167:二つの刃の結末 Ⅰ
お待たせしましたゴブリンイベント最終章
ついに侍ゴブリンとの戦いが決着します。
以前決闘で倒したレイエルが流した情報を見て、エーテリアが文字通り震えた。
日常雰囲気から一気に戦闘状態へ切り替え、あるものはすぐに街の外へと駆け出していく。各クランのマスターはクラン員への指示出しと現状把握、そして住民の安全確認など一気に動いていく。
もちろんその中には俺たちも含まれている。気持ちを切り替えて全神経を奴の気配を探すために費やしていく。
「・・・・・・いた」
「ほう?この気配が侍ゴブリンというのか・・・なるほどな」
「へぇ、アールくんの腕を切り落としたゴブリンですか・・・興味がありますね」
俺を含めた剣聖組は奴の居場所を感じ取った。いや、あえて感じさせたと言う様な感じだな。侍ゴブリンのやつ全く気配を隠していない。まるで『ここにいるぞ』と教えているようだ。
「行くぞお前ら」
「今更だけどお前の気配把握どうなってんの?あとマリアーデさんとアアリーさんもしれっとやってるけど」
歩きながら侍の元へと向かい始める中、マー坊がそんなことを聞いてきた。そういえば教えたことなかったっけ。
「「月光流と桜華戦流の応用」」
「私は生命が持つ微弱な魔力を感知しているんです」
俺とマリアーデは同じ方法。歩くときに地面を流れる衝撃とそこから推測される敵情報を、自分の持つ情報と当てはめる。あとはそいつが持つ特有の気配や呼吸を感じ取るのがコツだ。
あとはその数だな。侍には従者が7体いた。俺が感じた侍ゴブリンと思われる奴の気配の近くには七つ、他の気配があった。だから多分コイツだろうと目星をつけたまでだ。
「ゴリラ、気にしたら負けだから取り敢えず行くよ」
「全く・・・これだから脳筋ゴリラー坊は・・・ハァ」
「おっし犯人見つけた。レイレイ。お前今度泣かすから覚えてろ?」
「お前の性〇潰すぞ類人猿、アタシを泣かせていいのはアールだけだ。マジで殺すぞ?」
「レイレイステイ」
「メス猫ざまぁ!」
「リークお前も調子に乗るな」
「ねぇバカ師匠。今度僕にも色々教えてくれる?」
「師匠!!妾も教えて欲しいのじゃ!!」
「お前らはその前にまず『白月』を完璧に使えるようになってからだ」
「何か昔に戻ったみたいですね。楽しいです」
「昔より多いしキャラも濃いからな・・・そう考えたらシャングとかリーラとかが普通・・・じゃねぇな」
「カッカッカッ!!愛弟子!中々愉快な仲間であるな!お前らしい!」
「以前の旅でも思いましたけど、君のまわりに集まる人は皆変わってますよね」
アアリーさん。俺もそう思う。
――――◇――――
その一団は他とは比べ物にならない何かを持っていた。街の内外を駆け回るプレイヤーが思わず立ち止まりガン見してしまうほどの面々だからだ。
悔しいけど、間違いなくコイツらだけで街一つ・・・いや、大陸を征服できる実力と”力”を持っている。
全プレイヤーで唯一『魔術女帝』のジョブを入手しており、更にマスターしている魔法系ジョブ最強の名を思うがままにしている。すべての魔術魔法をノーアクションで放ち、リキャストなしで大技を、それも広範囲殲滅魔術を無尽蔵に使い続ける文字通り怪物。リーク。
抱えている情報は間違いなく誰よりも多い。数も質も足元に及ぶもの無し。本気になれば国や街を思うがままに支配することだって出来る情報を持ちながら、ジョブ『暗殺者』において勝てる者なし。レイレイ
対人戦で未だ敗北はない。戦力差など本当の暴力の前では無力なのだとその身を持って教える戦闘狂。だがその戦いの中で常に成長を遂げ新たなスタイルを魅せ続ける最強のインファイター。俺はマー坊。
その実力はいまだ成長中。わずか一ヶ月程度でイベントボス。『忍者ゴブリン』を倒した実力と、クラン戦で見せた戦士の姿は多くのプレイヤーの目を釘付けにし続ける少年プレイヤー。ルーク。
プラネットクロニクル初の『天匠流』継承者。銀狐族という銀色の長い髪は見るものを魅了する。そして彼女が携える刀から繰り出す峰打ちはどんな硬度なモノすら無残に破壊する。NPC『銀狐族のギン』
前世『リリカ』という悲劇のヒロイン。その過去を乗り越えて再び表舞台にその姿を見せた剣豪。その実力はギン以上であり、繰り出す抜刀術は捉えることができない。NPC『剣豪コヨミ』
魔人と人の血をその身に宿す伝説の人物。そのひと振りは空を切り裂き、海を割ると言われている。その実力は今だ未知数。だが一つ言えるのは間違いなく彼女に勝てる人はそうそういないという事。NPC『二代目剣聖アアリー』
おそらく現プラネットクロニクルに登場しているNPCの頂点に立つ実力者。それだけでは飽き足らず、プレイヤーでも勝てる者なし。アアリーと同じく実力は未知数だが、彼女が戦うと決めたとき、相手は立つことすら困難だろう。NPC『四代目剣聖マリアーデ』
全プレイヤーの中で間違いなく今一番話題沸騰であり、そして今尚進化し続ける突如現れた巨星。前人未到の『リアルハードモード』を超えて『プラネットクロニクル』へと舞い降りた、本当に存在する本物の剣聖。アール。
そんな奴らが日常会話をしながら一緒に同じ方向へと歩いていくのだ。そんなもん見ない訳がない。その姿には不思議と安心感を覚えるほどだ。
