表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱職の召喚士ですが、初召喚で太古の神獣と契約したら現実に戻れなくなりました  作者: あげまんじゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/74

「深海の守護者」

遺跡の奥から現れたのは、巨大な、甲殻類を思わせる魔物の群れだった。鋭い鋏を持つその姿は、水中という環境も相まって、これまで戦ってきたどの敵よりも、威圧感に満ちていた。

「数が、多いな……!」

 ゼクスが、油断なく身構えながら呟いた。水中では、彼の得意とする炎の力が、思うように発揮できないことが、その表情に、焦りを滲ませていた。

「くそ、水の中じゃ、炎の威力が、半減しちまう……!」

「ゼクス、落ち着いて! 私が、援護します!」

 シィナが、水の抵抗を利用した、独自の水流魔法を、次々と展開していった。

「風よ、水を纏え――『アクアランス』!」

 放たれた水の槍が、魔物の一体を貫く。水中という特殊な環境の中でも、シィナの魔法は、確かな効果を発揮していた。

「さすが、シィナ。水中でも、腕は落ちてないな」

 ゼクスの言葉に、シィナは、水中でも、はっきりと分かるほど、嬉しそうな表情を浮かべた。

 一方、ルートは、片手剣を構え、迫る魔物へと、立ち向かっていた。水の抵抗のせいか、地上での戦闘のようには、思い通りに、体が動かない。

「くっ……!」

 振るった一撃は、狙いよりも、大きく逸れてしまった。

「ルート様、水中では、剣を振るう軌道を、もっと大きく取ってください!」

 カインの、冷静なアドバイスに、ルートは、すぐさま、動きを修正した。

「分かった、ありがとう!」

 カイン自身は、漆黒の翼を巧みに使い、水中でも、自在に、動き回っていた。その動きには、まるで、水中であることを、感じさせないほどの、洗練された美しさがあった。

「――行きます」

 カインが放った、漆黒の魔力弾が、複数の魔物を、まとめて薙ぎ払う。水中でも、彼の魔法は、些かも、その威力を、失っていなかった。

「さすがだな、貴様」

 アシュルが、白銀の光を纏わせながら、感心したように呟いた。

「あなたにも、負けてはいられませんので」

 二体は、それぞれ、水中でも、確かな力を発揮しながら、次々と、迫る魔物を、討ち払っていった。だが、魔物の数は、一向に、減る気配を見せなかった。

「キリがないな……! この魔物たち、どこから、湧いて出てるんだ!」

 ゼクスが、苛立たしげに叫んだ。

「恐らく、遺跡の奥に、発生源があるはずだ。そこを、断たなければ……!」

 アシュルの分析に、ルートは、頷いた。

「なら、僕たちで、道を切り開く! みんな、援護を!」

 ルートの号令のもと、一同は、遺跡の奥を目指して、慎重に、しかし、確実に、前進を始めた。

 だが、遺跡の入り口に近づいたその時、周囲の水が、これまで以上に、大きく、揺れ動いた。

「――来るぞ! 何か、大きいのが!」

 アシュルの、鋭い警告と共に、遺跡の最奥から、これまでとは、比較にならないほどの、巨大な影が、姿を現した。

 それは、蟹と烏賊を、混ぜ合わせたような、異形の姿をした、巨大な魔物だった。全身を覆う、堅牢な甲殻と、無数に蠢く、長い触手。その禍々しい姿に、一同は、思わず、息を呑んだ。

「あれが、この遺跡の、主か……!」

 ゼクスが、緊張した声で呟いた。

 巨大な魔物は、咆哮と共に、その触手を、一斉に、こちらへと、伸ばしてきた。

「散れ!」

 ルートの叫びと共に、一同は、それぞれ、散開して、触手の攻撃を、かわしていった。だが、その数は、あまりにも多く、シィナが、避けきれずに、一本の触手に、捕らえられてしまった。

