128:彼女の決意とまた私刑(嫉妬)
いつもなら3話くらいに分割する長さなんですけど、今回は一気に書いたほうがすっきりしたので10000文字オーバーで投稿です。
一度もキャラ案出したことない人だけキャラ案募集したら需要あります?
一人一回だけの制限は付けますけどね?
すみません。一話前のPKですが、ZERO 様 からいただいたキャラ案『レイエル』になります。
「随分気味悪い笑顔じゃねぇか。二枚目面が台無しだぜ?」
「クックック・・・」
もしかしてイカれたか?追い詰めすぎて精神が病んでしまったのだろうか?まぁそうなったとしても俺は責任取らないし、取る気もない。
「あーあ、他の奴らは一瞬でやられるし、雇ったアイツは想像以上に雑魚だしマジで使えねぇ」
「随分とまぁ散々な言いようじゃないか、仲間だろ?」
「だからこそだよ!使えない奴は使えない、使えるやつは使える。結局どんな側してても使えない奴はゴミなんだよ」
コイツマジで救いようがないな。見た目は好青年のイケメンだけど中身は腐ってるクズ。MMOに向いてない奴堂々のナンバーワンだろ。こんな奴がクランマスターとか世も末かよ。
「まぁ自分でそんな発言したんだし、今後どうなっても自己責任だからな?」
「バッカじゃねぇの?今後お前みたいな馬鹿が手足のように使えんだから人が減るわけねーだろ?」
この状況でまだ勝てるってか。諦めない気持ちは賞賛するが現実を見るべきでもある。最後の悪あがき位の方がまだ可愛らしい。
「あっちのガキは”手伝ってもらってた”時の話したら黙るだろうし、あの狐女は血でも見せれば壊せる、あとはお前を潰せば”俺”の勝ちだ」
「・・・・お前馬鹿なの?それを聞いて俺が黙ってると思ってんのか?」
通告もしてやったはずだぞ。『知り合いに手を出されて黙っていられるほど大人じゃない』ってな。それを知った上でその発言を俺の前でするとか・・・・殺すぞ?
「なんだよ?えぇ?言ってみろや?お前以外のクズとクソガキなんて簡単に始末できんだよ」
「テメェいいかげん・・・・に?」
・・・何か変な感じだ。体に異常があるとかじゃなくて、そうワザと怒らせようとしているのはわかっているから良いとしてだ。
なぜか感情がすごく動く気がする。多分今気づいて止めなければ罵詈雑言の嵐だったと思う。なんというか頭に血が上りやすくなっている?あのリッチモドキとかブリガンテ相手にする感じと似てる気がする。
「なんだよ?もしかして罵倒はみんなのヒーローさん的には言えませんってかぁ?」
「・・・・」
うん。やっぱり変だ。ムカつくし、キレそうだけど、自分以上に感情が爆発しそうだ。なんて言うんだろう?暴走?
「お前!!いい加減にしなさい!!これ以上の侮辱は許しませんよ!!」
「んだよクソ女、俺らに詰め寄られただけでビビってた癖に何言ってんだよ?」
「っ!!!あ・・・あれは・・!!」
「と言うかよ?お前一回殺してほしいって思えるほど潰してやるから待ってろや。この落とし前付けさせてやるからよ?」
「っっっ・・・!!!!し・・・・・・しぬ・・・・?・・・・・ころされ・・・・・・あ・・・・あああ・・・・・あああああああ・・・・・・ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「っ!!?コヨミ!!?」
「嫌だ!!嫌だ嫌だ!!死にたくない!!嫌だ!!誰か助けて!!痛いのはもう嫌!!死にたくない!!やめて!!!助けて!!怖いよ!!一緒にいてよぉ!!!やだ!!!行かないで!!!一緒にいて!!!たすけて!!!!しにたくない!!!!もうやめて!!!イヤァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「コヨミ!!大丈夫か!!?コヨミ!!」
コヨミはその場で頭を抱えて地面に俯き発狂した。何度も何度も謝罪と弱音、そして恐怖を叫びながら汗を流し、口から涎を垂らしながら呼吸を荒げ発狂する。
「ギャハハ!!!なんだよ!!ダッセぇ!!マジで戦えないとかありえねぇし!!」
「テメェ・・・まさか最初からコヨミの事知ってやがったな!!?」
「当然!!俺らが行った時だって『私はもう戦えませんので』とか馬鹿なこと言うから立場を教えてやろうとしただけで“アレ”だったんだ!!こうなることくらいは馬鹿でもわかるわ!」
コヨミ・・・リリカの最後は無惨という言葉以外にはない。真剣聖ルートで最後にわずかな救いはあったがそれでも体中に傷を負い、食いちぎられ、引き裂かれ、五感はほぼ失われていた最後の瞬間。トラウマにならない訳がない・・!!!
