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ちょっとした事件 飛梅side

「私は一度風紀に寄ってから向かいますね」


そう言われて風紀に向かった大島様と一旦別れて私たちは朱鷺様と屋代池へ向かいました。


キリッとされておられる朱鷺様も素敵ですが、今の柔らかな雰囲気の朱鷺様はある意味目の毒です。

いえ、眼福なのですけれど。


今ランキング投票が行われたら多分きっと絶対抱きたいランキングでも上位に入りそうです。

朱鷺様にこんな面があるなんて…と驚きました。

大島様は、


「朱鷺さんはなれない環境でいつも気を張っていたんです。本来の彼はとてもフレンドリーなんですよ」


そう言って困ったように微笑まれました。


「クラス内では本来の自分で過ごされているようですが、外からの視線があると気を張ってしまわれるんです」


大島様の朱鷺様情報は私たち親衛隊の情報よりも詳しくてちょっと怖いです。

もしかしてストーか…いやいや、そんなはずがありません…よね?


あぁでも、いただいた2枚のお写真は本当に宝物です。

朱鷺様は許可を取ってからならいくらでも撮っていいと仰ってくださいました。

隊の中で撮影が上手い人を集めて撮影部隊を作るのもいいかもしれません。

朱鷺様写真集とか…思いついた私って天才か!

是非とも作らなければ!


つい鼻息が荒くなってしまいました。

こんなところを朱鷺様に見せられません。

朱鷺様…横顔も麗しい……目に焼き付けましょう。


朱鷺様に見惚れつつ…あぁ本当にお美しい…そんな事を考えていたらいつの間にか寮裏まで来ていました。


はい、立ち止まっていた伽音君の背中にぶつかって気がつきました。

鼻が痛いです。


「どうしたの?」


3人が訝しげに眉をひそめて立ち止まっていたのです。


「言い争うような声が聞こえるんです」


確かに林の中から声が聞こえてきます。


「僕が様子を見てきます。伽音は大島様に連絡して。真人は朱鷺様の側に」


宏太君は的確に指示を出します。

こんな時に頼りになるのが宏太君です。

伽音君は頷くと大島様と連絡を取るため少し離れていきます。


「朱鷺様はここを動かないでいてください」


そう言って駆け出そうとした宏太君の腕を朱鷺様がお掴みになられました。


「いや、俺も行こう。竹内だけだと巻き込まれるかもしれない」


そう仰りさっさと向かわれます。


「でも!朱鷺様が!」

「俺は大丈夫だ。むしろお前らの方が心配」


一歩のリーチが大きい…半分がおみ足のような気がします(気のせい)…朱鷺様の後を私と宏太君も小走りでついて行きました。



整備された林の中は明るく、それなりに見通せます。

声のする方向へ小道を外れ少し入ると数人の人影が見えました。


「おい!そこで何をしている!」


朱鷺様はいきなり大きな声をあげられそちらへ駆け出されました。


慌てて追いかける私たちの目の前で、男が1人、中で舞いました。


いや、ほんと、何が起きたかよくわからない。

座っているか屈んでいるかしていた男の腕を朱鷺様がお掴みになられたところまでは確認できたのですが、次の瞬間、その人がクルンと回って背中から地面に落ちたんです。


静寂が訪れました。


その中で朱鷺様だけが動かれます。


「大丈夫か?」


そう仰ってお手を貸し、支えるようにして立ち上がらせたのは、半裸に剥かれた綺麗な少年でした。

ゲス共が、レイプしようとしていたようです。


朱鷺様は少年の乱された服を出来るだけ整えると、彼を背後に庇いゲス共に対峙しました。

そこを代われ!と庇われる彼に対し一瞬でも思ったことは内緒です。


「な、なんだ、よく見たら会長様じゃねぇか」

「邪魔すんじゃねぇよ」

「こっちにはお取り巻きの親衛隊もいるぜ」

「どうせあんたらもいいことヤりにきたんだろう?」

「それとも俺らとヤりたいのか」


ゲス共は全部で5人。

戸惑いは一瞬のことで、すぐ持ち直すと私たちに絡んできました。


「竹内、飛梅、こっちに来い」


そのお声に少し遅れ、2人が私たちに掴みかかろうとしますが、声と同時(竹内の“た”の時点)に動いた私たちの方が素早く、その手を難なく避けて朱鷺様の側に行きました。

朱鷺様のお声に対する瞬発力は誰にも負けません。


「この子を頼む」


朱鷺様は少年を私たちにお預けになり、私たちの前に立たれました。

なんの構もお取りにならず凛と立たれるそのお姿は頼もしく、とてもお綺麗です。


「朱鷺様…(凛々しくて素敵)」


思わず声が漏れました。

すると朱鷺様は少しこちらに視線を流され(色っぽい)、


「大丈夫、すぐに終わらせる」


ニヤリと不敵な笑み(かっこいい)を浮かべられました。

その笑みに私たちはなんの根拠もないのに安堵します。


でも…


「へぇ、会長様にお相手していただけるなんてなー」

「光悦至極って言うんだっけか?」

「抱かれたいトップらしいけど、抱き心地はどうだろう」

「お綺麗な顔してるし、あの細腰だから具合良さそうじゃね?」

「ネコは初体験だったりして」

「ぶち込んでヒィヒィ言わせてぇよ」

「証拠残しときゃいつでも呼び出せるぜ」


気持ち悪くニヤニヤしながら朱鷺様を見るんじゃない!

