
スキルや装備による異常状態対策が出来なくなる代わりに、瞬時に回復してしまうとかなんで人工エリクサー製造機になってんだよ俺の身体。というかやっぱり毒じゃねぇか。
しかもエリクサーの9倍濃度とかやばすぎるだろ。快調にしすぎて逆に毒に脆くなるってか?アホか。回復手段が初期に手に入る『林檎』っていうのも皮肉が効いてると思う。
「いやぁーお前のためとは言え俺らも体張った甲斐があったぜ。おかげで俺らまで新スキルゲットしたし」
「無効化できないけど一定時間じゃなくて、一定期間ていうのがいいよね。アタシ試してみたけどレベル1なら30秒くらいで抗体できて、四日前に飲んだ麻痺毒を今でも無力化中だよ」
「エクストラモードだと死ぬほど辛かったけどアールと同じ苦しみ・・・しかもお揃い・・・幸せすぎてイっちゃいそうだったよ」
「僕とかゴリラの兄ちゃんはちょっと苦しいだけだったけど、師匠は大変そうだったよね。現実でも身体壊したりしないってわかってても怖かったよ・・・でも毒かぁ・・・使い方で僕でも強敵倒せるかな?」
どうやらギルドメンバー全員で試したようだ。ギン達NPCも含めて皆戸惑いもなくやっていたようだ。それに気づかなかった俺も俺だけどだ。
『ヨヨヨ』
「ちなみにだがディアにはこの魔法のクスリを体内に取り込ませておいた。融合するたびに毒を少しずつ投与するように言っておいたから完全に克服できるようになるまで頑張れよ愛弟子。もちろんその状態のまま稽古も行うぞ?」
「もう何も言わねぇよ・・・」
もしかして最初に行った四天王発言フラグだったのかなぁ・・・
マリアーデ『む・・むぅ・・・』
リーク『だ・・・だいじょうぶ・・・で・・すか?』
レイレイ『きもちわるいぃ・・・』
マー坊『待ってこれ死ねるって・・・』
ルーク『うげぇ・・・本当に吐きそう・・・』
コヨミ『はぁはぁ・・・体が・・・寒い・・・・』
ギン『ひきさかれそうじゃ・・・・』
アアリー『流石にこれは・・・辛いですね・・』
全員『けどアイツ(アール)のためならこれくらいは・・・!!!!』
臨床試験を終えて皆でアールの弱点克服に貢献したそうです。もちろん最初に試したのはプレイヤーであるリークたちから。その後NPCの四名が投与。
愛されてますねぇ。




