171:動き出す世界
第二章に行ってみましょう。言うなればプロローグ的なやつです。
丁度11月入って開始なので区切りがいいですね。ではどうぞ。
走っているのはリザードマンと呼ばれるモンスターの一種。
走っている場所はとある国の城の中。リザードマンは大きな扉の前にたどり着くと呼吸を整えていく。
「失礼します!!」
「えぇ!!?ちょっと待ってください!!あぁもうどうしてこんな時に・・!!」
扉の奥から聞こえてきたのは女性の声。リザードマンの声を聞いて慌てた声を出した人物はドタドタと部屋の中を駆け回りながら物をどかすような音を立てていく。
「へ・・・陛下?」
「もうちょっと!!もうちょっと待ってくださいな!!」
その数分後、ようやく開かれた扉。その先にはよほど慌てていたのかボサボサになった髪のまま息を荒げている妖精が居た。
急いで片付けたのであろう。応接室のような部屋の隅にあるクローゼットには押し込まれたであろう書類や貰い物と思われる包みが押し込まれていた。
「陛下・・・もしかしてまたですか?」
「またとはなんですか!!?ひどいです!!ちょっと片付けが苦手なだけです!!」
「ですからいつも言っているではありませんか・・他の妖精族に手を借りれば良いのです」
「だって恥ずかしいじゃないですか!!」
じゃあ取り乱すのは恥ずかしくないのかと思うリザードマン。だが彼は空気が読めるリザードマン。グッと言葉を飲み込んでとりあえず報告に移る。
「陛下の片付けに関してはまたいずれ。報告です陛下!オーグの臣下より報告がありました!離反したオーグを除くゴブリン七将が全て時代人に討たれた模様です」
「そうですか。それで時代人や町に住む人たちの被害は?」
「少なくとも200は超えるそうです。特にグーズによる死者が多いようです」
「あのクズゴブリン・・・・分かりました。それで?オーグはどうしたんですか?」
「はっ!ゴブリン達が起こした事への責任のために身を捧げると書いてあります!!」
それを聞いてきょとんとする陛下と呼ばれた妖精。だが一息つくと呆れたように肩を落とした。
「あのおじさんはいつまでも・・・責任は私に押し付けるようにといつも言っているのに」
「それはそれでどうかと思うのですが?」
「いいですか!私はイヤイヤですが貴方たちの王です!なら責任は私に押し付けるべきです!!」
普通逆ではないかと思うリザードマン。いやこの妖精はむしろ責任を押し付けられて辞めてしまいたいと考えていそうだと考え直し、また言葉を飲み込む。何度も言うが空気が読めるリザードマンなのだ。
「しかしそうなると・・・ゴブリン達のリーダーはどうしましょう・・・ぶっちゃけて言えば、カリスマ性があったオーグがいなくなると困ります。それ以外はどうでもいいですが」
「ひどいなこの陛下・・・まぁそういうことならアレですよ。戻ってきた忠臣に彼の亡き後をついでいただくのはどうでしょう?」
我ながらナイスアイディアであるとリザードマンは内心考える。さすがは空気が読めるリザードマン。これくらいは朝飯前である。
「このおバカ!あの金魚のフン達にそんなことできると思いますか!?と言うか出来るなら、とっくに彼らをゴブリン七将に収めてますよ!!」
しかし残念。リザードマンのナイスアイディアは妖精の王にとってはナイスでも何でもなかったようだ。ちょっと内心悲しむ。
「・・・・仕方がありません。ザード。少し出かけてきます」
「はい・・・?まさか陛下!!?」
「あのおじさん何とか連れ戻してきます!! 死んでないでしょうし!! それにこれなら胸張って行ってもアールには絶対に怒られませんし!」
「おい陛下、最後本心ダダ漏れだぞコラ。おい陛下っ!?」
部屋の窓を開いて妖精の王は背中に生えた翼を広げる。慌てて止めようとするザードと呼ばれたリザードマンだが既に遅し。
「では行ってきます!!留守はお願いします!!ついでに書類の整理も任せます!!」
「ちょっ!!? お待ちくださいカイラ陛下ァァ!!?」
大空に翼をはためかせて、妖精であり、モンスターの国、ゼアリードの女王カイラは飛び立ってしまった。同時にクローゼットに押し込まれた書類の山が溢れ出してきた。
「ど畜生あのポンコツ妖精仕事押し付けやがったァ!!!!!次の給料日いつもの倍要求してやるぅぅぅ!!!!」
空へと消えていった妖精に対して、飲み込んでいた言葉を思いっきり吐き出すリザードマン。30秒ほど叫ぶとすっきりしたようで部屋の中に散乱する書類に目を向ける。
「とりあえず誰か呼んで手伝わせよ」
彼は出来るリザードマン。例え上司がポンコツでも頼まれた仕事はきっちり済ませるのだ。
「全く・・・最近昔の男が転生したからって浮き足立っちゃってからにまったくもう・・・」
何はともあれ機嫌がいい時は街が平和なのでよしとしよう。それに陛下が喜んでいるのは家臣として、ひいては一人の国民として嬉しいリザードマン。とりあえず仕方ないからこの乱雑さを広めるついでに書類と部屋を片付ける為、手伝いを探しに城の中から人手を探し始めた。
「あ、親善大使に関する報告忘れてた」
たまにドジもするリザードマンなのであった。しかも割と大事なこと。
――――◇――――
「そうか・・・報告ご苦労である。下がって良いぞ」
「はっ!!」
ここは人の国。アール達がいる国とは別。全ての命あるものが共存して過ごす国『エリュザクト帝国』とは正反対で、人間こそ至高であるという考えの根付く『ラグズライド王国』、その首都ラグズライド。
国王が鎮座する王城の謁見の間にて行われる近況報告。そこで聞かされたのは隣国『エリュザクト』で起きたモンスターによる侵略事件の報告。
玉座に鎮座する国王と共にその報告を聞いた国の重鎮たちは改めてその驚異性を確認する。
「ラグズ王! もはやラグズライド王国が襲われるのも時間の問題です! 一刻も早くモンスターの殲滅を!! ひいてはエリュザクトの現状を変えるべきです!!」
