140:標的はゴブリン
下準備下準備
あの大演説を誰かが録画&生中継で世界中に繋げていたらしく、掲示板からなにから大盛り上がりだったそうだ。実際俺も少し覗いてみたがとんでもない事になっていた。今後これをネタにしばらくはバカ騒ぎが続くだろう。
少なくともこれでNPCが殺し合いを始めることはなくなるはずだ。
「それで、改めてだがあのクソジーニアス気取りのゴブリンの手がかりを捜すために依頼片っ端から片付けてくぞ」
「おいバカ師匠」
「なんだルーク?いつもより強気だな、どうした?」
「いやいや!?どうしてこの状況でそんな平然としてられるの!!?」
あぁ、そりゃまぁ似たようなことが一度あったし、剣聖ロールで貫くのは決めてたし今更だ。こういう時はハッチャけた奴が一番楽しいんだよ。知るやは知るハジケってやつだ。
「注目は浴びるが今更だろ」
「違う!!そっちじゃない!!僕が言いたいのはこっち!!」
ルークの視線の先には地面を涙で濡らしたリークとレイレイが転がっている。首輪付きで。
「一回ビシッと絞めとかないとこいつらまたやりかねないからな」
「嘘でしょ・・・・このバカ師匠なんの罪悪感も感じてないの?」
跳んでる時に首がおかしくならないように気をつけながら跳んでいたから平気なはずだ。久し振りにキツめに説教したのでメソメソ泣いてるが付け上がらせる訳にはいかないのでここは心を鬼にする。
「いいかルーク。公共の場で言っていいことと悪いことがあるんだ。こいつらは悪いことを言った。だから怒っただけだ」
「怒られてる時の顔がすごくてこっちまで泣きたくなってきたんだけど・・・」
「それだけ悪いこと言ってたんだよ」
「・・・・ところでさ?掲示板に書いてた「忘れろ」・・・・でもきになるs「いいから忘れろ」ちょ怖い!!忘れるからその顔やめてよぉ!!」
わかってくれればいい。あいつらは必ずいつか処す。
「おーい師匠ー、適当な依頼を受けてきたのじゃー」
ちょうどギンが戻ってきた。目立ちすぎたのでしばらくはもみくちゃにされると判断したのでギンに頼んで依頼を受注してもらってきたのだ。
ちなみに現在いるのは街の外。ちょうどこの前行った龍の住む林と街の間である。
「時代人がものすごい数依頼を受けていたのでな、手に取れたのがこれだったのじゃが良かったかの?」
――――『キルギリザートの討伐』
――――『マンモーラーの討伐』
――――『マンイートバークの討伐』
「ありがとう」
三つもとってきてくれたのだ。十分すぎる。依頼書を一枚ずつ確認していく。武器製作のための素材に使いたい。積荷が襲われるので倒して欲しい。仲間が食われたので仇を討って欲しい。
なるほど、何かあるとしたらこの『マンモーラー』か『マンイートバーク』というモンスターの依頼だろう。
依頼主にあってみるのが一番いいのだが全員に会っていくには時間が惜しい。
「リーク、レイレイ、頼みがあるんだが」
「いやバカ師匠・・・・この状態で無理でしょ・・・」
「ううう・・・・ひっく・・・たのみ・・・・?」
「ごめんなさいごめんなさい・・・・・・おねがい・・・・?」
「あぁ、お前らに頼みたいことがあるんだ。都合のいいこと言って悪いんだけど」
「おこってない?」
「わかってくれたならもういいよ」
「「うん!!」」
自分で言うのもアレだがこいつらが変な奴に引っかからないか時々不安になる。俺もその変な奴の部類だとは自覚しているけど。
「すみません」
「ん?あぁ!!?剣聖殿じゃないですか!!?」
皆で手分けしてもらい受けた依頼三つの依頼主のところを訪ねている。俺とルークが来たのは『マンモーラー』というモンスターの討伐を依頼していた行商人の一団がいる所だ。
街の南側にある馬車の停留場で彼らは次の街に行くための準備をしていた。
「『マンモーラー』の討伐依頼を受けたクラン『剣星』のアールといいます」
「おぉ!!それは心強い!今まさに時の人たる剣聖殿が引き受けてくれるとは!!これは道中の安全は約束されたようなものです!!」
「恐縮です。ところでその剣聖殿というのはもしかして?」
「ご想像の通りです!人々の希望の光となられたお方!なんでも伝説の英雄の生まれ変わりとの噂じゃないですか!!死にかけていた街や人に活気が戻ったのはあなたのおかげです!!」
「そうでしたか、今を生きる人々に勇気を与えられたなら俺の行動も無駄じゃなくてよかったです」
「えぇえぇそうですとも!!貴方のおかげで私ら行商人も仕事を失わないで済みました!商人は信頼こそ命!信じてもらえなくては仕事になりませんからね!」
