180:たどり着いた一つの疑問
プレイヤー視点のおはなし。前回同様『雷華』さん視点でお送りします。
「ねぇねぇミラファちゃん」
「なに?」
「今更なんだけどね? アールさんが『剣聖物語』のアフターストーリーをクリアしているのは周知の事実じゃない?」
「??? そうだけど? どうしたの急に?」
本当に今更の事をミラファに確認するシア。既にそのことを知らないプレイヤーはほとんどいない。居ても精々新規で入ってきたプレイヤーくらいだ。
掲示板には既に『アール』の名前は上がっているし、有志による公式(アール本人)から許可された紹介ページも完成している。
少し調べれば誰でも知っているもはや『プラネットクロニクル』の常識ともなっていることね。
「いやね? 元とは言えシアってばアンチ民だったっしょ(っ・。・c)? そんなシアちゃん(╹◡╹)だからこそ見えてきたんだけどね? もう『プラクロ』が『剣聖物語』の続編なのは良いし、隠しモードの『アフターストーリー』に関してもシアちゃん(╹◡╹)的には全然OKなのね?」
「シア、勿体ぶらずに早く教えなさいな」
「まぁまぁ雷華ちゃんヽ(´▽`)聞いてほしいな」
こういう時、私個人としてはハッキリ結論だけ欲しいんですがまぁ、シアが言わんとしていることはなんとなく分かりました。
「”どうしてアールさんのことをしっかり皆覚えているのかな? 続き物とは言え個人の紡いだストーリーがそのまま反映されるのって贔屓じゃない?”」
明言されるとその通りなんですよね。アールの話的には間違いなく、彼が作った物語がそのままベースとなっているのです。決定的なのは”マリアーデとアールが師弟関係であること”
マリアーデに弟子入りが可能だと判明後に私を含めて有志が『剣聖物語』でマリアーデに弟子入りすべく動いたのですが、結果は全員同じ。難易度は『ルナティック』なのですが、何十回何百回やっても弟子入りさせてもらえるような雰囲気にはならないのです。
アールが辿った道筋をチャート化して同じことをしているのですが弟子にしてもらえる素振りもないのです。
マリアーデに会うことは可能です。でも稽古をつけてもらうことすら出来ないのです。アールを除く私たちが知るマリアーデとはそういうものなのです。
リアルハードモードで挑戦してみても然り、いえ、リアルハードモードだとまず会うことすらほぼ不可能でしょう。そもそもマリアーデに会うための街に行く前にこちらが死んでしまうのです。そういう意味でも彼がどれだけの時間と年月をかけて『剣聖物語』という作品に取り組んでいたのかマジマジと感じ取ることになったんですけどね。
「確かに〜。シアっちに言われて見るとそだね〜」
「言われてみるとそうですね。まるでアールさんの為に作られたみたいな気もしないでもないです」
「流石に一企業が一個人のためにこんな大規模なサービスを提供はしないでしょう? するとしてもオンラインではなく、普通のVRRPGに留めるでしょう」
「「「ですよね〜(┐(´д`)┌)」」」
そんなことをしてしまえば企業が持たないし、する理由がありませんからね。いくら彼がすごいといっても個人の為に、それも企業に属さない一人のプレイヤー世界中の人間を巻き込んだゲームなんて物語の出来事じゃないんですから。
属さないかどうかはわかりませんけど、属していたとしたらそれこそ、個人寄与するでしょうし。
「うーん・・・そうとも言い切れないかもよ?」
「「「「え?」」」」
そんな私たちの考えをミラファが否定した。
「私は『剣聖物語』を一周しただけだから他の人みたいに自信を持って言えるわけじゃないけど、『エクスゼウス』ってゲーム企業は普通じゃないと思うんだよ」
ミラファはそう言って思い出すように言葉を繋いだ。
「VRゲームっていうジャンルをここまで大きくした作品の生みの親なわけでしょ? もし一般企業ならきっともっともっとVRを大きくしたいって思うはずだから『剣聖物語』以外にもたくさんソフトをリリースするのが普通でしょ?」
「あ、確かにそうっすね。新時代の立役者なら市場は独占状態ですもんね。どう考えてもボロ儲けっすな」
「けど、ミラファさんの言うように『エクスゼウス』は『剣聖物語』以降別ハードも含めて一作品も出してない?」
「そう、ラビット君正解。それどころか他の企業に最大の武器である『クロニクルシステム』のプログラム? そういうのを教えてるんだ。その結果だけど言わなくても伝わるでしょ?」
「あぁ!!Σ(゜д゜lll) 他の企業が一気に『クロニクルシステム』搭載型の新作を出してた!!」
「言われてみれば・・・!!? そんなことをすれば大手企業にあっという間に市場を持って行かれます・・・!!」
VRの発達ばかりに気を取られていたけど、よく考えれば普通はありえないことだったんじゃないですか!?
