夏季休暇に向けて に 原因
「なぁ」
とりあえず、今日中に片付けなきゃいけない分を消化していたら、ソファで暇を持て余している深山が話しかけてきた。
暇なら帰ればいいのに。
「なんだよ」
「…いつもこんな感じなのか?」
「は?」
「いや、そこの4人…」
4人?
四君子のことか?
四君子はキャッキャウフフと仕事をしている。
「仲良く仕事してるな」
うん、菊地が加わって華やかさが増したし、仕事も捗ってていいんじゃないか?
「そうじゃない。お前とに距離感だ」
「距離感?」
「あぁ。普通、親衛隊とはもう少し距離を取るだろう?」
「そうなのか?うちはこんな感じだぞ。むしろどうせならもっと近くても…」
『これが精一杯です!』
「恐れ多くて無理です!」
「これ以上お側に…あ…想像しただけで鼻血が…」
「光栄に存じますが、私の心臓が保ちません…」
「僕、これで十分幸せ…」
これだからなぁ。
友人としての距離感すらダメなんだよ。
…てことは、俺、この学校で友人無しってことか?!
思わず机に突っ伏してしまった。
「おい!大丈夫か?!」
『朱鷺様?!』
「朱鷺さん?!」
慌てて駆け寄ってくれるその優しさが嬉しい。
でも、友人じゃない…
「ともだちがほしい…」
「はぁ?何言ってんだお前?」
「あぁ、なるほど、そういうことですか」
深山が呆れたように言い、大島が納得したように頷いた。
「これでも私たちは朱鷺さんの友人のつもりですよ」
「でも距離感…」
「親衛隊は朱鷺様が好きすぎて近寄ったら動悸息切れ目眩がして大惨事になります」
なんだそれは!
俺は心臓病の原因か?!
「私はもっと距離を詰めたいのですが、少々宜しくないことになりそうなので自重しております」
よろしくないこと…
うん、距離感て大事だよね。
「俺は友人になった覚えはない」
別に深山はいらないから。
「その目!お前今いらないって思ったな!」
えー、だってお前友人じゃないって自分で言ったしー。
突っ伏したまま上目遣いに深山を見上げたら、
「な、な、なんだ!その顔は!」
挙動不審になった。
「朱鷺さん、委員長にそんな可愛い拗ねたお顔を見せる必要はありませんよ」
大島がさりげなく俺の視線を遮る。
「その言い草はなんだ」
「だって、委員長は勇者側でしょう?魔王軍である私たちとは敵対していますし」
「まだそれを引っ張るのかよ」
「実際、桜庭くんは朱鷺さんのことをマガイモノと言って浄化するだのなんだのと訳のわからないわからないことを言っているじゃありませんか」
「…まぁ、確かに…」
「今流行りの厨二病とかいうものでしょうか?お早い完治をお祈り申し上げます」
「厨二病…」
「おや、違うのですか?」
「違う」
「言動がアレですのに?…もしやとは思いましたが…委員長にも感染してしまっていたのですね。接触感染でしょうか?空気感染でしょうか?厨二病、恐ろしい病です」
空気感染だったらまずいので換気しますね〜と大島が窓に向かうが、
「俺は厨二病じゃねぇ!てか感染するか!ど阿呆!」
深山が止めた。
こいつらの関係もよくわからない。
いつもは大島が一歩引いてたように感じたんだが…
「冗談はともかくとして」
「冗談って…まぁいい」
「ずっとお聞きしたかったんですよね」
「何をだ?」
「あなた方の言うマガイモノとはなんですか?」
ストレートだな。
「ニュアンスが紛い物とは違うように感じるんですよね」
てか、俺のことあれこれ調べてるからソレについてもそこそこ知ってるはずだが?
大島を見ると、その視線に気がついて俺をチラッと見て微笑んだ。
はい、知ってて聞いてるんですね。
わかりました。
「僕らも知りたいです」
「朱鷺様のことをマガイモノなどと得体の知れないもののように呼ぶなんて許せません」
「まるで不安を煽る扇動のように思えます」
「意味が分からないからみんな不安がってます」
四君子も口々に言っている。
「俺もよくはわからん」
深山は溜息を一つ吐いた。
「モモが言うには、魔と害悪を振り撒くもので魔害者、悪いモノはそいつが振り撒いたモノだそうだ」
「なんですかそれ?」
「知らん。その悪いモノに憑かれるとどうも攻撃的になるらしい。モモの転校原因がそれらしいぞ」
そう言って色々話してくれた。
なるほどね。
そういうことか。
しかし、魔害者ねぇ。
…中途半端な知識ってことか……
「やっぱり厨二病…」
「かなり重症みたいだね」
「襲われたのは同情しますが…今の状況を鑑みますと原因は桜庭くんにあるような気がします」
「厨二病末期みたいだし、僕も原因は桜庭くんだと思う」
原因はそうだろうな。
「モモは被害者だ。原因はその友人だろう?婚約者を蔑ろにしたんだから」
「でも、今の状況にも通じますよね。委員長様はともかくとして、他の皆様は仕事を蔑ろにされていますし」
「だから会長である朱鷺様がマガイモノ?」
「なんだか短絡的ですよね」
「原因は桜庭くんで、要因が役員の方々ということでしょうか」
根本原因は桜庭だ。
「モモは被害者だ」
「私たちにとっては桜庭くんは加害者側です。彼の所為で生徒会業務は滞り、朱鷺さんが過労で倒れました。そして役員を侍らせることで余計な軋轢を生み出しています」
「それはモモの所為じゃないだろう!あいつらが勝手にやっていることだ!」
「それは違います。桜庭くんは拒むことなく彼らを侍らせています。彼もこの学園の状況はわかっていますよね?マガイモノだのなんだのと言っていますが荒れているのは承知しているのでしょう?委員長、あなたも本当はわかっているはずです」
大島にそう言われて深山は黙り込んだ。
葛藤があるのだろう。
「だが…モモは被害者だ…」
その答えで大島は溜息を吐き首を振る。
「そこまで彼に魅了されましたか…」
「ここまで抗えているだけ深山は凄いよ」
「そう…なのですか?」
「あぁ」
桜庭が掲げるものは正義。
真っ当な者なら正義の御旗は力強く輝いて見えるだろう。
だが、立場が違えば変わってくる。
俺は正義ほどあやふやなものはないと思っている。




