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121:静かな時間

結局あの後大人しく帰りました。決意が固そうで説得は困難と判断したので。

たまにはこんなキャラクターも良いですよね?


実は番外編も更新してます。





「んで、結局大した話はできなかったという訳だ」



「つまんねー」



あの後、特に踏み込んだ話をするわけでもなく、寝ていた面々を起こしてエーテリアまで帰還した。

現在ギルドでテーブルを囲みこれからのことについて話をしているのである。ちなみにつまらん発言はチーザーである。



「チーザーさん。勝手に同行させてもらってそれはダメですよ?」



「でもよー」



声に出ていたチーザーにミーが注意するのだが、突っ伏しながらストローを加えて頬を膨らませるチーザー。あーでもないこーでもないといろいろ言ってはいるが、要約すると強い奴と戦えるかも知れないと意気込んでいたようだ。



「まぁしゃーねぇか。俺ァそろそろ戻るかね。残り4匹のゴブリンもぶっ殺してやりたいし」



「そう言えば魔剣士と重盾ゴブリン倒したのチーザーなんだっけ?」



「お?なんだ剣聖?『俺が全部倒したかったぜ』とか言うつもりかよ?」



挑発するように笑みを浮かべる彼女だが別にそんなことは考えていない。俺のターゲットはあくまで侍ひとりだ。



「いいや別に?イベントだし早い者勝ちだろ。でも侍だけは絶対に譲らん」



「ハッ!侍も俺がぶっ殺してやるから見てろよな!」



実際に戦ったことはないが、マー坊たちが倒せず逃げられた魔剣士と重盾を倒した実力は本物だろう。



「ところで話は変わるんだが、倒したゴブリンの特徴を教えてくれないか?」



「あ?そいつらも知ってんだろ?」



視線の先にはマー坊とレイレイ。確かにそうなのだが、第三者の話も聞いてみたいのだ。実際二人は逃げられたが、チーザーは倒せたんだし。



「まぁいいか。魔剣士は文字通りだ。武器に付与魔術で属性つけて攻撃してくる。炎・氷・雷・風・光・闇、あと自分の強化もしてきやがった」



「重盾は……そうですね。盾がかなりの重量でした。それに何かしらの特殊能力もあったんでしょう。こちらの攻撃が全て吸収されているような感じでした」



「そうそうそれだ!あの野郎の盾にぶちかましたんだけどよ?なんて言うか超低反発枕でも殴ったみたいな気味悪い感じがあったんだよ」



「ちょっと待ちなさいよ紫ミー!!?アタシ達戦った時そんな事なかったわよ!!?」



ほら見ろ。倒した相手と戦った相手じゃ戦い方も特徴も全然違うだろ?おそらくチーザーが戦ったゴブリン達の方が全力で戦った時の状態なんだろう。



となるとマー坊達との戦いは戦力調査の下見、もしくは戯れに来たというところだろうか。

魔剣士は名前のとおり魔法剣士で間違いないみたいだな。攻撃に全振りしたビルドのゴブリンということで間違いなさそうだ。ステータス特化ではなかったが似たようなものだろう。



