表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/54

⑵ 保護による拘束

 黒服の男が私と詩織の前に来て言った。

「お二人のスマホを預からせて頂きます」


 私と詩織は顔を見合わせた。

 誰かに連絡されては困るから?

 まあ、ここまでの事をしている彼らだ、当然と言えば当然であろう。


 それに対して、それを拒む事が出来るか? まあ、無理だろう。

 詩織は男に従い、スマホを渡した。

 私も逆らわずに、スマホを渡した。


 私と詩織は黒塗りの車の後部座席に誘導された。

 この車は、運転席の前部座席と、私と詩織が座った後部座席との間を、厚いガラスによって仕切られている。


 そして車は走り出した。

 すると、私と詩織が座っている後部座席の前後左右のガラスが、乳白色のガラスに変わった。

 外の景色を観る事が出来ない。

 よって、今何処を走っているのか解らない。

 連れて行く場所を知られない為だろう。


 やがて、信号等で止まる事がなくなった。

 高速道路に入ったようだ。


 その時、乳白色の窓ガラスを通して、赤いライトを感じる。

 これは、白バイだ。

 サイレンを鳴らさず、パトライトを点滅させている。

 この白バイが4台、この車の前後左右に併走して、護衛するように走っている。

 いったい、何が始まったんだ。


 車は3時間ほど走り、目的地に着いたようだ。

 4台の白バイは離れていった。

 そして後部座席の扉が開けられ、私と詩織は車から降りた。


 ようやく外の景色を見る事が出来た。

 ここは、どこだ?


 広い庭園、その一角に大きな建物が建っている。

 建物を含めた庭園を、鉄格子が囲んでいる。

 その外側は、うっすらと霧が立ち込めている。

 このあたりは森林地帯のようだ。


 私と詩織は、その建物へ案内された。

 建物の中の廊下を進み、打ち合わせ室のような部屋に案内された。

 長方形のテーブルと椅子が8脚置かれており、その椅子に座って待つように伝えられた。


 私と詩織は隣り合わせに座り、その部屋を見まわした。

 部屋の隅に小さなラックが置かれている。

 そして、その上にディスプレイ付の端末機のようなものが置かれている。

 それ以外、特に何もない部屋だ。


 しばらくすると、先ほどの女性が現れた。

 私と詩織は立ち上がった。


 その女性は頭を下げて話し始めた。

「本日は、大変失礼な対応となってしまいました。深くお詫び申し上げます」

 私と詩織は無言のままである。

 相手の正体が解らない状態で、うかつに気を許す訳にはいかない。


 その女性は私たちに言った。

「どうぞ、お掛け下さい」

 私と詩織は着席し、私たちの向かい合わせにその女性も座った。

 詩織はボールペンを握り絞めている。


 その女性は話し始めた。

「詳しいお話しは出来ませんが、私どもは、この国の公にされない特務機関です」

 私と詩織は沈黙した。


 その女性は、話しを続けた。

「私どものネットワークに、浅野教授が行方不明になった情報が入りました」

 私はとっさに訊き返した。

「その件について、何かご存じですか?」


「私どもは、以前から浅野教授の研究をマークしていました。この世界を揺るがしかねない研究です。研究発表の当日、浅野教授は私どもの監視からロストしました。最初、ある組織によって拉致された可能性で調査しました。しかし、その組織も浅野教授を探しています。ここで考えられるのは、別の組織によって拉致された。そしてもう1つは、浅野教授が自ら身を隠した」


「……ある組織とは?」

「残念ながら、お答えできません」

「……答えられないような組織ですか」

「はい。そこで私どもは、浅野詩織さん、里中玲さんの身柄を保護する事が急務と判断し、今回の事に至った次第です」


 詩織が訊いた。

「父は無事なのでしょうか?」

「わかりません。現在、浅野教授の行方を追いかけているのですが、今のところ手がかりはありません。それと、浅野詩織さん。そのボールペンを握り絞める必要は、もうありません」

 ……フェイクである事、バレたのか?


