207:橋の下には地獄がある?
「オイリーク!! もういねぇのか!!?」
「うっさいゴリラ!! そんな大声出さなくても聞こえるわよ!! 今のでラスト!」
最後のオークを真っ向から滝割りよろしく叩き切ったマー坊。全身真っ白にして、両手に持つ武器にはモンスターの肉片の一部がくっついている。
戦闘開始から5分足らずでモンスターは全て殲滅してしまたマー坊であった。
「アールこれも補填しとく?」
「助かるよ」
「じゃぁアタシからはこれかな。これも使ったでしょ?」
「よく見てたな。ありがたいわ」
俺たちはというと、リークとレイレイの好意から俺が失った素材の補充をさせてもらった。手元には上限までしかないが、個人の収納ボックスには使い切れない量が余っているらしくもらっている。
鉱石も木材も結構失ったからこれはありがたい。
「なんだよお前ら。俺に戦い任せてブツブツ交換してんの?」
「いいじゃない別に。どうせ素材に関してはゴリラ使い物にならないし」
「そうそう。モンスター素材ならまだしも、ゴリラアンタ、フィールド素材なんてあんまりないでしょ?」
「まぁそうだけどよ・・・」
「「それに暴れられて楽しかったでしょ(楽しかったんじゃないの)?」」
「まぁな!」
「お前蛮族じゃん」
「アール。お前にだけは・・・いや、うん。最近インテリ入ってきてるから蛮族とは言えねぇな。インテリ蛮族?」
新しい造語を作るんじゃないよ。とは言えマー坊の無双乱舞決まったおかげでモンスターは一掃されて周辺にモンスターの気配はない。
「片付いたんなら周りの調査始めようか。モンスターが突然現れる原理も知りたいし」
ゲームだからリポップすると言ってしまえばそれまでなんだけどな。けどエクスゼウスがそんな無粋なことをプレイヤーの間近ですることはないだろう。
「その前にギンとコヨミをそろそろ呼ぶね」
「おう。そう言えばなんで一緒に来なかったんだ?」
「お仕置き中。メス猫は索敵に使えるから許可したけど」
「あぁ・・・」
そう言えばお仕置き中だったな。リークはそう言って取り出した『転移タグ』を起動、俺の目の前から崖の上にいく。その三十秒後くらいに、半泣きのギンと、表にはほとんど出てないが寂しそうなオーラを僅かに見せていたコヨミがいた。
「・・・しゅん」
「合流です」
落ち込んでます感漂う二人に声を掛けようと思ったが、リークがキッと睨みを利かせると、二人はしゃきっと姿勢を正した。なんかごめん。お仕置き終わったら少し優先して構ってあげるから我慢してな?
「それじゃぁ出現場所に行きましょうか。案内するからついてきて」
「先頭に立って殺られんじゃないわよメス猫」
「大丈夫よ。ゴリラを盾にするから。ほら肉盾前歩いて」
「そこはアールに頼めy「「「「あ゛ぁ゛!!?」」」」・・・さーせん」
俺も先頭に立つと申し出ようとしたんだが、その前に四人の鋭い眼光がマー坊を射抜いた。怒気にビビッたマー坊が謝罪するとそれぞれ結構ひどいことを口にする。
「ったく、空気読みなさいゴリラーメン」
「全くよゴリラーメン。アンタが肉盾要素失ったらただの食品廃棄物じゃない」
「尤もなのじゃ。猛獣なのじゃから先頭を歩くのじゃ」
「友人を労わる優しさを見せたほうが得だと思いますよ?」
「勝手に言われてこの扱い・・・ひどくない?」
「なんかすまんマー坊。今度なんか奢るよ」
「その優しさが俺は嬉しいよアール・・・」
言われた通り肉盾として先頭に立ち、レイレイ指示の下、先を進む。明かりに関しては既に『ブラッディフレア』から俺たちそれぞれの頭上で光を放つ球体。
リークの魔術の一つ『ライトレイ』の応用というやつに変わっている。攻撃魔術も応用できるのは『最上級ジョブ:魔術女帝』の特権とのこと。
ちなみにこれを普通に使うと、上級魔術で、この球体を敵の頭上に配置からの、いくつもの光の矢が放たれるらしい(レイレイ説)。普通に強くない?
