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私の事情 飛梅真人の場合

私が初めて朱鷺様にお会いしたのは昨年のゴールデンウイーク明けのことでした。

その日が初登校だった朱鷺様は校舎内で迷われたらしく、たまたま通りかかった私に職員室までの道をお尋ねになられたのです。


「誰もいなくて困ってたんだ」


そう仰ってはにかむ朱鷺様はとても初々しく、私はとても好ましく思いました。


職員室までお送りすると、朱鷺様は自らが先に名乗り、私に名を問うてくれました。


「飛梅先輩、案内していただきありがとうございます」


頭を下げる動作が洗練されていて、とても美しかったのを覚えています。



それからしばらく後、私たちは図書室で再会しました。

図書委員会に入っていた私を私が褒めたいです。


何度か図書室でお会いし親しく話すようになり、私はだんだんと朱鷺様に惹かれていきました。

私の他にも2人、卒業していった先代の隊長と現隊長の宏太君も朱鷺様に好意を持っていました。

けれど朱鷺様は高等部からの外部生。

学園の風習には馴染めずに苦労しておみえでした。


私たちはそこに危うさを感じたのです。


3人で話し合い、朱鷺様の親衛隊を結成することに決めました。


朱鷺様に提案してみますと驚かれましたが、理由を詳しく説明いたしますとご納得いただけ、私たちに任せてくれると快諾されました。


そうしてできた親衛隊。

朱鷺様は空いた時間をお作りになり、よく私たちのもとに訪れてくださいました。


最初は3人だった我が隊も、1人増え、2人増え、少しづつ大きくなっていきました。

隊員が増えるたび、朱鷺様はわざわざお越しくださり、新規隊員たちと語らってくださいます。

それがとても嬉しくて、隊の結束も固くなっていきました。


朱鷺様が寮生ではなく通学されていると、それも自転車通学だとお聞きした時は、一同たいへん驚きました。

遊びにおいでとお誘いいただけましたが、寮生である私たちは外出もままならず、未だ叶っておりません。



朱鷺様の人気はあっという間に上り詰め、遂にはランキングトップに、次期会長に決まりました。

そうなると一気に増えるのが入隊希望者です。

有象無象が増えれば隊の規律も乱れてきます。

それを懸念し、私たち幹部は入隊希望者と面接することにしました。

その話を耳にされた朱鷺様は会場にいきなりおいでになりました。

色めき立つ希望者たちでしたが、朱鷺様が睥睨されると瞬く間におとなしくなりました。

朱鷺様自らが隊の規範を読み上げ、守れないと思う者は即刻立ち去るようお命じになられたのです。

我が隊の規範は他の親衛隊よりも厳しいものです。

外部生である朱鷺様に納得していただくため、学園内では当たり前の事柄も禁止事項に組み込まれています。

また、本来の親衛隊では禁止されていたことが許されていたりと、この学園しか知らない者にとっては戸惑う事が多い規範でした。

親衛隊の活動費も学園の備品以外は実費です。


朱鷺様曰く、


「お茶もおやつも普通の学校では用意なんてされない。お茶は水分補給のために必要だけどそもそもおやつは禁止だ。おやつはこっそり持ち込んで食べるのが醍醐味。だから欲しかったら自分で用意しろ。俺もそうする。ちなみに差し入れは大歓迎だ」


あれがドヤ顔というものなのでしょうか。

なんだか愛らしく感じ胸がキュンとしました。


結局全員が入隊しました。


心配していた規律の乱れもトラブルもなく今までやってこれたのは偏に朱鷺様の人望あってのことでしょう。



朱鷺様が無事2学年に上がられ、親衛隊も隊員の入れ替えがありましたが、皆、和気藹々と楽しく活動しておりました。


あの忌々しい転入生が来るまでは。



朱鷺様は心労でお倒れになりました。


私たちは朱鷺様からの要請がなければ勝手に動く事ができません。

そう隊の規律にあるのです。

余計なトラブルを招かないため親衛隊が許可なく勝手に動くことを禁じたものが悪い方へ働いたのです。

私たちは日に日に疲弊され危うさが増していく朱鷺様を見ていることしかできませんでした。


悲しかった。

頼っていただけないほど信用されていないのかと、悔しかった。


大島様から教えていただけなかったら今でもお恨みしていたかもしれません。

大島様は仰いました。


「彼はね、頼ることを知らないんだ。皆も知ってると思うけれど、彼は早くに両親を亡くし祖父母に育てられている。体力の落ちてきている祖父母に迷惑はかけられないと、いつも自分自身で頑張ってきた。あのスペックでしょう?友人たちからも頼られる立場だった。頑固なところもあるしね。泣き言が言えない、言ってはいけないと思い込んでいる。だから私達がもっと早くに気がついてフォローすべきだったんです」


私たちは話し合いました。


どうしたら朱鷺様のためになるのか、朱鷺様がこの学園で安寧にお過ごしいただけるのかを。



そして今に至ります。


私たちは親衛隊としての本来の役割を率先して行う組織として再稼働しました。


朱鷺様も大島様に言い含められたのか私たちを頼ってくれます。


友達として付き合いたいから名前を呼んでくれと仰られた時は畏れ多くて無理だとお断り申し上げましたが、大島様のはからいでお名前に様をつけてお呼びすることになりました。

距離感が狭まったようで幸せです。


呼び捨ては諦めるからせめてその大仰で恭しすぎる敬語だけでもやめてくれ、と懇願され鋭意努力中ですが、たぶん抜けないでしょう。

朱鷺様を敬う気持ちが溢れてきてこの口調になってしまいますので。

宏太君は懇願する朱鷺様が尊すぎて死ねると鼻血を垂らしていました。

伽音君はそれは尊死って言うんですよーと呑気に言っています。

伽音君には私の後釜について欲しいと思っていたのですが、ちょっと考え直したほうがいいのかもしれません。



そんな私たちのやりとりで笑っていただけるのがとても嬉しい。



制裁は朱鷺様が嫌っている行為です。


ですから、転入生にはまだ思うことは多々ありますが、私たちと朱鷺様の関係性が良い方へ変わっていったので今のところは良しとしましょう。


でも…


朱鷺様のことを紛い物だと言ったことは何があろうと絶対に許しません!



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