137:悲劇の終わりと地獄の始まり
注意
人によっては不快に思うかも知れない描写があります。ですがこの作品には必要な描写ですのでご容赦ください。
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忘れるな。人はどれだけ成長しても喜怒哀楽を完全にコントロールはできない。
感情に飲まれた先に待つのは破滅だけだ。
突然の変化とおぞましい姿を見た人たちはその姿に怯えて逃げ惑い、ある人は腰を抜かしてその場に倒れこむ
「ウヒャヒャ!!もう少し泣き顔を見ててやりたかったんだけどねぇ!!!!!!キヒヒ!!」
「テメェ・・・!!」
「君が思ったとおりだよ!キヒヒ!!僕が殺したのさ!!キヒヒヒ!!!『ミルハ君、悪いんだけど夜の巡回を頼まれてはくれないか?もちろん給料を上げさせてもらうよ。』ってお願いしたら簡単に頷いたからね!!キヒヒヒヒアヒャヒャヒャ!!!」
「っ!!?」
「『私に出来る君の家族への贈り物という感じかな。ほかの人には内緒だよ?』って言ったら簡単に食いついちゃってさ!!キヒヒヒヒ!!最近家族孝行できていない家族のためにサプライズ旅行を計画しててね!?たくさんお金を貯めていたらしいからねぇ!!生贄に選ばれたって気がつかないで簡単に騙せたよ!!!ま、その家族旅行のために稼いだお金で今こうして自分のお墓を作って埋葬されてるんだけどねぇ!!!!!!」
「オマエェェ!!!!!!」
怒り狂ったルークが気味悪く笑い続けるゴブリンへと襲いかかる。人を殺した凶器を構えるゴブリン達はクソッタレの指示で一歩下がった位置に陣取り、ルークが狙ったゴブリンはルークをあざ笑うように回避していく。怒るルークは何度も切り裂こうと動くがゴブリン達はその全てを避け続ける。
そしてルークの攻撃から逃れた個体は、人を殺すために動き出した。クソ胸糞悪いサプライズに俺も怒り狂いそうだった。だが、グッと耐え指示を飛ばす。これ以上被害者を増やす訳にはいかない!!
「リーク!!レイレイ!!ゴブリンを迎撃しつつ皆を避難させろ!!殿は俺が持つ!行けッ!!ギン!!弥生と卯月もだせ!!それと感情に飲まれるな!!いつか感じた激情させられる何かが散布されてる!!」
この感じは間違いない!確か以前コヨミを救うために糞面どもと戦った際に感じたあの感覚だ!野郎こっちの理性をぶち壊しに来てやがる!!
「「うん!!」」
「心得た!!」
ルークの攻撃を合図とし、一歩下がったゴブリン以外の数匹が動き出した。俺たちも分散してゴブリン達の迎撃に入る。
「うきゃきゃきゃ!!後はお馬鹿を襲ったのはこの辺を縄張りにしている最近来た妖精竜だって言いふらせばこの街では簡単に依頼出せたよ!!ウキャキャキャ!!!今回”使った素材”は随分街の人に信頼されていたみたいだねぇ!!!上手く行き過ぎて笑っちゃいそうで大変だったよ!!!!妖精龍がバカ正直に置いていったお金のおかげで色々と買えて一石二鳥!!!あとは邪魔な妖精龍を灰にしてしまえばボロ儲け!!!人間には龍の灰は高く売れるしね!!ウキャキャキャ!!!!!疑われた場合に備えて人間の灰に蜥蜴の灰を混ぜた僕お手製の”なんちゃって龍の灰”はそこの狐が面白いくらい騙されてくれたお陰で信憑性はバッチリだったよ!!勘違いしてくれたおかげでことは簡単に運んだからさぁ!!!!」
「・・・っぅ!!!!!」
「狐に感謝だねぇ!!おかげでそこの厄介そうな男を騙せたんだからさぁ!!!感謝感激ってやつだよ!!!まぁ!!結果的に言えばこうしてバレちゃったんだからそこの狐意外と使えなかったよねぇ!!」
「ぅぅあ・・・ぅあああ・・・・・!!!!!!うああああああ!!!!!」
野郎っ、最悪じゃねえかよ。ギンの表情が歪む。利用されたんだ。仕方ない!だが・・!!!いま感情に飲み込まれたらそれこそ思うツボだ。今はゴブリンから人を守るのが最優先だ。
「ギン!!後でお前にもぶち殺させてやる!!今は耐えろ!!!」
「ぅぅぅぅぅぅああああああああああああああ!!!!!!!!!!わかっておるのじゃ!!!」
雄叫びをあげて少しでも感情を落ち着かせようとするギン、その瞳には涙が溢れている。それでも尚持ち直してくれたギンは、そのまま逃げる人々の直衛に回った。それでいい。今のお前だと流されかねん。
「なんでなんでなんで!!!どうして殺したんだ!!殺す必要があったのかよ!!?」
ギンの代わりに怒るルークが叫ぶ。ルークの標的が完全にゴブリンへと向かい、一気に距離を詰めて果敢に責め立てていく。
「最初は殺す気なんてちょっとしかなかったんだよ?ほら、放置してもせいぜい一ヶ月生きられなかっただろうしね!ウシャシャ!!でもさぁ?」
ネットリとした笑顔で笑い出すゴブリン。コイツまさか・・・!!?マズイ!!標的をルークに変えやがった!!!?