『大丈夫だ』と体と心が言っている。もちろんそれは気のせいかもしれないけど、それだけの”モノ”がアイツ等にはある。
「ふふっ、チーちゃんすごく嬉しそうな顔してるね?」
「あ?そうか?」
「うん。すごく楽しそう。その顔はあれだね? 『いつかアイツを倒すのは自分だ』って思ってる顔だね」
ハッ、見透かされてんなぁ。その通りだぜ。俺は、いや、”私”は今悔しいと思いながら興奮している。今まで見ていた超えるべき壁、その先にそびえ立つ新たなる壁。
ストレス発散の為に始めたゲームがもはやストレス発散という目的を投げ捨てて、私に新しい目標を次々と与えてくれる。こんなこと考えもつかなかったぜおい。
「良かったよ。いつものチーちゃんに戻ってきたね?」
「ったりまえだ。いつまでもウダウダしてられっかよ」
マジで焚きつけられるわ。色々と思っていたことがあったけど、それを全部、この光景が解決してくれた。あのバカ野郎が自分で気にすんなって言ったんだ。これ以上気にしてたら楽しいもんも面白くなくなる。そんなのはゴメンだぜ。
「おいテメェら。いつもと変わらねぇ。俺は俺のことだけ考えて動く。お前らはどうする?」
俺が立ち上げたクラン。そのメンバーを見て問いかければいつもと同じだ。
「マスター!!着いてきますぜ!!」
「そうそう!!マスターが先陣切るならついてかない理由はなし!!」
「アールもスゲェがうちのマスターだってスゲェんだ!!!!俺たちのあこがれは『チーザー紫』さんだけでっせ!!!」
俺様の熱狂的な信者に頼りがいのある奴ら。アールだけがプラクロを牛耳るなんて面白くはねぇと思っている奴らだ。
自分たちもそこに混じって、巻き込んで、主役になろうと今でも本気で思いながら駆ける子分どもだ。
「はっ!!上等だ!!行くぞテメェら!!このイベントの最後見届けんぞ!!」
「「「「「はい!!!!」」」」」」
「「「「オッス!!!!!」」」」
とりあえずだ。借りを作りっぱなしなのは気に入らねぇんだ。それを含めて最後を飾らせてもらおうか。
―――――◇―――――
「いやはや、流石チーザーさん。元気だな」
「ルシオン。そういう貴方も楽しそうですよ?」
「おや?気づいてないのかな?僕は最初から楽しんでたとも」
「はぁ・・・うちのマスターはどうしてこう呑気なんですかね」
僕の副官とでも言うのかな?サブマスターを務める社長秘書みたいにメガネをクイッと上げながらうっすらと笑みを浮かべている君が言えるセリフではないと思うよ?
「色々あったけど始まりは彼と侍との激突だ。その結末を見たいと思うの不思議ではないだろ?」
それに今回運営・・・もといエクスゼウスはアールくんのことを知らしめるためにこのイベントを起こした気がするんだよね。不満はないんだけどね?
僕も一度専用のサブイベントを作ってもらったからね。そう考えるとエクスゼウスって頭おかしいよね。もちろん褒め言葉さ。
そうでもしないとアールくんにチートだの不正だのと文句を言う連中は絶対に出たわけだし。まぁそうなっていたらどうなっていたか気になる所ではあるけど。
まぁ彼なら案外ケロッとしていそうな気もするね。メンタルオバケだし。
「ルシオン。全員準備は出来ました。あとは貴方の号令しだいですよ?」
「流石仕事が早いね」
「ちなみに皆希望としてはアールの観戦希望だそうです」
「アハハ、これはもしダメなんて言ったら刺されそうだね」
「むしろ私が刺します」
「いつも思うけど僕マスターだよ? もう少しほら? 優しくしてくれないかな?」
「早く号令しろノロマスター」
「酷いな君は・・・うん、では皆でいこうか。今回の騒動がどんな風に終わりを迎えるのか」
「「「「「「ハイっ!!」」」」」」」
――――◇――――
「なるほど。彼らは皆この結末を見に行くようだな!いいとも!!それも君たちの選択なのだからな!!!」
「ボス!!」
「何かね?あといつも言っているけどニコニーコで構わないよ?」
「これは俺の敬意なので変えません!!同志一同街の警備と防衛戦展開完了です!!!」
「そうか!!みんなありがとう!!私に協力してくれて!!」
クランを持たない私に賛同して多くの仲間たちが協力してくれる!! それがとても嬉しい!!
「ボスはいかないのですか!!?」
「うむ!! いかん!!!」
これに関しては胸を張って答えよう!! 私はこの場に残るとな!!
「なぜですか!!?」
「決まっている!! それが私が選んだことだからな!!! 私がここにいることが彼に対する敬意であり思いなのだよ!!!」
感情的になったとは言えひどい事を言ってしまったからな!! それは反省しているとも!! だがそれ以上に私に足りないものを知ることができたのだ!! いくら感謝してもしきれないほどにね!!
「彼の戦いを邪魔することはしない!! そのためにルシオンくんとチーザーくんが行った!! 同じく思いを持つ者が彼に同行するだろう!! なら私は彼らが戻ってくる場所を守ろう!! それがヒーローの勤めなのだよ!!!」
「か・・・感動しましたボス!!! 俺も全力で皆の帰ってくる場所を守ります!! 皆もそうだよな!!!」
「「「「「応っ!!!!」」」」」
「みんなありがとう!!!! さぁアールくん!! 君の戦いを全力で挑んでくれ!!!」
感想お待ちしています。




