189:海岸エリアボス『ローザクヴァレ』戦 THE ルーク
当初の目的はルークのボス攻略戦だったの覚えてます?
現在時刻は午後7時。現実世界では夕方くらいで、二時間もいれば夕食にはちょうどいいくらいだ。でも二時間でできることなどタカが知れている。ならどうするかというとだ。
「三度目の正直だ。ルークのボス戦だぞ」
今回は条件を満たさないようにするのと、ルークの実力に見合った相手と戦わせるために俺とルークの二人だけ。一応ディアはいるけどそれ以外の面々は留守番だ。そうでもしないと今度こそ本当に膨れてしまいそうだからな。
不満タラタラではあったけど本来の目的の話をしてとりあえず納得してもらった。ついでに少し鍛えていろとも伝えておいた。
「ボス戦での支援はしない。お前の実力だけでボスを倒せ」
「うん!」
再び足を踏み入れた海岸エリアのボスフィールド。ゆらゆらと空から降りてくる今度こそ普通の『ローザクヴァレ』の姿が見える。
巨大なピンク色のクラゲ。変化する様子もない。今のところはだけどな。でも変化条件は満たしてないしすることもないだろう。
「行ってこいルーク。少しでもダメージ受けたら鍛え直しだから覚悟しろよ?」
「う・・・うん!! 頑張る!!」
ルークは己の武器である『雲雀刀:カシワデ』を鞘から抜いた。『雲雀刀:カシワデ』は以前ルークが撃破した『忍者ゴブリン』から受け取った『忍鬼刀カシワデ』をベースにし、ルークが元々使用していた刀を素材として俺が作り出した一本だ。
――――◇――――
武器:刀『雲雀刀:カシワデ』
攻撃力:+177 命中率:+59 特殊効果『忍鬼』
・『忍鬼刀カシワデ』の新しい姿。小太刀だった面影を残しつつもその姿は圧巻の一言である。成長が止まった代わりに、その魂を燃え上がらせる力を得た。
――――◇――――
特殊効果:『忍鬼』
・MPを消費することで一定時間自身の素早さを大幅に上昇させる。さらにMPを消費することで極僅かな時間、自分以外の動きが少し遅く感じるようになる。
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言うなれば『天籟刀:ズイカク』劣化版効果とも言うべき物だ。動きの先読みがしやすくなるだけの能力だが、使いこなせればこれ以上ない戦的有利を常に保ち続けることも可能。
欠点としてはMP消費が激しいため、今のルークが使用できる時間は1秒程度ということくらいだろう。それでもその一秒をうまく使えるように戦い方を叩き込んできたつもりではある。
「行くぞ!! オォォォォォ!!!!」
雄叫びとともにルークが勢いよく突貫した。対する『ローザクヴァレ』はその触手をひらひらと動かし進路を妨害、さらに上から叩きつけるように触手を振るう。
それに合わせて右へ左へと体を動かし攻撃を回避していくルーク。回避するだけでなく、触手に対して攻撃を入れながらゆっくりと距離を詰めていく。
ルークに全方位から触手を伸ばして、『ローザクヴァレ』はルークを自身の土俵に追い詰めようと動いていく。だがルークもそれは分かっているようで絶妙な位置取りで思惑通りの展開に持って行かせない。
俺がいる分速度は若干早く、恐らく思考能力も高いであろう『ローザクヴァレ』に対して、回避とカウンター、すれ違いざまの攻撃などで少しずつ確実にダメージを与えていくルーク。
前方だけでなく、全方位に対して注意を向けており、背後からの攻撃や、地中からのモグラアタックにも対応しているあたりその集中力はなかなかというべきだろう。
動き自体も現状を考えればいい具合に洗練されているし、満点をやってもいいだろう。あとはこの状態を戦闘終了時まで維持できるかどうかである。
――――◇――――
戦闘開始から12分。流石に疲れが出てきたようで、動きが僅かにぶれ始めている。それでもまだ一度もダメージを受けていないところは褒めてやるべき点だ。
『ローザクヴァレ』もダメージがそろそろ余裕が無くなってきたのか中々素早くなり始めてきた。さらに触手からの水鉄砲攻撃なども新たに繰り出してきて遠距離攻撃主体の攻撃に切り替え始めてきた。
「チィィィ!!!!」
水鉄砲に対する回答を持っていないルークは回避に専念し、距離を詰めようと動くが、『ローザクヴァレ』もそうはさせまいと器用に触手を動かして間合いを確保する。
本体に攻撃できればいいのだが、生憎本体は宙に浮いているため、攻撃しようとすれば飛び上がるしかない。だがそうすれば触手による攻撃の餌食になるだけでなく、水鉄砲の標的になるのも間違いない。
それが分かっているからルークもすぐに飛び込むことができていないのだ。水鉄砲を回避して、ポーチから回復アイテムであるリンゴを取り出し、食い千切るように口にする。リンゴはHP回復だけでなく、スタミナ的な意味での体力回復にも効果がある為常備させている。
本当はポーションやらスタミナ回復専用のポーションの方が効果は高いのだが、それに頼るゾンビアタックなど覚えさせる訳にはいかないので、現状は最低限の回復ができるアイテムだけを使わせている。
ゾンビアタックを使うようにさせるのはもう少し先の話だ。後先考えずにそれをやるのはまだ早い。
スタミナを回復させて再びルークは突撃する。触手による攻撃は既に八割方水鉄砲へと移行している。残り二割は物理的ななぎ払いや叩きつけを繰り返している。
