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158:剣聖Ⅰ

自身に戦闘能力はなく、代わりにその頭脳で心を殺すことを得意としていた学者ゴブリン。

彼は初めて出会った時からアールの心が壊れる瞬間を見たいと思っていた。


学者ゴブリンは願う。

そのため”だけ”にこの戦場を用意した。さぁ最後の仕上げは済んだ。

君の心が壊れる瞬間を早く見せてくれ!!!









『『『『・・・・・はい??』』』』



「確かに全部本心だろうさ。聞こえてきた言葉は全て俺に対する本当の思いだろうな。それで?それが俺がこの後おまえを殺すことになぜ繋がる?“関係ない”だろ?俺がお前を殺すこととは一切関係がない」



『『『『さっきの言葉は紛れもなく彼らの本心だ!!嘘じゃない!!それなのになんで!!なんで”そんな顔”していられるんだ!!?ありえないだろ!!?』』』』



馬鹿か。少なくとも、皮をかぶっていた時に人を切ったことに関しては動じてるよ。できるなら今すぐに喚いて叫んで悲鳴を上げて泣き叫びたい。嘘だと信じたい。例え既に殺されていたのだとしても、大切な人をこの手で殺したのことに変わりはない。やり直せるなら最初からやり直してこの事実をなかったことにしたいさ。でもさ。



そんなことしたら今までの俺を全て否定することになる。俺の覚悟も決意も、この生き様も全部。そしてそれは俺が受け止めたガンテツさんたちの死すら否定することになるんだ。そんなの出来るわけがない。死者は蘇らない。死んだ人の思いを受け継いで人は前に進んでいくんだ。



死んだにも関わらず、ゴブリンに体を利用され続け、人を悪夢に引きずり込む手伝いをさせられているなんて、そんなことを彼らにさせたくなかったから。



その為なら誰から恨まれても構わないさ。恨んでくれることで、その怒りを俺に向けることで前に進めるなら恨んでいい。それがある限り今を生きてる人たちが生きてくれるなら俺は喜んで悪になろう。



それにだ。人の本当の姿とかなんとか言ってたけど何を当たり前のことを言っているんだ。それがあるから人は人なんだ。何の打算もなくて誰かを讃えたり媚を売るやつなんていない。



自分が悪人になりたくないから他の悪人や悪しきものとの関係を否定して自分は悪くないと言う。普通だろ?むしろあの光景を見て俺のことを悪と思わなかった人は本物の悪だ。こうなることくらい少し考えれば”簡単に予想ができる”。



こうなる可能性をわかっていた上で俺は選択をしたんだ。覚悟は出来ている。こういうことも含めて全てな。でもそうだな。これだけは言ってやろう。



「俺を誰だと思ってる?俺は剣聖の名を世界から受け取った男アールだ。俺の道はオレが決める。他の誰でもない。俺がしたいことを俺がする。誰に何を言われようが知らん。俺が世間的に善だろうが悪だろうがどうでもいい。今の俺のやりたいことはお前という世界の癌を殺すことだけだ」



『俺の名を残して欲しい。善でも悪でも構わない・・・俺の名前が残る世界を頼む』剣聖物語でそう言って自らの命を使い邪神を封印した幼馴染の魔剣聖とした大切な”約束”。


『主人の仇を取ってください』そういった最初の被害者であるミルトさんと、その子供たちとした大切な”約束”。



「それとな、俺は約束を果たすためならどんなことでも受け止める。どんなことでもやってみせよう。人から受ける全てを受け止めた上で俺は約束を果たす。全て飲み込んで前に進んでやるよ。お前の考え不足だ、ゴブリン。俺という人間を見誤ったな」



『『『『・・・何なんだよコイツ!!つまんない!!つまらない!!せっかく全部全部全部準備したのに!!準備したのに!!壊れろよ!!!壊れて僕を楽しませろよ!!!!』』』』



「本心が出たな。さぁ死ぬ覚悟は出来たか?テメェが殺してきた人たちに謝る準備は出来たか?もっとも、謝ったところで俺は許さねぇけどな」



だからコイツは体に興味がないと言っていたのだ。どうなろうが最後に生きていればいい。それがこいつの“戦い”だ。必要に応じて別のを吸収し、自分の物にする。



実力で勝てない相手に対して精神を壊すことで対抗する。戦法としてはいいかもしれない。けど、俺にその手は食わない。この程度のことで挫けているようじゃ、俺は例えゲームの中とは言っても、剣聖なんて呼ばれていないんだよ。