それが分かっていたから俺もマー坊もリークもレイレイも全員これ以上コヨミを戦わせない。コヨミが命をかけて戦う可能性を少しでも減らしたい、プレイヤーの願いで彼女をこれ以上苦しめたくはないと願ったからこその判断だった。
くそっ!!やっぱり誰かにコヨミを任せて俺とルークとギンの三人だけで戦うべきだった!!コヨミの意思を尊重したけど、あの時だってそうしたからリリカを殺したんじゃないかよ!!
「と言うかお前もだよ“自称剣聖”様よぉ!!お前がその女を連れてこなかったらここまでならんかったんじゃねぇの!!つまりだ!!今その女を苦しめてるのはお前ってことだぜ!!」
・・・・返す言葉はない。結局あの時の判断と同じことを俺はしているのだからっ!!クソが!!!
「っ!!!」
「言葉もないってか!!事実だもんなぁ!!!」
「・・・あぁ、その通りだな。本当に、自分が嫌になるよ・・・・・!!」
「そうだぜ!!もっと落ち込んで自己嫌悪してお前の正体世界中に知ってもらえや!!お前なんてただの“狂信的なファン”でしかないってことをなぁ!!!!」
・・・・・!!
そっか、そんなことだったんだ。確かにそうだ。なんてこった。感情が溢れ出て壊れてしまうと思っていたのに、ただの一言聞いただけで気がついたんだ。俺のこの感情の正体を。
せっかくだ。コイツの言う通り晒してしまおう。剣聖物語に囚われた俺の正体を。
「ならそうさせてもらおうか」
「あ゛ァ?」
奴に背を向けて怯え身体を抱いているコヨミの前にしゃがみこむ。泣きながら怯え、恐怖から吐き気や悲痛な叫びを繰り返すコヨミ。
ムカつくけどコイツの言う通りだ。この世界では、俺はただの『剣聖物語』の狂信的ファン“でしかない”。奴の言う通り“剣聖”と同じことができるだけのファンだ。
他のプレイヤーはそれを見て色々と嬉しいことを言ってくれるけど、ここは五代目剣聖が生きていた世界じゃない。あくまでもその先の物語。俺やコヨミなどの前世持ちが主役じゃない。
あくまでも主役は今を生きている時代人だ。過去に囚われた奴の出しゃばる場所じゃない。悔しいけど、俺もコヨミも過去に囚われ、すがり付いていただけみたいだ。
なら簡単だ。“先に進めばいい”。“一歩前に進めばいい”。
「大丈夫だ、もう大丈夫だよリリカ」
「フゥーフゥー・・・!!あ・・アール・・・く・・ん?」
同じ過ちを繰り返したのなら、過ちの先を過ちにしなければいい。人間の本質は簡単には変えられない。何度も同じ過ちを繰り返す。けど結果は変えられる。
俺はこの先もずっとコヨミの・・・リリカの意思を尊重するだろう。死ぬかも知れないと分かっていても彼女の思いを尊重する。例え後悔することになってもだ。