「何を言っている! その前にあの時代人などと言う化物どもを何とかするべきだ! いずれ奴ら国を乗っ取りかねんぞ!!」
「だから言ったのだ!! 隷属させてでもあの化物どもを味方につけるべきだったのだ!!!! それを悠長に構えているからこうなったんだ!!」
「何を馬鹿な事を言っている!! 化け物どもを取り込むなど悪しきことだ!!」
だんだんと的外れな意見を言い始める家臣たち。国王は手に持つ杖を鳴らすと騒いでいた家臣たちは静まり返る。静まった者達を一瞥すると国王はゆっくりと口を開いた。
「少なくともこれ以上は無視できまい。至急『エリュザクト』へ使者を向かわせよ。少なくとも停戦協定さえ結んでおけばこちらに表立って手出しすることはあるまい。時代人に関しては既に手は打ってある。我らは”その程度の事”を気にしている暇はないのだぞ?」
「し・・・しかし王よ! 今回起きた騒動で確認されただけでもモンスターの数は数万を超えます!それをわずか2000にも満たない程度の時代人が押し返したのですぞ!? もしその力がゼアリードの連中のもとへ加わればそれこそ我らの敗北につながります!!」
「では聞くが? モンスターどもに襲われてすぐにモンスターどもに加勢するような連中なのか?」
「いえ・・・それは・・・・」
「ならば良い。もし万が一そうなったとしてもこちらには”コレ”がある。どうにでも出来る」
国王は背後に飾られている剣を示した。それ以降会議は円滑に進み、家臣たちはその場を後にしていく。
「全く・・・愚か者どもめ・・・化け物の相手は”勇者”にさせれば良いのだ。そうであろう?」
国王がそう言うと柱に隠れていた魔術師のような姿をした人間が答える。
「既に”勇者召喚”の準備はほぼ終了しております。あとは陛下の号令があればすぐにでも」
「禁忌などと言って目の前に怪物どもを始末できる手段があるのだ。使わん理由がないだろうが」
「おっしゃる通りです。力は使ってこその力。使わず腐らせるなどもっての外です」
「ふん。キサマらの目的はわかっている。キサマらが言う”神”とやらも我が利用してやるだけだ」
「ふふふふ・・・出来るものならご自由に」
魔術師の男は再び闇の中へ消えていった。玉座に残る王は誰もいなくなったその場でただ一人笑い続ける。
――――◇――――
そしてやがて、世界は次元を超えて交差する。
――――◇――――
「さて諸君!! イベント完走お疲れ様!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「さてそれで?クレーマーに新アップデート企画、各種調整事項にイベント報酬の配布とかその他もろもろがある訳だけど・・・」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「(ゴクリ)」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「そんなもん後回しよ!! アールくんの素晴らしさを語って語って見尽くすわよ!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「YAAAAAAAAAAAAAAAA!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「酒持ってきなさい!! 食物を調達しなさい!! 今夜は全員寝かせてもらえると思わないことね!!!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「YES!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
無事イベントも終了よ!! 今日は打ち上げ! 最低限の管理だけして後は調教した躾のできたAIに任せておこう! 大丈夫! 今回はAIの分離体も一緒にお祝いよ!!
これからイベント報酬の配布に今回のイベントに関する様々な苦情やクレームの対応、それに伴う難易度の調整や新スキルの仕込みも含めてやることはたくさんある。
その英気を養うために今日は打ち上げよ!!
今回のクレームや苦言には私たちに対する挑発のような物もあったから真正面から受けてやるつもりよ。万人受けするように良調整で留めていたのに、それに対して『弱すぎる』とかいう馬鹿が複数人いたんですもの。
えぇいいでしょう。ならば戦争だ。”本当の強さ”じゃない。”本当の理不尽”というものをその身を持って教えてあげましょう。自分たちのいいようにゲームが変わっていくと思ったら大間違いよ。
一般的な企業運営ならそうかもしれないけど、こちとら趣味の延長でゲーム作ってると言っても過言じゃ無いのよ。そんな私たちに『敵が弱い』だの『ボスが瞬殺されるのはおかしい』だの言ってくれたって。
ほとんど始めて間もないプレイヤーと上位に行こうとして挫折した奴らからのものだけど、そういったのは貴方たちよ。覚悟することね。
上位陣には少し悪い気もするけど、それを乗り越える強さを持ってくれるなら私たちは大歓迎。むしろ第二第三のアールくんになる人が出て来てくれるなら喜んで修羅になりましょう。
どんな理不尽だろうと挑み続け、越えようとする人は私たち大好きよ。その精査にもなるからちょうどいいといえばちょうどいいのよね。何かあってもクレーマーに対応した結果って言えるし。
まぁある程度は妥協案も実装しておくとして、本命の実装はもう私の中では決定事項。今回『ゼアリード』の存在も正式にしたわけだしそろそろ他の国の動きも大きくなってくる。楽しくなってきたわ。
ゲームで異世界クラス召喚とかいう禁忌発生の予感・・・これは新キャラ募集の可能性あり
多分先着何人とかになるかと思います。予定は高校二年生でクラス30人程度。一人につき一人まで。
詳しく決めたらまた報告しますのでお楽しみに。
感想お待ちしています。