重盾ゴブリンの盾についてだが……ちょっと気になるな。



「チーザー。ちょい頼みがある」



「なんだ?」



「ちょっとこの手を全力で殴ってみてくれるか?」



「んあ?まぁいいけどよ」



立ち上がりスパーキングのように手を広げて前に出すと、チーザーも意気揚々と立ち上がりシャドーボクシングを始める。



「いくぜぇ?」



「おう」



「オラァ!!!」



「『白月』」



「おおっ!!?」



拳を白月で受け止める。チーザーは俺が思った通りの反応をしてくれた。



「この感覚だぜ!あの盾野郎を攻撃した感覚!うひゃぁ!!スゲェなオイ!」



「盾持ち白月使えたんだな。盾持ちの攻撃でとんでもない威力の攻撃とかなかったか?」



「おぉあったぞ?まさか一撃でHP全損するとは思わんかったぜ!復活スキルなかったら負けてたわ!」



白月と水無月写鏡が使えたってわけか。盾持ちは月光真流が使えたかなりメンドくさい相手だったんだな。



「魔剣士について他になんか不思議に思ったことはなかったか?」



「あー……俺はそんなに考えて戦わねぇからなぁ……ミーはなんかあっか?」



「もう・・・・そうですね。大したことじゃないかもしれませんけど、時折姿が消えたり、声が聞こえる場所と実際に居る場所が違うように感じました。気配察知のスキルを全開にしたので大した問題にはなりませんでしたけど・・・・・・もしかして?」



「多分そうだ。桜華殲滅流だろうな」



魔剣士=桜華殲滅流



重盾=月光真流



で間違いなさそうだ。これがもし逆だったらかなりめんどくさかったんだろうな。



普通に考えればこの組合せでも十分厄介なのだが、魔剣士が月光真流を使えるとこちらの近接攻撃がすべて相手の強化になってしまう。わかったのは二つだけだが、もし『十六夜天雷』なんて使えてみろ。目も当てられない。



そして重盾だが、スキル全開で位置が分かるとは言え人間である以上攻撃するのはプレイヤー自身だ。勝手に攻撃してくれるわけじゃない。ゆえにどうしても視覚と聴覚から情報を得て攻撃する。



こちらの攻撃位置がずらされてしまえば、それを盾で流して出来た隙に隠し持っていた短剣やナイフでグサリとやられればダメージは大きい。それが小さなダメージでも繰り返されれば精神的疲労は大きくなる。



ある意味この組み合わせで良かったと言えるだろう。それでもめんどくさい相手であることは変わりないはずだ。それを二匹同時に倒したことは素直に凄いと思う。



となると残りのゴブリンも間違いなく何かしらの流派を使うだろう。と言うかここまできて使わないわけがない。発見された6匹中4匹が使うんだし。



しかも今の話からおそらく侍もまだ隠している技や実力があると見て間違いない。面白くなってきたじゃないか……!!!



「クックック……次戦う時が楽しみだ」



「気が合うじゃねーか剣聖!あいつら戦ってるとおもしれぇんだよな!!」



「……なんかバカ師匠とバカ姉が混ざり合って最悪に見える」



いつかお前もこの位置まで来る事になるんだよ。





















現実世界では一日置いて三日後、現在時刻は朝の4時。現実では夜中なのでプレイヤーの数は少ない。



ルークも寝ているようでログインはしていない。久しぶりの完全なるソロである。ギンは今日修行日なので街にいる。



ギルファーはこの前の事がそれなりに効いているのか傷心旅行中らしい。人様に迷惑を掛けないといいんだけど。



ディアと弥生、卯月はギンのところで留守番だ。なぜか連れて行こうとするとギンの視線が怪しく光った気がしたのだ。



「お、キタキタ…………よっと、思ったより大きいな」



「…………」



「さて次々…………ほい」



「…………」



そういう訳でのんびり釣りをしているわけだがまさかの入れ食い状態である。実際は桜奏呼吸の応用で魚の警戒を少なくして食いつかせているだけなんだけど。



それにしたって随分魚が多くいるのだ。さすが穴場スポット。



「よっと」



「あの……?」



「ん?どうした?」



始めること一時間程度だろうか、ようやく釣り糸を垂らしていた彼女、コヨミが口を開いてくれた。



「どうしてここにいるんですか?」



「いや、釣りをしに来たんだ」



最初に見た時に魚が見えたしここで釣りしたら面白そうだと思ってたんだ。せっかくソロだしたまにはこういう事もしたい。おっとヒットヒット。



「おぉ……カンパチっぽいなコイツ。うまそうだ」



「…………私ここでの釣りはそれなりに自信あったんですけど……隣でそうポンポン釣られると自信なくしますね……」



「祖父ちゃんが漁師でな、釣りとかもよくしてたんだ。あとちょっとズルしてる」



「釣りにズルはありませんよ。それだけ貴方のセンスがいいんでしょうね」



日常生活でも使えてしまう桜奏呼吸はやっぱりチートじみている。人ごみの中とか抜けるときすごく便利である。あと一度しかやったことないが満員電車の中で痴漢締め上げる時も便利だった。



