168:二つの刃の結末 Ⅱ
「ニコニーコさん声デケぇな。ここまで聞こえんだけど」
「あのヒーロー馬鹿はこんなもんだ気にすんな」
「そうとも。いつも通りで逆に安心だよ」
同じマスター同士ということでリークたちが気を効かせてくれたようで俺とルシオン、チーザー紫の三人が先頭に立ち、侍ゴブリンがいる場所へと向かっていく。
気配の場所は懐かしいニルスフィア大森林。そして俺と侍が初めて遭遇した場所みたいだ。道中のエリアボスは一瞬で溶けるように倒された。と言うか倒した。
ゲーム中最大火力クラスがゾロゾロいるんだしこれくらいは仕方ないな。一度に挑める数が30人だったので、俺達が通過するのに全部で三回ほど倒す必要があったのだが、長くても30秒足らずで倒されてしまった。
これはもう『恨血の木』になっても誰も文句言えんわな。次回以降進化してたりして。
ちなみに倒し方だが、俺のチームは俺とマリアーデ、アアリーに道を作るために他全員で本体以外の根や幹を粉砕。最後に本体を『鏡雀』で切り捨てて終わり。
チーザーはゴリ押し、ルシオンはハメ殺しだった。時間がかかったのはルシオンだけど、多分一番えげつない戦い方だったのもルシオンだ。敵に回すのめんどくさいなぁ・・・
チーザーはマー坊ほどじゃないにしろクランの連携が異次元だった。封殺してそのままゴリ押したのだ。支援と妨害、更に波状攻撃を掛け声なしで淡々と行う姿は感動すら覚えた。
と言うかこんなに多く人がいるのに誰ひとり前に出て行こうとしないのな。一応この先に恐らく最後のイベントボスである侍ゴブリンがいることを皆わかっているはずなのに、誰ひとり抜け駆けをしたりしないのだ。
逆に少し怖いぞ。
「そんでよアール。侍の野郎はどこにいんだよ?」
「この先には特に何かあった覚えはないね」
「確かに目立つもんはないんだけどな。多分もう少し歩けばわかるから見ててくれよ」
そこから更に五分ほど歩いていく。他愛のない話をしながら目的の場所へと真っ直ぐに進んでいく。
改めてだけど俺はルシオンやチーザーとこうして話をしたことがなかったんだったな。特にチーザーは弟であるルークを預かっている訳だし。
「ところでアール君? 君がレスラーだって言われた時正直どう思ったんだい?」
「お、それは俺も気になる。どうなんだよアール? 俺らだけに教えてみろよ?」
「って言われてもなぁ・・・プロレスは好きだし嫌ではなかったぜ?」
「夜のプロレスも大好きだってか?」
それ下ネタだから!!? しかも言ったのチーザーかよっ!!? いやお前女性だよな!? 今はスゲェ俺様系のキャラだけど前に見た本性はかなり女性だったよね?
「いや何チーザー? 欲求不満なの? 大丈夫? 雄ッパイでいいなら揉むか?」
「ギャハハ!! なんだよアール! ノリいいじゃねぇか!! どれ記念に揉んでやるぜ」
「イダダダダ!!?! せめて優しく揉んでくんない!!? エクストラって痛いんだってば!!?」
乳首ちねるのやめてくれない!!? 痛いんだから!!
「リークくーん? これって浮気認定されないのかい?」
「下心ないから全然オッケー」
うちの彼女にかかれば相手の心情なんて見なくてもわかるんだよ。読眼術師だぜ?見れば性癖だってバレるに決まってる。マジでプライベートないもん。
俺の秘蔵コレクション全部見られたこともあったし・・・その後そっち方面の格好してくれたときはマジで死んでもいいと思った。
「おいリーク! コイツの弱点なんかないの? 膝枕以外で」
「ん?えっとね、この前着てあげたm「ワーワーワー!!!!!!やめろぉぉおおおお!!!」ってかんじで私がアールの弱点です」
「ちっ、ノロケかよ」
「・・・・・ぐすん」
「アールくん。強く生きてね」
ルシオン。そのニヤケ顔でなければすごく嬉しいい言葉だったぜこんちくしょう。と言うかリークも容赦無さ過ぎねェか? この前までこういうことしなかったじゃん?