「きゃあ……!」

「シィナ!」

 ゼクスが、慌てて、彼女の元へと、駆けつけようとする。だが、別の触手が、その進路を、阻むように、迫ってきた。

「くっ……!」

 絶体絶命の状況に、ルートは、咄嗟に、力を振り絞った。

「アシュル、カイン、力を貸して!」

 その叫びに、二体は、即座に応じた。

 アシュルが、白銀の光を纏わせた斬撃で、シィナを捕らえる触手を、切り裂く。同時に、カインが、漆黒の力で、ゼクスの進路を阻む触手を、粉砕した。

「大丈夫か、シィナ!」

 ゼクスが、解放されたシィナを、慌てて抱き留めた。

「は、はい……ありがとうございます」

 その様子に、安堵の息を吐く間もなく、巨大な魔物は、さらに、猛烈な勢いで、攻撃を仕掛けてきた。

「まだまだ、終わらないぞ……!」

 ルートが、片手剣を構え直した、その時。

 巨大な触手の一本が、思いがけない速さで、ルートの背後へと、迫ってきた。

「――ルート様!」

 カインが、咄嗟に、ルートを庇うように、その身を、割り込ませた。触手の直撃を受けたカインの体が、大きく、弾き飛ばされる。

「カイン……!」

 ルートが、悲鳴のような声を上げた。だが、カインは、すぐさま、体勢を立て直し、痛みを堪えながらも、不敵に笑った。

「この程度、大したことは、ございません」

 その姿を見て、少し離れた場所で、魔物と対峙していたアシュルの、動きが、一瞬、止まった。

「――ッ」

 アシュルの脳裏に、これまで感じたことのない、鋭い焦りが、走った。

 次の瞬間、別の触手が、体勢を崩したカインへと、追撃を仕掛けようとする。それを見た瞬間、アシュルの体は、考えるよりも先に、動いていた。

「――させるか!」

 アシュルが、自らの体を、盾にするように、カインの前へと、割り込んだ。触手の一撃が、アシュルの体を、直接、打ち据える。

「アシュル!」

 カインが、驚愕の表情で、その名を呼んだ。

「なぜ……庇う必要など、なかったでしょうに」

 その問いに、アシュルは、痛みを堪えながらも、静かに、しかし、はっきりと答えた。

「――知らん。だが、貴様が傷つく姿を、見過ごすことは、できなかった」

 その、素直な言葉に、カインは、しばらくの間、言葉を失っていた。

「……感謝、いたします」

 その短い言葉に、アシュルは、少し、照れくさそうに、視線を逸らした。

「勘違いするなよ。ただの、反射的な行動だ」

「――そういうことに、しておきましょう」

 二体は、そう言葉を交わしながらも、互いを庇い合うように、並び立った。その連携は、これまで以上に、息の合ったものへと、変わっていた。

「ルート、指示を!」

 アシュルの声に、ルートは、はっと、我に返った。

「アシュルとカインは、あの触手を、抑えて! 僕とゼクス、シィナで、本体の弱点を探す!」

「了解した!」

 その号令のもと、一行の連携は、これまでにないほどの、精度を増していった。アシュルとカインが、息の合った動きで、無数の触手を、次々と、切り払っていく。その様子は、まるで、長年連れ添った、戦友のようだった。

「シィナ、あの魔物の甲殻、どこか、弱点はないか?」

 ルートの問いに、シィナは、慎重に、魔物の姿を観察した。

「――そこの、目の周辺だけ、甲殻が、薄いようです!」

「よし、そこを狙う!」

 ルートは、片手剣に、力を込めた。体の奥から、これまで蓄えてきた力が、静かに、しかし、確かに、湧き上がってくる。

「アシュル、カイン、隙を作って!」

「承知した!」

「畏まりました!」

 二体が、それぞれ、巨大な魔物の注意を、引きつける。その隙を突いて、ルートは、渾身の力を込めた一撃を、魔物の目へと、突き入れた。

「――そこだ!」

 その一撃が、見事に、魔物の弱点を、捉えた。断末魔の叫びを上げながら、巨大な魔物の体が、大きく、痙攣する。

「今だ、みんな! 畳み掛けろ!」

 ルートの号令のもと、一同の攻撃が、一斉に、魔物へと、注がれた。ゼクスの炎、シィナの水流魔法、アシュルとカインの、それぞれの力。全ての攻撃が、見事に、噛み合った。

 やがて、巨大な魔物は、大きな水しぶきを上げながら、崩れ落ち、光の粒子となって、消えていった。

 辺りに、静寂が戻る。一行は、それぞれ、安堵の息を、吐き出した。

「なんとか、なりましたね……」

 シィナが、疲労の滲む声で呟いた。

「ああ。だが、これで、終わりじゃない。あの主を倒したことで、道が開けたはずだ」

 アシュルの言葉に、一同は、頷いた。

 ルートは、隣に立つ、アシュルとカインへと、視線を向けた。二体の間には、これまでとは、明らかに違う、穏やかな空気が、流れていた。

「アシュル、カイン、二人とも、ありがとう。おかげで、助かったよ」

 その言葉に、二体は、それぞれ、頷いた。

「当然のことをしたまでだ」

「ルート様のためであれば、当然のことです」

 その、いつも通りの返答の中に、これまでとは、確かに違う、深い信頼の色が、滲んでいるのを、ルートは、静かに、感じ取っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