なら、死ぬ“かもしれない”だけで、死なせなければいい。彼女の思いを尊重しつつ、誰もが笑顔で笑えるハッピーエンドを作ればいい。
「もうお前は死なない。あの時果たせなかった約束を今度は必ず守る。俺がリリカとの約束の分まで、コヨミを守る。今度こそ絶対に守る」
感情の正体は怒りであり、後悔であり、罪悪感。リリカを殺したのは俺の判断であったということ、そして同じことをコヨミにも犯してしまったということ。同じ過ちをしたほかの誰でもない、自分に対する負の感情。
自分の不甲斐なさに怒り、自分の選択に後悔し、一人の大切な仲間を殺してしまった罪の意識。
それが俺の中に渦巻いた感情の正体。ここまで暴走しかけたのはおそらくコイツが何かしたからだろう、いや、人のせいにはしないさ、コイツは使える手段を使っただけ。感情のコントロールが制御しきれない自分の弱さだ。今後はそっちの方面でも鍛えていこう。
そのための第一歩だ。そしてリリカのトラウマを拭い、コヨミとしての道を作って欲しい。だからだ。
「都合のいい言葉なのは重々承知してる。けど言わせてくれ。もう君を死なせない。俺が君を守る。俺もクズだし最低の男だけど、信じて欲しい。俺にもう一度君を、コヨミを守る約束を果たさせて欲しい」
「アー・ル・・くん・・・・・・っ!!?う・・うしろ・・・!!!」
「まとめて死ねぇ!!!」
背中を見せた俺めがけて薙ぎ払われた大剣。コヨミが気づいた時には既に回避は間に合わないほどだった。コヨミはギュッと目を閉じて蹲る。そして鮮血が二人の間に飛び散った。
――――◇――――
あの下衆・・・アールに物理的に勝てないからって精神的に責め始めやがった。ふざけんな。そんな番外戦法使っていいならアールは最初から使ってるんだぞ。
コヨミ・・・ううん、リリカのトラウマを抉っていることだけでも許せないのに下衆は今なんて言いやがった?自称だと?ふざけるな。アールが・・・励久がどれだけ色々やってきたかも知らないくせに良く言えるな。
殺してやりたい。私の大切な人を侮辱するあいつを今すぐ殺したい。
「「「あの野郎殺す・・・・ルーク君をガキ呼ばわりするとか・・・本気で殺す・・・・!!!!」」」
何処かの最近出来た宗教の教祖と信者も怒り心頭。それだけじゃない。アールの技に憧れているプレイヤーだってたくさんいる。いつかのドラ息子なんて目じゃない。コイツは今一番言ってはいけないセリフを口にした。
それだけじゃ飽き足らずアールに醜い姿を晒せだと?
・・・・ユルサナイ。ユルサナイ!!!コロスコロスコロス!!!!二度と日の光を浴びることなく永遠に地獄を味あわせてやる!!飼い殺して使い潰してその細胞のかけら一つ残さずに消してやる!!