「私どもには2つの目的がありました。1つは、例の研究内容があなた方から外へ流出しない事。少なくとも、あなた方をここへ保護する事が出来ましたので、この目的は達成出来ました。そして2つめは、その最新の研究データを入手する事です。私どもは、浅野教授の自宅からノートパソコンを持ち出しました」

「大学の研究室と詩織さんの自宅に入った空き巣は、あなた方でしたか」


「はい。事の重大性から、いささか乱暴な手立てを取らせて頂きました。当然の事ながら、浅野教授のパソコンにはパスワードが掛けられている為、内容を見る事が出来ません。しかし、最新の研究データを納めたメモリーカードが、そのボールペンの中に仕込まれているとの事で、私どもはそのカードが破壊される事を恐れました」

 ……そう、私と詩織が持つ最後の切り札。


「しかし、先ほど浅野教授のパソコンから、研究データのサルベージに成功した連絡を受けました。ファイルの日付は、研究発表会へ行かれる前日の日付でしたので、最新のものであると考えています」


「……わかりました」

 そう言って、詩織はボールペンをしまった。

 ……もう、私と詩織には、身を守る切り札は無い。


 私は訊いた。

「それで、私たちはこの先、どのようになるのでしょう?」

 女性は答えた。

「しばらく、ここで身を隠して頂きます」


「……しばらくとは?」

「あの研究から生まれる物の可能性次第です」


「私と詩織は、あの2つの研究から、超高出力の電磁波を電磁波動線にして飛ばした時、兵器として利用される可能性を心配しました。しかしながら、私と詩織の計算では、兵器としての破壊力には至らないとの結論です」


「……さすがです。ただ、私どもは別の角度から、実現性を検証しています」

「……別の角度から?」

「はい。その結果、実現不可の結論に至りましたら、あなたがたの保護は解かれるでしょう」


「……もしも、その検証によって、実現性が認められたら?」

「もう少し、長いお付き合いをお願いする事となります」


「いや、長いお付き合いと言われましても、私と詩織が行方不明になったという事で……」

「その件につきましては、ご心配いりません。我々の組織の人間が、学校、及び、お2人のご両親様へ、身柄を保護させて頂いた説明に伺っています」


「……どのような説明を?」

「超法規的措置と、ご理解下さい」

「超法規的措置?」


「本件、既に国際レベルの問題へと、ステージが格上げされました」

 ……たしかに、そうかも、しれない。


 そして、その女性は私たちに伝えた。

「お2人の今後についてですが、ここで自由にお過ごし下さい」

「……はぁ?」


「ここには、監視カメラやマイク等、ありません。監視員もいません。精神衛生上の観点からとご理解下さい。この施設に用意された、キッチン、リビング、プライベートルーム等、自由にご利用下さい。ここへは週に1度、食材をお運び致します。また、着替え等、生活に必要なものも、その時お持ちします。他にも何かありましたら遠慮なくご注文下さい」

「……はぁ」


「尚、この建物と庭園は、高い鉄格子で囲まれています。外部から野生動物等が侵入しないよう、鉄格子の上部には高電圧の掛かったフェンスが張られていますので、ハシゴ等を作って鉄格子を乗り越えるような事は、決してなさらないで下さい」

「……わかりました」

 ここから脱走しないよう、釘を刺された。


「今後、私の事は127(イチニィナナ)とお呼び下さい。あなた方との窓口を担当させて頂きます」

「……はい」

 ここでは個人情報を伏せる仕組のようだ。


「この部屋は『センタールーム』という名前が付いています。1日1回、このセンタールームに設置してある、あの『ホットライン』でご連絡下さい。またこちらからも、何かありましたら、そのホットラインで連絡させて頂きます」


 ……この部屋は、センタールームと言うようだ。

 そして、あのディスプレイ付の端末機がホットライン……直通回線……他へは掛けられない通話機。

「了解しました」


・・・・・・


 127さんは、一通りの説明を終えて、黒塗りの車と共に帰っていった。

 正面玄関扉の巨大なゲートは閉められ、ロックされた。


 なんという事だ。

 私と詩織は、しばらくこのオリの中で生活する事となった。


なんという事でしょう!

このオリの中で、詩織さんと2人っきりで過ごす事になってしまいました。

この先、どうなっちゃうのでしょう。

作者のみだらな思惑が、手に取る様にわかりますよね。


次回:オリの中の楽園


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