差し出した手を握りブンブンを振る依頼人。腕が吹き飛びそうなくらい振られている。気持ちは嬉しいが話が進まない。
「依頼についての話を聞かせてもらえるか?」
「おっと!私としたことが済みません。あ、私ハチョウと言います。世界をかける旅商人ハチョウと申します。依頼については簡単です。私ら一団はこの先の街パーシアへと行きたいのですが、最近その道中でマンモーラーという魔物が現れるらしく、もしかして襲われるのではないかと恐れていまして・・・そこで依頼を出させていただきました」
「なるほど、つまりマンモーラーから皆さんを守ってほしいという依頼でしょうか?」
「はい。お願いできますでしょうか?」
護衛クエストか。次の町に行くというのは願ってもないことだけど、すぐには無理そうだ。ほかの依頼も受けているし、それに仇を撃つって約束もある。ゴブリンがもうこの周囲にいないとも言い切れないし困った。
「出発予定はどうお考えですか?」
「一週間後の朝に予定しています。あんなことがあって直ぐですからね。少し私らも様子見してからここを立ちます」
一週間後か。それくらいなら他の依頼も片付けれるし、周辺の確認も出来るだろう。受けてみるか。
「分かりました。その依頼受けさせてもらいます」
「ありがとうございます!おっとそうだ。出発前に我々の荷物確認と私たちが化けの皮を被っていないかの確認は是非してください」
「話が早くて助かる」
「言ったでしょう?我々商人にとっては信頼が命です。それに剣聖殿が良くしてくれていると噂が立てば私たちにも恩恵はありますから」
「なぁ師匠?あの人どう思うのさ?」
「わからん」
「えっ」
「少なくとも嘘は言ってない。だが化けてるのかどうかは見当つかん」
実際学者ゴブリンだって敵意をもって襲って来るまでは正体が全くわからなかったのだ。話をしただけで正体が分かるのなら苦労はしない。
「だが話をしておけば、次会って何か違うと感じることはあるかも知れないだろ?」
「・・・そういうものなの?」
「そういうものだよ」
人っていうのは意外と簡単で、話をしてみれば結構わかる。最初はよくわからなくても話が進めば意外なことが分かる時もある。
クロニクルシステム搭載型のゲームで会話に興味がないと切り捨てて遊ぶのはとても勿体無いのだ。
「それよりルーク。心配だったのはお前だ。もう大丈夫なのか?」
かなり酷い殺られ方をしていたのだ。俺やリークと違いエクストラモードじゃないとは言え多少の痛みや恐怖はあるはずだ。正直それが一番不安だったりした。
「心配しすぎだし、僕これでもモンスターに捕食されて瀕死になったこともあるし、バカ師匠も初めの頃見たでしょ?僕が一撃でカニに消し飛ばされたの」
とんでもないことさらっと言ってるが、確かにカニに一撃で吹っ飛ばされてやられてたし、修行場所の洞窟へ向かう道中で何度もやられてたっけな。
「あの時に比べたらそんなに怖くなかったし、その・・・師匠が助けてくれるの信じてたし・・・」
「そっか、ならよかった」
「ふんだ!!でも助けるならもっと早くたすけてほしぃぃっ!!?」
「ねぇルークくん?アールとイチャイチャするのもう少し考えてくれないかな?」
「君がそっちの気がないのはアタシ達だってわかってるよ?でも最近ちょっと過ぎるんじゃないかな?かな?」
「妾たちが聞き込みに行っとる間に随分といちゃついておるのう弟弟子よ?」
「あ、おかえり」
ハイライトを消しながらいつの間にかルークを三方向から囲むリークレイレイギンの三人。
カタカタ震えながらこちらに助けを求めてくるので、手を引いて俺の後ろへと隠す。三人の目線がギョロッとルークを追いかけてくるので軽めにチョップをおでこに叩き込む。
「うぅ・・・アールが最近構ってくれないから私だって嫉妬するんだよ?」
「だからってルークにまでそんな目を向けないでやってくれ。コイツはただ甘え盛りの時期なんだよ」
「だって・・・・アタシ達より仲良さそうなんだもん・・・・」
「放置はさみしいのじゃ」
「あー・・・分かった。なら今度お前らとも個人的な時間作ってやるから今後はルークにそういう感情をぶつけるの禁止な?わかったら返事」
「「うん/はい/わかったのじゃ!!」」
無いかもしれないがルーク。お前ももしこんな場面に遭遇したらつぶしあいを始めないように気を配るんだぞ?多分ないとは思うけど。
この数年後、ルークにも同じようなことがあったとかなかったとか・・・・・
誰かルークの数年後を書いてくれる人いませんかね?




