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俺が頑張らなきゃ! said桜庭桃矢

目を覚ますと見慣れた綾彦の部屋の寝室にいるのがわかる。

俺、あのまま寝ちゃったのか。


カーテンが遮れ切れなかった光で明るくなっている。


ゆっくりと体を起こす。


「喉、乾いたな…」


ペタリと裸足を床につける。

キレイに磨かれたフローリング。

スリッパがないからそのまま歩く。

ドアに手をかけようとしたら、カチャリとドアノブが動いた。

内開きだから慌てて避けると、


「モモ!起きて大丈夫ですか?!」


俺に気がついた綾彦が俺に気づき抱きしめてきた。


「ちょ、綾彦、苦しいよ」


心配かけたみたいだな。

でも、心配してもらえるのは嬉しい。



リビングに行くと蒼太と碧がいた。


『モモちゃん!』


2人して抱きついてきた。

いきなり抱きつくなって言ってるのに仕方ないなぁ。


「夕食も食べず今まで寝ていたからお腹が空いているでしょう?食堂のデリバリーを頼んできますから少し待ってくださいね」


綾彦はそう言うとスマホを持って移動した。


俺は双子をくっつけたままソファで待つことにした。


2人は俺のこと死ぬほど心配したらしい。

嬉しいよね。


そんな感じで過ごしていると、剛志と俊輔が来た。


デリバリーも届き、詳しい話は食べてからってことになった。


食べ終わり頃、悠貴も来てくれた。


俺は話し出した。



俺の母さんは神楽舞を継承する家の出で、父さんと大恋愛の末に結婚し、俺が生まれた。

本当は母さんが継承するはずだったんだけど、母さんの双子の姉がそれを卑怯な手で掠め取ったんだ。

母さんは抗議をしたらしいんだけど、お姉さんに籠絡された後援者が認めなかったんだって。

悲しみに打ちひしがれていた母さんを慰め救ってくれたのが父さん。

父さんはお姉さんの婚約者だったんだけど、そんな卑怯者とは結婚できない!って婚約を破棄。

母さんと結ばれたんだ。

お姉さんはそのあとヤケになったのか他の人と駆け落ちして消息不明らしい。

家を出たお姉さんは神楽舞をする巫師であることを辞めずに出て行っちゃったから、それから何年も神楽舞ができなかった。

母さんはそれが悲しかったって言ってた。

神楽舞は世の中を浄化して平安を祈る大切な儀式だからすごく心配だったんだって。


俺が生まれて、その報告に俺を連れて母さんは一度実家に、本家に帰ったんだ。

酷い有様だったって。

実家のある地域の様子が見た目は変わらないのに悪いモノがそこかしこにあって気持ち悪くて、実家は門がくぐれないくらい悪いものが満ちていて、すごく辛かった。

どうにかしなければって思って自分が神楽を舞うと言ったら、母と、その時来ていた筆頭の後援者に叩き出されたって言ってた。

その時に呪詛を受けて母さんは二度と神楽舞ができなくなった。


だから母さんは俺に託したんだ。


お金に、利権に絡め取られ堕落した本家ではもうダメだ。

大切な儀式など行えない。

むしろ悪いモノを広げてしまうことになる。

本家はマガイモノになってしまった。


託せるのはもう俺しかいない。


俺は3歳の頃から神楽舞を教わった。

舞うことはできなくても型を教えることはできるからと、遊びに交えて母さんは俺に教えてくれた。

父さんが、こっそり撮られたもので画質が悪かったけど、動画を手に入れてくれた。

母さんのお姉さんが舞っているものだったけど、俺はそれを見て歌と舞を覚えたんだ。

母さんはとても悔しそうで悲しそうだったけど、仕方ないって言ってた。

そんな母さんを見て、俺はすっごく頑張った。


7歳の夏、俺のお披露目が行われた。

本家でマガイモノの神楽舞が奉納されるから、それを打ち消さないといけないって言って急いで準備されたんだ。

一度に人はたくさん呼べないからって何回かに分けてお客さんを招待した。

その時のみんなと出会ったんだ。


俺は母さんの代わりにマガイモノと戦わなきゃならない。

マガイモノを浄化して、この学園を、みんなを助けてあげなきゃいけないんだ!




「そのために、みんなにも手伝ってもらいたいんだ」


そう言ってみんなを見た。

みんなは真剣な顔で俺を見ていた。


けど…


「具体的にどうしたらいいのかがわからない。あのマガイモノ、会長だっけ、あいつ、すっげー強い。ただ立ってただけなのに、せっかく俺が浄化したところが嫌なモノ、悪いモノに浸食されていくんだ。俺が毎日通って歌ってキレイにしたのに、あっという間だった。今の俺じゃ勝てない!」


悔しくて涙が出る。


「モモ、泣かないでください」


蒼太と代わって隣に座っていた綾彦が抱きしめてくれた。


「俺、母さんに相談してみる。母さんならきっといい案を出してくれると思うんだ」


俺がそう言うと、


「モモちゃん、お母さん、いるの?」


いきなりそんなことを言われた。


「いるに決まってるだろ?いなかったら俺生まれてない」

「いやそうじゃなくて、僕、前に亡くなったって聞いたけど…」

「なんでそんな酷いこと言うんだよ!俺の母さんは生きてる!健在だ!」

「そうだよ蒼太、モモちゃんに謝って!」

「え?あ…う、うん。ごめんね、僕の聞き間違いだった…のかな…?あれ?どうして僕そんなこと言ったんだろ…」

「酷いこと言う蒼太なんて嫌いになるよ」

「うん…ごめんね…モモちゃん…」

「すぐに謝ってくれたから許してあげる」

「うん、ありがとう」


蒼太はなんであんな酷いこと言ったんだ?


…まさか?!


時々親衛隊と会ってるって綾彦が怒ってた。

だから悪いモノが憑いたのかもしれない。


「蒼太、もう親衛隊と会っちゃダメだよ。それ以上悪いモノを取り込んじゃダメだ。ちゃんと俺のそばにいて。そうしたら蒼太は良くなるよ」

「う、うん。ごめんねモモちゃん、気をつけるよ」


蒼太は笑ってそう言ってくれた。


俺のそばにいれば浄化できるからね。


けど、会長はダメだ。


あいつは何とかして学園から追い出して、浄化しなきゃいけない。


「俺、頑張ってみんなを守ってあげるからね!」


あんなマガイモノに好き勝手されてなるもんか!



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