「『エクスゼウス』が生み出した、最先端の技術を簡単に流通させてしまったんです。それも特許を取得したあとに各業界に無償で流していると以前ニュースで見たことがありますから間違いないと思いますよ?」
企業というのはただのボランティア団体ではないです。資金運用に資金調達は当たり前です。その為に技術提供はあるとしても、それを無償だなんてありえないことじゃないですか!?
「じゃ・・・じゃぁさ(;゜Д゜)!? 『エクスゼウス』はどうしてそんなことしたのさ!?」
「それは私にはわからないよ。でも、それから数年間『エクスゼウス』はVRゲームを出すことはなかった。『プラネットクロニクル』がリリースされるまではね」
確かにそうです。ちらほら技術提供したということで『エクスゼウス』の名前は来ていましたが、エクスゼウスが自社で発表したのは『プラネットクロニクル』が二つ目です。
『プラネットクロニクル』製作のための時間だったといえば納得出来ない訳ではないですが、それにしたっておかしい話ではあります。
「ここからは私個人の考えね? きっと『エクスゼウス』は新作ゲームを出すつもりはなかったんだと思うの」
「えぇっ(;゜Д゜)!? なんで!!?」
「だってもうVRは一つのジャンルとして確立した。それで満足してたんだよ。けど、そんな中で『エクスゼウス』はきっとずっと『リアルハードモード』をクリアするために戦っていたアールさんを見つけたんだよ」
「・・・なるほど」
「えっえっ? 俺ッチよくわからんけど・・・どゆこと?」
「きっとね? アールさんが誰もクリアしていない、他にも新作がたくさん大手企業からリリースされていたにも関わらず、ずっとやり続けていた姿を見てたんだよ。『リアルハードモード』って何か異常があるときは『エクスゼウス』が対応するってタイトルの説明書きであったでしょ? だから『エクスゼウス』の人は毎日交代とかしながら見守り続けてたんだと思うんだ」
『剣聖物語』は彼らにとっては我が子のようなものでしょう。愛着を持っているのは当たり前です。そして、そんな『剣聖物語』をずっとプレイし続けるプレイヤー。ミラファの予想が正しいかはわかりませんが、もしそうだったとしたら。
「何年もずっと遊んでくれたアールさんにお礼がしたかったんだと思うの。そしてそれを世界中に知って欲しいって『エクスゼウス』の人たちは考えたんじゃないかな?」
「でもそれって・・・」
「基本無料じゃないから、やりたいと思う人以外は買わないし、見れれば良いって人もいるから売上はきっと少なかったかもしれないけど、それでも、100人が買って、そこでアールさんを知ったらね? 『エクスゼウス』の人はそれで良かったんじゃないかなって思うんだ」
「自分たちの作ったものを愛してくれた人を世界中の人に知ってもらいたい。だから『プラネットクロニクル』を作ったのではないか。ミラファはそう考えたんですね?」
「うん。それってとってもロマンチックだと思うんです」
「ウピピャァァ.。゜+.(´∀`○)゜+.゜。 確かにそれってすごいかも!!」
「MMORPGとしてリリースしたけど、本当にプレイして欲しい人間はアールさんだったってことっすか? その為にここまでやるとしたら『エクスゼウス』マジパネェ」
「ですね! でも僕はそれとってもカッコイイことだと思います!!」
たった一人の人に向けて一企業が恩返しをする。フィクションでありそうな事ではありますけど、確かにそれは美しいことかもしれませんね。
もちろんたくさん危険な橋はあるでしょう。アンチだって湧くでしょうし、文句が出る方だっているはずです。現状ですらそうなのですから、もしこれが公式発表だとしたら大惨事でしょうね。
「あくまでも私の勝手な妄想だからね? でももしも、そうだったら『エクスゼウス』ってやっぱり変な企業で、カッコイイ企業だなぁっておもったんだよね」
「ミラファちゃんって時々ロマンチックだよね(  ̄▽ ̄) でも納得(^-^*)!! シアの中ではそういうことにしとく!!」
「シア、あくまでも想像の範囲をでませんから、大声で話すことはしちゃダメですよ?」
「わかってるって!! シアちゃん(╹◡╹ლ)はもう立派な『アールさんファンクラブ』の会員だもん!!」
もしミラファが考えたとおりだとしたら、『エクスゼウス』の理想通りのことがこうして起こっているんですね。
彼にはどこかカリスマ性がありますから。なんて言うんでしょう。人の心を掴む何かがあるんです。彼の先を見てみたいと思わせるモノを持っています。
そして彼が磨き上げたモノを私たちが憧れ、そして再現したり、同じものを手に入れるために頑張り始めています。たかがゲームと言っていた時代からは考えられないほど、時間は進み、ゲームが人を動かす時代になっているんですね。
「よぉしo(*・ω・)○ !! こうしちゃいられない!! みんなで今日も人助けだァ!!がんばろー!!!」
「「「おー!!」」」
「えぇ、頑張りましょう」
その他プレイヤー達も似たような考察や、ほかの可能性など、いろいろ考えてはいますが、共通して『エクスゼウスは変態企業である』ことは決定事項です。




