⑶ オリの中の楽園
大きな宿泊施設と広大な庭園。
ここは、どのような目的でつくられたのだろうか。
私と詩織は、この施設の内部を確認する事にした。
最初に、このセンタールームに設置されたホットラインを確認した。
ビデオ通話機のようだ。
操作は単純で、通話ボタンと終了ボタンしか付いていない。
そして次に、リビングルームを確認した。
広いリビングだ。
正方形のテーブルが6台置かれ、各テーブルには椅子が4脚備わっている。
リビングに面して、広いキッチンが作られている。
電気、水道は使えるようだが、ガスは引かれていない。
電気湯沸かし器によってお湯は使えるようだ。
電子レンジ、電気コンロ、マルチホットプレート、食器洗浄機。
それと大きな冷蔵庫が6台。
その1台の冷蔵庫に、1週間分の食料が入っていた。
その他、プライベートルームが12部屋。
それと、広い和室が1部屋あった。
そして、建物の外に出た。
そこには広大な庭園が広がっている。
その周りを、鉄格子が囲んでいるとの事だ。
短時間で回れる広さではなさそうだ。
日を改めて散策する事にした。
・・・・・・
ここでの生活を始めて3日が過ぎた。
12部屋あるプライベートルームは、ホテルで言うスイートルームのような部屋だ。
私と詩織は、それを2部屋専有した。
さすがに同じ部屋で寝る訳にはいかない。
1日の始め、私と詩織はリビングで会う。
そして一緒に朝食の準備を行い、一緒に食事する。
毎日、定時連絡を入れているが、私と詩織が待っている回答が来ない。
それは、電磁波動砲の実現性についてである。
実現不可との結論が出れば、私と詩織の保護は解かれ、ここから解放される話となっている。
127さんにその事を訊くと、実際に造って実験を行うとの事だ。
どこまで電磁波の出力を上げる事が出来るか、確認するらしい。
電磁波動砲は、真上に向けて照射実験するとの事。
航空機に当たらないよう、航空管制室からの情報入手。
人工衛星に当たらないよう、各衛星の軌道計算。
安全面から、専用の実験棟を建設しているとの事。
国家プロジェクトの中でも極秘プロジェクトの位置付けという事で、これ以上の詳細は、お伝え出来ないとの事だ。
ここでの生活、少々長くなりそうだ。
冷蔵庫を開けると、ビールと日本酒が入っていた。
これはもう、開き直るしかない。
庭に出て、木陰になる所にテーブルと椅子を置いた。
そして、詩織と一緒にオードブルを作った。
優しい陽射しと穏やかな風。
私は昼間から飲み始めた。
夜になった。
このあたりに繁殖しているハーブのお陰だろう。ほとんど虫は飛んでこない。
そこで、庭でバーベキューをする事にした。
キッチンで準備して、それを庭へ運ぶ。
火は使えないのでホットプレートで焼いた。
時間は掛かるがゆったりと寛ぐ。
満点の星空を見ながら、ゆっくりと冷酒を飲んだ。
誰も居ない2人だけの世界。
これほどの贅沢、なかなか味わう事は出来ない。
そのように考えると、ここでの生活も悪くない。
詩織も、なんか楽しそうだ。
これはこれで……いいかな。
・・・・・・
次の日、雨が降った。
日は射しているのに穏やかな雨。
いわゆる天気雨である。
私と詩織は傘をさして、庭園を散歩した。
雨に濡れた緑の葉が輝いている。
降り注ぐ雨も、太陽の光でキラキラしている。
これは綺麗だ。そして気持ちいい。
今日は雨天の為、庭での食事は出来ない。
気分を変えて、和室で夕食を頂く事にした。
雨で衣類が濡れてしまった為、先に入浴を済ませる事にした。
用意されている着替えの中に浴衣があった。
詩織は浴衣を着て、夕食の準備を進めている。
私は配膳と自分が飲む日本酒を暖めた。
準備が整い、食事を始めた。
私が熱燗を飲み始めると、詩織は私の隣に座ってお酌してくれる。
詩織から漂う湯上り後のシャンプーと石鹸の香り。
こんな美少女に体を寄せてお酌されると、そのまま傾れ込みそうになる。
いかん、いかん、相手は中学生だ!
ちっくしょー、壁でも殴らないと気が収まらない!
その時の私は、少し険しい表情をしていたようだ。
そんな私に、詩織は不思議そうな目を向けていた。
詩織さん!
油断しては、いけません!
え? 受け入れ準備OK?
いや~それは……なろう警察に捕まってしまう!
次回:(第3章 終話)水の妖精




