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⑷ 下流の先へ

 私たちは、川の下流に向かって川沿いを歩いていく。

 それは、道なき道である。

 歩きやすい地面を選ぶと川から離れてしまう。

 とにかく慎重に、怪我をしないように進んだ。


 そして、出発時は晴れていたのに、天候が崩れそうだ。

 CMさんが、みんなに指示を出した。

「テントを張って、休憩しましょう」


 雨が強く降り始めた。

 木陰で雨宿りするのではなく、テントを張る指示を出したCMさんの判断は正解だった。

 雨具は着用しても、その中の衣類を濡らしてしまうと体を冷やしてしまう。

 CMさんは、事故が起こる前に対応する。

 この判断力は見習いたい。


 私と詩織はテントの中で、雨がおさまるのを待った。

 そして雨は1時間ほどで止んだ。

 しかし地面が濡れて滑りやすい。

 CMさんが登山靴にスパイクを装着するよう、全員に指示した。


 それからも大変である。

 川から離れないように進む為、高い段差のある所はロープを使って降りた。

 ロープを木の幹に引っ掛け、ロープを掴みながら降りていく。

 そして帰る時の為に、そのロープは回収出来ない。

 あと、残されたロープは7本。


 日が暮れてきた。

 日没前に再びテントを張って、ここで野宿する事にした。


 この辺りは、雨が降らなかったようだ。

 そこで焚火を計画した。

 川の水を容器に入れ、何かあった時の為に消火の用意を行った。

 枯れ葉での焚火は危険である。

 火の付いた枯れ葉が風で飛ばされ、山火事になったら大変である。


 そこで、松ぼっくりと木の枝を拾い集める為、全員で林の中へ入った。

 落葉樹は冬に向けて葉を落とす。

 そして、冬の寒さから身を守る為、小枝も落とす。

 だから林の中では小枝が落ちている。

 沢山の松ぼっくりと小枝が集まった。


 最初にターボライターで、松ぼっくりに火を付ける。

 松ぼっくりには松脂が含まれている為、燃えやすく、着火剤になる。

 火が育ったら、小枝を投入する。


 みんなで焚火を囲み、暖をとりながら夕食を頂いた。

 悪路、悪天候の為、今日は、あまり進めなかった。

 しかし、残念な表情を浮かべている男性達に比べて、女性達は楽しそうである。

 以前の私なら、実にけしからん! と感じていた。

 だが今の私は、楽しんでる彼女たちを見習いたいと感じるようになった。


・・・・・・


 野宿は、みんなが寝ている間、男3人が交代で見守る事にした。

 22時~1時まで、AMである私が担当。

 1時~4時まで、BMさんが担当。

 4時~7時まで、CMさんが担当。


 BMさんは、睡眠を途中で中断する事になる為、20時には、寝る為にテントへ入った。

 そして時刻は22時になった。

 解散して、各自テントでシュラフに入って寝る。

 詩織にも、寝るように伝えた。


 私は、焚火を消さないように、少しずつ木の枝を入れていく。

 しばらくすると、詩織がテントから出て来た。

 眠気を感じないとの事。

 そこで、眠くなるまで焚火にあたりながら、2人でゆったりする事にした。


 上を見上げると、満天の星空。

 こんな夜も、良いものだ。


 詩織に話し掛けた。

「女子会では、どんな話しをしているの?」

「……この前は、CMさんのお話しになりました」

「ほう」


「C子さんが話されたお話しですが、CMさんには奥さんもお子さんも、いらっしゃるとの事で……初めて知りました」

「そうなんだ……しかしこの状況になって、奥さんとお子さんの事、心配でしょう」

「はい。でもCMさん、まったく表情に出しませんよね」

「ああ、だが内心は……」

「心配されていると思います」


「CMさんとC子さん、どういった関係か聞いてます?」

「C子さんは、CMさんの5人の部下の1人だと言ってました」

「ああ、そういった関係なんだ」

「CMさんの奥さんも、CMさんの元部下で、C子さんの親友って言ってました」

「そうなんだぁ」


「……実は」

「……はい」

「C子さんと、CMさんの奥さん……CMさんを奪いあっていて……」

「えぇっ?」

「自分が負けたって、C子さんが言ってました」

「……そうなんだ」


「でも、C子さんと奥さん、結婚後も親友として、お付き合い続けてるって言ってました」

「……そうですか」

 ……そうか。

 CMさん、さぞ苦しい選択を迫られたのでしょう。

 しかしC子さん、辛かっただろう……でもCMさんの奥さんも、辛かっただろうな。


「それで、C子さんとアノンさん。彼氏が居ない者同志で、今は大の仲良し」

「そうなんだ」


 そんな話しをしながら、この時間を詩織と過ごした。

 1時になった為、BMさんに声を掛け、夜の見守りを交代した。

 そして私と詩織はテントに入って、シュラフで寝た。


・・・・・・


 翌日、焚火の後始末をきちんと行い、川の下流に向かって私たちは出発した。

 幸い、今日は晴天である。

 正午をまわった頃、足場の良い所にシートを広げて、昼食を取る事にした。


 食事を終えて、出発の前にドローンを飛ばし、上空からの映像を確認した。

 すると、なんとこの川の約3km先に、町があるではないか!


挿絵(By みてみん)


次回:新たな拠点


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