色々 に
朝食後、仏間に行くと仏壇が開けられていた。
俺たちが食べている間に婆ちゃんが開けていたようだ。
「え?お仏壇?」
「あぁ、やっぱりここがお仏壇だったんですね」
「このお写真は朱鷺様のご両親でしょうか?」
「お綺麗な方ですね」
四君子が興味深そうに眺めている。
「ご挨拶させていただきましょう」
清音がそう言って仏壇の前に正座し手を合わせると、四君子と悠貴もそれに倣う。
俺もその後ろで正座し、静かに手を合わせる。
父さんも母さんも、もうここにはいないことを知っている。
けれど、こうしていると感じることができる。
今、ここにいるのは竜樹や美奈子と同じように俺にとって大切な友人たち。
護りたい人たち。
いや、護るべき人たち。
絶対に護る。
視線を感じ目を開けるとみんなが俺を見ていた。
「なに?」
戸惑いつつ問うと、
「朱鷺様はお父様に似ている?」
「お母様にも似ているんじゃないかな?」
「髪や目の色はお母様と同じですよね」
「むしろ、両方のいいとこ取り…というか、最高の混じり具合?」
仏壇に飾ってある両親の写真と俺を見比べていたようだ。
「子供の頃は遠於子おばさんそっくりだったぞ」
そこへ竜樹が縁から上がりこんできた。
「おはよう、早いな」
「おう、おはよ。イベント中だから早く来たわ」
イベント扱いかよ。
「朱鷺様のお母様のお名前はとおこ様とおっしゃるのですね」
「綺麗で可愛い人だったぞ。こいつが子供の頃はどっちかって言うとおばさんに似てた。二次性徴始まった頃からおじさんに似てきていい感じに混じった感じ?」
「お父様もすごくお綺麗な方ですよね」
「お爺様もお婆様も素敵ですし」
「若い頃の写真見せてもらったけど、師範はものっそいイケメンだった。婆ちゃんはすっげー美人。おじさんは婆ちゃん似だと思う」
「学園にいらっしゃったらランキングトップ間違いなしですよ」
そういえば、
「父さん、高校生の時に学園の生徒に告白されたって言ってた気がする…」
その流れで、
「婆ちゃんも若い頃に告白されて、断ったら強要されたって言ってたな。で、あわやって時に爺ちゃんに助けられて、それがきっかけで付き合うことになって結婚したらしい」
って学園に入る時に爺ちゃんから気をつけろって言われたなぁ。
爺ちゃんも若い頃に学園の生徒にストーキングされたらしい。
「朱鷺さんが学園で人気があるのは遺伝かもしれませんね」
笑いをこらえながらしみじみ言わないで欲しい。
「悠貴、さっきからずっと黙って写真見てるけどどうしたんだ?」
難しい顔をしてずっと母さんの写真を見ている。
「いや…、なんか見覚えがあるような気がするんだ。会って…はいないはずなんだが…」
「それ、私も感じたんですよね。お会いしたことはないのですが」
あらためて、みんなが母さんの写真を見る。
俺はまったく似てるとは思わないけれど、たぶん…
「…あぁ!桜庭くんに似てるんだ!」
菊地が言うように、桜庭桃矢に似ていると思っているのだろう。
「あいつが母親似なら似ている…かもしれない。桜庭の母親と俺の母親は双子だから」
そう言った瞬間、
『えぇぇぇぇぇぇっ!?』
大合唱。
悠貴や清音まで大声出すとは思わなかった。
「俺も最近知ったんだが、桜庭と俺は従兄弟のようだ」
6人とも絶句してる。
なんとなく、申し訳ない気分になった。
「ふぅん、桜庭とかっていうヤツ、似てるんだ」
「俺から見ると全然似てないと思うんだが…」
「まぁ、他人が見て似てても身内が見ると似てないってことはよくあることだしな」
「そういうもんか?」
「そういうもんだ」
とりあえず、フリーズしている6人は放置。
「美奈子は一緒じゃなかったんだな」
「あぁ、なんか買い物してから来るって言ってたぞ。お前何か頼んだんじゃねぇの?」