あぁ・・・アールには怒られるけどもう止まらない。コイツだけは殺す。いったい誰の恋人に手を出したのかその命を持って、人間としての尊厳すべてを代価にしてゲスにおしえてや
『ならそうさせてもらおうか』
一気に周囲の言葉が死んだ。
―――――◇―――――
目を閉じて、“あの時”と同じ痛みを覚悟してその瞬間から目を逸らした。
もう嫌だ。
痛いのは嫌だ。
怖いのも嫌だ。
死にたくない。
こんな場所にいたくない。
頬に飛び散る暖かい血が切られたことを教えてくれた。この後、痛いのが来ると思うと目を開けたくなかった。口を開きたくなかった。
彼の言う通りこんな場所に来ないで隠れていれば良かった。でも、そんなカッコ悪い姿を見せたくなくて、無理してここに来た。それが失敗して私はまたあの時と同じ痛みを感じたんだ。
怖くて恐くて、死んでしまうと思えば思うほど恐怖が私の体を蝕んでいる。
迫るモンスターの牙、爪、角、凶器と狂気。忘れたいのに忘れられないあの時の記憶は生まれ変わって尚、私が私を苦しめる。深い闇の中から私は二度と戻れない。
けど・・・・でももしも・・・“私”を助けてくれるとしたら、私をもう一度私にしてくれる人が居るとしたらきっと・・・
いつまでもやって来ない痛み、ゆっくりと目を開ければそこにはあの日々でずっと私を照らしてくれた光の主がそこにいた。
「んなぁっ!!?」
「・・・・コヨミ、信じてもらえるか?」
それは今度こそ約束を守ろうとしてくれる人。私との約束だけじゃない、私とも同じ約束をしてくれる人の暖かい声、その人が見せてくれる光だけが、私を“たすけてくれる”。
自分だってボロボロなくせに他の心配ばっかりする人。みんないつも自分の心配しろって怒っていたのに他の人を優先する人。どうしても放って置けなかった私の大切な人。
だから同じ場所に立ちたくて、少しでも傷ついて欲しくなくて、誰かの力になりたいと心の底から初めて思えた大切な人との日々。
最後の瞬間まで変わらない光を持ち続けてくれた君だから私は笑って逝けたんだ。
「・・・バカだよ。アール君・・・・」
「いつもだろ?」
剣を受け止めた手からは大量の血が流れてた。でもそれでも顔には全く出ないで、優しい顔で私を迎えてくれた。
うん。君はいつもバカだよ。でも、それでたくさん助けてもらった。一つだけ約束は守ってもらえなかったけど、最後の瞬間の約束は過去から現在に引き継がれて果たしてくれた。
そしてもう一回あの時守ってもらえなかった約束をしてくれた。あの時と変わらない光を持って君の言葉が告げてくれた。
「うん・・・信じるよ。君は約束を守ってくれる人だから」
「ありがとう。これで俺も少しだけ前に進めたよ」
「なにいってんだこいつらばぁっっ!!?」
肘打ちで“敵”を殴り飛ばしたアール君は着ていたローブの一部を破ってその手に巻いた。今の一撃だけでもかなり良いのが入っていた。人体から聞こえていい音じゃない。
そんな相手の状況なんて考えずにアール君は立ち上がって、構えを取った。
「コヨミ、見ててくれ。俺を超える、今の俺の姿を」
二人で考えて一緒に修行した月光真流・・ううん、月光流の最終奥義とも言うべき集大成。
「言ってたな“ゴミクズ”?『俺の正体を晒せ』ってな。なら晒してやるよ。俺は“敵”に対しては一切の容赦をしない残忍で残酷なクズ野郎だってなぁ!!!」
「ふぎぃっ!!?」
月光真流壱之型から七之型の動きを全て取り入れつつ、自分の身体能力を『十六夜天雷』で強化して一気に繰り出す『水無月写鏡』『月光花』『夢傷月』『朧月光』『波紋水月』『水月天鎖』『天月真冥』全ての奥義を一気に繰り出す月光真流最終奥義。
