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⑶ 世界中から恨まれても

 その後、みんなとの話し合いによって、アノンさんに拘束の必要は無いとの判断から、私たちと同じ一室を、アノンさんにも利用してもらう事となった。


 私は先ほど、アノンさんに酷い事を言ってしまった。

 アノンさんは、危険なウイルスのワクチンを開発しただけだ。

 しかしそのワクチンが完成した事で、そのウイルスが兵器として利用されてしまった。


 そう、それは、私も同じだ。

 私が電磁波動砲を完成させた事で、戦端が開かれた。


 私が犯した過ちで、数十万人が死んだ?

 この過ち、どうやってつぐなえばいい?

 なんか、もう、頭の中が真っ白だ。


・・・・・・


 アノンさんとの話しの後、私は何をしていたのか覚えていない。

 ただ、頭の中がふわふわしている。


 寝る時間になったのでベッドに入り、横になった。

 なんだか眠れそうにない。


 お酒でも飲もうと食堂へ向かった。

 薄暗い食堂に……誰かいる……アノンさんだ。


 アノンさんは、手に果物ナイフを持っている。

 その刃先を自分の首に当て、アノンさんは上を向いた。


 私は音を立てずにアノンさんに近づき、ナイフを持った手を後ろから掴んだ。

 アノンさんはびっくりして振り向いた。


 私は、ナイフを持ったアノンさんの手を握り、そのままテーブルに叩きつけた。

 何度も何度も叩きつけた。

 アノンさんの手から、ナイフがはじけ飛んだ。


 私はそのままアノンさんを振り回し、横にあった食器棚に叩きつけた。

 大きな音とともに食器棚の扉が開き、中の食器が床に落ちた。


 アノンさんは床に崩れた。

 そのアノンさんを無理やり引き起こし、アノンさんを抱きしめた。

 そして声をあげて泣いた。

 ……みんな……狂ってる。


 私とアノンさんは、膝から崩れ落ちた。

 大きな音に、詩織、それとBMさん達、CMさん達が駆け付けた。


 その後、私とアノンさんは、別々のリザーブルームに入れられた。

 私のリザーブルームの外で、詩織が心配そうに私を見ていた。


・・・・・・


 次の日、CMさんが私のリザーブルームを訪れた。

 一番年配という事で、CMさんが話しに来られたようだ。


 最初に私は謝罪した。

「昨日は、大変ご迷惑をおかけしました。私は大丈夫です。この部屋から出して下さい。それと、私が責任を持ちますので、アノンさんもリザーブルームから出してあげて下さい。そして、アノンさんと話しをさせて下さい」


 CMさんは、私の目を見て「わかった」と言ってくれた。


 私はアノンさんのリザーブルームに話しをしに行った。

 最初に私は、アノンさんに伝えた。

「あの高速飛翔体を撃ち落としたのは、私が造った電磁波動砲です」

 アノンさんは驚いた表情を向けた。


「私は貴女に『何人殺した』と責めました。しかしそれは、私の犯してしまった過ちから、目を逸らしたかったからなのでしょう。私が造らなければ戦端は開かれなかった。私は貴女以上の過ちを犯してしまった」

 アノンさんは、ただ黙って私を見ている。


 私は話しを続けた。

「それでも私には、世界中から恨まれても、まもりたい人がいます」


 アノンさんが訊いた。

「その方は、詩織さんですね」

 私は答えた。

「はい」


 そして私は、アノンさんに言った。

「貴女も、このシェルターから出たら、世界中の人から恨まれても、守りたい人を見つけて下さい」


 アノンさんは、私の目を見て応えた。

「はい」


次回:探索

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