⑴ この世界で何が起きたのか
みんな蒼白した顔で、目を床に落としている。
しかし、いつまでもここで、うずくまっている訳にはいかない。
私は顔を上げ、声をかけようとした時、CMさんが立ち上がった。
「さあ、みなさん。おそらくみなさんが考えている事は一緒です。しかし、何の確証もない。ここは楽観的に、無事を信じませんか?」
BMさんも、顔を上げて言った。
「ええ、皆さん無事ですよ」
C子さんも言った。
「ええ、悲観的に捉えるよりも、今は前を向きましょう」
B子さんも顔を上げ、詩織も頷いた。
私は、この部屋に設置されたモニター画面のスイッチを入れた。
しかし、何も映らない。
おそらく地上の庭園の木々は、全てなぎ倒され、監視カメラなども破壊されたのだろう。
次に、ホットラインで127さんへの通話を試みた。
だが、なんの反応もない。
この状況から、あまり楽観視出来ない事は伺える。
しかしながら、そもそも何故、核ミサイルが落とされた?
電磁波動砲で撃ち落とす事は、出来なかったのか?
だが何にしても、今は現実を受けとめなければいけない。
私は、みんなに向かって話しをした。
「さて、これから皆さんと知恵を合わせて、この現状を乗り越えて行きましょう」
私に向けるみんなの目に、力が宿っているのを感じた。
BMさんが言った。
「まずは、この施設を確認しましょう」
私は壁に取り付けられた工具ボックスを外し、M1非常用開閉ハンドルをまわした。
M1扉が開いていく。
その先の照明をつけた。
この核シェルターを、みんなで確認する。
非常用発電機が可動している。
既に外部からの電力が絶たれ、自力での電力供給モードに移行したのだろう。
会議室のような部屋があった。
そこには大型のディスプレイとパソコンがあり、起動するとさまざまな情報が入っていた。
このシェルターの収容人数は120人、滞在日数は3ヵ月間で設計されているとの事。
となれば、連れて来た襲撃者の女性を加えても、私たちは7人。
つまり、単純に計算すると、このシェルターで4年以上、過ごす事が可能だ。
次に、このシェルターの全体図を見つけた。
かなり大きい。
さまざまな部屋がある。
その中に、リザーブと書かれた部屋があった。
注釈では、精神に異常をきたしてしまった人を、一時的に収容する部屋と書かれている。
実際の部屋を確認すると、その部屋は外からカギを掛ける事が出来る部屋で、室内にはベッド、トイレ、洗面台が用意され、天井には監視カメラとマイクが取り付けられている。
今回、連れて来た襲撃者の女性、見た感じ日本人ではない。
年齢は20代後半から30代といった感じか。
全員での話し合いにより、彼女をその部屋へ運び、女性3人によって武装した服を脱がせ、ベッドに寝せて外からカギを掛けた。
彼女の存在は極めて重要である。
この世界で何が起きたのか、そして何故こうなったのか。
その情報を彼女から、得る事が出来るかもしれない。
・・・・・・
このシェルターは、長期滞在用に造られている。
全員1部屋ずつ割り当てた。
電気と飲料水は普通に使える。
そして大量の真空パックされた保存食。
みんなで食堂に集まり、夕食を頂いた。
このシェルターで生活するにあたり、最初の話し合いがもたれた。
それは、不都合な現実として、今が昼なのか夜なのかが解らなくなってしまう事だ。
もちろん時計を見れば解るのだが、太陽の光が届かない世界では、体内時計が狂ってしまう。
今の私たちは、正にそれである。
そこで昼間の時間は照明をつけ、夜は常夜灯を付ける事とした。
必要に応じて夜間でも照明をつけるが、常夜灯が付いている事で、夜間である事を認識する。
そして『皆さん一緒に、昼間の時間、活動しませんか』といった提案が成された。
それに対して全員が賛成し、共存の為のルールが、初めて1つ作られた。
そんな話し合いが行われ、今日のところは解散し、各自部屋へ戻った。
ベッドで横になる。
今は夜の12時。
しかし、とても眠れない。まあ、あたりまえか。
食堂に行くとCMさんが1人でビールを飲んでいた。
「あれ、CMさんがお酒なんて、珍しいですね」
「ええ、眠れないもので」
「はい。私も眠れないもので、お酒無いか探しにきました」
CMさんは立ち上がり、棚の所へ行って私に教えてくれた。
「この棚に入ってます」
そこには、色々なお酒が沢山入っていた。
「これはすごい!」
しかし、棚に入っているビールは、当然冷えていない。
「このビール、冷蔵庫に入れますね」
「はい」
私はビールの箱を持って冷蔵庫に向かっていると、B子さんとC子さんが現れた。
「あれぇ、2人だけで、ずるぅい」
「いやぁ」
そしてBMさんも現れた。
これはいかんと思い、私は詩織を呼びに行った。
しかし、詩織がいない。
詩織を探すと、リザーブルームの外で、心配そうに襲撃者の女性をみていた。
私は詩織に声を掛けた。
「どうですか」
「あっ……はい。静かに寝ています」
「みんな、食堂に集まって飲んでます。詩織も行きましょう」
「……はい」
そして飲み会が始まってしまった。
未成年の詩織はオレンジジュース。
みんなで明るい宴会となった。
……そう、みんな無理して明るく振る舞っていた。
次回:戦端を開いたのは




