表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱職の召喚士ですが、初召喚で太古の神獣と契約したら現実に戻れなくなりました  作者: あげまんじゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/74

「いつか来る日のために」

ルートとシィナが、庭で、静かな語らいを続けていた、同じ頃。

 工房では、リュゼリアが、一人、黙々と、道具の手入れを、続けていた。そこへ、ふらりと、ゼクスが、顔を出した。

「リサ、まだ、仕事してたのか」

「ええ、少しね。ゼクスも、休憩?」

「ああ、まあな」

 ゼクスは、工房の隅に置かれた椅子に、腰を下ろした。しばらくの間、二人の間に、穏やかな沈黙が、流れた。

「なあ、リサ」

 ゼクスが、ふと、真剣な声で、切り出した。

「シィナのこと、応援してくれてるの、嬉しいけど……最近、実は、少し、悩んでることがあるんだ」

 その言葉に、リュゼリアは、手を止め、真剣な表情で、ゼクスを見つめた。

「悩み? 珍しいわね、あなたが、そんな顔をするの」

「からかうなよ。……実は、シィナのこと、なんだ」

「シィナちゃんと、何か、あったの?」

「いや、そういうんじゃなくて……もっと、根本的な、話なんだ」

 ゼクスは、少し、言葉を選ぶように、続けた。

「シィナは、元々、この世界の人間じゃない。俺たちと、違う世界から、来た人間なんだ」

 その言葉に、リュゼリアは、少し、驚いたように、目を見開いた。

「そう……だったの。知らなかったわ」

「シィナだけじゃない。ルートも、そうだ」

 その言葉に、リュゼリアの表情が、ふと、強張った。

「ルート君も……」

「ああ。だから、その……もし、いつか、二人が、元の世界に、帰らなきゃいけなくなったら……その時、俺たちは、どうすればいいんだろうって、考えちまって」

 その、率直な悩みの吐露に、リュゼリアは、しばらくの間、言葉を、失っていた。

「リサ……大丈夫か?」

 ゼクスの、気遣うような問いに、リュゼリアは、静かに、首を振った。

「ええ、大丈夫よ。ただ、少し……あなたと、同じことを、私も、考えていたから」

「リサも……?」

「ええ。実は、少し前から、ルート君のこと、大切に思うようになっていたの。でも、その気持ちが、深くなるほどに、不安も、大きくなっていくのを、感じていたわ」

 その告白に、ゼクスは、驚いたように、リュゼリアを見つめた。

「リサが、ルートのこと……」

「ふふ、意外だった?」

「いや……なんとなく、そうかもとは、思ってたけど。それより、今の話……お前も、同じ不安を、抱えてたんだな」

 ゼクスの言葉に、リュゼリアは、静かに、頷いた。

「ええ。もし、いつか、ルート君が、元の世界に、帰らなければならない日が、来るとしたら……その時、私たちの、この関係は、どうなるんだろうって」

 その、切実な問いに、ゼクスも、深く、頷いた。

「俺も、同じだよ。シィナと、これから、もっと、深い関係になりたいと思うほどに……いつか来るかもしれない、別れが、怖くなる」

 二人は、しばらくの間、それぞれの、抱えていた不安を、静かに、語り合った。

「でも――」

 リュゼリアが、ふと、真剣な眼差しで、続けた。

「私は、思うの。たとえ、いつか、別れが来るかもしれなくても、今、この瞬間の、幸せを、諦める理由には、ならないって」

「リサ……」

「もし、ルート君が、いつか、元の世界に、帰ることになったとしても……それまでの間、私が、彼と、一緒に過ごせた時間は、決して、無駄には、ならないもの。それに――」

 リュゼリアは、優しく、微笑んだ。

「もし、本当に、大切な絆なら、離れていても、きっと、繋がり続けられると、私は、信じたいの」

 その、力強い言葉に、ゼクスは、静かに、頷いた。

「そうだな……リサの、言う通りだ。俺も、シィナとの時間を、これから来るかもしれない、別れを、恐れて、無駄にしたくない」

「ええ。それに、ゼクス」

「なんだ?」

「もし、本当に、その日が来たとしても……あなたには、私が、ずっと、傍にいるわ。一人には、させないから」

 その、姉としての、温かい言葉に、ゼクスは、少し、照れくさそうに、しかし、確かな安心感と共に、頷いた。

「ああ、ありがとう、リサ」

 二人は、しばらくの間、穏やかな沈黙の中、それぞれの想いを、静かに、噛み締めていた。

「なあ、リサ」

「なに?」

「もし、ルートたちが、いつか、元の世界に、帰ることになったとしても……俺たちは、絶対に、二人のことを、忘れない。それだけは、確かだよな」

 その言葉に、リュゼリアは、深く、頷いた。

「ええ、もちろんよ。それに――」

 リュゼリアは、少し、いたずらっぽく、微笑んだ。

「そう簡単には、離れさせないように、私たちも、頑張らないとね」

 その、力強い決意に、ゼクスは、思わず、笑ってしまった。

「違いない」

 工房に、穏やかな笑い声が、静かに、響いた。

 その後、二人は、しばらくの間、他愛のない話を続けた。これまでの旅の思い出、そして、これから、どんな未来を、共に、築いていきたいか。

「そういえば」

 ゼクスが、ふと、思い出したように、口を開いた。

「アシュルと、カインも、なんか、最近、様子が、変わった気がしないか?」

「ああ、私も、気づいてたわ。海底遺跡での、あの一件から、二人の距離、なんだか、近くなった気がする」

「だよな。あの二人も、もしかしたら……」

 その言葉に、リュゼリアは、興味深そうに、微笑んだ。

「ふふ、それは、これからの、楽しみね」

 夕暮れ時、二人は、それぞれの作業に、戻ることにした。工房を出るゼクスの背中に、リュゼリアが、優しく、声をかけた。

「ゼクス」

「ん?」

「今日、話せて、良かったわ。ありがとう」

「ああ、俺もだ。……なんか、少し、心が、軽くなった気がする」

 その言葉に、リュゼリアは、優しく、微笑んだ。

 夕日が、工房の窓を、静かに、染めていく。それぞれの、確かな絆と、そして、静かな葛藤を抱えながらも、屋敷には、変わらぬ、温かい日常が、続いていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