その視線で朱鷺様が穢れてしまう!

それに“光悦”じゃなくて“恐悦”です!


宏太君も同じように思ったらしく、ゲス共を睨みつけています。


まったく、稀少な朱鷺様が減ったらどう落とし前をつけてくれるんですか!


などと憤っているうちに事態は動きました。


朱鷺様が一歩踏み出されるを合図にゲス共は互いに合図を送り、朱鷺様を囲みます。


それからはあっという間。


朱鷺様はゲス共をちぎっては投げ、ちぎっては投げ…では無粋ですね。

まるで舞うように…そうですね、この形容がぴったりです。


朱鷺様は襲いかかるゲス共をまるで舞うように鮮やかに(あで)やかにお倒しになられました。

武道に明るくない私では表現のしようがありませんが、流れるような動きがとても洗練されていて美しいのはわかりました。


ゲス共は地に伏せ呻き声を上げ、その中央で婉然とした笑みを浮かべられ佇まれる朱鷺様は女おぅ…じゃなくて帝王のようでした。



程なくして伽音君が大島様と深山様、そして風紀の腕章を付けた生徒3人をお連れしてやってきました。


「いったいこれはどう言うことだ?」


詰め寄る深山様に朱鷺様が経緯を説明されます。


「なるほど、わかった。で、これをやったのがお前か?」

「あぁ、襲いかかってきたから防衛した」

「お前、強かったんだな」

「嗜み程度だ」

「全部急所一撃っぽいけど?」

「嗜みだ」

「…まぁいい。保護したのはそいつか?」


深山様がこっちを見ました。


「おい、クラスと名前は?」


私たちに支えられている少年は怯えたように俯き震えました。


「深山、凄むな。この子は被害者だ」


朱鷺様が庇うように間にお入りになられます。


「俺と同じクラスの菊地…確か孝太郎だったかな?」


朱鷺様のそのお言葉に少年、菊地君は弾かれたように顔を上げました。


「僕の名前…」

「そりゃクラスメイトだし、一応全員の名前は覚えてるつもりだ」

「会長様…」

「あー、俺、肩書きで呼ばれるの嫌いだから名前で頼むわ。同級生だしできれば呼び捨てで」

「え、でも」

「でももへったくれもない、俺がそうしろって言ってるんだからそうしろ。敬語もなしな」

「あ、うん。えと、楡崎くん、助けてくれてありがとう」

「どういたしまして。未遂でよかったよ」

「でも、敬語もなしでいいの?」

「同級だしね。本当は親衛隊にも様も敬語もやめて欲しいんだが」

『ダメです!』

「これだから」


菊地君はクスクス笑いました。

笑えるなら大丈夫ですね。


「菊地、とりあえず寮の医務室で治療してもらえ。明日の放課後でいい、事情聴取に協力してくれるか?」


深山様がタイミングを見て話しかけてきました。

空気が読めるできる男ですね、流石です。


「はい、明日の放課後にお伺いします」

「とりあえずこいつらに送らせる」


え?

私たちですか?!


「はい、よろしくお願いします」


菊池君も素直に了承しないでください!


「お前らしかいないから仕方ねぇだろ」


いつの間にかゲス共は風紀委員の皆様方の手で連行されたようです。


前言撤回!

深山様は空気の読めない並以下のナマモノです。


「それで、お前らはどうするんだ?」


不敬になりそうで言葉にできない不満を視線に乗せ、ジィーっと見つめる私たちを華麗にスルーされ、深山様は朱鷺様にお尋ねになりました。


「気は削がれたけど様子も見たいし、屋代池まで行くつもりだ」

「ん?…池へ行くのか?」


深山様は少し考えるそぶりを見せましたが、


「よし、俺も付き合う」


一緒に行くと仰いました。


朱鷺様は不思議そうに深山様を見ておられましたが、


「ま、いいか」


同行を受け入れられました。


本来なら私たちではなく深山様が菊地君を送って行くべきでしょう!


「おやおや、蘭竹梅君、菊地君が困ってますよ」


なんということでしょう。

大島様が私たちを一絡げにしてしまわれました!


「今日のところは譲ってください。お詫びにもう一枚秘蔵の写真をあげますよ」


そう言ってガルルルルッと敵意剥き出しで深山様を睨んでいる私たちにスマホをかざされます。


『!!!!!!?』


そこには…

先程いただいた転寝(うたたね)のお写真の続きでしょうか、今まさに目を覚まされたばかりのような半覚醒状態の色気ダダ漏れ…ではなく、無防備なお顔をされている朱鷺様が写っておられたのです!


あ、まずい、鼻血が……


朱鷺様が呆れたようなお顔でこちらを見ておられます。


「ふふふ…、菊地君を送って行っていただけますね?」

『はい!よろこんで!!』


あ、苦笑を浮かべられました。


「居酒屋かよ」


と小さなお声が聞こえて来ます。


送っていただいたお写真を胸に、私たちは御三方を見送り菊地君を医務室までお送りしました。


その間に菊地君と打ち解けることができ、Sクラスが親衛隊に入れないという誤解を解き、明日、入隊の手続きをする約束をしました。


クラスでの朱鷺様のご様子がお聞きできる貴重な情報源…もとい、クラスで朱鷺様のフォローができる貴重な隊員確保です。



それにしても、大島様のストーカー疑惑…いえいえ、きっとそれは私の思い過ごしでしょう。


……ですよね?

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