「月光真流最終奥義!!『蒼穹朔夜』!!」
剣士であり拳士でもある月光流だからこそ出来る、武器と身体を刃と化して繰り出される手刀、足刀・斬撃・打撃の超連続攻撃は相手の体を破壊する。
「月光真流究極奥義!!『天月海放』!!」
最後に叩き込まれたアール君の師匠さんから受け継がれた一閃が、私は完成したこの技をアール君が使う瞬間を見ることがなかったけど、今日その瞬間を見ることができた。
アール君の斬撃は、この空間全てを文字通り“切り裂いた”
――――◇――――
あぁ・・・やっぱり励久はすごいよ。馬鹿にされたのに、今までの全部を侮辱されたのにそれを乗り越えちゃった。それだけじゃない。月光真流の集大成とでも言うべき全奥義接続技なんて使えるなんて凄すぎるよ。
少なくとも今ので21回は確実に死んだ。蘇生系のスキルをフルで積めば最高25回はHPは0にならない。でも、肉体と精神に多大なるダメージを確かに与えていた。
最終奥義『蒼穹朔夜』の後に使った究極奥義『天月海放』
その衝撃は私たちのいる場所にまで伝わってきた気がした。いや、間違いなく伝わっていたんだ。空間を断ち切るような凄まじい一閃。究極奥義と言っていたその奥義はアールの全てが詰まっている一撃だって思う。
ゲスに対する罵詈雑言が一瞬で静まり返り、アールの言葉を一言一句聞き逃さずに、そしてアールの奥義をこの目に刻んだ。
技の威力、キレ、動き。その全てが簡単に真似できるものじゃないと、私たちに現実を叩きつける。
『これが本物だ』『五代目剣聖の実力だ』と見せつけるように、容赦なく叩き込まれる一撃必殺の数々。
そして放たれた『剣聖物語』真剣聖ルートの邪神とのラストバトルでのみ使用できる特殊奥義であり、究極奥義。『二代目剣聖』と『四代目剣聖』から『五代目剣聖』へと託された剣聖へと至った者だけが使用できる究極の一撃を、私たちは『剣聖物語』ではなく、この世界で目撃したんだ。
―――――◇―――――
「ちっ、復活スキルウゼェ」
軽く20回くらい殺したはずなのにまだ生きてやがる。
リリカとの修行の中生み出した全奥義接続の最終奥義『蒼穹朔夜』
師匠から託された文字通り世界を切り裂き震わせるひと振り『天月海放』
月光真流の全てが詰まった攻撃をしたのだが、肉片に変わり果ててもグチャグチャと光を浴びながら肉片から人体へと元に戻ってしまう。
邪神を葬った一撃でも殺しきれないとかスキル制のあるゲームで言うところの即死無効と言う奴だろうか。
でもアフターストーリーで邪神を殺した連続の究極奥義で殺しきれないとかちょっと凹むぞ?運営調整はよ。
因みに『蒼穹朔夜』の対となるように月光滅流の最終奥義もあるぞ?師匠とインファイト妖精に協力してもらって鍛え上げた全奥義連続使用の最終奥義だ。
掛け算じゃなくて足し算だから十二宮奥義を使えるやつならまぁ使えないことはない。俺の場合は足し算と掛け算両方をするから簡単にはできないだろうけどな!!
「立てよ肉人形、お前が死ぬまで何度もブチ殺してやる。腕を引き裂いて、骨をへし折って、臓器を破壊して、生きたまま抜き取ってやる。お前が蘇る限りこの地獄は永遠に続けてやる!!」
肉人形へと戻った“敵”は怯えながらも立ち上がり、恐怖に顔を染め上げて口を開いた。
「なんでだよ・・・・・」
「あ?」
“敵”の小さな声で“聞こえにくかった”ので聞き返すと男は腹の底から声を張り上げた。
「どうしてお前みたいな奴に俺らが止められねーといけねぇんだよ!!おかしいだろ!!たかがNPCだぞ!!俺らプレイヤーに媚売って楽しませんのが作られた意義だろうが!!そんなNPCをどうこうしたってなんの問題もねーだろうが!!」
