123:正体
彼女の正体が明かされる。
実は設定集に名前だけ出てたりして・・・
「すまん。恥ずかしいところを見せてしまった」
「気にするな。こんなことになったんだ。仕方ねぇよ」
でもこんな強硬手段に出る馬鹿どもがいるとは思わなかった。『方舟の福音』か。後で調べておこうか。
「もう立てるか?」
「・・・ごめん。腰が抜けて立てないです」
「ならちょっと失礼」
「すみません」
お姫様抱っこというやつだ。抱き抱えて家の中に戻り彼女の寝ていると思われる布団の上まで運ぶ。
「ちょい外の片付けしてくるから休んでろ」
即行で終わらせたとは言え肉塊の後処理とかしておきたい。俺は人食はしないが、この綺麗な場にあんなものを長時間置いておきたくない。それに外に出した椅子の回収もしておかないといけないし。
「あ・・・・・」
引いた布団から離れようとすると遠慮するようにちょこんとローブを掴まれた。そして上目遣いになりながらも、ハッとしてすぐに手を離し顔を下げた。
「少し一緒にいたほうがいいか?」
「・・・すみません」
一人の方が色々と考えられるとは思ったんだが、どうやらそうもいかなさそうだ。心細そうに俯くコヨミを一人にする方がまずいと判断して、布団の横に腰を下ろした。
「「…………」」
長い沈黙の中、ギュッと手を握ってくるコヨミに対してただ黙って手を握り返していると、コヨミが口を開いた。
「今なら私になんでもできるのに何もしないんですね。それに何も聞こうともしない」
「やらないし聞かないさ。言いたくないこと聞かれたくないことを聞く趣味はない」
と言うかそんな奴に成り下がるつもりはない。
「私は貴方に聞きたいことができました。貴方の剣を私は知っています。アールくん・・・なんですか?」
君呼び。そんな風に呼んでいたのは剣聖物語でも数名しかいない。その中で天匠流に関わりがあり、尚且つ俺の知り合いは一人しかいない。
「多分コヨミが想像している通りだよ。俺はアールだよ」
「そうですか・・・」
「あぁ」
「「……………」」
再び続く長い沈黙、お互いに特に何かを話すことなく、ただ呆然としている。俺は掲示板で『方舟の福音』についての情報と似たようなことが起きていないかなどを聞きまわっている。
あと特殊サブシナリオの内容も改めて確認していた。
―――◇―――
特殊サブシナリオ『過去の因縁』
発生条件:剣豪コヨミが食事に誘う程度に心を許す。
:彼女の身に何らかの危機が訪れる。
発生パターン『A』:NPC襲撃
『B』:モンスター襲撃
『C』:プレイヤー襲撃 ◇発動中◇
・開始条件達成者にのみ発生するサブシナリオ。彼女に迫る危機と彼女を蝕む過去の因縁を断ち切れ。
クリア条件:彼女の心を救う。
―――◇―――
ただ出会ってポンポン進むものではなく、彼女の心を開いた上でその心の中に眠る何かを打ち払い彼女を救うイベント。
これは確かに自分たちの要望を通すだけじゃ発生しないな。しかも発生パターンが三つ用意されているあたりエクスゼウスはプレイヤーによる襲撃も最初から視野に入れていたと。
良い気持ちにはなれないが流石である。『NPCを襲ってはいけない』という法律はないからそういう輩が現れるのも想定したイベント発生条件。しかもこれはコヨミと親しくならなければ発生しない為、場合によってはコヨミは死んでいた可能性もある。
残酷ではあるが現実味を浴びているという点ではさすが『剣聖物語』の系譜を継承しているゲームだ。
そしてだ。俺はコヨミの前世にある程度の予想は立っている。
思う通りなら、”彼女の最期”は転生した場合間違いなくトラウマになってもおかしくはない。それが今回コヨミが動けなかった理由だとしたら納得がいくのだ。
「私には・・・前世の記憶があります」
「そう聞いたよ」
「・・・・リリカという名前を覚えていますか?」
「忘れるわけがない」
『リリカ』稀代の才女にして天匠流抜刀術、そして月光真流の未来を担うと呼ばれた二つの流派を修めた女剣士。剣聖ルートにてともに戦う仲間の一人として登場した仲間でありライバル。
剣聖物語終盤。剣聖ルートにて始まった戦争の中、『剣聖ルート』では無残な姿でその面影を残さずに惨殺され、『真剣聖ルート』では俺の腕の中で死んでいった人、それがリリカだ。