『『『『あぁもう!!つまらない!!!帰る!!次はまた別の玩具を探すからお前は邪魔するなよ!!!!・・・・・あれ?』』』』



「天獄と地獄の境界『ヴァイオレンスゲージ:ホライゾン』。アールお待たせ。時間はたっぷりあったから頑丈に固定できたよ。あとは好きに殺っていいよ」



「そういう訳でお前は既にリークの魔術の中だ。俺を含めて誰ひとり魔法も魔術もスキルだって使えねぇよ」



最初に遭遇して逃げたとき、魔法的な何かで逃げたのだと考えた。そして名前から『学者』というジョブに似たようなことができるスキルがないか調べていた。



そこにあったのは『空間跳躍』自分の全MPを使用することで一日一回だけどこからでも、何処へでも行くことができる専用スキル。これで逃げたのだと考えた。



更に学者にはモンスターの一部を取り込み自分の力にすることができる特殊なスキル『獣化』というスキルもある。吸収もおそらくこのスキルを強力にしたものだろう。



だからそれらを封じるためにリークに魔術を使ってもらった。



回復魔術とは別に使ってもらったもうひとつの魔術。リークのMPが尽きるまで発動し続ける拘束魔術でありながら、対スキル魔術。膨大なMP量を持つリークだからこそ可能な究極魔術の一つ『ヴァイオレンスゲージ』。そしてその範囲を絞ることでスキルに限らずAS、UtSすら封じ込める『ホライゾン』。



その効果は今尚継続し続けている。正直それがこんなにも簡単に決まるとは思っていなかった。何かしらの妨害はあると踏んでいたが、コイツはそんなことをせずにいた。悠長に俺の中の“常識を偉そうに演説”していたおかげであっさりと捕まえられた。



『『『『嘘だろ!!?いやちょっと待て!!こんなのは予想外すぎる!!仕切り直そう!!そうだ!!それがいい』』』』



「そういえば言ってたな?俺にだけおまえを殺す権利があると、その権利を使ってやるからその考えは無しだ。”俺とお前で殺した人”、そして俺の権限でこの場で殺してやるよ」


『『『『待って!!わかった!!もし仕切り直しをさせてくれるなら実は今殺したと思い込んでいる”監禁している彼ら”の居場所を教えるよ!!君にとっても大切な人がいる訳だし悪い話じゃないだろ!!!!?』』』』



後ずさる学者ゴブリンに向かってゆっくり歩いていく。死んでいった人たちに届くように。最後の別れをするように。殺した命の重さを踏みしめて確認するように。



「ダメだ、信用ならん」



『『『『そ・・・・そうだ!!なら僕の誇りにかけて死んだ人たちを全員蘇生させてあげるよ!!!僕は天才だ!!ジーニアス!!不可能なんてないんだからね!!どうかな!?』』』』



「そういえば一つ教えてやるよ。今の俺には相手の急所が見える。お前が切っても死ななかったのはお前をこうして絶望させて殺してやるためだ。理解したか?」



『ヒギィィ!!?!?』



真正面に捉えた一匹を睨みつける。視線があったこの個体から殺すとしよう。



『『『ウギャァァ!!!?』』』



『なっ!!?僕たち!!?何するんだっ!!?』



”自分が”生きるために一匹を俺に突き飛ばしてきた。視線も合っていたしちょうどいい。この点だけは感謝してやろう。



「一匹目だ。死ね『初月雀』」



『イヤダァァ!!死にたくない!!死にたくn・・・・・・』



『真刀:戯』で目に見えるコアを切り裂く。切り裂いた学者ゴブリンはそのまま発火して苦しみつつも、声を出せずにそのまま灰となって死んでいった。



『『『ま・・・待ってよ!!必ず蘇生してみせるから!!!この命をかけて約束する!!だから殺さないで!!!』』』



「つまりお前が言っていた皆は生きているといったのはウソだったわけだ・・・二匹目、天風朧雀」



『イダイィィィィ!!!!!助けt・・・・・・・・・』



四肢を切り落とし、痛みで泣き叫ぶ瞬間に首を落とし、同時にコアを砕きつつ、体をバラバラに切り裂く。ドス黒い血を撒き散らし、その肉片とともに朽ちていく。



こいつの叫び声なんて聞いてもうるさいだけだし。聞いていると耳が腐りそうだからな。叫ぶ前に殺す。もちろんちゃんと恐怖を味あわせてからな。



『『ごめんなさい!!ごめんなさい!!!僕が悪かったです!!!もう二度とこんなことしないから!!償いもするからお願い!!命だけは助けて!!!!!』』



「お前は人を殺されて間違えて殺しましたと言われて許すのか?三匹目『天津雀』」



『ヒギャァァァァァァ・・・・・・』



死への恐怖をゆっくりと味わえ。自分が死ぬとわかった上で泣き叫べ、許しを請え、自分の全てを否定してでも生へしがみつけ。



二匹のうちの一匹だけを殺し、最後の一匹に特上の絶望を与える。ある意味最後に殺される方が一番えげつないだろ?