やっと言い切りやがったか。ちゃんとコイツの本心を聞きたかった。どんな思いでコヨミに手を出したのか、今までNPCにどんな感情を抱いていたのか。
そしてだ。コイツはクズだ。昔の決まった行動しかしないゲームのNPCと今のゲームのNPCとの差がないただの人形だと思っている俺の“敵”だ。
「…あぁ、そうだよ。NPCをどうにかしてはいけませんなんて法律はない。だからお前らだって今までお咎めはなかったんだろうさ」
「そうだろうよ!!つまり俺らは何も悪いことはして「だがな!!」っ!!?」
「テメェらは俺が一番嫌いなことをやりやがった。俺の大切な友人を傷つけた。この“世界”で生きている人の命を命と思わない最低な行為を、言動を俺の前でしやがった!!だからテメェらをこの場で潰したかっただけだよ!!」
「ヒッ!!?」
「あぁそうさ!!完全な私刑だ!!報復だ!!悪いか!!?悪くねぇよな!!?ルールに則った私刑だ!誰からも咎められることはない!!つまりだ!!」
大きく息を吸って宣言する。
「テメェが何を使って俺の感情を拡張したのかは知らねぇが死んでも悔い続けろ!!俺の“敵”になったらどうなるかその魂にまで刻み込め!!!」
「ヒィ!!?」
さっきまでの威勢はどこへ行ったのか。だらしない悲鳴を上げて“敵”は後ずさる。逃げようとする野郎をゆっくりと追いかける。簡単には終わらせない。その恐怖を、俺という名の恐怖を一生の記憶として残してやる。
「アール君」
そう決めたとき、コヨミが優しい顔つきで俺の足を止めた。振り返ればそこにはいつか見た“剣士”としての彼女の姿があった。
「コヨミ?」
「君のおかげで・・・・・君の思いのお陰で私もこうして立ち上がれたよ。だからもう大丈夫」
いつの間にかコヨミの震えは止まっていた。そして腰に携えていた剣をついに抜いたのだ。
「怖かった。人に囲まれることだけじゃない。戦うことが恐ろしかった。戦えばまた死ぬ。そう思っていたから。でも・・・それじゃぁもうアール君と同じ場所には立てなくなっちゃう」
言葉の一つ一つに覚悟はあり、一歩ずつ前に進むコヨミ。
「今の君には大切な人がいる。もう君の隣には立てないかもしれない。でも同じ場所には立ちたいの。あの日リリカが・・・ううん、私がそうしたいと思ったように。私はもう一度君と同じ場所に立っていたい。あの時の思いを、私の決意をまた取り戻したい」
力強い言葉を口にして、やがて立ち止まり、男へとその矛先を向けた。そして宣言した。
「私は今日もう一度前に進む。君がもう一度私に約束してくれたように、リリカとしてじゃない、コヨミとして今この時を持って私は前に進む」
「な・・・何言ってんだよこの人形女・・!!?」
“敵”の発言に対して彼女は嘲笑うかのように薄らと苦笑いを浮かべた。
「人形か、その通りでした。でも今からは違います。弱かった自分を乗り越えて、私はもう一度一人の剣士として再起します!さぁ見なさい私の“敵”!!お前を斬り私は過去を乗り越える!!恐怖に負けっぱなしの私を今絶ち切ります!!」
「ふ・・・なんだよ。人に散々変わらないって言ってたくせにお前だって昔と変わらないじゃないか」
――――アール君!!もう一戦です!!今度こそ私が勝ちますから!!
――――いやいや、流石に休憩しないか?
――――簡単に休むとか言ってたら体がなまります!!それに負けっぱなしは悔しいです!!
――――本音そっちじゃねーか!!?
――――叫ぶ元気があるなら大丈夫です!!行きます!!
――――ちょまっ!!?
