195:暁妖精カイラ
別名、島国ゼアリードの国王陛下
「わふぅーアールに抱きつくとやっぱり落ち着くよ〜」
「しつこいぞカイラ。お前成長してねぇな」
「失礼な! これでも立派な王様なんだよ? 一国の主って奴だよ?」
「・・・はっ」
「鼻で笑われたぁ!? アール酷い!! オーグどう思う!?」
「わ・・・我には何が何だかわかりませぬ・・・申し訳ありません」
「・・・アールは私のだもん・・・」
オーグは困惑、リークは子供の様な反応を見せるカイラに対していつものような強気な姿勢を見せられず半泣き。周囲はカイラの事を俺の反応を見て理解したものの、予想と遥かに異なるカイラのキャラに驚きただ呆然としている。
「むっ、これは私の知らない匂い・・・アールもしかして女の人抱えてるの痛ァっ!?!」
「言い方を考えろ言い方を。お前王様なんだろうがよ」
「いちゃい・・・」
チョップを叩き込んでやるとそこまで痛くもないのにわざとらしく涙目をしてウルウルとこちらを見上げていた。これを自然体で、しかも無意識にやっているのだから男泣かせだろうな。
「私としてはアールと一緒なら他に女の人がいてもいいよ? でも放置されるのは嫌かも」
「お前は話が飛びすぎだ。あと抱えてないから妙なことは言うんじゃねぇ」
「えぇー? でも五人はいるよね? アアリーは除いてもマリアーデの他にあと四人は近くにいるよね?」
人数は当たってるけども。なぜそれを匂いでわかる。いや、相変わらず変なところで鋭いなこいつ。
「私のだもん・・・」
いつも以上にしおらしい対応で、俺の腕をくいくいと引っ張るリーク。こいつがこういう反応見せるのも珍しいな。これはこれでそそられる物がある。すごく可愛い。
「あっ!! 一番匂いが強い人だ!! ってことは今のアールの一番大切な人なんだよね? 初めまして!!」
「ぐすん・・・はじめまして・・・」
「私はカイラ! 島国ゼアリードで王様してます!!」
「リークでs・・・・おおさま?」
「はい!! 王様です!!」
「「「「「「「「「「王様!!?!」」」」」」」」」」
今日一番絶叫がエーテリアに響いた。
――――◇――――
暁妖精カイラ。
その身に過去の悪夢の化身であるドラゴンを封印され、覚めない眠りに着いた妖精。『アフターストーリー』にて彼女との出会いが一つの大きな物語となり、最終的にはカイラの中に封印されていたドラゴンは俺や、仲間たちの手によって討伐され、この世界から消滅した。
その後は仲間たちと一緒にいろいろなことを学んだり、喧嘩したり、仲間になったギルファー始めとするモンスターどもの統率者となったりといろんなことがあった。
そんなカイラも今では立派な王様らしい。オーグのあの反応を見る限りかなりの信頼を置かれているようだ。
「ふへっへへへへ」
「・・・見えねぇな」
俺の中では大泣き虫で甘えん坊。何かあれば物理で解決する。それがカイラである。少しは成長したと思っていたのだが、全く変わっていなかった。
「お前王様なんだろ? 勝手に動いていいのかよ?」
「その通りです陛下。陛下が国を空けては皆が混乱します。すぐにお戻りください」
「なら一緒に戻りましょうオーグ。あなたが戻るというまで戻るつもりはないですから」
「だってよオーグ」
「ぐぬぅ・・・」
さらっと流したが、キッチリするところはちゃんとするようで、甘えていた声から急に多少は威厳のある気がする声色に変えて力強く答えた。俺に顔を埋めたままじゃなければそれなりにかっこよかったんだけどなぁ。
「第一です! 貴方が死んだ、もしくは居なくなったとなれば、国のゴブリンたちが暴徒になります!! 人間ギルティって言って皆が今回反乱を起こした馬鹿どもと同じになりますよ!? いいんですか!?」
「そ・・・それは・・・」
「そうです!!それはあなたが私に対する忠義を! そう忠義を捨てたと同じことです!! 私はそう感じますよ!? いいんですか!?」
「我が忠義は陛下に捧げました! そのようなこと我が魂に誓って捨て置けません!」
「では戻りましょう。大丈夫です。責任は全て私が負います。いいですね?」
「それが我が忠義の証となるのなら」
会話的にはいい感じの話なのに、体をくるりと回し、俺のリークに掴まれていない左腕を自分に巻きつけるようにしながら言わなければ『部下思いのいい王様なんだなぁ』って思えたのに台無しである。
アスナロ抱きに似たような状態のカイラに対して頭を下げるオーグ。とてもじゃないがシュールである。
「ありがとうオーグ。でも勿論オーグの意思も尊重しますとも。はいこれ」
”ポケット”から取り出したアイテムをオーグに渡す。受け取ったオーグはそれが何なのかわかっていない。
「それはこの街とゼアリードを行き来するためのアイテムです。まぁゼアリード行きのは向こうで私が作る必要がありますけど」
「陛下・・・!!」
「私への忠義とても嬉しく思います。ですから戻ってきてくださいオーグ。私には貴方という将が必要なのです」
「ははっ!!」
「おいこら」
水を差すようで悪いんだが、どうしても看過できないことがひとつある。このタイミングで言わないとそのまま流れるように持って行かれそうだから言わなければ。
「なにアール? もしかして私かっこよかった?」
嬉し恥ずかしそうに頬をかくカイラだが、そんなことは今どうでもいい。
「何かってに”人の『転移タグ』”渡してるんだコラ」
さらっと人のアイテムポーチからさも当然のように取り出してそのままオーグに渡しやがった。渡すのは別にいいんだけど、人の許可無く勝手に渡すんじゃねぇよ。
「えぇ〜、でもアールだって渡してくれるつもりだったでしょ?『星の錬金術師』のアイテムは貴重なのはわかるけどね?」
「そういう問題じゃねぇの。こういうの泥棒って言うんだぞ?」
「じゃぁアールにもゼアリード行きのアイテムあげる! それでいいでしょ?」
「だからそういう問題じゃ・・・ちょっと待て。今なんて言った?」
サラッととんでもない単語が飛び交っていた気がするんだが気のせいじゃないよな?無視しちゃダメな単語出てたよな?