「いや別になにも頼んでは……ぁ…」
「ん?」
「今朝、何か護りになるようなもの作りたいって相談した」
「あー、だからか。朝、いきなり来て母さんになんか色々聞いてた。お守りがどうのアミュなんとかがどうのって」
「おばさん、多趣味だからな」
「おかげで我が家はおかんアートで溢れてるよ」
「変なもの作らされるのだけは勘弁して欲しい」
「そうだな……」
クローゼットの片隅の箱の中に存在するガキの頃に巻き込まれて作らされた数々のブツ。
あの中の住人が増えないことを祈っておこう。
なんとかフリーズも溶けたようで、場を改めて…といってもテーブル出してお茶の準備をしただけだが、話し合いをすることに。
昨夜と同じく2つのテーブルを並べ、向かい側に四君子、俺の左、隣のテーブルに清音、右側に何故か悠貴が陣取り、竜樹は悠貴の斜向かいに着く。
「色々聞きたいこともあるだろうが、先に今日の予定を決めておこう。どうする?俺としては今日はおとなしく養生したほうがいいと思っている」
「俺もそう思うぞ。無理に動かすと回復が遅れるからな」
俺と竜樹がそう言うと、四君子は神妙に頷いた。
「見た感じ熱は持っていないようだし、今日はここで軽いストレッチくらいにしておこう。痛みがひどいようだったら無理はするな」
「血行をよくしたほうがいいぞ。今晩は面倒でも風呂に入ったほうがいい。温めの湯加減でゆっくり浸かるといいぞ」
『わかりました』
「よし。四君子はそれでいいとして、二人はどうする?」
風紀の二人に問うと、
「俺達はそろそろ帰るよ」
「そうですね、トラブルがあったらしく委員からいくつか連絡が来てますし」
スマホを確認しながらそう返してきた。
「トラブル?」
何かあったのか?
「朱鷺さんの手を煩わせるほどでもありません」
「些細なことで委員だけでなんとかなったようだが、一応報告は聞かなければな」
「考査が終わって気が緩んだからでしょう。よくあることです」
「俺らが留守だったからってのもあるがな」
「そうか…、忙しいのに来てくれてありがとうな」
「私達が勝手に来ただけですから朱鷺さんは気にしないでください」
そうは言うけど…
「ほら、朱鷺さんも眉間にシワ。悠貴みたいなクレバスになったら大変ですよ」
清音がクスクス笑いながら俺の眉間をツンと突いた。
「俺みたいってどういうことだ?」
眉間にクレバス。
そういうことだよ。
「学園行きのバスは何時のがありますか?」
「ちょっと待ってろ、今時刻表確認する」
休日運行のはあまり覚えてないんだよな。
スマホで確認。
「あぁ、20分後にあるな」
「その後はあるか?」
「休日は運行数が少ないから…次はその一時間後だ」
「慌ただしいのも嫌ですね。それに、朱鷺さんには聞きたいこともありますし、次のバスにしませんか?場合によってはさらに次」
「そうだな、委員にそう連絡しておいてくれ」
「わかりました」
清音が連絡するため席を外した。
「さて、説明してもらおうか?」
悠貴が俺に据わった目を向けてくる。
四君子もコクコクと頷いている。
「さぁ、とっとと吐け」
これって尋問?
そっと竜樹に視線を向ける。
「がんばれ?」
応援されてしまった。
「朱鷺?」
悠貴が囁くように呼んだ。
若干甘めの声が余計に怖い。
「なに?俺が怖いの?」
そっと頬に右手で触れ、顔を寄せてきた。
『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
四君子がピンクの悲鳴を上げ、
「へぇ…」
竜樹の目が据わる。
何これ四面楚歌!?
「……何をやってるんです?」
戻ってきた清音がベリッとばかりに悠貴を剥がしてくれた。
助かった……
「さぁ、朱鷺さん、詳しくお話していただきましょう」
わけではなかったようだ………