「お前まさか!!!?」
「ルーク!!!聞くな!!!!罠だ!!!」
「”君たちが、いいや、彼が話を聞こうとしたから殺してあげたんだよ?”死人に口無しってね?見られてないとは思ったけどほら?万が一に備えるってやつ?ウヒャハヒャ!!!」
「っっ!!?!?!?!」
つまり・・・俺たちがあの時疑ったからこいつは最悪を想定して殺す予定のなかった彼を殺したっていうのかっ!!?ふっざけんな!!!!そんな理由で人を殺しやがったのk・・・っ!!?ルークっ!!!!
「ルーク!!!動けェェェェ!!!!!!!」
「ホラ、スキアリ★」
「ゴギィっ!!?」
「ルークっ!!!」
殺した理由を明かされて、ルークの動きが止まった瞬間、この時まで全く動きを見せなかった二匹のゴブリンがその手に持つ凶器でルークを襲った。
それは奇しくも彼を殺した龍爪棒。一匹が逃げられないように腕を掴み、もう一匹がその凶器でルークの腹に三本の爪を深々と突き刺し、そして抉った。
爪はそのままルークを離さずに食い込みそしてつかみ続けた。その傷口からは尋常ではない夥しい量の“真っ赤”な血液が飛散した。
「ルークっ!!!クソっ邪魔するな!!!!」
やられる前に、すぐに助けに行こうとしたが目の前に悍ましい“敵”が立ちはだかる。
今まさに突き破られた人の皮をゴブリンに縫い合わせ、不気味な姿をしたキメラのようなゴブリン。
それだけじゃない。人の死体に、モンスターと思われる死体で作られたゴブリン。手に持つのは元のモンスターが実際に付けそうな傷を付けられる武器の数々。
だがこの程度なら速攻で片付けられる!!今お前ら相手に時間をかけていられない!!
「邪魔d『イタイ・・・・・・・タ・・・・スケテ』っ!?!?!?!?!!」
『・・シ・・・ニタ・・・ク・・ナイヨォ・・・・・』
こいつ・・・!!!!まさか人間を生きたまま使いやがったのか!!?おいおいおいおい!!?今までに何人殺しやがった!!?少なく見ても8人以上の人間が殺されて”使われて”いるぞ!!?
いや!今はそれはいい!!問題はこいつらを”やり過ごして””ルークを助けに行く”ことだ!!やり過ごすことは簡単だ、だが俺の後ろにはあまりの恐怖から腰を抜かし、膝が震え上がり逃げられない被害者の家族が居る。もしこいつらを放置して助けに行けば後ろにいる親子の命はない。
だからと言って簡単に殺せるような相手じゃない。少なくともまだ、生きているんだ。助からないとしても殺りにくすぎる!
この野郎・・・こっちの動きを完全に止めに来た!!クソが!!簡単に人を切り捨てられるような人間じゃねーぞ俺は!!!
