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⑷ 起動

 私はその方法を311さんに説明した。

「目的は破壊するだけの電磁波が目標に届く事です」


 実を言うと単純な方法である。

 電磁波動砲……1門で破壊出来ないのであれば、10門造れば良い。

 10門で破壊出来ないのであれば、100門造れば良い。

 ここが、銃や大砲との根本的な違いである。


 100mしか飛ばない大砲は、10門束ねても、破壊力は増すが100mしか飛ばない。

 しかしレーザー光線や電磁波動線は、減衰するものの何処までも飛んでいく。

 ならば多数、1点に向けて照射させれば良い。


 今回256門造り、照射実験を行う事とした。

 しかし多数の電磁波動砲を、1点に向けて照射させれば良いという簡単な話しではない。

 256門の電磁波動砲は、縦16列、横16列の巨大な集合体となる。

 中心の砲門と端の砲門では、目標の1点までの距離に差が生じてしまう。


 距離の差は、電磁波の位相にズレが生じる事で、打ち消し合ってしまう。

 つまり256門の電磁波は、ターゲットの1点に向けて、位相を合わせなければならない。

 その為には、各砲門が目標までの距離を測定し、電磁波の波長を制御する必要がある。


 私の構想を理解した311さんは、112さんと共にアリーナ本部へ出向き、議会の承認を得て莫大な予算を確保してきた。

 この組織、動きがはやい。


 256門の電磁波動砲の製造が、急ピッチで進められていく。

 既存の1門と同じものを256門造る。

 特に難しい作業ではない為、311さんの部下である312主任が担当される事となった。

 私と311さんは、目標との距離を正確に捉え、波長制御の開発に取り組んだ。


 詩織には静かな一室が与えられ、そこで3番目の論文の理解に取り組んでもらっている。

 1日1回、詩織の部屋へようすを見に行くが、盗聴されている可能性から、めったな会話は出来ない。

 詩織は寝食を忘れて、論文と向き合っているようだ。

 詩織の健康状態が心配である。


 256門の電磁波動砲が独立して、目標の1点に照準を合わせる。

 次に、目標との距離から波長を制御し、位相を合わせる。

 電磁波動砲の砲台が16基、一直線上に30m間隔で設置していく。

 横に設置した16基を縦に16列。つまり256基の砲台が縦横整然と設置されていく。


 電磁波動砲は、1門完成するごとに砲台に取り付け、制御試験を行った。

 そして64門目を取り付けている時、監視衛星が捉えた情報から基地内でアラートが鳴った。

 飛翔体が打ち上げられた。


 私は制御室に駆け付けた。

 詩織もアラートを聞きつけ、駆け付けて来た。

 制御室では遠赤外線望遠カメラで捉えた飛翔体が映し出されている。

 現在、某国上空800kmを上昇中。


 私は311さんに言った。

「照射してみましょう」

「しかし、まだ64門しか……」


「どのような結果が得られるか、確認したいです」

「了解しました」

 311さんは電磁波動砲の起動を指示した。


 私は制御室の窓から電磁波動砲に目を向けた。

 長さ18mの電磁波動砲が64門、一斉に水平方向に回り、打ち上げられた飛翔体の方角に向いた。

 私の頭の中で音楽が鳴り始めた。

 『ドーン ドーン ドーン ドーン ダンダン ドーン ドーン ドーン ドーン ダーン ……』


 次に64門の先端を垂直方向に持ち上げ、角度調整を行う。

 311さんが言った。

「照射、開始します」


 64門の電磁波動砲が飛翔体に向けて照射を開始した。

 モニター画面上で、上昇し続ける飛翔体に私たちは注目した。

 目標との誤差を修正しながら照射を続ける。


 画面に映し出された飛翔体に白色の十字マーカーが64個、映し出された。

 その1つ1つが電磁波動砲1門の照射ポイントである。


 64個のマーカーが1点に向けて集まり始めた。

 そしてマーカーが1点に重なった。


 次に電磁波動線64本の位相を合わせる。

 白色の十字マーカーが緑色に変わった。


 オペレーターが言った。

「ターゲットへの64門の調整、完了しました」


 電磁波動砲は、飛翔体の上昇に追従しながら照射を続けている。

 しかし飛翔体に変化は無い。

 やはり64門では……核弾頭ミサイルを撃ち落とす事は出来ないのか。


 その時、飛翔体が爆発した。

 制御室は静まり返った。

 そして、歓声があがった。

 拍手がわいた。


 しかし、その時私は、取り返しのつかない事態に、一歩踏み込んでしまったような気がした。

 詩織は爆破した飛翔体をモニターで見ている。

 私が詩織に声を掛けようとした時、詩織は床に崩れるように倒れた。


 私はすぐさま詩織を抱き起こした。

 もうろうとした表情で、過呼吸を起こしている。


 311さんは即座に救急隊を呼んだ。

 詩織を担架に乗せ、医療室へ運び、ベッドに寝せた。


次回:何処で過ごす?

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