『そ・・・そうだよ!!!!君は英雄なんだろ!!?心の優しい英雄さんなら悪人の僕のことも許してくれるだろ!!?反省するし償いもする!!そんな思いがあるんだからこんな殺しなんてしないだろう!!?』



「何言ってやがる?お前さっき言ってたろ?俺はただの人殺し・・・極悪人だぜ?英雄なんてガラじゃねぇよ」



そして、その全てを踏みにじられて絶望して死ね。それが『英雄/極悪人』(五代目剣聖)に出来る学者ゴブリンに対する敬意というものだ。



『グギィ!!?ち・・違うんだよ!!?ちょっとした出来心だったんだ!!!ついやってしまっただけなんだよ!!!謝るから!!だから許してくれよ!!!!?』



真正面から最後の一匹を踏み潰し、その喉元へ『真刀:戯』を向ける。



「最後の瞬間だ。思い残してもいいが言いたいことがあるなら言えばいい」



『お願い助けて!!!殺さないで!!!僕の頭脳はこんな場所でなくなってはいけないんだ!!!!お願いだよ剣聖様!!!僕を助けて!!』





―――――◇―――――





『だから小僧!!俺からお前に頼む!!これから俺が作っていく至高の作品をお前に使って欲しい!!歴代が夢見て憧れてきたお前が使い続けられる究極すら生ぬるい一本を俺はつくる!!この頼み!!引き受けてくれねぇか!!』



あぁ・・・ガンテツさん。あんたとの約束。もう叶わなくなっちまったな。スゲェ楽しみだったんだ。『天籟刀:ズイカク』を超える剣をあんたなら作ってくれると思ってたから。





『今度来るときはアップルパイでも焼いておくから食べておいきよ』


ガランさんのアップルパイ・・・美味しかったよ。また・・食べたかった。レシピ聞いておけばよかったよ。






『お待たせしました・・・・ってあれ?どうしました爆裂剣の人』



カーム、そう言えばまだ一回もまともに名前呼んでもらったことなかったよな。何が何でも爆発させたがってたあんたが俺は、嫌いじゃなかったよ。





『アール殿は前向きなのですね!!見習わねばなりません!!』



そう言えば、そんなことも言ってたよな刀気。バカ野郎。お前があの時俺の知らないところで動いてくれたからギンは決心がついたんだ。お前だってもう立派な天匠流の門下生だったんだぜ?






―――――◇―――――







『誰か助けて!!!僕は死にたくない!!!僕はもっと生きていたいんだ!!!誰か!!!誰か助けて!!!』



「死にたくないと言って死んでいった人たちの思いを踏みにじった奴とは思えない無様さだな」



『嫌だ!!死にたくない!!お願い助けて!!!いやだ!!!しにたくない!!!いやだぁああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!』



「さようなら、そして二度と生まれてくるな。世界の癌、学者ゴブリン」



超越流派抜刀術『天津雀』



クズの死に様はその体を、魂すらもグチャグチャにする思いで殺してやった。願わくば、コイツに殺された人々の無念を切り裂けと願いを込めて。




――――すまねぇ・・・約束・・・守れなくなちまったな・・・・・・

――――元気で生きてね?・・・・この空から・・・この人と一緒にアンタのこと見守ってるよ・・・

――――爆発の人・・アールさん・・・・・・僕の故郷のことをよろしくお願いしますね・・・?