殺らないと駄目だとわかっていても、体が、心がそれを否定する。まだ助かる可能性があるのだと信じたいと叫んでいる!!
ダメだ!!感情のコントロールが効かない・・!!!クソっ!!ダメだ!!完全にリズムを崩された!!分かってんだろ俺!!この人たちはもう助からないんだって!!この人たちを取ればルークが目の前で殺されるんだぞ!!
そんなこと許していいわけがないだろ!!俺が優先するのは知らない誰かじゃない!!それくらいわかってる
「皆見ててねぇ!!!その馬鹿な男もさぁ!!こんなふうに傷をつけてあげたんだよぉぉぉ!!!」
「カヒュィっ!!!?」
大きく振り回された上半身を、突き刺さった爪が音をたてながら肉を裂く。聞きたくもない音がその場の全てを支配した。
大きく引き裂きながらルークを振り回し、悲鳴なく叫ぶルークは泣いていた。真っ赤な血を流しながら振り回され、そして吹き飛ばされた。
それが、俺に覚悟を決めさせた。
「・・・・・・・」
・・・・・・・・・やりやがったナァ?一周回って落ち着いた。あぁクソ。殺してやりたいほど激情してるのに、ルークの殺される姿を見せられて感情が逆に落ち着いた。
ダメだな。うん。今だけは俺じゃダメだ。ただ目的のために非情になろう。俺になろう。後がどうなろうと知らん。今はタダこいつを殺したい。それだけが俺の目的だ。
「邪魔だ、どけゴミクズ共」
”素材”になった奴らを全部切り刻む。ゴミクズを切り捨ててルークを受け止めると、死んだ被害者と同じ傷跡がルークに刻まれていた。
「ディア、頼む」
『ヨヨ!!』
ポーションを飲み込ませたディアをルークの傷跡に載せて傷に染み込ませる。スキルが発動しているのかギリギリ瀕死にはなっていないが、もしこれが現実なら即死の傷だ。
深々と出来た傷は心臓と肺に穴を空けており、少しでも遅ければ光となって消えていただろう。
「し・・・・しょ・・・・・ごめ・・・・・ん・・ね・・・?」
「気にすんな。とりあえず休め」
着ていたローブをかけてルークが回復していくのを確認する。ゆっくりではあるけど確実に回復している。痛みを消しながら体に無理がかからないようにディアがゆっくりとルークを癒していく。
HPゲージも回復していっているしもう大丈夫だろう。
『『『ゴギャギャギャ!!』』』
「失せろ、ゴミクズが鬱陶しいぞ。さっさと死ね」
背後から襲ってきたつもりのゴミクズの肉を削ぎ落とし、声帯を握りつぶす。目玉を引き抜いて切り刻み腕をへし折る。恐れて逃げようとしたゴミがいたので、他のゴミが持っていた手斧を両足を切断するように投げ飛ばす。
「『死にたい奴から声を出せ。惨たらしく殺してやる。俺に出会ったことを呪い、後悔しながら涙を流し死んでいけ』」
『グギャィィ!!?』
「超越流派『血涙雀ヨ月ノ空ヲ飛ビ、コロセ』」
血で出来た斬撃波でゴミクズを切り裂き殺す。恐怖を知ったのか怯えて逃げていくが、初月雀の射程内にいる限り生きていさせはしない。まとめて死ね。
やがてゴブリンの真っ白い光の体液が墓地に溢れる頃、残っていたのはルークを殺しかけた敵が二匹と、口数の多いゴミが一匹、他のゴミが数匹だ。
「さぁ、覚悟は出来てんだろうな?」
「キタキタキタ!!!噂の剣聖サン!!侍のやつが珍しく笑ってたって報告受けたから興味あったんだよねイヒヒヒヒ!!!!!」
「失せろ。今お前に興味はない」
「オヒャハハハ!!!!」
距離を詰めて振るった刃は確かに体を切ったが、文字通り“人”形だった。また即席で人の皮を使って、今度は人間を作ったみたいだ。切った直後に断末魔のような人の叫びが聞こえたが、今はどうでもいい。
そんな小さいこと気にするつもりはない。“ゴミ”を切れなかった。それだけで十分だ。本命は“ゴミ”じゃない。ルークを傷つけた“敵”だけだ。ゴミの処理はそのあとでいい。
