⑷ 林の中で
この森林地帯に生活の場を移してから、毎朝CMさんの家で、集会を行う事となった。
全員の体調を確認する。
それと、 今後に向けての話し合いを行う。
大切な事は、全員が同じ認識を持つ事である。
本日は、林の中へ入る際の危険性について、話し合いが行われた。
山菜や木の実を採りに行く際、注意が必要である。
道の無い林の中を歩いていくことになる。
このあたりは目印になるものが無い為、遭難しそうになる。
そこで、地図を作る事となった。
方位磁石とトランシーバーを携帯して林に入る。
地図を描きながら進んで行く。
目印になりそうな木には番号を書いた布を巻きつけ、その番号を地図に記入する。
そして、山菜など生えている所を見つけたら記入する。
この作業は、2人以上で一緒に行動する事となった。
最初はCMさんとC子さんとアノンさんの3人で出発した。
CMさん達は慣れているようで、いい感じの地図が出来上がって来た。
次の日、BMさんとB子さんによって、別の方角の地図が作られた。
皆さん、こういった事、慣れているようで、さすがだ。
だいたい地図は出来上がった為、今日予定していた私と詩織は、出来た地図を確認してほしいとの事だ。
たしかに、書いた本人以外の人が確認して、補足情報を記入する必要がある。
その確認作業を受けて、私と詩織は出発した。
地図と方位磁石を確認しながら進んでいく。
地図に書かれた番号と、その番号が書かれた木を確認しながら進んでいく。
なるほど、これは素晴らしい。
これなら林で迷う事は無さそうだ。
詩織が私に話し掛けた。
「なんか、デートしているみたいで、楽しいですね」
「ああ」
いつもは、私と詩織とアノンさんの3人で行動していたが、最初のCMさん達にアノンさんも参加した為、私と詩織の2人だけで行く事になった。
アノンさん……気をつかってくれたのかな?
CMさん達が書いた地図の確認を終えた。
ちょうど昼食の時間となり、シートを広げた。
詩織は私の隣に座って、ピトッと私にくっついている。
持ってきた食料を一緒に食べた。
静寂な林の中、詩織と2人きり。
これは、ちょっと、やばい。
昼食を終えて、今度はBMさん達が書いた地図の確認を始めた。
地図に書かれた番号と、山菜が生えているエリアを確認した。
だが、ここに来た時に見つけた山栗の木の記載が無い。
たしかこの辺だった記憶がある。
ここから先は、地図に描かれていないエリア。
遭難したら大変である。
方位磁石を頼りに、地図を描きながら進んでいく。
歩いてきた道を戻れるように、服を一枚ずつ脱いで、目印として木の枝に掛けて行く。
しばらく歩いていくと、詩織も自分の服を脱ごうとしたので、私は慌てて言った。
「今日は、ここまでにしましょう」
引き返そうとした時、詩織が前方を見て言った。
「あれは……」
そこには、山栗が一面に落ちている。
「……ここだ」
この場所を地図に記した。
山栗のイガは厄介なので、イガから抜け落ちている栗だけを拾い集め、リュックに入れた。
「こんど皆で拾いに来よう」
「はい」
目印として掛けた私の衣類を回収しながら、私と詩織は住処へ向かった。
途中、天気が急に崩れ始めた。
私と詩織は木陰になる所へ走り、そこで雨宿りをした。
私が携帯していたトランシーバーが鳴った。
「雨が降り始めましたが大丈夫ですか?」
確認の連絡だった。
私は伝えた。
「木陰で雨宿りしています。雲の流れが速いので一時的な雨だと思います。私もA子も問題ありません」
「了解しました。何かあれば、ご連絡下さい」
「ありがとうございます」
常に雨具は携帯する必要があると感じた。
寒くないかと詩織を見ると……なんと、雨に濡れた詩織のシャツが、薄い胸に貼り付いているではないか!
これは……いかん!
この恰好で住処に戻ったら、詩織が水の妖精である事が、みんなにバレてしまう。
水の妖精とは、私の中での詩織の設定である。
私は上着を脱いで詩織の肩に掛けて言った。
「風邪をひいたら大変」
「……レイさん」
「私はシャツを着ているから大丈夫だよ」
「……ありがとうございます」
しばらくすると雨が止み、私と詩織は住処へ戻った。
みんなに拾ってきた山栗を見せ、山栗の木の場所を地図で示した。
ナイフで栗の皮に切れ目を入れて、フライパンで焼いた。
「これは美味しい」と言って、みんな喜んでくれた。
今度、山栗を拾いに、みんなで行く事になった。
次回:トレジャーハンター