邪神復活後のイベントで、彼女は圧倒的な数の邪神が生み出したモンスターから味方軍隊を逃がすために、たった一人前線に残り敵を食い止めた。だが敵の波に飲み込まれ四肢を失い、蹂躙される。駆けつけてなんとか救出するが、その時には既に体はボロボロで、出血もひどく、目も耳も既に潰れていた。
俺がどれだけ急ぎ駆けつけても彼女の死だけは回避することができず、また彼女に前に出るなと説得しても、死んでしまうと言っても彼女は決して自分の意思を曲げることはなかった。
だからといって俺が彼女とともに戦えば本来俺がいる場所が突破されて戦線が崩壊する。そうなれば国は滅び、幼馴染を止めることすら出来なくなってしまう為自分はそこで戦わなければならない。
彼女が死ぬと分かっていてもそれを回避することができないのだ。
逃れられない運命があると身を持って教えられたのだった。それは真剣聖ルートでも変わらない。いや、そのルートの方はまだ救いがあった。死ぬ運命に変わりはなかったのだが、最後に彼女と話ができた。彼女の夢を聞いたのだから。
『私・・・あなたと一緒になりたかった・・・・静かな場所で一緒に・・・過ごしたかったの・・・』
『うん・・・・好きだよ・・・・・一目惚れだったの・・・・・・だから君と同じ場所で戦いたかった・・・・・だから私はここにいるの・・・・・』
『でもよかった・・・・・君に看取られて死ねるなら・・・・よかったな・・・』
『もしまた会えるなら・・・・・どこかの水辺で一緒に釣りとか・・・したいな・・・・』
『・・・・・・うん・・・・・・やくそく・・・・だからね・・・・・・・』
人の死も現実と何ら変わり無い。死ぬときは無慈悲に、そして簡単に死んでしまう。それが戦いである。それを体感させられるのもある意味、剣聖物語が神作と言われている所以だ。
ここまでリアルに人の死を感じることがあるゲームはないだろう。もちろん年齢入力の時点でグロテスク描写などの選択もプレイヤー自身が選ぶので、選択によってはそこまでではない。だが、リアルハードでは全てが現実。血も死体もすべてな。
だからこそ死んでいった友人や仲間のことは全員覚えている。リリカを含めて全員。
「私の前世・・・リリカなんです。察しがいい君ならもう気づいてましたよね?」
「・・・そう・・・だよな・・・」
「知っての通り私は最後の瞬間蹂躙されました。だから私大勢の前に立つとか、囲まれるとかされるの苦手なんです。死んだ時がそうだったから」
「・・・・ごめん」
「どうしてあなたが・・・・泣いてるの?」
我慢の限界だった。あの時のことが生まれ変わった彼女を今でも苦しめている。仲間を守れなかった。いや、ある意味死ぬと知っていて見殺しにしたといっても過言じゃない。
「ごめん・・・守れなかった・・・・あの時俺が無理にでも止めていれば・・・・!!!」
「泣かないでください。あなたは悪くない。それにあなたは止めてくれました。それでも最後に選択したのは私です。あなたの隣に立てるようになりたかったから、貴方と対等でいたかった私のわがままです。だから戦場にいたんです。あなたが悪いわけじゃない」
「わかってる・・・でも俺は・・・っ!!」
「それに、今度は守ってくれたじゃないですか」
「っ!!」
「それに約束まで守ってくれた。一緒に釣りをするって約束。守ってくれました。ありがとう。アール君」
「そんなの・・・!!」
「もう会えないと思ってました。でもこうしてまた会えた。それだけじゃなくて約束まで果たしてくれて、それだけに飽き足らず私を助けてくれた。だからいいんです」
「っっ!!!!!!」
それが限界だった。みっともなく大声で、俺は泣いていた。母親に抱きついて泣く小学生のように、ただただずっと泣いていた。
―――◇―――
「わ・・・・わるい・・・」
「いいえ、可愛いところを見れたので」
「・・・・・・」
「怒りました?」
「・・・別に」
剣聖物語は最早俺のもう一つの人生だと言っても過言じゃない。だから思い出して泣くこともあるんだ。あるったらあるんだ!!
「君のそういうところ、昔から私好きですよ?」
「sふぉyqwfjくぃhf;!?!?!?!」
「うふふ!!君って前もそうでしたけど人に正面から向けられる好意に弱いですよね?」
hsdjqんdhvjkwろgjねwfん;vpうぇtj4おy0えvdんこv!?!?!?!?
一旦落ち着け俺!!!!