「『紅蓮の闇よ、世界を食らえ、闇は踊り、光が泣き叫ぶ、生命は果てて世界は今終焉へと向かう』」
「おっと!?これはいけないねぇ!!お前ら全員、”壁”な?」
『『『ギャギィ!!?』』』
『『 』』
むしろ好都合だ。わざわざ獲物を前に出してくれたんだからな。殺してやるよ。
「『妖の闇は生命を喰らい、起こる悲劇は新たな闇を産む。さぁ見届けよ。この闇を、『終焉の焔雷』をその身で受けて地獄へ落ちろ』桜華殲滅流演舞『終焉焔ノ雷ハ狂イ、ソノ心ハ抉リ果テル』!!!」
ギンに教わった雷と炎の二属性を自分のHPを削って纏う妖術『終焉の焔雷』、毎秒HP30ほど持っていくのだが、俺のHPが1残ればいい。つまりそれだけ使って殺せる。
剣は炎を纏い、体には雷が走る。飛び上がり俺の間合いへ入ってきた“敵”を切り裂き、蹴り飛ばし、その臓器を抉り抜く。
外面がどうであろうとも臓器をぶち抜けば死ぬだろ。一匹一匹丁寧に、苦しませて殺してやる。無表情だったゴミどもは死を覚悟した瞬間だけ恐怖に顔を染め上げた。
だが、既に『十六夜天雷』『都燕』『鏡雀』の連続抜刀で関節はへし折り、腱は切断した。必死に藻掻くが逃がさない。“俺”の前に立った時点でこうなることくらいは覚悟してこい。
「月光滅流十二宮奥義『堕情アリエピオ』」
『『 』』
アリエルの心臓破壊攻撃とスコーピオのピンポイント攻撃。左手では直接手を体内に差し込んで心臓を貫きグチャグチャにかき回し、右手に持つ剣は伸びる血管だけを切り裂く。
ゴミは内部出血多量により苦しみながら、だがそれ以上に恐怖を抱きながら死へと向かっていく。
『イタイヨ・・・・・タスケテ・・・・・・ワタシハマダイキテルノ・・・・・オネガイ・・・タスケテ・・・・』
『シニタクナイ・・・・・・シニタクナイヨォ・・・・・・』
「『絶望は続く。永遠に、貴様らには死すら生ぬるい。絶望に飲み込まれ、その魂を殺せ。その魂よ、朽ち果てろ。永遠に安寧など訪れない。死ね。果てろ。消滅しろ。』」
恐怖をねじ込みながら心臓を抉られ、泣きじゃくり、上からも下からも、中央からも様々な体液を流しながらゴブリンは死にたくないと暴れていた。いや、むしろ早く殺してくれと言っているのかもしれない。だがそれは許可しない。その為に即死はしない致命傷で今は止めてるんだから。
”敵”に触れると素材の残っていた意識が俺へと流れてくる。悪いが死ね。それが今の俺にできる供養だ。少なくともこの状態でお前らは元の姿に戻れないし、そもそも戻れたとしても俺はお前らを許せそうにない。
お前らの意思じゃないとしても、俺の大切なものに手を出した。殺そうとした。死ぬ理由として、それだけで十分だ。
「その魂の存在を許さない。死ね、桜華殲滅流新演武『終焉殺獄刑』・・・・『ゆっくりと死ね。その感情を味わえ。肉が潰れる感覚を体内で知れ、血が体を突き破る感覚をゆっくりと味わえ。死ぬ瞬間を、死んでも尚永遠に味わい続けろ』」
既に冷たくなっていく体ではまともに動けない。ただ痛みだけが体を支配し、恐怖と絶望だけが感情を支配する。泣きじゃくり、もう声すら上げられない”敵”はただ表情に”殺してくれ”と出すだけしかできない。
「「「ピギャアハハハハハ!!!!そんな技まで使えるのかぁぁぁぃ!!?勝てそうにないから逃げるねぇアハハハ!!!僕の名前は学者ゴブリン!!でもカッコ悪いからゴブリンジーニアスとでも呼んでくれ!!!最高で最高に天災なゴブリンなのさアハハハ!!!!!!もしまた機会があれば僕に会えるかもね!!!ウヒャヒャヒャ!!!!!!」」」
死にゆく自分の仲間を見殺しにして、ゴミはその声を最後に、残っていたゴミは霧のように散り消えていった。残ったのは凶器の『龍爪棒』と墓地を真っ赤に染めたルークの血だけであった。
いつ逃げたのか全く”視てなかった”けど、今はどうでもいい。目の前で俺の大切な奴を殺しかけた”敵”を今は殺す。さぁ、絶望に染まって死ね。