ルークが狙っているのはその二割の攻撃に対するカウンター攻撃。時間はかかるが確実にダメージを与えることには成功しているため、現状一番有効な手段としてルークはそのスタイルで戦闘を行っている。
気合を入れるように声を上げ、神経を研ぎ澄ませる。体の軸をしっかりとさせた状態で水鉄砲を避けつづけ、右へ左へと体をひねり、時折アクロバット的な動きもしながら攻撃のタイミングをジッと待っている。
「『神斬雲雀』!!」
我慢比べに耐えられなくなった『ローザクヴァレ』による触手攻撃に合わせてルークはカウンターである『神斬雲雀』を回避しながら叩き込む。その触手を切り落とせるほどではないにしろ、一部肉片となり砂浜にべちゃりと音を立てて落ちていく。
さらにカウンターで斬った後にすぐ前に向かい、その触手の攻撃した箇所よりも根元に近い部分にさらにもう一撃刃を入れていく。
攻撃後の硬直が少なくなるように修行した結果もあり、現在のルークならば、神斬雲雀使用時の反動はほとんどない。教えたことをそのままではなく、ルークなりに考えて動きを見直していった結果がそこにはある。
『 !!! 』
その一撃が『ローザクヴァレ』最後の悪あがきに移行させたようだ。先程まで無口だったクラゲはまるで咆哮を上げるように触手を荒げた。
触手からの水鉄砲を放ちながら、なぎ払い・叩きつける攻撃を繰り出し始める。それも複数の触手を同時に操りながらだ。回避出来る空間はかなり限られていく。
その攻撃の余波はこちらにも届き、見ていた俺に対しても水鉄砲や触手による攻撃が来るようになった。一度手出しはしないと決めたので、俺はその攻撃をただただ回避し、桜奏呼吸により自分の存在感を可能な限り消し、認識をズラす。
ルークを見れば、なかなかに嫌そうな顔をしながらもしっかりと回避を行い、カウンターの一撃を入れていく。ここで焦り深追いするようならばそれは油断につながるのだが、ルークは一撃入れてからすぐに回避へと移行、再び攻撃の機会を伺いながらそのときを待つ。
これまでの経験がしっかり生きているようで見ていてとても安心できる戦い方をしていた。もうここまで成長していたんだとしみじみと思う。
『 !!! 』
大技を繰り出そうとしたんだろう。触手を一点に集めてまるで水車のように回しながらルークへ向けてなぎ払いをした『ローザクヴァレ』。水鉄砲の範囲も広がり凄まじい攻撃ではあるが、逆に言えばそれだけに集中すれば回避できてしまうんだ。
「『忍鬼』発動!!!」
効果発動のキーワードを唱え、ルークの動きが今まで以上に素早くなる。同時に水車大回転の攻撃をしっかりと回避し、触手を『鏡雀』の要領で切り裂きながら距離を詰めていく。
「『血眼雀』!!!」
切り裂いた時の体液を刃に乗せてルークはさらに斬撃の速度を上げた。何度も切り裂きながら本体との距離を一気に詰める。焦った『ローザクヴァレ』が触手を分離させようとするのだが離れていく触手を見ては即座に切り落としていくルーク。
そしてルークがその刃の届く距離に本体を捉えたとき、触手は既にほぼ全滅していた。飛び上がり、『雲雀刀:カシワデ』を鞘に収め、最も効果が高い距離に達した瞬間。
「超越天匠流奥義『神斬雲雀』ィィ!!!」
その一線が『ローザクヴァレ』の傘を捉え、切られた触手をピンと張り、そして浮かんでいた体を地面へと落としていった。無事戦闘終了だな。
ルークもそれを確信したようで、鞘に刀を納め、こちらを見て嬉しそうな笑顔でピースをしていた。うんうん。よくやったルーク。
けど、最後の最後で気が抜けるのはまだまだ鍛え直す必要がありそうだ。
『 LLLLLLL 』
「えっ・・?」
存命できる最後の瞬間。『ローザクヴァレ』はその体を大きく振り上げ、そしてルークに叩きつけようとしていた。完全に気が抜けていたルークの体は硬直し、動けない。
「『風瓶エリシオン』接続『恋翔サジタリオ』」
「あ・・・」
ラストアタックを取ってしまう形にはなったが悪あがきをする『ローザクヴァレ』を衝撃の爪と矢で切り裂き、そして貫く。今後こそトドメとなった一撃を受けて『ローザクヴァレ』は光の粒子となって消えていく。
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・海岸エリアボス『ローザクヴァレ』討伐。
・生存者:プレイヤー『アール』『ルーク』
・生存者:従者『NPC:破滅の球体-ディア-』
・開放:『オースタット山道』
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・『ローザクヴァレ』を撃破しました。
・素材:桃水母の笠×2・桃水母の触手×5・桃水母の命玉×1を入手
・賞金:20000D獲得
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「まだまだだなルーク?」
「ご・・・ごめんなさい」
「まぁそれ以外は今のところの満点だ。今後気をつけろよ? とりあえずほら、ハイタッチでもしようや」
「〜〜〜っっっ!!!! うん!! アール師匠!! 僕頑張る!!!」
しょんぼりした表情から一転、これからの決意と喜びにあふれた笑顔でいい音を奏でてハイタッチをしたのであった。
最後の最後で油断するところが子供らしいけど、それでも褒められると喜ぶお年頃。
久しぶりに短編も更新しました。
興味があれば是非読んでください。因みに主人公は募集で頂いたとあるキャラです。
たまに掲示板にもいますよ