そんなことを考えながら釣りを続けること更に2時間。キャッチ&リリースの精神で釣りを楽しみ、二時間で釣った合計は俺が42匹、コヨミ29匹となかなかの数である。



そのうち手元に残しているのはそれぞれ一匹だけだ。俺は先ほど釣ったまん丸と膨らんでいるカンパチのような魚。刺身にしたらきっとうまいんだろうな。



「それじゃ帰るよ。また今度な」



釣りたて新鮮を捌きたいところではあるが、ここで捌くとせっかく綺麗な水を汚してしまう。洞窟の中に湧き水が湧いてたはずだからそこで捌こうか。あとは探せば枝くらいはあるだろうし炙ったり焼いたりして朝飯にしよう。米のストックあったはずだよな。



「・・・上がっていっていいですよ。台所もお貸しします」



戻る支度をしているとまさかのお誘いがあった。でも流石にこの時間からお邪魔するのは申し訳ない。いや、この場所でこんな朝から釣りしにきた俺も大概だとは思うけどさ?



でもコテージからはかなりの距離がある場所で釣りをしていたし、彼女が出てきたのは釣りを始めてから1時間経過してからだ。多分迷惑はかけていないはず。



「え?いいの?」



「どうせそのつもりだったのでしょう?白々しい」



「いや、外で捌いて朝飯にするつもりだったんだけど」



「…………」



「…………」



「…………」



「…………」



「………………き……来ます?」



「……あ、はい。お邪魔します」















「随分とキレイに捌けるんですね」



「それなりに捌いてきたからな」



ご好意に甘えて台所を借り、釣った魚をとりあえず三枚おろしにする。ついでに彼女が釣った魚もお邪魔したお礼に捌いているのだが、横で見ている彼女がそれを見て感心するように口を開いた。



「それに包丁を使う技術も高いです。力の入れ加減と刃の入れ方も上手です」



「得物がコレだから余計にな」



腰に携えた『真刀:戯』に視線を移す。同じ天匠流を修める者としてはやはり気になってしまうんだろう。



腹骨をすいて、半分に斬った身から血合い骨を取る。あとは皮を引いて刺身サイズに切れば・・・こんなもんだろう。



骨とアラの部分は今度出汁でもとって汁物に使えばいいだろう。ポーチの中に入れとけば腐る心配がないから安心だ。でも袋に分けておかないと魚臭くなりそうだから気を付けよう。



「もう半分は切り身にして焼くとして・・・こっちのはどうする?」



彼女が釣った魚は鯛みたいな魚だし色々と作れそうだ。釣れたてだから刺身が一番美味そうだけど、釣ったの彼女だし。



「半分はお刺身に。もう半分は私のお昼にしますのでそこの青いボックスに入れておいてもらえますか?」



「了解だ」
















朝食から刺身とアラ汁、炊きたての白米とはちょっと豪華すぎる気はするが、これも釣りの醍醐味だ。



「頂きます」



「頂きます」



うん……さすが釣りたて。しかも脂がのって美味い。旬なのだろうか、これは米が進む。



「あ……美味しい……」



アラ汁も好評みたいだ。やっぱり日本人としては味噌が体に染み渡る。俺はともかくコヨミは日本人じゃないけど。いや、こっちだと俺も日本人じゃないか。



「…………ふふ……そう言えば久しぶりかもしれませんね」



「ん?」



コヨミは懐かしむように顔を緩めて笑みを浮かべていた。美人はこうすると更に綺麗に見えるから目の保養だよなぁ。



「いえ、誰かとこうして食事をするのは久しぶりでしたので」



「そんなに長い時間一人で?」



「私はそれなりに長寿ですから。ハーフエルフですし」



「ハーフエルフ?」



「そう言えば話していませんでしたね。私、ハーフエルフなんです」



ハーフエルフといえばファンタジーでは外せない種族だろう。エルフの血とエルフ以外の血を持って生まれた混血種。大体エルフと人間のハーフがよくある組み合わせだけど、最近では神とのハーフとかいるらしい。