―――――◇―――――
「ルーク・・・俺がわかるか?」
「わかるよ・・・アホ・・・・もう少し優しくしろバカ・・・・」
ディアのおかげで瀕死にはならず、何とか持ち直したルークを抱きしめた。傷は大きかったがスキルの発動とディアの治療が早かったおかげで何とか助けられた。
一段落して落ち着いた俺たちはすぐさまルークの状態を確認していた。演出とは言え大量の出血だったんだ。肝が冷えるどころじゃない。
避難を終えて戻ってきたリークの魔術で周囲の空気を吹き飛ばし、充満していた薬の効果は既にない。
それもそうだけど、よかった・・・本当に無事で良かった。今回は本当に心臓に悪い・・・こんな葬儀の終わりに同じようなやられ方で瀕死になんてされたら常人には辛すぎる。
リーク達も同じようにルークの様子を見て力が抜けた。リークなんてそのまま倒れこむように地面に座り込んでいた。
「し・・・心臓に悪い・・・」
「絶対このシチュ考えた奴性格ひん曲がってる・・・・」
「馬鹿者・・・姉弟子より先に逝くでない・・・・」
「僕もやられたと思った・・・・」
全くだ。想像の二倍上を行った今回の結末は後味が悪すぎる。あのゴブリン、学者ゴブリンと言っていた奴は自分の快楽と娯楽のために人を殺し、嘘の犯人を仕立て上げて時代人に殺させて自分が儲けようとしていたのだ。
メルキゼはその存在で畑に、ひいては街に魔物がおいそれと入れないようにしていた。それがお気に入りの野菜を食うためだとしても街を守ってくれていたことに変わりはない。もし殺していればゴブリンだけじゃなく、魔物たちにも襲われる可能性が増えていた。俺たちはその計画に乗せられかけたわけだ。胸糞悪い話だ。
「皆さん・・・」
腰が抜けてしまった為ズルズルと這ってこちらにやってきたミルハさん。表情は固く、とても辛そうだ。
「改めて言わせてください・・・・主人の敵を・・・討っていただけますか?」
「「・・・・」」
相手の強さを間近に見て、その強大な力を見た上で彼らは俺らに依頼してくる。母親も、子供たちも俺の反応を待っている。答えは決まっている。
「五代目剣聖の名に誓い約束する。あの野郎は俺が必ず倒すと」
「・・・・っ!!!」
「あなた方の怒りを、殺された旦那さんの無念を、必ず晴らします」
こっちだって大切なルーク殺されかけたんだ。ただじゃ済まさない。地獄なんて生温い。生きていることを後悔させてやる。
それにこう言っては悪いが、俺は今回のおかげで奴のやり方を知れた。感情をぶち壊して理性を崩す戦い。そして学者ゴブリンという名前。調べることはたくさんあるし、やり方さえわかれば気持ちの覚悟はできる。
最悪死人が出るかも・・・いや、間違いなく出る。けど攻めて最小限にとどめる努力だけはする。俺になる前の俺には出来なかったことでも、俺には出来る。
アフターストーリーでのとある出来事に比べればまだマシだ。胸糞悪いのは変わらないがそれでも原因が悪意を持っている存在なんだ。まだましだ。
すまんな侍。お前の仲間なんだろうけど惨たらしく殺す。あいつが弄んだ人の悲しみと怒りを、残された家族や友人の無念を全て、俺の刃に乗せて無残に殺す。
「よろしく・・・・お願いします・・・!!!」
こうして、アクシアの街を大きく揺るがす大事件となった『ゴブリンによる殺人事件』は瞬く間に世界中へと広がっていく。NPC、プレイヤーに限らず、プラネットアークにいるすべての人のもとへと。
――――全プレイヤーへ通達
ゴブリン七将全個体判明
侍ゴブリン
忍者ゴブリン(撃破)
双剣ゴブリン
重盾ゴブリン(撃破)
学者ゴブリン
魔剣士ゴブリン(撃破)
道化師ゴブリン
残り四体
――――どこかの街で何かのモンスター狩猟の依頼が発生するようになる。
――――謎を突き止めて真実に到達したとき、学者ゴブリンへの道は開かれる。