「アールが崇めたてられすぎないように調整してるんだよ? 気遣いの出来る彼女でしょ?」
「メス猫アンタ。それにしたってエゲツナイ調整の仕方過ぎない? 面白いからアタシも参加するつもりだけど」
「でも夜は二人して反撃受けて泣かされたりするんだろ?」
「「「ゴリラ殺す」」」
「あ、ヤベギャァァ!?!?!?!!?」
テメェ一番触れて欲しくないところを天然(?)で触れやがってマジで許さねぇ!!!先にゴリラの三枚おろしを作ってやろうかゴラァああ!!!!!
見ろよ周りの視線!! ドン引きしてんじゃねーか!!? 違うぞ!!? 浮気じゃねぇ!!! 二股してる最低野郎じゃねぇぞ!!?
縛られたら流石に俺だって逃げれねぇもん!! 逆に沈めたほうが平和なんだってマジで!! 血で血を洗うことはしたくねぇだろ誰だってさ!!
――――◇――――
「「「これくらいで勘弁してやる」」」
「これ現実なら間違いなく殺人だぞお前ら・・・イツツ・・・」
「それをその程度でいられるテメェも大概だろ・・・」
「だねぇ・・・この四人の関係って知ってる人が見たらすぐ気づきそうだね」
ちょっと道草してマー坊私刑時間を作っていた。言っていいことと悪いことはあるんだよ。これに懲りたら今後は気をつけてもらおうか。割と本気でな。俺の沽券に関わるし。
ちなみに後日『五代目剣聖、ベッドヤクザだった』とか『ベッドの上でも剣聖だった』とか不名誉極まりない話題で盛り上がっていたらしい。マジでふざけんな。と言うかベッドヤクザ言うなし。
そんな感じで道草したのだが、侍ゴブリンは動くことなく、同じ場所に佇んでいたようで気配が動くことはなかった。
そのまま移動を再開した俺たちはすぐに目的の場所に出たのであった。
「な・・・なんだこりゃぁ?」
チーザーが驚くのも無理はない。それは森の中にいたはずなのに余りにも開けすぎている場所だった。生い茂る木々に囲まれただだっ広い空間。
リークと俺が初めてゴブリンの集団を相手にした場所である。そして俺が当時全力で技を繰り出しゴブリン諸共文字通り切り裂いた場所でもある。
そして、俺と侍ゴブリンが初めて出会った場所でもある。正確に言えば少しだけズレているのだが、この森で出会ったことがすべての始まりであった。
『・・・・・・・・・』
その空間の中心。まるで合戦の本陣でも陣取っているかのように、侍ゴブリンとその配下が静かにいた。
「・・・・・・なぁ皆」
「言うなよ。行ってこいアール」
「最終目的は勝利だけど、今の僕らが見たいのは君が見せるモノだよ」
一緒に来た全てのプレイヤーがただ静かに頷いてくれた。そっか。それならありがたくその想い受け取ろう。
「ディア」
『ヨ』
名前を呼んだだけだが、察してくれたようで、ディアがフードの中から飛び出し、リークの腕へと飛び込んでいった。
「ギルファー」
『分身も放っている。邪魔はさせんから行け。だが負けることは許さん』
なんだかんだと言いつつコイツは本当にいい奴だ。食い意地もあるし迷惑なんて気にしない馬鹿狼だけど、ここぞという時は空気も読むし頼りになる。
「リーク、レイレイ、マー坊」
「もう負けちゃダメだからね?」
「誰のでもないアールの戦いなんだから絶対に勝って」
「また負けて腕探すのだけは俺嫌だぜ?」
「当然だ・・・いってくる」
全員からの後押しがある。始まりの戦いがやっと終わるみたいだ。
――――◇――――
――――始まりは二人の剣士の戦いだった。
――――実に多くのことが起きた。世界を震わせる数多くのことがこの短期間で起こり続けた。
――――怒り、悲しみ、喜び、感動。
――――いくつもの出会いと別れはその二つの刃が混じりあった瞬間に始まった。
――――その戦いが今、決着する。
――――今この時、一つの歴史が動くことになる。
――――期間限定イベント『剣聖の遺産と子鬼たちの侵略』ラストシナリオ『二つの刃と結末』開始。
――――◇――――
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