⑷ 生き延びる為に
改めて、今後についての会議を行った。
この中で一番年配のCMさんに、会議を仕切って頂く事となった。
全員で上空写真を見ながら、意見交換を行った。
このシェルターで、地上の放射線量が下がるのを待ち、その後私たちは、この不毛地帯の先に、生活の拠点を移す。
そのプランに、全員が同意した。
では、この不毛地帯の先に、私たちが生活出来る環境が、あるのだろうか。
問題は、そこで食料が自給出来なければならない。
私たちの移動手段は、徒歩でしかない。
成人の人間が、1日に歩ける距離は、だいたい20km。
もちろん、それ以上歩く事も出来るが、次の日に支障をきたさないよう、無理の無い移動距離で考えなければならない。
まず、上空写真から生活出来そうな所を見つけ、そこへ食料を持って向かう。
現地を確認し、食料の自給が可能かを全員で判断する。
不可能と判断した場合、シェルターへ戻る。
それを繰り返し、生活出来そうな所を探していかなければならない。
この大変さを、全員が共有した。
次に、自給可能と判断した場合、畑を作り、作物を育てる。
そして収穫出来るまで、シェルターとの間を往復し、シェルターの食料を運ぶ。
シェルターの食料は4年分ある。しかしエネルギーは2年しか、もたない。
その間で、生活出来そうな所を見つけ、住処を作り、自給自走の環境を整えなければならない。
あらためて考えると、時間的余裕など、無い事を全員が認識した。
その時、上空写真を見ていた詩織が、手を挙げて言った。
「これ、何かの建物ではないでしょうか」
全員が、詩織の指すポイントに着目した。
ここから北東に、約9kmのポイント。
小さくてよく解らない。
その部分の画像データを拡大した。
はっきりとは分からないが……ログハウスのような……山小屋のような……いくつかの小屋らしきものにも見える。
CMさんが提案した。
「もう一度地上に出て、そのポイントの近くまでドローンを飛ばして、ビデオを撮って来るというのは可能ですか」
それに対してBMさんが答えた。
「いえ、ドローンの航続距離は、およそ300mですので、片道として150m先までしか行けません。9km先の目標に対して150mだけ近づいても、あまり有力な情報は得られないと思います」
私も答えた。
「はい、私も同じ考えです。それと、私もBMさんもドローンの操作に慣れていません。今回は、真上に飛ばすだけでしたから、なんとかなりましたが、目標に向けて飛ばすとなりますと、もしもドローンが戻って来れなかった場合、ドローンを失う事になります。そのリスクを冒してまで行う事ではないと考えます」
「なるほど、了解しました」
CMさんも納得された。
私にとって、
CMさんのCは、キャプテン。
BMさんのBは、バディ。
そんな感じだ。
上空写真から、他にも何かないか、みんなで探した。
しかし、他には見つからなかった。
CMさんが提案した。
「では、地上での放射線量が下がるのを待って、その後、A子さんが見つけたポイントを、まずは目指すというのは、いかがでしょう」
全員が賛成した。
「では、その日に向けて、今から準備して行きましょう。野宿する為のテントや、携帯食料とか……そして今後も、このような会議を開いて、得た情報を共有しましょう」
全員が了解した。
そう、これからやらなければならない事は沢山ある。
私たち全員が生き延びる為に。
・・・・・・
私たちは、生活の拠点を移すことになった。
そこで、体力をつける為のトレーニングを、全員行う事となった。
長距離の徒歩による移動である。
誰かが途中で歩けなくなったら大変である。
このシェルターに降りて、全員運動不足である。
幸い、このシェルターには運動する事を目的としたエリアがあり、そこにはトレーニングマシンが用意されている。
その中でウオーキングマシンを利用する事にした。
全員、時間を分けて利用する。
最初はゆっくりと、徒歩で5km歩き続ける。
次第に距離を伸ばしていき、1日10km以上、歩く事を目標とした。
走る必要は無い。
だが若い詩織は軽いランニングで3km走り、その後7km以上歩く。
詩織のランニングしている姿は実に美しい。
詩織の薄い胸が揺れている。
私は、ただ、それに見とれていた。
・・・・・・
そして私たちは、持って行く物の準備を始めた。
持って行ける物には限りがある。
全員分の水と食料3日分。
それと、放射線量計、トランシーバー、ノートパソコン、小型太陽光パネル、テント、寝袋、調理道具、作物の種、耕す道具……。
現地から、更に上空写真を撮る為にドローンも持って行く。
野生動物と遭遇した時の為に、麻酔銃を全員が携帯することになった。
この麻酔銃の射程距離は、約10m。
対象物に当たった玉は中から麻酔薬が霧状に噴射し、それを吸い込む事で眠らせるとの事だ。
射撃体験用に、模擬弾が用意されていた。
それは、麻酔薬の代わりに匂いの付いた液体が霧状に噴射する。
撃った人は、その匂いを嗅がないように、その場から後方へ逃げる訓練を行う為のもの。
全員で、その射撃訓練を行った。
野生動物と遭遇しない事を願うが、まったく居ないとなれば、それはそれで心配である。
・・・・・・
それから1ヵ月が経った。
地上での放射線量も、問題ないレベルまで下がった。
私たちは明日、新しい居住地を探しに、全員で出発する事になった。
そして当日、天候は晴れ。
全員の健康状態を確認した。
各自、登山用の靴を履き、担当した荷物を背負う。
朝6時、私たちは新天地に向けて、出発した。
次回:新天地を目指して




