キーボードを洗おう
キーボードって結構汚いらしいので、たまには洗ってあげましょう
「おいコラ鏡花!なんだこのベトベトキーボードは!!」
涼さんが「メカニカルキーボードを使ってみたいです」って言ってたから、俺のを貸してあげた。で、俺は予備を引っ張り出してこようとして、鏡花のキーボードにしたのを思い出した。
今更メンブレンもなーと思って、レポートを書き終えた鏡花に借りようとした。
だが、なんだこのベトベト具合は。
「……黙秘するっす」
鏡花が生意気なことを言うので、チョップをかまそうと思ったがやめた。
そんな益のないことをする時間で、これを洗っちまったほうがいい。
おじさんから壊れてるコンプレッサー貰う予定だったけど、ちょっと時間が合わなくてもらえてない。
だから、エアブロー用の缶スプレーを使うことになるけど作業自体はできる。
「お前、自分のなんだから自分で洗えよ?やり方は教えてやるから……」
うぇぇ、それにしてもバッチイな。何をしたらこんなに汚れるんだよ。
とりあえず、自分の手を洗ってと。
「せんぱい、どうやって洗うんすか?まさか丸洗いじゃないっすよね?」
「キーキャップを全部外して、超音波洗浄機。それ以外のとこは、アルコールか樹脂に影響の出ない溶剤でふき取るっていう作業になる。ほれ、これ貸してやるから外してみろ」
俺は針金でキーキャップをひっかけて外すタイプの工具を貸してやる。メカニカルキーボードを買った時についてくるやつでもいいけど、こっちのほうが作業をしやすい気がするんだよな。
そして、いきなりキーを外そうとする鏡花にストップをかける。
「お前すごいなぁ。全部のキー位置を把握してるんだぁー。後で戻すこと考えてないだろ?」
「……えッ!あっ!!」
俺の意図するところが分かったらしい。
スマホを取り出して写真を撮る鏡花。
「正解だ。特にこういう『部品点数が多い』ものをバラスときは、写真を撮るようにしたほうがいい。後で組み立てるときに無駄に資料を調べずに、写真だけ見れば作業できる。何だったら印刷してもいいくらいだ。ペーパーレスって言われるけど、紙のほうが見やすいものも存在しているからな」
そして、俺が100円ショップのキャンプコーナーで買ったステンレス製のお椀に、キーキャップを入れていく鏡花。
個人的にはこの外す作業って結構好きなんだけど、今まで同意が得られたことはない。
というか、電源を切ってアルコールティッシュで拭いて終わりっていう人も多いと思う。
実際、それで問題はない。
今回はそれできれいにならなそうなくらいベッタベタだったからやっているだけ。
「いや、ほんとに何やったらこんなになんだよ」
俺のつぶやきに対して、真っ赤な顔をして震えている鏡花。
「おい、鏡花?大丈夫か?熱あるなら帰って寝ろよ」
俺はおでこを鏡花のおでこにくっつける。
「ふぇあぁぁぁ!?しぇ、しぇんぱ!!」
「あぁ、やっぱり熱いな。あとやっとくから、ちょっと寝てこい」
「ふにゅぅ……」
あ、なんか知らねーけどオーバーヒートして倒れた。
しょうがねぇなぁ。あんま力ないけど、何とか女の子一人くらいは抱えられるか。
――
とりあえず俺のベットに鏡花を放り込み、作業の続きをする。
とはいっても、キーキャップさえ外れちゃえばあとは簡単。
超音波洗浄機に中性洗剤と一緒に放り込む。
そして、適当に5分くらい回す。
たったそれだけで新品とまではいかないけど、かなり綺麗になる。
「ただ問題は、このキーがはまるところの十字溝の中なんだよな……」
メカニカルキーボードの「軸」と言われる部品には、十字の溝が掘られている。
夏の日の天日乾燥であれば十分渇くが、そうでないときは意外と時間がかかる。
対処方法は簡単。エアブローで飛ばしてしまえばいい。
コンプレッサーを持っているのであれば、それで飛ばしてしまえばいい。
もらう約束はしてあるけど、まだもらってないから今回はその方法は使えない。
じゃあ、どうするか。
「冷てぇ!!」
分解作業をしている人間であれば、必ず1本は持っているであろうエアブロー用のスプレー缶を使う。
ただし、1本だと感がガスを噴出している間に冷えてきてでなくなる。
そのため、2~3本用意しておくと作業を無駄なく行うことが出来る。
「……せんぱい、ご迷惑をおかけしました」
「大丈夫か?具合悪いようなら送るぞ?」
「……大丈夫っす」
何か小声でゴニョゴニョ言っているが、聞こえないふりをしてやるのも男の仕事だろう。
「……ムリすんなよ?あと組み立てだけだから、やるか?」
首肯する鏡花。
一つずつキーをハメていく。
個人的にはエンターキーやTABキー、悪名高いCapsLockキーなどの特殊な形をしたキーからハメていくことをお勧めする。
鏡花のキーボードは91キータイプ。特殊な形をしたきーが10個程度存在しているので、大体1割くらいがハメ終わる。
その後は、ファンクションキーとか、バックスペースキーなどの「場所が分かりやすいキー」をはめていく。
その次に文字キー。最後にプリントスクリーンとか、スクロールロックとかのあまり使わないキーをやっていくのがおすすめ。
多分それが一番作業が早いはず。
「……組みあがったっす」
「……もう、あんまり汚すなよ?」
――
「ありがとうございました。こちらお返ししますね」
涼さんからキーボードを返してもらう。が、なんかベトついている。
自分のも洗うのかよ!!
ちなみに、ポテトチップス食べながらタイピングしていたそうです。