――――師匠のこと・・・お願いしますね・・・・剣聖さん・・・さようなら・・・





―――――◇―――――


ーーーーーありがとう。



『ゴブリン七将であり、命を弄んだ悪夢の天才。己の欲を満たすためならば、己の快楽のためならば同胞であろうともその命を弄ぶ邪悪なゴブリン『学者ゴブリン』は英雄の手により処刑された。世界に恨まれてでも構わない。これ以上死者を苦しめないために、彼は自ら悪を買って出たのだ』



『例え自分の名を否定されたとしても、大切な仲間たちから見捨てられようとも、彼は最後まで英雄としてのあり方を、そのあり方を示し続けた。その誇り高い想いが、魂が、力が、邪悪な悪夢を終わらせたのだ。』



『『学者ゴブリン』の死により、すべての死者の魂は解放された。死者の体はその魂と共に安らかな眠りの就ける場所へと消えていった』



『死者は二度と蘇らない。しかし今を生きる者はまだ生きている。乗り越えろ、この悲劇を、この悪夢を。乗り越えた先に生きていく理由を見つけるのだ』




―――――アリガトウ・・・・ゴメンナサイ・・・・つらいことをさせてしまった・・・・



―――――私達の代わりに・・・・生きてください・・・・・




『死者は残されたもの達へとその思いを伝えていく。生きて欲しいと』



『世界は今日、悪夢から、希望という光を浴びて目覚めたのだ』



『だが世界中は彼を悪としてしまった。悪は裁かなければならない。例えどんな理由だったとしても、今を生きる者達がそう選んでしまったのだから・・・・・』



『最後の判決を、そのトリガーを引くのは君たちだ。嘘偽りなく、本心を口にした君たちは全てを受け入れた上で、己の醜く儚い全てを知った上で、そして彼の事を知った上で選ばなければいけない』




――――イベントシナリオ『悪夢と絶望の先にあるーーー』改め『悪夢と絶望の先に輝く希望』クリア

――――プレイヤー名『アール』により、ゴブリン七将『学者ゴブリン』を処刑しました。

――――『学者ゴブリン』処刑により、傀儡と化していた同じく七将『双剣ゴブリン』『道化師ゴブリン』そして彼らの配下全てが死亡しました。



――――学者ゴブリン配下及び傀儡との戦闘に参加したすべてのプレイヤーに特別報酬を配布。

――――参加した全てのプレイヤーは称号『邪悪に挑んだ者』を獲得

――――学者ゴブリン処刑者、プレイヤー名『アール』に称号『悪夢の開放者』『信念を貫く者』を配布

――――プレイヤー名『アール』を除く全プレイヤーに一度きりの限定特殊サブシナリオ『英雄』の参加権を配布。アイテム欄から『サブシナリオ:英雄『参加権』』を使用することで、プレイヤー名『アール』が『学者ゴブリンを処刑するまでを追体験することができます。

――――プレイヤー名『アール』を除く全てのプレイヤーに対して『特殊サブシナリオ:断罪』を開始します。



限定特殊サブシナリオ『英雄』

勝利条件:学者ゴブリンの処刑

敗北条件:制限時間30分の経過

・エーテリア内で起きた出来事を追体験できます。プレイヤーによる妨害はありません。

・本シナリオは別の時間経過軸となり、現在皆様がいる時間軸とは異なります。シナリオ中の30分はこちらの時間軸での1分となります。

・このシナリオでは全てのプレイヤーにモードセレクト『エクストラ』の状態でプレイしていただくことになります。また、プレイ中は感情の振れ幅が通常の倍以上となりますのでご注意ください。







特殊サブシナリオ:断罪

断罪する:プレイヤー名『アール』を処刑する

断罪しない:プレイヤー名『アール』を処刑しない

※この特殊サブシナリオは全プレイヤーの総意で決まります。

断罪される場合、今後プレイヤー名『アール』はプラネットクロニクル世界にてNPCからの信頼を全て失い、また、二度と信頼を得ることができなくなります。

皆さんの意思により、断罪か否かを選択してください。期限は30分です。



プレイヤー名『アール』を

・断罪する

・断罪しない




―――――◇―――――




本当に、エクスゼウスは俺たちが想像できない方向に持っていくよ。俺の今後すら、プレイヤーに握られているんだから。



アールは後にこの時のことをこう語る

『悪いが俺は生きてきた中で自分のやってきたことに対して後悔はしていない。例えどんな結末であったとしてもそれを選んだ自分を憎んでいない。

ただ自分が信じたことを信じて前に進み続けただけだ。剣聖とか英雄とか呼ばれたのだってそれを実践してたらついてきただけだ。俺自身の中にその名前は意味はない。

ただ、名前が持つ力を借りているだけだ。自分が信じたことを、やりたいことをするために宿る力を借りただけだ』と。

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[良い点] 今っ"…3週目な"ん"でずげど……なぎまじだ………ァ”ァ”ァ”ァ”ァ” …………………途中まで、泣くの耐えてたんです…けど……けど、やっぱりお空からの言葉(4人からの励まし)で泣きますよこ…
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