――――全プレイヤー対象『特殊サブシナリオ』発生。
――――『学者ゴブリンが引き起こす悲劇の連鎖』開始
――――クリア条件:学者ゴブリンの討伐。
――――クリアするまで各町のどこかで学者ゴブリンによってNPCが殺されていく。なんとして学者ゴブリンの思惑を超え、悲劇の連鎖を断て。
――――次のターゲットにされたのはいったい誰だ。いったい誰の悲劇を、絶望を起こそうとしているだろうか。
――――時代人よ、悲劇をこれ以上広げてはいけない。人々の心を救うために一刻も早く、悲劇の元凶を断て。
―――――◇―――――
キヒヒヒヒ!!!
あれが噂の剣聖か!!面白い!!オモシロイ!!
あぁ!!アイツは絶望したらどんな顔をするんだろう!!?
あいつが仲間に裏切られたらどんな姿を見せてくれるんだろう!!!?
あいつへの信頼が失望と怒りに変わったらどんな風に壊れてくれるんだろう!!!?
あぁ・・・あぁ!!!見たい!!!見たい!!!!
決めたよ!!!次の”ターゲット”!!!次の玩具!!!次の主人公!!!
―――――◇―――――
「主任!!」
「見てるわよ・・・・プログラム班!バグはある!!?」
「いえ!ありません!!」
まさかこうなるなんて予想外よ。ゴブリン七将はそれぞれの自己意識を持っていて、私たちが毎回何か彼らに対して介入しているわけじゃない。文字通りあの世界で生きている。
私たち運営兼開発のエクスゼウスはあくまで悪質プレイヤーの管理やシステムの管理、あと趣味の人間観察をしているだけ。
世界の歴史はいくつかパターンしてシステムに組み込んでいるけどそれを決めるのはプレイヤー、時代人の行動次第。今回だってそうだった”はず”だ。
学者ゴブリンのターゲットに”時代人”が選ばれるなんて設定はしていない。あの学者ゴブリンは私たちが生み出した中でもかなりの外道。
プレイヤー以外を対象とするはずなのに、今奴はプレイヤーを次の対象とした。
「主任!!どうします!!?」
「待ちなさい・・今考えてるから・・・」
おそらく剣聖くんが使った天月海放の影響で一部AIに影響が出た結果だというのは間違いない。まさかあそこまでの影響が出るとは私たちの想像を超えてきた。
その点は大感動の嵐で私たちはしばらく眠れないほど大発狂だったから寧ろありがとうございますなんだけども!!!
現在全てのAIに出たバグや悪影響は改善してサーバーの移動も新型への移行も完了している。ってことはつまりこれはAIが独自に進化して、思考した結果だというの?
「・・・・面白いじゃない」
「主任?」
AIが人間を超えるとは昔から言われていたし危険視もされていた。少し前にはそんな感じの映画が大流行していたけど、まさかそれを目の前で目撃することになるなんて。
「上等じゃない・・・!!!全員聞きなさい!!」
その挑戦状受けてあげるわ!!
「今回の一件は”現状維持”!!!同時に特殊部隊を再編成するわ!!全サーバーとシステムの再スキャン!!AIに私たちを本気にさせたらどうなるか教えてあげなさい!!」
「「「「「祭りの始まりじゃぁあああ!!!!」」」」」
「「「「うっひゃぁあああ!!!AIvs人間の戦いじゃぁ!!!!!!!!」」」」
「え!?え!?ええ!!?つまりいいんですか!!やっちゃっていいんですか!!?」
「私の権限で許可するわ!!各自全力でやりなさい!!!」
『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『狩りの始まりじゃァァ!!!!!!』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』
私たちを欺いて何かしようだなんていい度胸じゃない!舐めるんじゃないわよ!!アンタの生みの親がどれだけの実力者達なのか教えてあげるわ!!私も久しぶりに真面目に”掃除”してやろうじゃないの!!