このゲーム。神は今のところNPCとしては出てないから多分ないとは思うけど。



「ハーフエルフと会うのは初めてですか?」



「ハーフはおろかエルフと会うのも初めてだけど、うん。美人が多いとは聞いてたけどその通りだったんだな」



少なくともこのゲームではまだあったことはない。



「お世辞が上手ですね」



「いやいや、本心からだよ。こういう時お世辞は言えない人間なんでね」



「私を口説いてると前に一緒にいた彼女さんに刺されますよ?」



「…………今のはなかったことに」



「えぇ、美味しい食事に免じて」
















「こう……ですか?」



「そうそう、いい感じだ」



食事を終えて再びのんびりと釣りを再開。桜奏呼吸の基礎を教えようかと話すと乗り気だったので釣りをしながらコツを教えている。



イメージとしては体全体で呼吸する感じだ。肺と腹はもちろん、体全身を一つの呼吸器官のように動かして全身で呼吸する。



あとはそこに存在をのせるか消すかすれば基礎としては十分だ。この先は呼吸で強めた気配をさらに強くしたり、別のものに意識を向けさせたりするようにするのが次の段階である。



コヨミはセンスがあるようで少し教えるとあっさりとできるようになった。



「なるほど……これは便利ですね」



「俺としてはこんなにもあっさりと出来るようになられると複雑な気持ち……」



「教え方が上手なんですよ。そういうこと向いてますよ?」



美人に褒められるとやっぱり気が晴れるあたり俺も十分ちょろいよな……。













「これで私の勝ちです」



「解せぬ」



一時間勝負で釣り勝負をしていたのだが完敗である。気配の動かし方を少し教えただけでここまで変わるとは思わなかった。



「ではお昼ご飯もお願いしましょうか」



「え?なにそれ聞いてない」



「えぇ、言ってませんでしたから」



「ずるくない?と言うか昨日は話しかけるなオーラ出してたのに随分フレンドリー過ぎないか?」



「ふふ、私自分で言うのは変な話ですけど結構チョロいんです」



「えぇ……」



「下心のない方とこうして話をしたのは久しぶりでしたから」



「俺下心バリバリだけど?」



「でもついさっきまでは考えてませんでしたよね?」



「……読心術?」



「いえ、私への感情とか考えとかに敏感なんですよ」



「…………」



昼飯は煮付けにした。














「なぁ、いくらなんでもチョロ過ぎないか?」



「そうですね。でも久しぶりに誰かと一緒に食事したのが久しぶりでしたから……ヒットです」



「……魚に好かれてんのかよ……ヒット」



うん。この女もといコヨミはリークと同類だ。読心術完備で警戒心が高いくせに一度安心したら心を許す感じ。



すごく知ってる。しかも顔がいいから男なら知らないうちに鼻が伸びてしまうだろう。実際それくらい美人だし。ゆえに警戒心とか、読心術も気づけば身に付けていて身の護り方を知ってる。



護身術代わりに天匠流を学び始めたけど、センスが良かったから気が付けば師範代、そして愛弟子になっていた感じだろう。だけどその後入門した野郎の下心満載の視線とかに嫌気がさして隠居生活してるってところじゃないだろうか。



「半分あたりです」



「……顔に出てたか?」



「少しだけ目に出てましたよ?」



読心術じゃなくて読眼術かよ……聞いたことねーよ。



「実はわかってないとか言わない?」



「下心満載の目線って気持ち悪かったんですよね」



本気で読眼術じゃねーか。










チョロイン候補

たまにはチョロイン出ても良いですよね。

勿論無条件チョロインでは無いですよ?

それから設定集更新予定ありです。



修羅場?それとも事件?

どっちにしても何かあるもよう

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