161:剣聖Ⅳ
普段は大繁盛で大盛り上がりのギルド。
今日に限ってはその賑わいはなく、皆遠巻きに座った所に位置取り、俺たち三人の会話に耳を傾けている。
「ってなわけで、俺はお二人に助けられて無事にこうして生きてるってわけですわ」
俺がこの世界『プラネットクロニクル』に来てから今までのことを包み隠さずすべて正面に座る大先輩へ伝える。
「なんというか・・・・トラブルしかないじゃないですか。・・特に問題児」
銀髪が美しい女性、二代目剣聖の名を持つ魔人と人間のハーフ。アアリーは聞きたくもなかった名前を聞いたことで苦虫を踏み潰したような顔をしていた。
「それもそうであるが・・・今の時代の人というのは存外に冷たいのか?」
妖精族の元女王。同じく四代目剣聖の名を持つ妖精族マリアーデ。ちらりとこちらを見ている人たちを一瞥し、見られた奴は皆さっと顔を逸らし、それを感じ取ったマリアーデは呆れ顔である。
「そうでもないですって、ただちょーっと逆らえない物があるっていうかなんていうか・・・」
一応オンラインゲームなので運営には逆らえないんですよとフォローを入れておくのだが、どうもヤブヘビだった。
「それだぞそれ!それが今の人に対して気に食わん!信じた相手くらい何があっても信じんのか戯け」
「えぇ〜・・・・そんな俺に言われても・・・」
頬杖をついて睨まれる俺である。蛇に睨まれた蛙ってこんな感じなんだろうな。
「マリアーデ。そろそろ話を進めていいですか?」
「おっと忘れていた。すまんな。ではアールよ。話を元に戻すが異論はないな?」
「はい」
アアリーに言われてどうやら本筋から話がずれていたらしく元に戻すようだ。そもそもどこからどこまでがズレていたのかすらわかっていないのである。ここは素直に頷いとこう。
「ミールという小娘は知っているな?」
「はい、知っています」
最近会ってないけど、星術師獲得のためにお世話になる予定の人だ。忘れるわけがない。
ミールはニルスフェアのギルドマスターをやっていいる女性。普段は少女の姿をして勧誘活動に勤しんでいるのだ
「あの小娘が急に連絡してきたのだ。余にこの街の新しいギルドマスターをやってほしいとな」
「・・・・・はい?」
はい?
「それだけじゃありません。私と一緒にアール。君を助けて欲しいとも連絡したそうですよ?」
「え?ミールが?」
「隠す必要はお主にはないであろう。星読み人の天啓とやらがあったらしくてな。それで慌てて連絡してきたのだ」
「は・・・・はぁ・・・」
「知らぬ奴なら無視してやろうとも思ったのだがお主の名を出したのだ。出ないわけにはいかぬであろう?」
マリアーデ・・・・アンタ・・・やっぱいい人だ。妖精族だけど。
「偽物であれば気兼ねなく斬れるからの。本物で残念だった」
「鬼かよ!!?ってか残念ってひどくない!?」
「そうは言ってますけどマリアーデは君の名前を聞いたとき飛び出して行ったんですよ?」
「おうっ!?こらアアリー何言っておる!!そう言うアアリーも血相を変えていたではないか!!?」
「そうですが、何か?」
「うむむ・・・なぜだ。余が恥をかいたみたいになっているではないか・・・・」
いや実際かいてるんじゃないですかね。口には絶対に出さないけど。
「お主は目に出やすいからわかりやすいわ」
「最近の女性はなんなの!!?読眼術デフォルトなんか!!?」
怖すぎるっぴ!!?ってか目に出るってどういうこと!!?そんなに目尻動くか!?
あかん。今度、目を鍛える訓練とかやろう。探せばきっとあるはずだ。ブルーベリーアイ的なやつがきっと。
「ってちょっと待ってくれ?じゃぁ今二人がここに来たってことは・・・?」
「そういうことだ。気まぐれだがしばらくここのギルドマスターということになるな」
「因みに私はサブマスターです。全部マリアーデに押し付けられるので」
「そこは嘘でも手伝うと言わぬか!?」
マジでか!?気分屋のマリアーデはまぁ気分が乗ったってことでわかるとして、あの人嫌いのアアリーがサブとはいえ人前に出るギルドマスター!!?ウッソだろおい!?
「む・・・アール君今私にサブマスターなんて出来るのかって思いましたね?」
「あ・・・はい。思いました」
アアリーは一度裏切られた時に二度と裏切りや陰謀に巻き込まれたくなくて相手の心の中を覗けるんだ。ちょっと集中したら全部筒抜けらしい。
「私だって昔より少しは人前に出るようになったんです。それくらいは出来ますよ」
頬を膨らませて『私怒ってます』アピールをするアアリー。可愛いなおい。でもそっか・・・詳しくはわかんないけど邪神討伐から今日まで世界は繋がってたのか。ふたりがこうして居ることが何よりの証明だ。
「それでだアール。先程からいろんな視線がうるさくて我慢ならん。なんとかせよ」
確かにギルドの中も外も人でびっしりだ。ライブ中継してるのか数人手元に何か持っている。さてはあれが前回の大演説大会で全世界生中継した犯人だな。今度俺も使い方教えてもらおう。
にしてもこれをどうにかする方法って言われても・・・・・どうしたもんかね・・・・あ。
「マリアーデさんアアリーさんちょい大声出すんで」
「いいですよ?」
「はよなんとかせい」
許可も貰えたのでそれでは始めます。
「全員注目!!これから亡くなった人たちへの追悼と!!生き残った人たちへの激励会と!!ゴブリン七将討ち取った祝賀会と!!あとカームさんたちの後任であり二代目剣聖アアリーさんと四代目剣聖マリアーデさんの就任パーティーを行うから全員準備手伝え!!」
号令終了。さて、あとは誰か返事してくれればいいんだけど・・・誰かしてくれるかな?
「「お・・・おおー・・?」」
リークにルークお前ら・・・!!やっぱり良い奴だよ・・!!!ちょっと恥ずかしそうにしながらも拳を上げてくれた。
「お・・おおー」
「「「「おおー」」」」
「「「「「「おおおおーー!!」」」」」」
伝染完了。静かだったギルドが一気に賑やかになっていく。皆動き出して、それぞれが何をするか話し出す。こちらに集中していた視線も分散し、皆自分がやれることをするために動き出した。
「お主・・・余をダシにしたこと・・あとで覚えておれよ?」
「いいじゃないですかマリアーデ。しんみりするより好きですよ?」
アアリーさんアリガトウ。やっぱり貴女こそ女神です。お星様。アアリーさんに出会わせてくれてアリガトウ。
「お・・・おじゃまします?」
「こんにちは?」
「おっす二人共。さっきは助かったよ」
おずおずとやってきたルークはチラチラと二人をみている。リークも警戒しながらやってきて俺の後ろから来て手を肩に乗せる。
「なんじゃアール。いつの間に籍入れたのだ?しかも子供まで出来てたのか。意外と手が早いの」
「「「こどっ!!?」」」
何をいっとるぎっちょんですか!!?
「それなら貴方たちのお祝いもしなくてはいけませんね。おめでとう」
「やっ!!?ちがっ!!?いやリークとは恋人だけどるーくあいたぁっぁ!!?」
「こ・・・子供じゃないやい!!バカ師匠の子供とか流石にいやだ!!!」
だからって頭突きせんでくれないですかルーク!!?どこからか変態どもの悲鳴が聞こえるがそんなことは今は無視!!この誤解、いや一部誤解じゃなくなるかもだけどともかく誤解だから解かなければ・・!!!




