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最弱職の召喚士ですが、初召喚で太古の神獣と契約したら現実に戻れなくなりました  作者: あげまんじゅう


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第55話「動き出す影」

海底遺跡から戻って、平穏な日々が、しばらく続いていた、ある夜のこと。

 街の外れ、人気のない路地に、フードを深く被った、一人の人物が、静かに、立っていた。ラーグだった。彼の視線の先には、同じく、フードを纏った、もう一人の人物の姿があった。

「――報告は」

 ラーグの、静かな問いに、その人物は、抑えた声で、答えた。

「規格外の召喚士、ルートたちの動向、上層部は、これまで以上に、警戒を、強めています」

「やはり、な」

「氷雪の遺跡、妖精の森、そして、海底遺跡……立て続けに、核が、解放されたことで、召喚術全体の力が、少しずつ、回復し始めているとの、報告も、上がっています」

 その報告に、ラーグは、静かに、頷いた。

「上層部は、それを、どう見ている」

「――脅威と、捉えています。特に、召喚術の力が、完全に、回復してしまえば、この世界に対する、運営の、優位性そのものが、揺らぎかねないと」

 その言葉に、ラーグの表情が、険しくなった。

「つまり、あの子たちを、これ以上、放置するつもりは、ない、ということか」

「はい。近々、何らかの、対抗策が、講じられるものと、思われます」

 その報告に、ラーグは、深く、息を、吐いた。

「私からも、伝えておいてくれ。上層部の、暴走を、止められる者がいるなら、今のうちに、動くべきだと」

「承知いたしました」

 その人物は、静かに、頭を下げると、闇の中に、姿を、消していった。

 一人になったラーグは、しばらくの間、夜空を、見上げていた。

(結城陽翔……ルート。お前たちの存在が、この世界の、大きな転換点になることは、間違いない。だが、その道のりは、決して、平坦ではないだろう)

 その、静かな決意を胸に、ラーグもまた、闇の中へと、姿を、消していった。

 ――同じ頃、運営の、とある施設。

 無機質な部屋の中央、いくつもの、モニターに囲まれた空間で、複数の、運営幹部たちが、会議を、開いていた。

「規格外個体の、動向について、報告を」

 議長らしき、初老の男の言葉に、一人の女性が、資料を手に、立ち上がった。

「はい。結城陽翔――通称、ルート。契約している、規格外個体は、二体。加えて、この世界の、召喚術の『核』を、これまでに、三箇所、解放しています」

「三箇所、か」

 議長の声に、深刻な響きが、混じった。

「このまま、放置すれば、召喚術全体の、力が、完全に、回復する可能性が、あります。そうなれば、我々の、この世界における、優位性は、大きく、損なわれることに、なるでしょう」

「対策は」

「複数の、選択肢を、検討しております。……一つは、規格外個体の、直接的な、排除。もう一つは――」

 女性は、少し、言葉を、選ぶように、続けた。

「規格外個体の、力を、利用する、という選択肢です」

 その言葉に、議長は、興味深そうに、目を、細めた。

「詳しく、説明を」

「もし、彼らの、力を、我々の、管理下に置くことが、できれば……それは、単なる、排除以上の、価値を、我々に、もたらすでしょう。特に、あの、規格外の召喚獣――アシュルという、封じられた柱の、力を、掌握できれば」

 その提案に、議長は、しばらくの間、考え込んだ。

「――両案、並行して、進めるように。ただし」

「ただし?」

「規格外個体、及び、その関係者に、直接的な、危害が、及ぶことのないよう、慎重に、事を進めよ。もし、彼らを、完全に、敵に回せば、これまで以上の、混乱を、招きかねない」

「承知、いたしました」

 その、緊迫した会議の様子を、部屋の隅で、静かに、見つめていた、一人の職員がいた。彼女もまた、内心では、この方針に、強い、疑問を、抱いていた。

(このまま、進めば……本当に、取り返しのつかないことに、なるかもしれない)

 その、静かな懸念を、胸に秘めながら、彼女もまた、会議室を、後にしたのだった。

 ――街に戻ったルートたちの、日常は、まだ、その水面下で、静かに、進行している、緊迫した動きに、気づいていなかった。

 だが、それも、そう長くは、続かないだろう。

 新たな、大きな波が、ルートたちの元へと、静かに、しかし、確実に、近づいていた。

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