ちなみに現在の俺たちの配置だが、先頭マー坊、真ん中にレイレイとコヨミ。俺とギンの間にリークが入る感じで最後尾にいる。超次元レベルのサッカーアニメ(無印)の世界選手権でイギリス代表が見せた『無敵の槍』なる必殺戦術と似ているような並びで歩いている。
やろうと思えば当然再現可能である。関係ないが、炎のエースストライカーにはやっぱり炎系の技を使い続けて欲しかった。天秤だったり刻印だったりの新シリーズでは最強技に炎なかったのがちょっと残念。
――――◇――――
しばらく歩いた時、俺たちは目の前に広がる光景に言葉を失った。
「「「「「「・・・・・っ」」」」」
横たわるエルフ族と思われる死体、体を食い破られた後があり、身元がわからなくなった死体。涙を流し枯れ果てた死体。どこに視線を向けても死体しかない。
この世の地獄のような光景だった。一番近くで死んでいた比較的綺麗な死体に歩み寄り、マー坊が検死する。見ても明らかだが、医者視点で見るからわかるものもある。
「リーク。ちょいこの人の身体に魔力が残ってるか教えてもらえるか?」
「全くないわよ。文字通り空っぽ。死体でも普通は身体に魔力が残るはずなんだけどね」
「そうなのか?」
「師匠。魔力や妾が妖術に使う妖力は人体の体に宿り、血肉の一部なのじゃ。例え死んでしまっていても普通魔力は残るはずなのじゃ」
なるほどな。魔力がカラであること自体が奇妙な光景でもある訳か。
「それとだ。お前らちょっとこれを見てくれ」
マー坊に言われて死体に近づく。マー坊が指さしたのは心臓の部分。一見すると不自然に感じはしないんだが、よく見てみると確かに変だ。
「胸が凹んでる?」
「あぁ。少し触らせてもらうとわかるんだけど、肋骨も臓器もまるで抜き取られたように無くなってるんだ」
「そんな馬鹿なことがあるはずないじゃないですか・・・だってこの方の身体は・・・」
そう。ありえない。この死体は外傷がないんだ。心臓を抜き取られたとしたら切り傷や血が溢れ出るはずだ。それなのにこの死体には外傷が全く存在しない。
「それとだ。この死体には血が残っていない」
「「「「「っ!!?」」」」」
「なんで干枯らびていないのかはわからねぇけど、見た限りな。それと周りを改めて見てくれ。ここには“血の一滴もついてないんだ”」
その通りだった。俺たちは驚き周囲を見渡せば、確かに死体は数多くあるが、血痕も血だまりも、血の一滴ですらここにはなかった。
「そんな・・・バカなことがある訳がないのじゃ・・・!!!」
「・・・いや・・・俺にはひとつだけ心当たりがある。俺だけじゃねぇ。アールは勿論、リークもレイレイも、コヨミもこれに似た光景を知っているはずだ」
「まさか・・・・でもそんなこと・・・・!!!?」
そうだ。俺は体から血が無くなる光景を見たことがある。『剣聖物語』で見たことがあるんだ。
俺だけじゃない。少なくとも『剣聖物語』を一周クリアしているプレイヤーなら誰だって知っている。
「邪教徒による街の汚染・・・!!!」
『剣聖』と『魔剣聖』が交わり、ストーリーが終盤に入るきっかけとなるイベント。以前あった街の虐殺を行うことになるみんなのトラウマ。街中の住民を全て殺す事になる事件があった。
それが明るみになったきっかけの事件。
体から血を失い、臓器を失った人が”普通に生きている”現象が起こっていたんだ。そして、街の人を切った後、その死体からは”モンスターが生まれたんだ”
「確かに・・・これなら突然モンスターが増えたのも説明が行くよ・・・でもこんなの・・!!」
そして、その死体が生み出せるモンスターの数は、一人につき約20体。そのモンスターたちは”とあるアクセサリーを持たない全ての人間を殺す”ということだけを実行し続ける。
周りの被害など気にせず、例え同種だろうとお構いなしに。同時に、異種であり餌と捕食者の関係であってもその命令に従うのみだ。
これで立てていた仮説が真実だと立証されてしまった。モンスターの出現は儀式の影響。人攫いは儀式のための生贄。見えた怪しい光は儀式のために生贄を呼び出すための光。聞こえた唸り声は生贄から生まれるモンスターの産声。
今回の事件は、思っていた以上に・・・いや、考えていた最悪の事件なのかもしれない。
「た・・・たすけて!!!」
そして、この助けを求める声が聞こえたとき、この事件は一気に真実を告げる。