負けず嫌いの単細胞。弱い自分を嫌い常に前を向いていたリリカが帰ってきた。恐怖とか怯えとか、そういうの乗り越えて強くなるのがリリカだ。
俺の目の前で刀を構える姿はあの時見たリリカそのものだ。
「もう!決めたのに横槍刺さないでください!!」
「自分でとどめさしてる奴に言われたくない」
「そういう所も変わってないですね!!」
「このクソアマァァ!!!」
再起の出汁にされて、散々言われて頭に来た“敵”は最後の意地を見せて向かってきた。けどまぁ、“その程度”でコヨミは倒せない。さっきまでならいざ知らず、今のコヨミは無理だ。
「アール君になぞってあえてこう言いましょう。超越流派抜刀術『天津雀』」
「シィィィィn」
剣の範囲に入った瞬間、男の体は文字通りバラバラに切り裂かれた。肉片と骨、内臓と脳みそ、目玉に舌。見ればすぐにわかるほど綺麗に解体されながら男は崩れ落ちていく。断末魔を上げることも叶わず、男は消えていった。
『天雷雀』の生みの親である彼女はたった一度見せただけの『天津雀』を俺たちの前で使ってみせたのだ。それも俺に並び立つほどの速度と正確さを持ってくりだした。
これは俺もうかうかしていられなさそうだ。
―――◇――――
死屍累々。
この状況を他に言い表すことはできないだろう。戻ってきた広場では地面に倒れるクソイケメンたちの姿と“敵”の姿。
コヨミに解体されたにも拘わらずこうして何事もなかったようにしているのは専用フィールド様様である。
ちなみにPK男の姿はなかった。どうやら逃げたらしい。PKしてるんだし多分レッドネームだろう。今バレたら大勢に狙われるし流石に分が悪いと判断したんだろう。
さて、クラン戦で壊れた装備は修理する必要があるので、鎧含めて丸裸にしてやった毛無し野郎はインナー姿である。
そして・・・
「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!??!!?!?!」
「うりうり〜なんだ愚弟可愛いところあるじゃないか?」
「お願いだから今の忘れてぇぇぇぇえええええ!!!!!!!!」
ルークは絶賛自爆したようでわちゃわちゃにされていた。ほぼ全国放送と同じだって言ったのに哀れルーク。まぁ感情が拡張されてたみたいだし仕方ないな。
ちなみに俺らに毒が効かなかったのはこれのおかげである。
―――◇―――
アクセサリー:星の護符
効果:毒無効
・星の力を持った素材で作り出したお守り。その力はあらゆる毒から持ち主を守る。
―――◇―――
以前、と言うかつい先日プラレアに頼んで『剣聖を救え』の報酬でもらった星の○○シリーズを渡して作ってもらったアクセサリーだ。いい値段はしたが完全に毒を無効化できるのは素晴らしい。
さらにルーク曰く、絶対に毒で殺しに来ると思うと言っていたのでそれを利用しようと作戦を立てた。護符は全部で4つ作れたのでルークとギンに渡し、ルークに毒作戦を任せて一気に数を減らし、生き残りは各個撃破というわかりやすい作戦だ。
これが思ったよりも綺麗に決まり考えていた以上に早く終わってしまった。これならリュウオウの方がまだ強かった。
でも感情の抑揚は抑えられなかったので過信はしないほうが良さそうだ。
「おら、いつまで寝てやがる。さっさと起きろ」
伸びている“敵”の腹部を蹴り飛ばせばようやく目覚めた。
「き・・・テメェ・・・・・ェッ!!!」
「第一声がそれかよ」
解体された“俺たちの敵”は怒りの視線を向けてくるが、その奥には恐怖が禍々しく渦巻いている。必死に俺とコヨミの目を見ないようにしているのがバレバレだ。完全にトラウマを植えつけられたみたいだ。
「二度目はない。もうお前は俺の“敵”だ。今度は見つけ次第その場で始末するからせいぜい逃げ回ってろゴミクズが!!」
「・・・・・!!!!」