「主任!!学者ゴブリンに関してはどうしましょう?どのような処置をしたらいいでしょうか?」
聞いてきたのは最近配属された別企業から技術習得で派遣されてきた若い社員。まぁ若い子なら仕方ないわね。聞かれたことは何回でも教えてあげるのが私のポリシーよ。
「現状維持よ。こちらからは介入しないわ」
「えぇ!!?でもあれは確実にプレイヤーを対象にしてますよ!!?」
そうね。由々しき事態よ。このままだと普通のプレイヤーなら精神的苦痛を味わうのは間違いないでしょう。いくつか存在するパターンをプレイヤーに当てはめればそれの想像は容易よ。
下手をすれば人間不信になる可能性だってある。でもね。
「教えてあげるわ、新人くん。私たちの仕事はあくまでも基本は”システムの管理”と”プレイヤーの観察”だけよ。緊急の事態には対処するけどそれ以外には未介入を貫くわ」
「なら今回だってヤバイ事態じゃないですか!!?」
「そうね。”普通のプレイヤー相手”ならすぐに対処する事態よ」
「だったr「でもね!!」っ!!?」
言葉を遮り胸に親指を突き立てて高々と宣言する。同じようにタイミングよく若手以外の仲間たちが立ち上がり腕を組む。流石私の部下よ。
「奴が対象にしたのはプレイヤー名アール、本名藤宮励久!私たちが真の剣聖と認める唯一の人よ!!逆にこの程度乗り越えられない訳ないでしょう!!!」
『『『『『『『『『然り!!然り!!!然り!!!!』』』』』』』』』
何処かの王様の配下のような合いの手感謝よ!流石だわ!!それを見て若手たちはキョトンとしちゃってるわね。やっぱり”あの教材”使ってちゃんと教育しないと私の下では働けないのよ全く。どこからの派遣だか忘れたけどなっちゃいないわ!!
「いやいやおかしいでしょ!!?」
「ふぅ・・・仕方ないわ!A!!R!!出番よ」
「「おっす!!」」
「え!!?ちょ!!?何すんですか!!?」
社員ネームAとRは派遣社員の若い子の両サイドをがっしりと掴み持ち上げた。困惑する子に対して落ち着かせるために私は優しい声で言ってあげるわ。
「大丈夫、貴方には改めてエクスゼウス式の新人教育を受けてもらうだけよ。やっぱり派遣だろうとなんだろうと受けてもらうべきだったのよ」
「待ってください!!?かなり不穏な言葉にしか聞こえないんですけど!!?」
「大丈夫よ。洗脳とか催眠とかじゃないわ。ちょっと私たちの歴史を”追体験”してもらうだけよ。アナタの体感は数年程度あるでしょうけど、戻ってくるまで三分よ。あ、M〜、派遣くん用にカップ麺用意してあげて!シーフードのやつ!!」
「既に用意完了!!ついでにお湯も注いでます!!」
「完璧よM。今度少しモンスターの設定を弄る権利をあげるわ!!さぁレッツコンティニュー!!これであなたも立派なエクスゼウス社員になれるわ!!」
「ちょまっ!!?」
さて、戻ってくる頃には私の部下になれているはずよ。これでいいわ。あとはAIに私たちを本気にさせたことを後悔させるだけよ。世界中が恐怖する天災たちの力を思い知らせてあげるわ。
その三分後、派遣社員は素晴らしいエクスゼウス社員の一員となり、モーショントレース部署で頑張りたいと願い出た。
その数日後、派遣社員の若い子が二足の草鞋で、プロレス業界に入門、わずか一年で名を馳せる大スターとなることを誰もが想像していた。
AIの隠し事は一分弱で発見され粛清及びお仕置きされたようである。
章の冒頭ゴブリンの集団はいましたよね。あれ、コイツの配下でした。
待たせたな!!社員回ありだぜ!!!相変わらず変態天災集団・・・
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