7.蔵
翌日も痛いほどの日差しが降り注ぐ真夏日だった。
だが厚い壁に囲われた蔵の中はひんやりとして薄暗く、裸電球がひとつだけ頭上でぷらぷらと揺れていた。
変色してたわんだ段ボールや、いつからあるかも分からない長持ちや昔話に出てくるようなつづらなどが、大きな影をいくつも作りこちらを取り囲んでいる。
他にも錆びの浮かんだ耕運機や鍬などの農耕器具、鎌や鉈、鑿、巨大な曲尺なども無造作に置かれており、屋内の物置よりもこっちの方がよっぽど危ないのではないかと子供心に思ったりした。
「あったあった。この箱だ」
あちこちの段ボール箱を開けては閉めてを繰り返していたケイイチさんが、ようやくひとつの箱を持ち上げた。
「この中に提灯が仕舞われているから、破れたりして使えなくなっているものがないか、確認しよう」
蛇腹に畳まれた提灯は紙と竹でできている為、ひとつずつ広げて確かめる必要があるらしい。
他にも祭で使う祭壇や食器なども一緒にしまわれているようで、ケイイチさんがひと箱ずつ外に持ち出していく姿を俺は見ていた。
その時、ふいに傍らの段ボールの中から古びた冊子がのぞいていることに気付く。
手話の教本なんかと一緒に入っていたそれは、他の本とはだいぶ体裁が異なっていた。
茶色く変色したシミだらけの紙は紐で閉じられており、子供が手で書いたような歪で大きさの揃わない、妙に角ばった文字が印刷されている。
それはわら半紙にガリ版印刷された手作りの本のようだったが、コピー用紙とプリンターしか知らない当時の俺には、ただただ見慣れない奇妙な冊子だった。
だが、その表紙に印刷された手描きの襖の絵に、俺ははっとする。
「あ、あの、ケイイチさん……」
「ん、なんだい?」
俺が指をさすと、ケイイチさんは段ボールの中を覗き込む。
「……ああ、これがこの前話した、僕の叔父さんだか大叔父さんだかの、小学生時代の自由研究だろうね」
冊子を取り上げると、ざらざらと砂埃が表紙から零れ落ちる。
俺の目は、その冊子に釘付けになった。そこにこそ、俺の探していた答えが記載されているのかも知れないと、何の根拠もなくそう思えてならなかった。
「あの、それ、読ませてもらってもいいですか?」
「かなりバッチイけど、大丈夫?」
「……。……はいっ」
一瞬躊躇してしまったが、指先でそうっと端っこを摘まみ上げる。手に取ってみれば、虫が沸いているなんてこともなく、俺は無事にその冊子を受け取ったのだった。