返事をせずに立ち上がり、街の外へと逃げていく“敵”。それに続くように他のクソイケメン連中も街の外へと消えていった。見た感じは強がっている“敵”だが、表情はもう怯えて逃げる動物そのものである。それにあの連中もこのあと大変だろう。
放送されてるのにNPCを人形発言したリーダー、そして味方にも話さなかった毒作戦。荒れるのは間違いないだろう。
――――契約の印書によりクラン『方舟の福音』の現メンバー全てに誓約が発動。
願わくば契約に基づいての行動ではなくて、一人の人として正しくNPCとこの世界を満喫してくれるようなプレイヤーになって欲しい。そして、これ以上第二第三の被害者や、あんな奴らを生み出さないで欲しい。
ただし“敵”だけは絶対に許さねぇ。今から見かけ次第MPKだろうとPKだろうと確実に落とす。今の俺ならリュウオウと笑顔で肩を組めるだろう。今度戻ってきたら仲直りの握手をすべきだろうな。
「アール君」
「どうした?」
「やりすぎです。いくら脅すといっても限度があるんですよ?」
腰に手を当てて頬を膨らませるコヨミ。それはそうなんだが、締めるときはきっちり締めないとあいつらみたいなのは絶対にまた繰り返す。
契約の穴を縫って必ずやる。故にしっかりと恐怖を植え付けておかないとダメなのだ。持論だけど。
「コヨミだけには言われたくない」
最後のかなりえぐいと思う。光速での解体でも痛いものは痛いだろうし、とどめさす瞬間まで致命傷になる切り方しない辺り相当エグいと思う。
「そうですけど・・・・・・でもやっぱりアール君は敵に対していいえ、大切な人を傷つけられた時の君の非情さは変わりませんね」
「・・・もしかしなくても怒ってる?」
昔から弱い者いじめ嫌いだったし今回は完全にコヨミからしたら弱い者いじめの部類らしい。どうしよう。言い訳が出てこない。事実だし。
「はい。少しだけ、でも・・・それを見て、君は本当に君なんだなって思いました」
微笑むコヨミにリリカの面影が浮かんだように見えた。いつも急に突っかかってきたと思えば嬉しそうに、楽しそうに笑っていた彼女の面影。剣聖物語で悲劇の死を遂げた彼女は、プラネットクロニクルの世界でようやく報われるのかもしれない。
「でもやりすぎなのは悪いことなのでこれはお礼と罰です」
「は?何言って・・・」
空気が死んだとはこの事だろう。口が塞がれた。何で塞がれたかは言うまでもないだろう?先程まで騒ぎ立てていたルークとその周りも時間が止まったようにこちらを見ている。
そんな中、くすくすと笑うのはコヨミ一人だけだ。
「君のお願いを聞いてあげます。それが私にできる最初の一歩ですから。だから君もこの後頑張ってくださいね?」
「・・・・・・・・・・・」
「14代目ギン。街での指導、第16代目天匠流の技を継ぐ一人の師範として、いいえ、一人の天匠流を誇りに思う剣士として引き受けます」
「・・・・・・・・・・・」
「でもたまに帰ってきてくださいね?私もアール君と一緒に世界を巡ってみたいですから」
――――特殊サブシナリオ『過去の因縁』をクリアしました。
――――『剣豪コヨミ』がアールの従者となります。
――――現在、『銀狐族のギン』と『剣豪コヨミ』はどちらかのみ同行できます。会話することで変更することが可能です。
「「「アール/師匠!!!!!!!!」」」
「「「「「アールギルティ!!!!」」」」」
「待てお前ら!!?今のは俺無実だろぉォォォォ!?!?!?!?!」
三時間集まった奴ら全員に特に男連中から鬼のような形相で追い掛け回された。そして掲示板が別の意味で荒れた。コヨミの正体含めて大熱狂であった。
――――ピコン
『蒼穹朔夜』『天月海放』に関する法則を一部修正しました。
彼女の中に蔓延る闇を照らすのは彼女を支える光となれる人間の心の光のみ。
気が付けば600万PV突破。
たくさんあって嬉しく思っている日々です。恥ずかしながらランキングのつけ方がよくわかっていない無知系作者です。久しぶりに見てみたら落ちてて少し凹んだのは内緒。




