⑵ ふみふみ
このシェルターへ潜ってから、女子会はアノンさんを含めて4人で行うようになった。
女性4人、すっかり仲良しになってる。
詩織は女性達のあいだで「Aちゃん」と呼ばれ、みんなから好かれている。
とても良い感じだ。
さて、しばらくはここ(核シェルター)で過ごさなければならない。
であれば快適さを求めたい。
食堂に用意された10台のテーブルと40脚の椅子。
この食堂を私たち7人で利用する為、4台のテーブルと7脚の椅子を残し、後は全て食堂の端に移動させた。
そして女性達は、この食堂をリビングに改造しはじめた。
私としては、シンプルな感じが好みなのだが、まあこういった事は、女性がやろうとする事に口を出してはいけない。
無機質な食堂が、洒落たリビングルームとなった。
なるほど、これはこれで、とても良い感じだ。
女性4人が集まって、何やら相談している。
彼女達は空室の部屋から、プラスチックの衣類収納ケースと、敷布団を持ってきた。
そして、食堂の端に移動したテーブルを縦に並べ、その上に収納ケースを並べている。
次に、敷布団を分解し、ポリエステルの中材を出している。
敷布団は新品である。
いったい何を始めるつもりだろう。
敷布団から取り出した中材を、収納ケース底の大きさに切断し、収納ケースの底に敷いている。
我々男性3人は、優雅にコーヒーを飲みながら、何が始まったんだと興味深く見ていた。
彼女達は、大きなボールに、お米と水を入れて、といでいる。
そのとぎ汁をボトルに入れ、それに何かの粉を入れて栓をした。
次に、先ほどの衣類収納ケースに水を入れ、何かを撒いて蓋をした。
彼女達が何をしようとしているのかが解った。
水耕栽培だ。
さっきのとぎ汁は、水耕栽培の培養液。
加えた粉は、粉末の乳酸菌だろうか。発酵させて、水が腐るのを防ぐ。
ここで生野菜を作る計画らしい。
これは素晴らしい、そしてありがたい。
この水耕栽培がうまくいって、いずれこの部屋が家庭菜園になる事を、私は期待した。
・・・・・・
女性達が育てている野菜を見て、私も何か作って、皆さんに喜んでもらいたいと思った。
では、何を作るか。
私としては、やはりお酒だ……と考えるのだが、BMさんもCMさんも、あまりお酒は飲まれない。
よって、協力してもらうのは難しい。
さて、私1人でお酒を造るとして、思いついたのは、ぶどう酒だ。
現在ぶどう酒は、ぶどうの実を巨大な容器に入れ、それを機械で押し潰し、ぶどう果汁を絞り出す。
ぶどう果汁に含まれる酵母の働きによって、ぶどう果汁は発酵し、ぶどう酒となる。
しかし、中世のヨーロッパでは、そのような押し潰す機械など無かった為、ぶどう農家の娘が素足でぶどうを踏みつぶし、ぶどう果実を絞り出していた。
その製法は、ぶどう果汁に含まれる酵母(菌)に、娘の素足からの菌が加わる事で、発酵そのものに影響を与え、ぶどう酒の味わいに変化をもたらす。
当然、かわいい娘が踏んで出来たぶどう酒には人気があつまった。
これはもう、ぶどう酒本来の味わいからは、逸脱した話しである。
さて、話しを戻すと、ここにはぶどうを押し潰す機械など無い。
では、私が踏み潰してぶどう酒をつくるか?
しかし、私が踏み潰して出来たぶどう酒を、飲みたい人が、いるだろうか?
私だって飲みたくない。
やはり、私にとって、ぶどう酒をつくるのは、無理だ。
しかし……水の妖精である詩織が、素足で踏み踏みして出来たぶどう酒なら……飲んでみたい気もする。
レイさん……
詩織さんの事を水の妖精と言い、またある時は星の王女さまと言って姫と呼んでいる。
可愛くて仕方ないのは分かりますが、はっきり言って変態ですから。
次回:封印の間