深呼吸・・・・スーハー・・・よし。とりあえず落ち着いた。
コヨミはリリカで俺は無事に約束を守れた(コヨミ談)そして俺に前世からの好意を持っている。でも俺にはリークがいる、付き合ってはいないがレイレイもいる。最近はギンと師弟にもなっていると。よし。
「ちょっと首吊ってくる!」
「なぜぇ!!?」
「離してくれ!!俺このままだと優柔不断男に成り下がっちまうんだよぉ!!!」
「彼女さんいるのに女の子侍らせてたんですから。今更ですから気にしちゃダメです!!」
「うがぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!」
クソイケメンどものこと言えねぇじゃねぇかぁぁぁ!!!!!
今更だけどな!!ちくしょうめ!!
裏話、その頃のエクスゼウス
エックス『そろそろ剣聖物語の記憶持ちキャラとかださない?』
社員A『賛成です!!ならリリカ出しましょう!!』
一同『異議なし』
エックス『とりあえずデータは藤宮君のクリアデータを参照に作りましょう。彼の記録が私が知る中で最高のものよ』
アール接触前
エックス『前世の死でトラウマ持ちにしたけど人の話聞かないね』
社員『簡単にハイハイいうキャラじゃなかったですし、いいんじゃないですか?』
エックス『その割に心許した相手には油断する設定だったよね?』
社員『みんな目的だけ優先するからしばらくは動かないでしょうね』
アール接触後
エックス『六時間その場で何もしないで普通待たないでしょ!?』
社員A『さすがアールくん!!こちらの予想の遥か上を平然とやってのける!!』
社員B『そこに痺れる憧れるゥ!!』
社員C『コヨミの警戒心少しだけ薄れましたね』
エックス『でもそう簡単に行くとは思わないことね!』
社員B『とかいいつつ嬉しそうにしてる主任であった』
エックス『あんたモーショントレースの現場に送り込むわよ?』
釣り開始後
エックス『嘘でしょ・・・・こんな方法で超えてくるなんて・・・!!!』
社員C『まぁ前世持ちっていう共通のものがあるし、可能性はなかったわけじゃないですからね。と言うか我らが剣聖だし』
社員B『食事っていう条件もあっさりクリアしちゃったよ。忍耐力の勝利ですな』
社員D『よし、賭けは俺の勝ちですね先輩?』
社員A『しゃーない。晩飯は寿司ご馳走してやるよ』
エックス『あんたたち、絶対にアールくんが作ったもの見て決めたでしょ?』
昼頃
一同『チョロインキタァァァ!!!!』
エックス『こうも簡単に落ちるとは・・・・!!恐るべし剣聖!!』
社員C『あとは自分が剣聖だって打ち明ければ一発ですよ!前世で惚の字でしたし!!』
社員D『襲撃どうします?近くで可能性あるのはNPCですけど』
エックス『こっちからの手出しは無用よ。全て起きるがままに任せましょう』
社員A『あぁ・・・リリカたんが幸せそうで昇天しそう・・・・』
社員B『ウチの娘泣かせたら剣聖といえどただじゃおかねぇかんな!!』
襲撃時
社員A『野郎ぶっ殺してやる!!』
社員D『先輩落ち着いて!!手出ししたら怒られますよ!!?』
社員C『落ち着け!!暴れても仕方ないだろ!!?』
社員B『はなせー!!うちの娘を助けに行くんだァ!!!』
エックス『馬鹿ねあなた達、E!サブシナリオ発動しなさい!条件クリアしてる人は言わなくてもわかるわね?』
社員E『シナリオ開始ィ!!!』
撃破後
一同『Yaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!』
エックス『剣聖様やっちゃって!!あぁ新技!!あぁ・・・あぁ・・・・・・あぁぁああ達ししそう・・・・・・!!!!!!』
社員C『・・・・ふぅ・・・』
社員S『新技のモーショントレース今回はまだ簡単に出来そうで安心です』
社員E『なら剣聖と同じ条件でやる?』
社員A『いけぇ!!!そこだ!!ぶちかませ!!!』
社員B『今回だけはPKしてもデメリット全部なかったことにしてやるから殺してくれぇ!!!!』
アール号泣
エックス『なんで私たちまで泣いてるのよぉ・・・!!!』
社員A『くそぉ・・・剣聖男泣きじゃねぇか・・・・!!!!』
社員S『俺・・・この会社入って良かったぁ・・・!!!!』
社員D『くそ!!これは涙じゃねぇ!!汗なんだ!!心が流す汗なんだ・・・・!!』
社員B『ありがとう・・!!!剣聖物語を愛してくれて・・・・遊んでくれてありがとうアール氏・・!!!』
こんな感じになってました。