そんなカイラの表情を見ればしてやったりというような笑顔だった。それはもうたいへん嬉しそうな笑顔でした。
「ふふん! なんといっても私! こう見えて『エクストラジョブ』持ちなんだよ!!」
「は・・・はぁぁ!!!?!」
「つまり!! アールと同じなんだよ? 褒めて褒めて?」
「だめぇ!! アールに褒めてもらうのも私なのぉ!!」
「おっとこれ以上はアールの大事な人が泣きそうだしやめとくよ。じゃぁはいこれ」
手渡されたのは俺がよく作る『転移タグ』。しかし俺が作ったことがない紋章が描かれていた。
――――◇――――
・『転移タグ(ゼアリード)』を入手
――――◇――――
「ほかの皆さんには私たちの仲間が認めた方にだけあげるので、どうかよろしくです! 因みに専用の物なので他人は使えませんから!」
愉快そうに笑うカイラは俺から離れ、オーグの隣に立っていた。その手には今まさに俺に渡した『転移タグ』と同じものが握られていた。
「それじゃぁアール! オーグの説得も出来たから一旦帰るから! 今度はゆっくりお話しようねー!! ばいばーい!」
「カイラっ!!?」
カイラはそのまま『転移タグ』を起動し、オーグと共に消えてしまった。残された俺たちからすれば嵐が去ったような感覚だ。というかまさにそうなんだけど。
とりあえずわかったとこといえば、カイラが王様になったということ。そしてイベント終了時に発表された『ゼアリード』に行くためにはカイラが仲間と言っていた者に認められなければ行くことができないという新事実。
そして、カイラがエクストラジョブに関わる重要なポジションにいるということだけだった。
――――◇――――
「えへへへへ」
「陛下」
「どうしたのオーグ?」
「アールと陛下はご友人なのでしょう? あのような別れ方でよろしいんですか?」
「言ったでしょう? 今回の目的は貴方ですオーグ。いなくなられると大変なんですからね? まぁもっとアールとお話したかったのもありますけど、そこは我慢です! それに」
「?」
「今度は死に別れるわけじゃないですからね。私の事情が片付いたら今度はゆっくり遊びに行きますよ」
「その際は護衛に就かせていただきます」
「ありがとうオーグ。その前にまずは新しいゴブリン族のまとめ役を作ります。あなたは長確定なのでよろしく頼みます」
「承知しました」
「それとラグズライドが少々妙な動きを見せています。最悪ぶつかる可能性もありますから覚悟だけはしておいてください」
「あの国が・・・しかしどうして最近になって?」
「内通者によれば何やら儀式をしたようです。その儀式がなにかは現在調査中ですが、ロクなものではないでしょう」
「人間主義の国・・・なぜ彼らは分かり合おうとしないのでしょうか?」
「知らないものを恐れる。そして恐れるからこそ自分たちがそれを制御しようとする。出来ないならばこれを排除する。人という種が持つ性の一つです。勿論それが悪いことばかりではありませんけどね?」
「陛下は・・・どのようにお考えで?」
「私の想いはあの日からずっと変わりません。私は私がしたいと思ったことを。人も妖精もモンスターも関係ないです。仲良くなれる人と仲良くなる。命と心を通わせてこの一瞬を自分の意思で生きる。アールと誓った私の心です」
「・・・素晴らしい武人であり、人間ですね。彼は」
「当然です! だって私の”初恋”の人ですよ?」
「なるほど。だから陛下も人前にも関わらずあのような姿を晒していたと?」
「はい!! 幻滅しましたか?」
「いえ、陛下の想いを知るいい機会となりました。このオーグ。今まで以上に陛下のために尽くす所存です」
「よろしい! ではオーグ。まずは帰ったら書類の片付けを手伝ってください!」
「・・・・・・それは妖精族に頼むほうが良いのでは?」
詳細はまだ伏せられていますが、カイラたちは既になにか不穏な動きを掴んでいる模様。
そしてゼアリードに渡るための方法開示




